しかし、中小企業の海外営業の現実は、もう少し地味で粘り強さが求められる仕事です。
ターゲット市場を調査し、仮説を立て、展示会やWebサイトを通じて反応を集め、少しずつ顧客との信頼関係を構築していく――。
ときには何か月、何年も成果が出ないこともあります。
それでも、市場を切り開き、はじめての海外顧客を獲得できた時の喜びは格別です。
このページでは、中小企業が海外営業を進める際に知っておきたい考え方と実践ポイントを解説します。


中小企業の海外営業は、なぜ難しいのか
海外営業の求人を見てみると、数多くの募集があることに驚くかもしれません。
それだけ、多くの企業が海外市場へ販路を広げたいと考えているということです。
しかし、中小企業が海外営業人材を採用し、育成し、成果を出すことは簡単ではありません。
特に、はじめて海外展開に取り組む企業の場合、既存顧客へのルート営業ではなく、ゼロから市場を開拓する「新規開拓営業」が中心になります。
つまり、誰も知らない市場で、誰も自社を知らない状態から、最初の顧客を見つけなければならないのです。
この「火を起こす」仕事には、営業力だけでなく、マーケティング、異文化理解、仮説構築、そして粘り強さが求められます。
そのため、海外営業担当者一人にすべてを任せるのではなく、経営者を含めた全社体制で取り組むことが重要です。
一方で、時間をかけて最初の顧客を獲得し、その後、代理店や新市場へ展開できるようになると、企業の成長スピードは大きく変わります。
海外営業とは、単なる営業活動ではなく、新しい市場を自社の力で切り開いていく挑戦なのです。
海外営業は未経験でもできるのか
もちろん未経験でも、海外の新規開拓に取り組むことは可能です。
ただし、英語が話せるだけでは成果は出ません。
海外営業で成果を出すためには、営業経験、商品理解、仮説を立てる力、相手の反応を見ながら改善する力が必要です。
国内営業でも、見込み顧客を探し、相手の課題を聞き、提案し、断られた理由を考えながら次の営業に活かしていきます。
海外営業でも、この基本は同じです。
違うのは、相手の国や商習慣、言語、市場環境が異なるため、仮説が外れることが多い点です。
だからこそ、海外営業では「最初からうまく売る力」よりも、「反応を見て修正する力」が何より重要になります。
海外営業で成果を出しやすい順番をあえて挙げるなら、
- 英語が話せる営業経験者
- 英語が話せない営業経験者
- 英語が話せる営業未経験者
です。
英語力はもちろん大切です。
しかし、海外営業の現場では、相手の言葉を聞き、意図を読み取り、次の提案に変えていく営業力の方が成果に直結する場面も少なくありません。
海外営業で成果が出ない企業の多くは、失敗したことが問題なのではありません。
展示会、営業訪問、オンライン商談などで得た反応を十分に分析しないまま、「うまくいかなかった」と結論づけ、次の改善につなげられていないことが問題なのです。
海外営業では、一つひとつの失敗や違和感の中に、次に進むためのヒントがたくさん隠されています。
つまり、未経験でも始めることはできます。
大切なのは、失敗しないことではなく、失敗を次の仮説に変えながら、粘り強く営業活動を続けることなのです。
パコロアが新聞取材を受けた際にまとめた、海外営業の現場で役立つ7つのコツもぜひご覧ください。
>英語で初めての営業 初めてのエイゴ営業 7つのコツ
海外営業は、営業担当者一人だけで完結する仕事ではありません。
海外進出に必要となる知識や能力については、こちらで詳しく解説しています。
>海外進出に必要な能力を身につけよう
海外営業では「自社の強み」より「相手のメリット」を伝える
海外営業では、自社の技術力や歴史を説明することよりも、
「取引先を変えることで、相手にどのようなメリットがあるのか」
を伝えることが重要です。
海外企業には、すでに長年取引している既存サプライヤーや競合企業が存在します。
そのため、
「品質が良い」
「技術力が高い」
「日本製である」
だけでは、新しい取引先として選ばれる理由にはなりません。
海外営業では、
・コスト削減できるのか
・品質が安定するのか
・新しい市場を開拓できるのか
・顧客の課題を解決できるのか
・競合製品と比較して何が違うのか
といった、「相手にとっての価値」を明確に伝える必要があります。
また、海外向けのプレゼンテーションでは、日本語資料をそのまま翻訳するのではなく、海外企業が理解しやすい構成へ作り変えることも重要です。
一般的には、
結論 → 理由 → 事例 → 再結論
の流れが理解されやすいでしょう。
さらに、プレゼンテーションの目的は、自社について説明することではありません。
相手から質問を引き出し、
「見積もりが欲しい」
「工場を見学したい」
「次回は技術担当者も交えて話したい」
といった、次のアクションにつなげることが本来の目的です。
海外営業では、話す力と同じくらい、「相手に話してもらう力」が重要なのです。
英語プレゼンで最も重要なのは「質疑応答」
