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02-102-1
海外進出の能力を開発する

貿易実務が身についていますか

貿易実務をマスターして、海外営業、経理、物流の事務ルーティンを確立し、海外進出のかなめとなる直接輸出でしっかり儲けを出していきましょう。

貿易実務はどうやって勉強すれば良いですか?

はじめて海外企業へ見積書や請求書を作ることになったというのに、貿易実務を教えてくれる人はおらず、貿易実務に必要な英文ひながたも無い状態だったら、一体どうすればよいのか?

そんな時は慌てず、
Quotation(見積書)や Invoice(送り状兼請求書)という単語を、
Template(ひながた)という単語と共にGoogle検索してみましょう。

検索した複数のひな形を見比べることで、文書に含むべき必須項目が分かります。
さっそく空欄に単語や数字を打ち込んでみると、何となく形にはなってきます。

よろしければこちらもどうぞ

→ パコロアTIPS お役立ち英文書式 Quotation(見積書)


貿易実務について、分からないことが発生したら、都度検索してみましょう。
貿易実務の情報サイトも増えており、無料の情報でもおおよそのあたりをつけることが出来ます。そして勉強方法としてはこのやり方が一番効率的と言えます。

もしインターネットで検索しても分からない時は、お取引のある、
・銀行の外国為替部
・国際輸送会社
・輸出梱包会社
・海上保険会社
・第三者認証機関
・商工会議所、
・その他 各当局
のいずれかに直接問い合わせることで、どうすれば良いか、の情報は得られます。

もし、問い合わせ先の業務の範疇外、の質問だったとしても、どこに聞けば良いかを教えてもらえることもあります。実際に、幾多の困難を、「まずは各所に電話して聞いてみる」で乗り越えたこともあります。

いやいや、そういうチャレンジングな感じは苦手で、事前に貿易実務の全体像をしっかり理解しておきたい、貿易書類のひながたを整備しておきたい、という方には、下記の本をおススメします。

海外進出の必読書 ジェトロ貿易ハンドブック2023 
(輸入輸出手続きの最新全体像がつかめます)

海外進出の必読書 マンガでわかる貿易実務のきほん 
(コミック調ですが貿易実務が好きになります)


また、日本貿易実務検定協会の貿易実務検定のB級、C級受験などは、商業英語やマーケティングを楽しく学びつつスキルアップが図れます。検定試験を受け資格を取ることは将来の仕事にも役立つでしょう。

ただ、難易度の高い貿易実務検定A級や通関士試験の受験、各種セミナーの受講、分厚い本を読破するのは、初心者の時ではなく、後輩に教えられるレベルになった時くらいが適切でしょう。

その頃であれば、難易度の高い知識に触れたとしても、今まで蓄積してきた経験という点が、線につながる瞬間を、体系立てた学びを通じ、存分に味わうことができるからです。

そうか、こういう意味だったのか、と日々の業務を再認識できると、今までの実務作業が評価されたようで、大変スッキリします。そして同時に、ここからが大事なのですが、

実際に何年か最前線で貿易実務を担ってきたご自身が、一度も聞いたことも、見たことも、必要となったこともない、多くの貿易業務知識が、それらの検定試験や教材に含まれていることを知り、

もし最初にこちらから入っていれば、貿易実務はとても難しいもの、ハードルが高すぎて自分には攻略できないもの、やってもやっても勉強に終わりが見えない高みにあるもの、と誤解していたかもしれない、と、分かるでしょう。

貿易実務や貿易実務英語の大抵の疑問については、インターネットで即時検索できます。どうすることが正解かが分からない時も、貿易実務を担うパートナー各社に直接聞けば、ある程度分かってきます。

それら部分理解を統合して、自分の頭で考えて、道をつけていく、という能動的な貿易実務の進め方は、海外進出手法そのものにも通じます。

是非、分からないことが分かるようになる柔軟な学びで、日々の貿易実務の仕事を進化させていきましょう。

貿易実務の流れ (輸出)


コレポン

海外企業からの引き合いに対し、見積作成に必要な要件詳細ヒアリングを英語(メール)で行います。


見積書作成

見積書作成に必要な情報を集めます。

例えば、国際輸送会社や国際宅急便会社、梱包会社から、輸送費や輸出梱包費の見積を取得します。見積もりを取る際におよそのスケジュール感も把握しておきます。

海外向け価格、海外輸送方法、取引通貨、支払条件、納期などを決め、見積書に記載し提出します。


受注・契約

受注に際し、契約書が必要な海外取引の場合は、双方が契約書にサインをして契約を締結させます。

前金で100%の金額の入金があれば、契約書は特に交わさないという輸出取引もあり、その場合は契約書無しで進めますが、トラブルを回避する為、入念な見積書作成が必須です。

