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海外進出のカギは人材にあり|社内担当者と外部支援の正しい組み方

更新 2025年7月16日 公開 2021年11月28日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Five men and women seated in chairs against a wall, only visible from the neck down, each reading documents while waiting to be called

海外進出を進める企業にとって、「人材」は最大の投資先であり、最大の不安要素でもあります。

「海外進出の担当者って、何ができればいいの?」
「語学力は必要?」
「外部コンサルや協力会社には、どこまで頼っていいのか?」

そんな疑問を抱えたまま、見切り発車でプロジェクトが始まってしまうケースは少なくありません。

実際、グローバル展開を成功させている企業の多くは、社内人材の明確な役割定義と、外部パートナーの効果的な活用という“人材マネジメント戦略”を持っています。

本記事では、

  • 社内で海外進出を担う人材に必要な資質
  • 経営層が認識しておくべき人材要件
  • 専門分野ごとに異なる協力会社・外部人材の使い分け
  • 自走を目指すための人材育成の進め方

…など、海外進出における「人的リソース戦略」の実践ポイントをお伝えします。

人的課題に悩む中堅・中小企業にとって、本社と現地法人、社内人材と外部専門家の“適切な連携”は、事業を左右する重要テーマです。

本稿を通して、自社にとって最適な体制のヒントを見つけてください。

海外進出を担う人材の特徴と資質

日本企業が海外進出を進める際、多くの場合、社内の中堅層や若手人材が選抜され、海外事業の担当者に任命されます。

人事部門による適切な人選が、グローバル展開の初期成功を左右するのです。

この海外担当者に求められる資質は、「新たな挑戦を歓迎し、自ら行動できる姿勢」を持っていること。

いわゆるゼロから構築できる人です。

以下のようなタイプが該当します:

  • 未経験領域にも前向きに取り組める(変化を恐れない)
  • 不明点を自ら学び、行動で解決しようとする(柔軟性とビジネススキル)
  • 成果にとらわれずプロセスを楽しめる(失敗を恐れない姿勢)

逆に、次のようなタイプはストレスを感じやすいかもしれません:

  • 結果を重視するあまり、リスクを避けたがる
  • 「好きにやっていいよ」と言われると行動を起こしにくい

(うわぁ…どっちも自分に当てはまるような…)

語学力についてもよく誤解がありますが、ビジネス英語が“上手く話せる”かどうかは、本質ではありません。

重要なのは、コミュニケーションを成立させる力です。

例えば――

あなたが日本企業として海外企業と商談をしたとします。

流暢な日本語を話す現地担当がいたとしても、技術的な内容や仕様の調整になると別の人が対応したり、話が進まなかったり。

一方、多少片言でも、どんな質問にも的確に答え、提案も積極的で、あなたの意図を汲んで動いてくれる担当がいたとしたら――。

後者の人と絶対仕事したいです!

ですよね。つまり、言語の巧拙より「応答力と共感力」が優先されるわけです。

たとえ海外経験があっても、「自ら取り組む姿勢」がなければ、成果にはつながりません。

ゼロから現地で価値をつくる“推進力”こそが、最も有効なスキルなのです。

そのため、海外進出の担当者には以下のような基本素養が不可欠です:

  • 異文化への適応力
  • 貿易実務・海外営業の知識
  • 海外ブランディングとマーケティング理解
  • 語学スキルの向上への取り組み
  • 中長期的な視点でのキャリア構築意識

(頑張ろう、グローバル人材教育…!)

意思決定より難しい判断材料と評価

海外進出では「意思決定そのもの」より、判断材料と評価の質がカギ

海外進出で最も難しいのは、「意思決定」そのものではありません。

むしろ、「どの情報を集め、どう評価するか」という“意思決定の前提”の質が、その後の成果を大きく左右します。

なるほど…。

では、その“判断材料の質”を高めるには、やはり社内でグローバル人材を育てることが重要ですか?

はい、最終的にはそうです。

ただし、初期段階では経験の浅い担当者が、正しい評価や方向づけを独力で行うのは現実的ではありません。

だからこそ、外部の経験者を早期に一時投入する戦略が有効です。

判断の反復構造と“質”の重要性

海外進出では以下のような判断の連続が発生します:

  • ①情報を収集 → ②検討 → ③仮説立案
  • ①取捨選択 → ②比較評価 → ③修正対応
  • ①成功要因を抽出 → ②再評価 → ③実行計画

この「①材料を集める」と「②評価する」の質が低ければ、どんなに優れた意思決定でも効果を発揮できません。

判断材料が不十分だったり、評価基準が曖昧であれば、結果の良し悪しは運任せになってしまいます。

海外事業ではそれが致命傷となります。

経営者が担う“判断材料の質”管理

ここで重要なのが、経営層の関与です。

判断材料の質を担保する体制は、担当者だけでは構築できません。

たとえば:

