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海外進出の可能性を検証する

海外進出のリスク管理は考えていますか

公開日時:2020年08月04日

更新日時:2026年06月16日

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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海外進出には、さまざまなリスクが存在します。

代金未回収、契約トラブル、模倣品、情報漏えい、従業員管理、政治や為替の変動など、その内容は多岐にわたります。

「PL保険をかけたから大丈夫」「契約書を作ったから安心」——そう考えていませんか?

しかし海外では、日本の常識や制度が通用しない場面も少なくありません。

そして、多くのリスクの背景には「人」が存在します。

重要なのは、リスクをゼロにすることではなく、想定されるリスクを理解し、管理しながら事業を進めることです。
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海外進出はリスクを管理しながら進めるもの

海外進出を成功させるためには、リスクとの向き合い方が重要になります。

重要なのは、リスクをゼロにすることではなく、どのようなリスクが存在するのかを理解し、事前に対策を考えながら進めることです。

日本企業が海外進出中にリスクマネジメントを怠ると、小さなミスが事業全体を揺るがすこともあります。

実際に、2016年の独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査では、海外進出済みの中小企業の82.4%が、その必要性を強く感じながらも、明確なリスクマネジメント方針を持っていないとされています。海外リスクマネジメント実態調査 2016年2月 独立行政法人中小企業基盤整備機構

一方で、17.6%の企業は何らかの形でリスクマネジメントの方針や仕組みを整備していました。

また、同じリスクであっても、進出先の国や事業形態によって影響の大きさは変わります。

そのため海外進出では、「リスクがあるからやらない」のではなく、「どこまでを許容し、どこからを回避するのか」を判断することが重要になります。

まずは、海外進出でどのようなリスクが発生するのかを確認してみましょう。

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海外進出に潜むさまざまなリスク

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海外進出のリスクと聞くと、政治情勢や為替変動などのカントリーリスクを思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし実際には、それだけではありません。

輸出や海外営業の日常業務の中にも、現地法人や工場運営の中にも、多くのリスクが存在します。

まずは、海外進出で発生しやすい代表的なリスクを見てみましょう。

輸出・海外取引で発生するリスク

海外進出のリスクというと、政治情勢や為替変動などの大きな問題を想像しがちです。

しかし実際には、多くの中小企業が最初に直面するのは、日々の業務の中で発生するオペレーション上のトラブルです。

メールでの商談、見積書の作成、受注、生産、出荷、代金回収。

輸出ビジネスでは、こうした一連の流れの中に数多くのリスクが潜んでいます。

例えば、以下のようなケースです:

  • 技術情報を提供したはずが、そのまま模倣されて自社よりも先に販売された。
  • 支払い条件を合意していたのに、輸出後に突然音信不通になり、代金が未回収のまま。
  • 見積内容の翻訳ミスで、数量や仕様を誤認されたまま発注され、返品対応に追われる。
  • 梱包ミスにより商品が破損。保険申請を行ったが「不適切な梱包」として補償されなかった。
  • 輸入通関で必要な現地書類の不備により、倉庫で荷物が止まり、結果的に商品劣化で廃棄処分に。
  • 商品画像や納入実績を提出したところ、それが現地企業のサイトで無断転載されていた。
  • 商品出荷前は頻繁に連絡があったが、出荷後は音信不通になり、代金が未回収に。
  • 海外の商標登録制度に不慣れだったため、現地企業に商標を先に取られ、正規品であるにもかかわらず販売できなかった。

これらのリスクは、業務を「いつも通りに」進めただけでは回避できないタイプの問題です。

日本国内では問題にならなかった手順や判断が、海外では大きな損失につながることもあります。

そのため海外取引では、現地任せにする部分と自社で管理すべき部分を整理し、事前にトラブルを想定しながら進めることが重要です。

海外展開では、進め方そのものの客観的な確認を、第三者と一緒に整理しておくと安心です。

→ 海外進出の相談前にやるべき準備7選|支援機関・コンサルを動かすチェックリスト

海外投資で発生するリスク

海外に工場や販売会社を設立する場合、輸出とは異なるリスクが発生します。

特に投資型の海外進出では、政治、法律、行政手続き、雇用、文化など、自社ではコントロールできない要因の影響を大きく受けます。

また、日本では当たり前に機能している制度や慣習が存在しないこともあり、想定外の問題が事業そのものを揺るがすこともあります。

例えば、次のようなケースです:

  • 現地行政の手続き遅延で開業が半年遅れた。にも関わらず、賃料は契約通り発生していた。
  • 土地契約の権利関係が不明瞭で、進出後に別の所有者から訴訟を起こされた。
  • 現地で採用した従業員が早期に退職。採用・教育に掛けたコストが回収できなかった。
  • 精霊信仰を軽視した社内通達が文化的反感を招き、祝祭後に社員が誰も戻らなかった。
  • 当局の環境規制の強化により、使用していた素材が突然輸入禁止となり、全製品の見直しが必要になった。
  • 軽視していた治安の問題で、幹部社員が強盗被害に遭い、現地業務の継続が困難になった。
  • 海外コンサルタントの言葉をうのみにして準備を進めたが、撤退時にようやく多くの不備に気づいた。
  • 日本語の微妙なニュアンスが通じず、現地スタッフとの認識ズレが大きな問題を引き起こした。