海外営業では、プレゼンテーションそのものよりも、その後の質疑応答の方が重要になることも少なくありません。
実際、5分程度プレゼンをした後、30分~1時間近く質疑応答が続くことも珍しくありません。
そのため、長時間一方的に説明するプレゼンは避け、相手から質問を引き出すことを意識しましょう。
また、質問を受けた際は、次のような流れで回答すると論点が明確になります。
- 謝辞(質問への感謝)
- 結論
- 理由
- 必要に応じて補足
- 再結論
例えば、
ご質問ありがとうございます。
結論から申し上げると、現時点では○○です。
理由は△△だからです。
一方で、最近は××という考え方も注目されています。
とても鋭いご質問をありがとうございます。
程度の短い回答でも十分です。
海外営業では、すべての質問に完璧に答えることよりも、相手との対話を前向きに進める姿勢の方が重視されることも少なくありません。
海外営業をリモートで進める方法
海外営業では、海外出張そのものよりも、
「海外へ行っていない期間に、どれだけ営業活動を進められるか」
が成果を左右します。
特に中小企業では、頻繁に海外出張を行うことは現実的ではありません。
そのため、オンライン商談、メール、Webサイト、動画などを活用しながら、リモートで営業活動を進める仕組みづくりが重要になります。
ポイントは、担当者が不在でも、顧客企業内で“独り歩きする”営業ツールを整備することです。
例えば、
・海外向けWebサイト
・提案書や会社案内
・商品紹介動画
・導入事例集
・技術データや証明書類
・営業メールのテンプレート
などを、英語や現地言語で準備しておきます。
また、海外顧客の購買プロセスを理解し、
「どのタイミングで、どの情報を提供するのか」
を事前に設計しておくことも重要です。
海外営業では、最初のオンライン商談が、そのままクロージングの場になることも珍しくありません。
だからこそ、
「海外出張した時だけ営業する」
のではなく、
「会わなくても営業が進む仕組み」
を日頃から整備しておく必要があります。
海外営業の成果は、海外出張中ではなく、むしろ出張していない期間に決まることも少なくないのです。
海外営業は「本番一発勝負」になることもある
海外営業の現場では、日本国内の営業とは異なる難しさを感じることがあります。
例えば、
・オンライン商談で、音声や映像越しに相手の本音や空気感を読み取らなければならない
・初対面の商談が、そのままクロージングの場になることもある
・「まずは関係構築から始めよう」と考えていたら、初回面談で価格、納期、独占契約まで質問される
といったことは、決して珍しくありません。
特に中小企業の場合、限られた回数の商談で成果を出す必要があるため、一回一回が真剣勝負になります。
そのため、海外営業では、事前準備と仮説構築が非常に重要です。
一方で、こうした経験を積み重ねることで、国内営業だけでは得られない視点や判断力が身につくことも事実です。
全世界の営業担当者が同じスタートラインに立つ今、日本の中小企業にも十分チャンスがあります。
海外営業の現場で試行錯誤を繰り返しながら、自社ならではの戦い方を見つけていきましょう。
海外での新規開拓なんて、自分にできる気がしません……。
でも、英語力だけではなく、営業経験や試行錯誤の積み重ねも重要だと分かって、少し勇気が出てきました。
その気持ちがとても大切です。
海外営業では、最初からうまくいくことの方が珍しいかもしれません。
大切なのは、行動し、相手の反応を確認し、その結果を次の営業活動に活かしていくことです。
展示会、営業訪問、オンライン商談――その一つひとつが、海外市場を理解するための貴重な経験になります。
知識として理解していたことが、実際の経験を通じて「知恵」へと変わったとき、海外営業は一気に面白くなります。
確かに、知っていることと、実際にできることは違いますよね。
まずは小さくても行動を始めて、失敗から学びながら進めていくことが重要なのかもしれません。
その通りです。
海外営業では、完璧な準備を待つよりも、仮説を立てて行動し、修正を繰り返す姿勢の方が成果につながることも少なくありません。
もちろん、経験豊富な専門家と一緒に進めることで、試行錯誤のスピードを上げることもできます。
自社だけでの海外営業に不安がある場合は、パコロアの海外進出伴走支援サービスもぜひご検討ください。
((OJT支援があれば、海外営業を社内で自走できる日も夢ではない、ということですね!)
(はい。そのための伴走支援です。)
さて、この「海外営業」で、海外進出ロードマップの「輸出」編はいったんゴールです。
ただし、海外進出には、輸出だけではなく「投資」という選択肢もあります。
現地法人、駐在員事務所、工場、店舗など、海外に拠点を設立する場合は、次のステップ「海外投資をする」へとロードマップは続きます。
海外拠点の立ち上げや、海外市場調査(F/S調査)については、引き続き「海外投資をする」にて解説していますので、ぜひ続けてご覧ください。