ニトリの海外進出「戦略があっても勝てない国がある」から学ぶ次の一手
更新 2026年10月3日 公開 2025年10月21日
ニトリは、国内で圧倒的な知名度を持つ家具・インテリア企業です。
しかし海外では、店舗を増やす国がある一方、米国からの撤退や、一部市場での店舗閉鎖・再編も経験しています。
つまり、国内で確立したビジネスモデルや資金力があっても、すべての国で同じように成果を出せるわけではありません。
では、何が違ったのでしょうか。
本記事では、ニトリの海外展開をたどりながら、
「自社の強みが通用する市場をどう見極めるか」
「うまくいかないとき、何を見直すのか」
を、中小企業にも参考になる視点から考えます。
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ニトリの海外展開、“同じ戦略でも結果は同じではない”
ニトリの海外展開は、2007年の台湾出店から本格的に始まりました。台湾は海外第1号店で、その後、中国大陸、東南アジア、韓国、インドなどへ出店地域を広げています。
一方、2013年に「Aki-Home」ブランドで進出した米国からは撤退しました。現在も、中国大陸などで店舗の出店と閉店を行いながら、国・地域ごとに展開を見直しています。
ここで注目したいのは、ニトリという同じ会社が、同じ強みを持って海外へ出ても、国によって結果が異なったことです。
では、なぜその違いが生まれたのでしょうか。
次から、米国とアジアでの展開を比較しながら見ていきます。
米国で苦戦し、アジアでも国によって結果が分かれる
ニトリは2013年、米国で「Aki-Home」の展開を開始しました。
しかし、出店後は不採算店舗を閉鎖し、2019年度には2店舗まで縮小。組織のスリム化も進め、その後、米国市場から撤退しています。
重要なのは、これを単純に「米国ではニトリの商品が合わなかった」と決めつけないことです。
ニトリ自身も米国を競争の激しい市場と位置づけ、出店しながら学び、試行錯誤を続けていました。
そして現在の海外展開を見ると、「米国は難しかったが、アジアなら成功する」というほど単純でもありません。
2026年9月末時点では、
- 台湾:76店舗
- 中国大陸:78店舗
- マレーシア:14店舗
- タイ:13店舗
- フィリピン:7店舗
- インドネシア:6店舗
- シンガポール:6店舗
- 韓国:5店舗
- 香港:5店舗
- ベトナム:4店舗
- インド:1店舗
と、アジア各地へ展開しています。
一方で、出店だけを続けているわけではありません。市場によっては店舗を閉鎖・再編しながら、新しい出店も進めています。
ニトリが現在掲げているのも、すべての国で同じ売り方をすることではなく、
- 強固なサプライチェーンの構築
- 商品標準化による規模のメリット
- 国・地域ごとにマーケティングを最適化
- 海外事業を担う人材の育成
です。
つまり、ニトリの海外展開から見えてくるのは、「この戦略なら、この地域で勝てる」という単純な公式ではありません。
自社の強みを持ちながらも、市場ごとの反応を見て、出店・閉店・再編を繰り返し、国ごとにやり方を変えていく。
ここに、海外展開の難しさと、ニトリから学べる重要なポイントがあります。
戦略があっても、ローカライズしても、勝てない市場はある
ニトリは、米国市場に日本で成功した商品や売り方をそのまま持ち込んだわけではありません。
似鳥氏は進出前から、日本と米国では生活や商品のサイズが異なり、日本と同じ商品では「2~3割しか通用しない」と認識していました。
そのため米国進出を「第2の創業」と位置づけ、
- 現地での商品開発
- 米国への社員研修
- 現地で何が売れ、何が売れないのかの検証
- ターゲットに合わせた品揃え
- 店舗フォーマットの見直し
- ECと実店舗を組み合わせた販売方法の検討
など、試行錯誤を続けています。
それでも、米国事業は最終的に撤退となりました。
ニトリは撤退理由について、当時の経済環境では収益性の改善が難しく、今後有望と考える東アジア・東南アジアへ資金と人材を再配置するためと説明しています。
ここに、海外進出の難しさがあります。
市場を調べた。
ローカライズもした。
現地で試した。
改善もした。
それでも、事業として採算が合わなければ撤退することはある。
だから海外展開では、「正しい戦略を立てれば成功する」とは限りません。
重要なのは、「戦略が間違っていたのか」だけではなく、「この市場で、この事業を続ける合理性があるのか」まで判断することです。
中小企業がニトリの事例から学べること
- 日本の実績が通用しない市場で、ゼロから商品開発する難易度は極めて高いと知る
- 方向転換に迷ったら、現地の顧客行動を重要な判断材料にする
- リソースの再配分を伴う仕切り直しは、経営者が迅速に指示・実行する
「戦略を立てればうまくいく」と思っていませんか?