これらの問題は、担当者の能力不足や準備不足だけで発生するものではありません。

進出先の政治制度、法制度、経済環境、文化的背景など、その国特有の事情が大きく影響しています。

このような国そのものに起因するリスクは、一般的に「カントリーリスク」と呼ばれます。

クーデターや政変、急激なインフレ、為替下落、法改正などは分かりやすい例ですが、行政手続きの遅延や契約慣行の違い、採用・人材定着の難しさなども、実際には事業へ大きな影響を与えます。

海外投資では、「日本では普通だったことが普通ではない」という前提で準備を進めることが重要です。

また、こうした個別のトラブルだけでなく、その背景にある国特有の制度や政治・経済環境にも注意が必要です。

特に以下のようなカントリーリスクは、業種や国を問わず検討しておきたい項目です。

  • 外資規制
  • 司法制度の不公正
  • 政権による企業経営への介入
  • 保護主義による法改正
  • 事業接収
  • 現地通貨建による減価
  • 模倣品の氾濫
  • 所得格差の増大
  • 為替の下落
  • インフレ進行

海外投資では、これらのリスクを完全に排除することはできません。

重要なのは、どのリスクが自社にとって致命的なのかを見極め、日本本社と現地拠点が連携して対応策を準備しておくことです。

また、進出前には現地の規制や取引条件を十分に調査し、事業計画へ反映しておく必要があります。

国ごとの規制や取引条件を見落とすと、販売前の段階で思わぬ制限に直面することがあります。

現地での輸出入規制の基本もあわせて確認しておきましょう。

→ 海外の輸出入の規制について知っていますか

人的・サイバーセキュリティリスク

海外進出では、政治や法律のリスクだけでなく、人や情報に関するリスクにも注意が必要です。

現地従業員による横領や不正、パートナー企業による情報漏えい、担当者の突然の退職などは、海外企業との取引や海外拠点の運営において実際によく発生しています。

また近年は、サイバーセキュリティ対策の重要性も高まっています。

海外とのやり取りが増えるほど、メール、クラウドサービス、オンライン会議システムなどを利用する機会も増えます。その結果、不正アクセスやランサムウェア、情報漏えいなどのリスクにも直面するようになります。

例えば、次のようなケースです:

  • 海外拠点での管理体制が甘く、従業員による備品の横領や水増し請求が常態化していた。
  • パートナー企業のスタッフにより、営業機密が他社へ流出。
  • 社内システムに不正アクセスがあり、輸出先や価格条件などのデータが抜き取られた。
  • 無意識に使用したフリーWi-Fiがハッキングの原因となり、社内ネットワークにウイルスが侵入した。

こうした問題は、制度や契約だけで防げるものではありません。

管理体制の不備や教育不足、コミュニケーション不足など、人の行動が原因となって発生することも少なくありません。

海外進出では、仕組みを整えるだけでなく、それを運用する人に目を向けることも重要です。

海外進出のリスクは、進出前の調査段階でどこまで確認できているかによって、その後の判断精度が大きく変わります。

→ 海外進出前にF/S現地調査はしましたか

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リスクの多くは「人」から生まれる

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海外進出のリスクというと、為替変動や法規制、政情不安などを思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし実際には、多くのリスクの背景に「人」が存在しています。

契約を守るのも、情報を漏えいするのも、行政手続きを進めるのも、顧客や従業員、取引先との信頼関係を築くのも「人」です。

そのため海外進出では、制度や契約だけでなく、その国で働く人々の価値観や行動原理を理解することも重要になります。

海外で発生するトラブルの多くは、必ずしも悪意によるものとは限りません。

日本では当たり前だと思っていた考え方や行動が、相手にとっては当たり前ではないこともあります。

リスク管理とは、危険を排除することではなく、「なぜそのリスクが起きるのか」を理解することから始まるのです。

海外では日本の常識が通用しないことがある

海外では、日本企業の「当たり前」が通用しないことがあります。

例えば、日本では合理的で正しいと考えられる判断であっても、現地では文化や宗教、歴史的背景から全く異なる受け止め方をされることがあります。

実際に海外では、宗教行事や地域の慣習を軽視したことで従業員の反発を招いたり、現地スタッフとの信頼関係が崩れたことで事業運営に支障をきたしたりする事例も少なくありません。

また、日本人から見ると非合理的に思える行動であっても、相手には相手なりの理由や価値観があります。

そのため海外進出では、自分たちの常識だけで判断するのではなく、「なぜ相手はそう考えるのか」という視点を持つことが重要です。

例えば、日本とは異なり海外の国々では、

・国のセーフティネットが十分ではない
・所得格差が大きい
・社会全体の競争が激しい
・宗教や家族との結びつきが強い
・人を簡単には信用しない文化がある

といった環境の中で生活している人も少なくありません。

そのため、

・会社より家族や宗教を優先する
・自分の権利や利益を積極的に主張する
・口約束より契約や証拠を重視する
・理由が分からない指示には従わない
・リスクを感じたらまず自分を守ろうとする