  • 現地調査のどこに重点を置くか
  • 競合分析や現地法制度の把握レベルをどこまで要求するか
  • 初期段階の仮説に対し、どのようなフィードバックを返すか

これらの方針を決めるのは、経営者自身であり、経営者の“情報感度”がそのまま海外戦略の精度に直結します。

(…ということは、トップの理解と関与が不可欠なんだ…)

はい。

経営者が「どの判断材料が必要か」を共に議論し、評価の枠組みをつくることで、担当者は成長し、組織の学習力も高まります。

経営者が“伴走”する姿勢を持つかどうかが、実は海外展開が途中で止まるか、継続できるかの分岐点になるのです。

このように、海外進出における成功のカギは、「正しい意思決定」よりも、“その前提となる材料と評価の質”をいかに組織として整備できるかにあります。

そしてその責任は、担当者だけでなく、経営者自身にもあるという視点を忘れてはなりません。

協力会社と外部人材の連携が鍵となる理由

なぜ協力会社と外部人材が必要か

海外進出は、社内の担当者やチームだけで完結するものではありません。

とくに初期段階では、法務・通関・物流・認証・金融といった“専門性の高い業務”が発生し、自社内にすべての知見を揃えることは現実的ではないのです。

確かに…。

でも、外部に頼るのはコストも不安ですね。

そのとおりです。

ただし、必要な領域に限って適切な専門パートナーと連携することで、自社の負担を軽減しつつ、リスクを最小化できます。

以下に、海外進出において頻出する協力会社の役割を整理した一覧表があります。

List of cooperating external partners for overseas expansion, categorized by role (e.g., legal, logistics, certification, IT security, translation, banking).

この表は、進出形態や業種・地域にかかわらず、多くの企業が直面する共通課題を踏まえたものです。

協力会社との関係構築は、リスク管理やスピード感のある展開において重要な戦略要素となります。

図表の読み解きと活用のポイント

たとえば弁護士は契約書や規制対応、弁理士は知的財産の管理、ITセキュリティ会社は個人情報や海外クラウド対応、国際輸送会社は物流や保険の対応など、役割は多岐に渡ります。

これらすべてを最初から依頼する必要はありませんが、海外事業の準備段階で「必要になる可能性がある業務」を見通して、協力体制のシナリオを描いておくことが重要です。

(いまのうちに想定しておくと、急な展開でも慌てずに済みそう…)

また、外部の支援会社(コンサルティング、現地調査代行、販売支援など)を活用する際は、「自社でどこまで検討したか」が大切です。

仮説のない段階で依頼しても、得られる成果の評価が困難になります。

外部支援の選定にも“自社理解”が必要

知識がないからこそ支援会社に頼りたいのに、まずは自社で仮説を作るべきってことですか?

はい、まさにそこです。

ゼロから調査・検討した仮説があれば、外部からの助言の価値を的確に判断できます。

逆にそれがないと、依頼した結果を「良かったのかどうかすら分からない」状態になってしまいます。

(わからないことをわからないままにしない…ゼロイチ精神ですね…)

行政の無料相談窓口なども、仮説整理や視点整理には有効です。

いきなり有料支援に頼る前に、社内で方針を言語化してみることが、良いスタートになるでしょう。

協力会社や外部人材の活用は、海外展開の大きな推進力になります。

ただし、使い方を間違えると“外注任せ”になってしまい、かえって停滞を招くこともあります。

だからこそ、まずは「どこまで自社で準備できるか」「何が足りないか」を明確にし、その上で的確なパートナーと連携するという視点が必要です。

そして何より、判断の土台が弱いままでは、どんなに優れた協力会社や支援サービスを利用しても、成果を最大化することは難しいのです。

以上、まとめますと、

海外展開で必要となってくるのは、
・海外事業の社内担当者(グローバル人材教育が必要)
・海外事業を進める上での協力会社は上図の通り
・海外事業の立ち上げ用に、御社側に立っての外部人材初期段階投入
です。

これら以外の外部サービスは、必要となれば都度検討する、で良いでしょう。
但し、その際も必ず1度は自社でゼロイチ・ディスカッションを終えておきましょう。

海外進出用の筋肉がついていなければ、せっかくツール(情報)を手にしても、正しく操作(評価や意思決定)はできません。

つまり自社内の咀嚼力が弱いままでは、いくらグローバル化研修や人材育成セミナーにお金をかけても結局海外進出は前には進みづらいのです。

協力会社・外部人材の費用感と選定の現実

協力会社や外部人材を選ぶ際には、費用感も大きな判断材料となります。

たとえば、海外進出支援コンサルティングの契約費用は、安価なもので月額1万円台から、フルサポート型では月額100万円を超えるケースも。

スポット契約では、3ヶ月拘束で30万円〜500万円までと非常に幅があります。

そんなに違うんですか…!