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そのズレを整理したチェックリストをまとめています。
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海外展開を支える、ニトリのサプライチェーン
ニトリの強みは、商品を企画して店舗で販売するだけではありません。
同社は「製造物流IT小売業」を掲げ、商品の企画・製造・物流・販売までを一気通貫で管理する仕組みを構築してきました。
海外でも、
- 中国・台湾・ベトナムに物流拠点を設置
- 中国、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどに調達・物流関連の拠点を展開
- 一部の通関業務も自社で行う
- 海外からの輸送、在庫管理、店舗・顧客への配送までサプライチェーン全体を管理
と、物流そのものを競争力の一部にしています。
家具・インテリアは大型商品も多く、物流費や在庫、納期が収益性を大きく左右します。
ここで中小企業が見るべきなのは、「ニトリの物流を真似しよう」という話ではありません。
むしろ逆です。
大企業がここまでやっている市場で、自社はどう勝つのか
ニトリは低価格の商品を安定して販売するために、製造だけでなく物流や通関まで自社の管理領域を広げています。
中小企業が同じ規模のサプライチェーンを構築することは現実的ではありません。
だからこそ海外市場へ出る前に、
- 大手と同じ価格帯・同じ商品で戦おうとしていないか
- 物流費や関税を含めても利益が残る価格を設定できるか
- 自社で持てない機能を、どの外部パートナーで補うのか
- 大手にはない商品・顧客・販路で勝てる余地があるのか
を確認する必要があります。
大企業の成功事例から学ぶとは、同じことを真似することではありません。
相手がどこまで競争力を作り込んでいるかを知り、「同じ土俵に乗らない」という判断をすることも、重要な海外戦略です。
結局、ニトリの海外進出は成功しているのか?
ここまで読むと、「出店して、閉店して、また出店して……それだけ費用をかけて、海外事業は本当に儲かっているのか?」と思うかもしれません。
実際、ニトリ自身も2025年の統合報告書で、海外事業が「足踏み」している状況を認め、黒字化のロールモデルを模索していると説明していました。
2026年3月期も、海外では30店舗を出店する一方で34店舗を退店。中国大陸だけでも25店舗を閉鎖しています。
それでもニトリは、海外展開を止めていません。
むしろ2027年3月期には、海外店舗を209店舗から291店舗へ増やす計画です。
なぜ、そこまで海外出店を続けるのか?
大きな理由は、海外事業そのものがニトリの長期成長戦略だからです。
ニトリは「3,000店舗・売上高3兆円」という長期ビジョンを掲げており、国内だけではなく海外で大きく店舗網を広げることを前提としています。
また、海外店舗の約9割はショッピングセンターへの出店で、1店舗あたりの出店コストは平均約5,000万円。
ニトリはこの構造を生かし、不採算店を閉めながら、より収益性が見込める立地へ移転しています。
そして2026年3月期には、中国大陸で不採算店の撤退、店舗面積や立地、売場構成の見直しを進めた結果、収益性が大幅に改善したと発表しています。
つまり現時点のニトリは、海外進出を単純に「成功した」「失敗した」と評価できる段階ではありません。
撤退コストを払いながら失敗を繰り返しているだけでもなければ、海外で順調に成功しているわけでもない。
不採算店を閉め、出店モデルを修正し、収益化できる形を探しながら、海外を将来の成長市場として育てている途中と見るのが実態に近いでしょう。
そしてこれは、中小企業には非常に重要な違いです。
ニトリには、失敗した店舗を閉め、別の場所で再び試し続けられる資金力があります。
中小企業が同じように「出して、試して、ダメなら閉める」を繰り返せるとは限りません。
だからこそ、ニトリの海外進出から学ぶべきなのは出店数ではなく、「自社には何回失敗できる余力があるのか」まで含めて海外戦略を考えることなのです。
中小企業の海外進出で、経営者が判断できなければ進まない
ニトリは「3,000店舗・売上高3兆円」という長期ビジョンを掲げ、海外での店舗拡大を成長戦略に組み込んでいます。
一方、中小企業の海外進出では、「海外で事業を続ける」こと自体が決定事項ではありません。
市場を変えるのか。
商品を変えるのか。
販売方法を変えるのか。
追加投資するのか。
撤退するのか。
経験したことがなく、正解も分からない事業について、経営者には何度も意思決定が求められます。
だからこそ、少なくとも次の状態になっていなければ、海外事業を継続的に進めることは難しくなります。
海外進出を続けるための最低限のチェックリスト
- なぜ海外へ進出するのか、経営者自身が説明できる
- どこまでの資金・人材・時間を海外事業に投入できるか決めている
- 誰に、何を、なぜ買ってもらえるのか仮説がある
- 売上だけでなく、物流・関税・販促費などを含めて採算を確認している
- 現地で起きていることを経営者まで届かせる仕組みがある
- 想定と違ったときに、商品・市場・販路を見直せる
- 追加投資する条件と、撤退・縮小を検討する条件を決めている
- 海外事業の判断を、担当者や代理店任せにしていない
海外進出では、最初に正解を当てること以上に、想定と違ったときに経営者が次の判断をできることが重要です。
ニトリの海外展開から中小企業が学ぶべきなのは、200店舗、2,000店舗という規模ではなく、結果を見ながら経営資源の配分を変え、次の一手を決め続けることではないでしょうか。
海外進出の判断に迷ったら、まず現状を整理する
海外進出では、最初から正解が分かっていることの方が少ないものです。
だからこそ重要なのは、分からないまま進めるのではなく、
- どの市場を狙うのか
- 誰に何を売るのか
- どの販路を使うのか
- どこまで投資できるのか
- 誰が判断し、誰が実行するのか
- どの状態になったら見直すのか
を整理し、その時点で判断できる材料をそろえることです。
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大企業の海外進出事例シリーズ
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本記事は、大企業の海外進出事例を分析するシリーズの一つです。
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