展示会で声をかけられたら対応したい。
海外顧客からの問い合わせに、自分の言葉で返事をしたい。
そう思ったとき、多くの人が最初に不安になるのが英語です。
「英語が苦手だから海外進出は無理かもしれない」
そう感じる方も少なくありません。
しかし実際には、海外進出で成果を出している中小企業の担当者全員が、留学経験者や英語の専門家というわけではありません。
大切なのは、ネイティブのように話すことではなく、自社のことを自分の言葉で伝えられることです。
会社のこと。
商品のこと。
そして自分自身のこと。
この3つを英語で説明できるようになるだけでも、海外企業との会話は大きく変わります。
ここでは、英語が得意ではない方でも海外企業とコミュニケーションを取れるようになるために、実際の商談や展示会で役立つ考え方とコツを整理していきます。


英語ができないと海外進出はできないのか
結論から言えば、できません。
ただし、それは英語が話せないからではありません。
海外企業と意思疎通ができないからです。
実際には、英語が流暢でなくても海外展開に成功している中小企業は数多く存在します。
一方で、TOEIC高得点者や留学経験者がいても、海外企業との取引がうまく進まないケースもあります。
その違いは何でしょうか。
それは、自社のことを英語で説明できるかどうかではありません。
相手が知りたいタイミングで、相手が知りたい情報として「自社のことを」伝えられるかどうかです。
たとえ商品が優れていても、
「どんな会社なのか」
「なぜこの商品を作ったのか」
「競合との違いは何か」
が相手が理解できる文脈で伝えられなければ、相手は安心して取引できません。
海外企業が知りたいのは、英語力そのものではなく、結局その会社が信頼できるかどうかです。
だからこそ最初に目指すべきなのは、ネイティブのような英語ではありません。
自社のことを、自分の言葉で、相手に負担をかけずに、理解してもらえる英語です。
英語学習というと単語や文法から始めたくなりますが、海外進出の現場では、その前に整理しておくべきことがあります。
まずは、「会社」「商品」「自分自身」について話せるようになることです。
英語力だけでなく、海外の相手に自社の事業内容をどう伝えるかも整理しておくと、商談の準備が進めやすくなります。
→ グローバル展開は英語でどう説明する?海外企業に伝わる事業戦略の伝え方【例文付き】
ビジネス英語を話せるようになるには?
ビジネス英語を話せるようになる近道は、実はとてもシンプルです。
まずは3つのこと――
「会社」
「商品」
「自分自身」
について英語で話せるようになることです。
国内でもこの3つは商談や営業の鉄板ネタです。
つまり、英語力そのものよりも、「何を伝えるか」の方が最初は重要なのです。
また、海外企業との初期の商談で深く聞かれる内容も、ほぼこの3つの範囲に収まります。
それぞれ、次のようなテーマを整理してみましょう。
会社のこと:
- 社長のユニークさ
- 独特の企業理念
- 工場や社員の魅力
- 入社して驚いたこと
- 業界動向
- 競合との違い
- 日本独自の市場状況と海外との比較(予想)
- 海外展開の進捗
- メディアや第三者からの評判
商品のこと:
- 売れ始めたきっかけと成功の理由
- リピーダーの特徴とその理由
- トラブルと解決エピソード(話せる範囲で)
- 新商品新サービスの開発秘話(話せる範囲で)
自分のこと:
- この仕事を選んだきっかけ
- 楽しかったこと、つらかったこと
- パンデミックの時に考えたこと
- 日本で誇りに思うこと
- 将来の夢、ライフワーク、家族構成、休日の過ごし方
- ボランティアや社会貢献など
これらを、まずは日本語でA4用紙1枚(両面程度)に書き出してみましょう。
そのあと、プロの翻訳者に依頼して英訳し、何度も音読しながら自分の言葉として身につけていくことをおすすめします。
ポイントは、無料翻訳(だけ)で済ませないこと。
翻訳ミスやニュアンスのズレは、時に信頼を損なう原因になります。
せっかく時間をかけて覚えた英語が「残念英語」にならないよう、この部分だけはプロ品質を選んでほしいところです。
また、オリジナルの英作文帳や「自分用辞書」を作っておくと、海外営業の場でのお守りになります。
伝えたい内容を可視化するだけでも、不思議と自信が生まれるものです。
仮に想定外の話題を振られたとしても大丈夫です。
常に、
「会社」「商品」「自分」
のどれかに話を戻す意識を持ちましょう。