はい。そして、弁護士や第三者認証機関への依頼も数十万円〜100万円以上となることがあります。

また、デザイン会社やブランディング会社の費用もまちまちです。

最も安価な月額費用は1万円台、最も高額なスポット契約は1案件で500万円超という事例もあります。

(費用の差が大きすぎて判断が難しい…)

だからこそ、「何を依頼したいのか」を明確にすることが肝心です。

その目的がはっきりしていれば、費用に対しての“納得感”も生まれますし、成果への評価基準もブレません。

まずは自社で仮説を立てる──それが、費用対効果の最大化に直結するんです。

外部人材は“補助輪”と考える

ところで、ブランディングやプロダクトデザインって、どこまでを社内で取り組んで、どこからを外部に任せるべきなんでしょうか?

よくある誤解ですが、海外向けのブランディングやデザインは「丸投げするもの」ではありません。

むしろ、社内主導で進めるのが原則です。

実際には、社内7割:外部3割の比率が理想とされています。

外部人材は、社内の方向性や価値を引き出す“補助輪”のような存在。

デザインも同様で、社内にデザイナーがいれば、教育や視野拡大のために外部プロを一定期間だけ投入する

──といった使い方が最も有効です。

まずは自分たちが何をしたいか明確にしてから、なんですね。

はい。

外部に依頼するにしても、「何を伝え、何を引き出したいのか」を自社で把握していないと、結果的に“それっぽいけど本質からズレたアウトプット”が出てきてしまいます。

だからこそ、たとえば

“どんなブランド体験を提供したいか”や
“なぜ海外でこの商品を売るのか”

といった問いに対して、自社である程度の答えを持っていることが、外部人材の活用においても重要になるのです。

海外進出の“自走”に必要な担当者教育とは

色々よく分かってきました。

最初は弊社側に立ってくれる専門家と伴走し、もしかすると途中で様々なサービスも付加的に検討するかもしれないけれど、

ゴールとしては海外事業を自走させるためのグローバル人材教育、仕組み化、内製化、という方向になりそうです。

いいですね。

色々頑張りたいですが、ワタクシは何から頑張れば良いでしょうか。

海外進出を駆動させる“3つのコア能力”

何を内製化できれば自走できるのか、ですが、

大きな枠組みで言えば、以下の3つが揃っていることが望ましいです:

・海外でも新事業展開できる能力
異文化に適応できる能力
・ある程度の英語力

これらが社内に備わっていれば、海外進出は外部任せにせず、自社主導で進められるようになります。

(いきなり中々のビックテーマ、どうしよう・・・)

実現に向けた実装スキルと仕組み

この3つのコア能力を実務に落とし込むには、次のようなスキルセットや社内整備が重要になります:

  • 調査・評価のフレームワークを学ぶ:
    海外市場での判断材料を集め、評価・仮説検証する力。
  • 外部専門家との連携方法を身につける:
    相手に依存せず、的確に活用するための「依頼力」。
  • 社内で海外進出を語れる言葉を揃える:
    共通言語化することでチーム間での意識共有・再現性を持たせる。

これらが整えば、徐々に「属人化」から「組織知」への転換が進みます。

再現性のある“仕組み化”がゴール

でもまだ、自走するためには何かが足りないような気がしています…。

そうですね、実はあと一つ。

海外で事業を展開し、異文化下で得たノウハウを“社内で再現可能な仕組み”に落とし込む必要があります。

たとえば、担当者が一人いれば海外展開できる──ではなく、

その担当者が休暇中でも、異動しても、誰でも海外事業を進められる状態にする。

(ハードルがどんどん上がっていく気しかしない…)

それですね。

再現性のあるグローバル人材育成が重要。

海外進出の自走とは、担当者個人の頑張りではなく、組織の文化や仕組みが回る状態を指すのです。

“教育”は一過性ではなく、文化にする

そして最後に大事なのが、“教育”は研修や一過性の学びではなく、文化として根づかせることです。

海外進出に取り組むたびに、新たな知見が社内に蓄積され、それが横展開される

──そのような状態こそが、企業としての“海外展開力”の証明になります。

海外進出の自走の仕組みが出来上がれば、それは何よりの意義ある投資の成果ですね。

はい。

時間はかかりますが、だからこそ価値がある。

(何だかいっぱい頑張らなくっちゃ)(大丈夫かワタクシ・・・)

(ダイジョウブ!)(だと思う、押忍っ)

海外進出、次に踏み出す一歩は?

海外展開に本気で取り組みたいけれど、最初の一歩が見えづらい

── そんな時こそ、「何を知って」「誰に相談するか」が重要です。

パコロアでは、海外進出に必要な情報・ノウハウを、無料相談でご提供中です。

  • まず何から始める? 
  • 社内にどんな体制が必要? 
  • 協力会社・外部人材はどう選ぶ?

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小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

著者プロフィールを見る

PaccloaQ

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