契約書は引き合いがあってから準備するのではなく、また相手企業のひながたにサインするのではなく、自社ひながたを事前に準備して方が安心です。


注文請書作成

海外顧客からの発注書に対し、注文請書(Order Confirmation)を返送します。前受金状況や輸送方法、出荷予定日等を明記しておきます。


輸出手配

国際輸送会社へ、出荷予定時期を連絡し、船会社・航空会社のスペース予約をお願いします。本船や貨物機の便数は週2便、月何本等決まっており、あるいはコロナ禍以降大幅減便もあり、早めにスケジュールを確認しておきます。輸出梱包、保険付保も同時に手配します。(国際輸送会社がこれらの手配を一括で行うこともあります。)


輸出書類作成

輸出通関に必要なインボイス、パッキングリストを作成しておき、出荷時に国際輸送会社に渡します。L/C取引の場合はこれに加え、指定される英文書類(Application Form、Bill of Exchange、Certification)も作成し銀行へ提出します。

海外顧客へも輸出書類を送ります。オリジナルを送る必要がある場合は国際宅急便で、コピーで良い場合はメール送付します。


代金回収

前払いの場合はすでに代金回収済です。

後払いの場合は、支払期限内に着金しているか確認し、未払いの場合は督促の連絡を英語で入れます。

後払い未払金の回収率は高くなく、初回オーダー等、海外顧客との信頼関係が未構築の段階では、出来る限り前金で代金回収するようにした方が良いでしょう。


フォロー

貨物が着かない、現地輸入通関に必要な書類が足りない、(銀行での)支払いに必要な書類が足りない、梱包に不備があり破損している、等の問い合わせがあった場合、適切にフォローをします。

貿易実務の流れ (輸入)


コレポン

日本企業(お客様)からの注文に際し、海外の仕入先へ最新価格、在庫と納期確認を行います。(都度輸入せず、自社倉庫等に在庫がある場合はこの工程は省きます。)


見積書作成

もし、前回から価格が変わっている場合は再度見積書を作成し、最新価格で発注して頂くよう日本企業(お客様)へ連絡します。


発注・契約

日本企業(お客様)からの受注に際し、契約書が必要な取引の場合は、双方が契約書にサインをして契約を締結させます。

(海外の仕入れ先への発注に際しても、都度、契約書が必要な場合、契約を締結します。)

輸入取引でトラブルになり易い、品質管理、納期については入念な事前打ち合わせが必要です。

契約書は引き合いがあってから準備するのではなく、また相手企業のひながたにサインするのではなく、自社ひながたを事前に準備して方が安心です。


発注書作成

海外の仕入れ先へ発注書(Purchase Order)を送ります。発注する側としては検収後品質確認の上100%後払いを希望しますが、先方がそれを望まない場合は交渉が必要です。


注文請書作成

日本企業(お客様)へ注文請書を返送します。最新情報(価格、納期)を明記しておきます。


輸入手配

海外の仕入れ先から出荷連絡が入るか、船会社や航空会社から貨物の到着連絡が入ります。提携しているフォワーダー(乙仲業者)がいる場合はその会社名を伝え輸入通関を進めます。特にいない場合は、指定フォワーダーがいないことを伝え、通関手続きを進めてもらいます。大型貨物の場合は社内の荷受け準備を整えます。


輸入貨物検品

海外からの貨物については到着後速やかに検品し、梱包の破損、商品自体のダメージ、中抜きや欠損がないかを確認します。

不備があった場合は、それが海外の仕入れ先の輸出梱包品質が原因なのか、国際輸送会社の取扱が原因なのか、責任範囲を明確にするために、下記の写真を撮影しておくとスムースでしょう。

・出荷前の輸出梱包写真、梱包された商品の写真、商品ごとのナンバリング写真

・到着開梱前の梱包写真

・到着開梱後の梱包写真、開梱後の商品の写真

貨物到着後検品せず、倉庫に置きっぱなしにするなど、日数経過後の貨物ダメージクレームは貨物保険の対象外となる可能性があります。


支払い

前払いの場合はすでに支払い済です。後払いの場合は、支払い期限までに送金し、海外の仕入れ先に送金額と送金日の連絡をしておきます。


フォロー

日本企業(お客様)へ納品後商品がすぐに使われず、数カ月たって実際の商品の使用開始後からクレームが入ることもあります。その場合の保証や返品、交換条件についての事前確認、あるいは海外の仕入れ先との製造ライン確認、ロット番号管理等、継続的なフォローも必要となるでしょう。

貿易実務に必要な書類

輸出者が作成するもの

Sales Contract

Quotation

Invoice

Packing List

Application Form

Bill of Exchange

Certification

船会社・航空会社が発行するもの

Bill of Lading (B/L)

Air Waybill (AWB)

銀行が発行するもの

Letter of Credit (L/C)

保険会社が発行するもの

Insurance Policy

貿易実務でお世話になる協力会社

国際輸送会社

商船三井ロジスティクス

郵船ロジスティクス

セイノーロジスティクス

阪急阪神エクスプレス

近鉄エクスプレス

日本通運

他にも、一般社団法人 国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)の正会員リスト
国際輸送会社を探すことは可能です。

国際宅急便会社

UPS

DHL

FEDEX

EMS(日本郵便)

海上保険会社

東京海上日動火災保険

三井住友海上火災保険

貿易保険会社

日本貿易保険

貿易保険会社

日本貿易保険

海外PL保険会社

東京海上日動火災保険株式会社

三井住友海上火災保険株式会社

損害保険ジャパン株式会社

輸出梱包会社

第三者認証機関

銀行

等々。

貿易実務は、さまざまな会社の協力のもと支えられています。

貿易実務の難しいところはどこですか?