といった行動も、ごく自然なものとして受け入れられています。

また、

・社会のルールを守ることで得られる自分自身のメリットが少ない、あるいは存在しない
・落とし物を届ける仕組みがなく、届けたとしても逆に盗みを疑われるリスクがある
・二重三重に防御し、自分の持ち分を守る自助努力は当たり前である
・理由もなく人を信用しない。自分が簡単に信用されなくても驚かない
・共同体の内側の人には尽くすが、外側の人に同じ義理や責任を期待しない

といった価値観が根付いている地域もあります。

さらに、

・残業や休日出勤をしてまで仕事を優先するのは理解できない
・会社と家族や宗教を同列に考えることはあり得ない
・意見があれば主張する。会議で黙って頷くだけでは賛成なのか反対なのか分からない
・背景説明のない依頼や指示は、説明責任を果たしていないと受け取られることがある
・今日の正解が明日も正解とは限らない、物事は常に変わる

といった考え方も珍しくありません。

日本人から見ると驚くような考え方かもしれません。しかし、その国の歴史、宗教、社会制度、教育環境、経済状況を踏まえると、必ずしも不合理な考え方とは言い切れません。

海外進出で発生するリスクの多くは、こうした価値観や行動原理の違いから生まれています。

そのため海外進出では、「日本の常識では理解できない」と切り捨てるのではなく、「なぜ相手はそう考えるのか」を理解しようとする姿勢が重要です。

リスク管理とは、制度や契約を整えることだけではありません。相手の立場や価値観を理解しようとすることも、海外進出における重要なリスク対策の一つなのです。

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リスクに備える仕組みを作ろう

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海外進出では、すべてのリスクを事前に予測し、回避することはできません。

しかし、どのようなリスクが存在するのかを理解し、発生した場合の対応方針をあらかじめ決めておくことで、被害を最小限に抑えることは可能です。

重要なのは、リスクを恐れて行動しないことではなく、想定できるリスクに備えながら事業を進めることです。

また、進出先の国や事業内容によって、優先的に管理すべきリスクも変わります。

まずは、自社にとって重要なリスクを把握し、必要な準備を進めていきましょう。

海外進出リスクを知るための情報源

海外進出のリスクは、事前の情報収集によってある程度把握することができます。

特に初めて進出する国や地域では、自社の経験だけで判断せず、第三者が公開している情報も積極的に活用しましょう。

例えば、以下のような情報源があります。

・JETROや中小企業基盤整備機構などの公的支援機関が公開するレポートや事例集
・外務省が公開する海外安全情報
・現地商工会議所や業界団体の情報
・先行企業の成功事例や失敗事例
・進出国の法規制や輸出入規制に関する一次情報

また、実際に現地で事業を行っている企業や専門家から話を聞くことで、公開情報だけでは分からないリスクが見えてくることもあります。

重要なのは、情報を集めること自体ではなく、「自社にとって何がリスクになるのか」という視点で情報を整理することです。

海外進出リスク対応準備のあり方

海外進出のリスク対応で重要なのは、問題が発生してから考えるのではなく、発生する前に対応方針を決めておくことです。

特に海外では、日本国内よりも問題の発見や初動対応に時間がかかることがあります。そのため、事前準備の有無が被害の大きさを左右します。

例えば、

・自社として許容できるリスクの範囲を明確にする
・有事の際の連絡体制と責任者を決めておく
・契約や支払条件の確認ルールを整備する
・情報管理やサイバーセキュリティのルールを整備する
・現地パートナーや従業員との情報共有方法を決めておく
・宗教や文化に関する最低限の知識を社内で共有する

といった準備が考えられます。

また、海外進出では現地の状況が変化することも珍しくありません。

そのため、一度決めたルールを固定化するのではなく、定期的に見直しながら運用していくことも重要です。

リスク管理とは、トラブルを完全になくすことではなく、問題が発生しても事業を継続できる状態を作ることなのです。

海外進出にはリスクもありますが、メリットと注意点を整理したうえで段階的に進めれば、中小企業でも現実的に取り組むことができます。

→ なぜ今、中小企業は海外進出すべき?メリット・リスクと失敗しない進め方

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知らないというのは怖いものですね。

しっかりと海外進出のリスクに備え、準備しようと思います。

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いい心掛けです。

特に、サイバーセキュリティや人的リスクは見落とされがちですが、今後ますます重要になります。

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でも…、完璧に備えるなんて無理じゃないですか?

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リスクを100%防ぐことはできませんが、想定しておくだけで被害を小さくできることはたくさんあります。

備えあれば憂いなし、です。

ほかにも大切なリスク管理として、「知的財産の管理」があります。

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海外での模倣品多いですよね。

でも、どうせ止められないんじゃないですかね?

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そんな弱腰でどうするんですか!!

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海外進出では、守るべきものはしっかり守らなければなりません。

特に知的財産は、一度失うと取り返すのが難しい資産です。

売られた喧嘩のかたはきっちりつけないと・・・・

>01-3 知的財産は管理されていますか?

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・BtoB・BtoC・DtoCなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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