これだけで、相手に飲まれない商談の軸が自然とできあがります。
交渉、プレゼンテーション、Q&A――
あらゆるシーンで活かせる、実戦型の話術です。
実際の商談で何を準備し、どのように話を進めるかを確認したい方は、こちらも参考になります。
→ 英語でのBtoB商談の進め方|準備から交渉・フォローまで解説
英語力より「会話をつなぐ力」
リアクションは2〜3倍大きく返す
海外顧客と良い関係を築くには、ただ英語を話すだけでは不十分です。
“会話をつなげる力”=反応力が、実は最も重要なスキルの一つです。
相手の話には、リアクションを2〜3倍豊かに返しましょう。
うなずく・驚く・笑う・共感する…。
その表情と声の反応があるだけで、相手は安心し、会話が滑らかに進みます。
ただし、わかっていないのに分かっているフリをするのは絶対にNGです、理由は後述します。
丸暗記は初心者の最強の武器
初心者こそ、先述の丸暗記トーク”を活用して、自分から話題をリードするのが効果的です。
背景知識のないまま外国語で応対するのは、経験者でも難しいものです。
だからこそ、話せる内容は自分から提示し、話の主導権を渡さないのが賢い戦略です。
相手が話を逸らしても、うまく“暗記ネタ”に球を戻して、会話をコントロールしていきましょう。
英語が聞き取れるようになる瞬間
丸暗記に慣れてきたら、「相手の話を予想する」力を鍛えるステップへ進みます。
英語で成果を上げている中小企業の方々も、多くは留学や駐在経験などなく、必要に迫られて独学でやってきたという、ビジネスパーソンたちです。
そういった方の多くも英語環境に慣れてくると、不思議と”ある壁”を超える瞬間が訪れます。
相手が話し始めた数語だけで、着地点の予想ができるようになり、自分の返答も話の途中から準備できるようになってくるのです。
ビジネスの会話で使われるテーマは、実際かなり限られていて、結局は「会社」「商品」「自分」の3つに集約されるからです。
この3つを軸に会話の“型”をつかんでいけば、思ったより早く慣れる実感が得られるはずです。
話の流れが読めるようになると、集中すべき部分の選別も上手くなります。
たとえば相手の話すスピードが早くても、知っている話は流して、知らない新しい話題だけは集中して聞き取る。
気を張る時間が短くなれば、余裕が生まれ、結果的に聞き取れる内容が増えていきます。
分からなくなったら即フリーズ
とはいえ、最初は何度も“迷子”になります。
そんな時は、勇気を持ってフリーズしてください。
分からないまま相槌だけ続けるのは、かえって話をややこしくします。
こちらのリアクションがピタッと止まれば、相手も「どうした?」と気づいてくれます。
そのタイミングで、聞き取れた単語と関連しそうな単語を、やや困った顔でゆっくり発音してみましょう。
たとえば「ターキー」と聞こえたなら…。
「Turkey(トルコ)? Ankara(首都のアンカラ)?」
「Turkey(七面鳥)? Bird(鳥)?」
そんなふうに聞き返せば、相手は「No, no, Turn-key Contract(一括請負契約/フルターンキー契約)」と補足してくれるかもしれません。
自分からヒントを出すこと、がポイントです。
これが「すみません、分かりません」だけで済ませない、ピンチ回避の最重要点なのです。
希望的観測で「そのうち分かるかも」はまず通用しません。
分からないと思ったら即・フリーズ、即・軌道修正が鉄則です。
「もう一度お願いします」が危険な理由
聞き取りができずについやってしまうことに、
「すみません、もう1回言って下さい」
を英語で言ってしまうことがあります。
即座に相手は、少し前に話を戻しつつも、
「同じスピード」で
「同じ聞き取れない単語」を
「親切心から長めに説明」しなおそうとします。しかし、
”同じ単語が出てくる限り”、
その説明を聞いてもたぶんまた聞き取れないのです。
このピンチを切り抜けるためにはこちらから、
『何が聞き取れて、何がわからないか』
のヒントを出す必要があります。
分からなくなっても聞き流せばそのうち分かるようになるかも、、、と、希望的観測は一切持たず
(途中から分かるようには残念ですが、なりません・・・)、
すぐに白旗宣言、すぐに軌道修正が、初心者の一番大切な心得となります。
会話がつながると世界が変わる
少しずつでも会話がつながりはじめると、発音やイントネーション、ボキャブラリーを増やすことへの地道な努力も最初の頃より苦ではなくなります。
もしかすると自分は英語が話せるようになるのかも・・?