貿易実務の難しいところは、イレギュラーなことが起こった時に明確な答えがなくとも、誰かが(多くの場合みなさまが)リスクを取って何か行動を起こさねば、前に進まないことがある、ところです。

例えば、現地で流通させるために必要な書類を完備していたのに、別の書類を他機関による発行で提出せよと現地から言われる。

そのような発行実績が他機関では無いにも関わらず。
→ 仕方がないので現地と交渉しつつ、指定された他機関にも依頼を進める。


例えば、海外企業がL/C(Letter of Credit)を開設してきても、相手国の信用リスクが高いことを理由に日本側の銀行から、万が一買い取れなかった場合、支払いができない可能性について了承する、という書面に事前にサインを求められる。

支払い保証があるため手数料を払ってL/C取引をしているにも関わらず。
→ 会社と銀行の力関係上、他の選択が無ければサインをする。


その他、貿易取引ですので、すでに貨物が届いているのに貿易書類が未着であるとか、倉庫搬入を終えているのに通関書類に不備が見つかったりと、待ったなしの場合もあり、誰がどこまでのリスクを負うのか、負えるのか?を踏まえながら、

実務経験者の経験則による最適解で都度、判断していくことが貿易実務の難しいところ、そしてやりがいのあるところでしょう。

貿易実務のクレームを防ぐにはどうすればよいですか? 

海外企業との取引で難しいことの1つに代金回収があります。

支払い条件を常時100%銀行送金前払いに設定出来れば良いのですが、顧客との力関係でそれが叶わないこともあります。

ただし少なくとも、最初に自社リスクを減らした正しい見積書の提示と、適切なコレポン(コレスポンデンス、海外企業との商業通信、メールのやりとり)で取引をスタート出来れば、

注文間違い、輸送梱包不備、倉庫代加算、追加検査費用、関税支払い拒否、ひいては客先からの返品や交換、などの憂き目にあうリスクは大きく減らせるでしょう。

国内取引と異なり貿易取引では、ちょっとしたミスでも手間=コストがかかります。

例えば、shipping mark(段ボールの側面にあるMade in Japanなどの記載)の段ボール個数番号を1つ打ち間違え、書類と一致しない場合などでも、無償で修正できるタイミングは限られています。

すでに飛行機や船に商品を載せようとしているタイミングでは修正は間に合わないため、その便での出荷はキャンセルとなります。それに伴い、スケジュールの変更、markの貼り替え/訂正、船積書類の訂正などが必要となって、手数料=人件費が発生します。

納期に間に合わなければ顧客からは受け取り拒否や減額要求もあるかもしれません。

貿易体制が未構築のままでは、予期せぬミスやクレームで追加の手間や費用がかかり、輸出は思ったより利益が少ない、ということも大いにあり得るでしょう。

輸出で得られる利益を安定させるには、貿易の全体の流れ、例えば海外から引き合いが入るところから商品を届けるまでの流れを学び、貿易事務で起こり得る“想定外”を予め想定しておくことが重要でしょう。

貿易実務の醍醐味は何ですか? 

トラブルを解決した時、かつ自社に損失が無かった時には大きな醍醐味を味わえます。しかし、もっとじんわり胸に灯る醍醐味もあります。

海外企業から引き合いが来て、見積もりを出し、注文が入り、代金回収し、商品を届け、現地での使用に際して、“期待通り素晴らしかった、また買いたい”、と高評価を得た時、
またこれら一連の流れをつつがなく終えた時、が、もしかすると一番の醍醐味を感じる瞬間かもしれません。

海外営業と貿易実務の担当者が別々の場合など、貿易実務担当者は、一度も会ったことが無い海外企業と通信だけで何年も取引していることが珍しくありません。

わざわざ日本から輸入して購入していただけるのは、会社としての信頼と商品やサービスの優位性があるからこそですが、

本当は貿易実務担当者の、ミスの無い、先回りした、誠実なコレポン(コレスポンデンス、Correspondence)が更なる付加価値を与えている、という場合も多く、

決して目立ちませんが、陰の立役者として果たす役割は、本当に大きいと言えるでしょう。

貿易実務、ガゼンやる気が出てきました!

自分が作った見積書に対して、英文の注文書が届くのは格別です。

でも、私、英語が苦手なんですよねー。

いいですね!

苦手ということは、伸びしろが大きいということ。話せたときの感動が大きいということです。

ということで早速、ビジネス英語についても学んでいきましょう。

>02-2 ビジネス英語の対応はできますか

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