すごいかも?
できるかも!?
とひそかな期待と自信が芽生えていきます。
そうなるともちろんですが、海外進出自体も、やり取りがスムーズにスマートになるため、良い方向に回り始めます。
ですので、初心者であれば、
まず丸暗記戦術を用いて、
分からなくなる寸でのところで聞き返し、
軌道修正をし、
会話を何とかつなげること、
に全意識を集中させることがビジネス英語上達への近道なのです。
海外向けのプレゼンに不安がある場合は、話し方だけでなく構成や準備の考え方もあわせて確認しておきましょう。
→ 英語プレゼンが怖くなくなる!中小企業のためのビジネス攻略法
海外企業に信頼される話し方とは
どんなに拙い英語でも、その商品やサービスに対する自分の言葉、自分の想いで語れば、多くの海外顧客はしっかりと耳を傾けてくれます。
なぜなら、海外企業が本当に知りたいのは、あなたの英語力ではなく、「この会社は信頼できるか」だからです。
ただし、それもある程度関係ができた相手に限られます。
新規開拓の場面では、相手がブロークンイングリッシュに我慢してくれることはほとんどありません。
伝わらないことが、そのまま「この人とはビジネスできないかもしれない」につながることもあります。
ですから、海外進出を始めて1〜2年以内には、英検2級・TOEIC700点程度をひとつの目安として、義務教育レベルの英語でもきちんと話せる状態を目指しましょう。
よく見かけるのが、ネイティブらしく聞こえたい一心で、
「Well, um, I mean, actually, you know…」
と filler words(つなぎ言葉)を多用してしまうケースです。
これは日本語で言えば、
「えーと」
「ていうか」
「あのー」
「マジで」
のようなものです。
スピーチコンテストでは減点対象になることもあり、ビジネスの場では不要かつ不自然に聞こえる場合があります。
もうひとつ注意したいのが、海外留学経験者が学生時代の英語のまま商談に臨んでしまうケースです。
たとえば、見た目は立派なビジネスパーソンなのに、話し始めると「ヤバい」「マジ」「イケてる」といった学生ノリが混じる人がいます。
英語でも同じです。
カジュアルすぎる表現や学生っぽい言葉づかいは、「この人に任せて大丈夫だろうか」という不安につながることがあります。
ビジネス英語とは、正しい英語を話すことではありません。
海外企業に安心してもらえる話し方を身につけることです。
英語圏でも、「学生の会話」と「プロ同士の会話」では使う言葉も空気感も異なります。
語彙や文法だけでなく、相手に与える印象にも意識を向けてみましょう。
英語表現そのものより、日本語の感覚で伝えてしまうことが誤解につながる場合もあります。
→ 海外メールで誤解される日本語10選|ヒアリング・すり合わせが通じない理由
まずは、会社のこと・商品のこと・自分のことですね、早速まとめてみます!
I can do it!
Great!
That sounds exciting.
You will be surprised how much confidence comes from being able to explain your company in English.
そして、英語が話せれば異文化適応の半分以上の力がすでに身についていると言ってもよいでしょう。
異文化適応力?
まだ半分強なんですか?
(その気になってきたのに、まだあるんだ。。)
ええ、まだ半分強なのです。
なぜなら――日本の常識は、世界の非常識。
そう言われるほど、国や地域によってビジネス習慣や価値観は大きく異なるからです。
英語が通じても、考え方や仕事の進め方が違えば、商談やプロジェクトは思うように進みません。
次は異文化への適応について詳しく見ていきましょう。