海外出展で失敗しないためのコツ
海外展示会に初出展した中小企業のみなさまからよく聞くお悩みは下記の通りです。
- 海外の展示会で絶賛されたが、その後思ったほど注文が入らない
- 出展後初受注したが、リピートオーダーがない
- 何回出展すれば売れるようになるのか、目安が分からない
- 良い販売代理店は、何年も出展しつづけなければ見つけられない
- 国の補助金がなければ出展採算はとれない
例えば、このような一連の流れになっていませんか。
- 展示会場でカタログを配って
- 商品の説明をして
- 名刺交換をして
- 帰国後にサンキューメールを送る
残念ながら海外の展示会では、カタログや名刺を配るより重要なことが様々あります。
海外展示会を成功させるために知っておくと便利な、ちょっとしたコツについてお伝えします。
はじめての海外展示会の準備の注意点
海外展示会の申し込み方法には2パターンあります。
1. 出展企業が「直接」海外の主催社へ出展申込みをするパターン(難易度大)
2. 海外主催社の日本代理店や、行政/自治体を窓口として「間接的に」出展申込みをするパターン(難易度小)
ここでは主に、1.の直接海外の主催社へ出展申込みをするパターン(難易度大)についてお伝えします。
ハード面の準備
まず、海外展示会の出展準備にはハード面とソフト面の2種類があります。
ハード面の準備である、海外展示会の全体の流れ(申し込みから撤収まで)から確認していきます。
(下記は基本的には英語で行います。国際輸送会社については日本に代理店があります。)
- 海外展示会の主催会社へ出展申し込みを行う
- 海外出展社マニュアルに沿って各種作業(電気配線や入出庫)をオーダーする
- ブース施工会社へ施工をオーダーする
- 海外出展品を日本から該当国へ国際輸送する
- 小さなサンプルや営業ツールは担当者の手荷物に含めて出国(輸出)する
- 海外現地入り後、オーダー済みの作業や施工に不備を見つけたら、すぐに再依頼する
- 当日から最終日まで、海外出展品は自社責任で保管管理する
- 最終日に出展品を海外展示会会場から出庫し、日本へ国際輸送する
ソフト面の準備
はじめての海外出展でも受注し成功させることは十分可能です。
そのためには、下記の社内体制がすでに整備されていることが大前提となります。
もし準備が不十分だと感じている場合は、たとえ、準備に時間がかかり海外出展が1年後に繰り延べとなったとしても、まずは十分な準備をしてから海外デビューされることを強くお勧めします。
(自社だけでの準備に不安がある方は海外展示会出展サポートも含まれている、パコロアの海外進出支援サービスを是非ご検討ください。)
準備不足のまま海外展示会初出展をしない方が良い理由は、費用対効果が非常に低いためです。
海外企業は、海外展示会に、お勉強のために出展しているわけではなく、あらゆる準備を整えその場で注文を取るために出展しています。
そんなビジネスの場で、マーケティング力不足の(海外で売る準備がまだ出来ていない)日本企業がお勉強のために(リサーチのために)出展していることは、内心かなり奇異に映っているでしょう。
売る準備とは、海外向けの価格設定、国際輸送費算出、海外向け梱包、海外顧客ニーズ仮説、海外市場の流通規制準拠、貿易実務、Webサイトや販促ツールの英語化、英文取扱説明書や英文契約書の完備、などが最低限揃っていることを意味します。
準備不足のまま海外出展しても、得るものが無いか少ないため、受注はおろか、この先どのような方向性で海外展開を続けるべきかの迷いが濃くなってしまい、帰国後もスッキリしません。
一方で、海外展示会の準備を整え、満を持して出展する企業は、海外展示会の前も、会期中も、帰国後も海外ビジネスの成功のためにすべきことが山のようにあるため、自費100%出展だったとしても、その後の成果という意味では、費用対効果は非常に高くなっています。
しっかり準備をすることで初回から海外展示会を是非成功させましょう。
- 接客時のQ&Aの準備と演習をしておく
- 商談ツールを完備する
1と2の詳細については後述いたします。
海外出展ブース内での海外バイヤー接客ノウハウ
海外展示会ブース内での接客時Q&Aの準備と演習を事前に行い、しっかり海外バイヤー対策をしておきましょう。
海外の展示会でも日本の展示会でもビジネス来訪者から質問されることはほとんど同じです。会社のこと、商品のこと、流通のこと、競合先のこと、業界全体のこと等々です。
しかし、みなさまが答える内容には日本の展示会とは異なる工夫が必要になります。
少なくとも自社視点の商品や技術の優位性の話に終始していては、海外市場での受注は難しいでしょう。
海外の展示会に来場するバイヤーやディストリビューターは現地における、(みなさまとの)同等商品、同等会社、流通、競合先、業界、市場のニーズについて既に情報を持っているにも関わらず、みなさまは日本市場の自社業界周辺情報だけは持っています、という状態です。
海外バイヤーが当たり前に持つ情報を事前に調べることなく、海外バイヤーのお困りごとを想定しないまま、出展当日を迎えるのは、その場で受注する可能性を遠ざけてしまいます。
少なくとも来場者が持つ海外現地情報については、いかなる努力をしてでも、得られる部分だけでも良いので、ぜひ事前にリサーチしておきましょう。そのうえで、仮説を持って海外展示会ブースに立ちます。
海外バイヤーニーズの仮説例:
- このような海外のお客さまがこのようなニーズのもとに、自社のブースを訪れるだろう
- 現状のお困りごとはこのようなことで、海外現地にない○○を期待して会場内を見ているだろう
- 予算や購入時期はこのくらいで、何と何をこういう意図で比較して検討するだろう
などなど。
みなさまは、海外来場者との会話を通じ、来場者から情報を引き出しながら、立てた仮説の答え合わせをその場でしていくことを最優先します。カタログや名刺を配る行為は、海外バイヤーが何か腹落ちした時、カタログが欲しいと直接言われた時だけで十分です。
つまり、何を聞かれるのだろう?ではなく、
どこまで仮説検証のヒアリングが能動的にできるか!が、
海外展示会ブース内接客ではたいへん重要なのです。
海外「出展後」のサンキューメールより「出展中」の即答が重要
海外展示会後にサンキューメールは送っても送らなくても良いでしょう。
なぜなら、サンキューメールを受け取って、海外のディストリビューターやバイヤーたちが、みなさまを礼儀正しい会社だなと再評価することもなければ、そうだったこの商品だった!と思い出して引き合いや注文を出すこともほぼないためです。
海外バイヤーやディストリビューターはたいへん忙しいため、今、その場で聞けることを、今その場で聞かないことはまずありません。
海外展示会の会期が終了してからゆっくりサンキューメールを開封しながら検討するのではなく、引き合いや注文があればその場でします。あるいは注文に必要な確認事項はその場で聞きます。
このことから出展者側に必要なことは、展示会の期間中に、海外バイヤーやディストリビューターから聞かれたことや問い合わせにその場で即答できること、即答できない場合も翌日までにはフィードバックや方向性提示ができること、などの方がより重要で、お互いの利益にもつながるでしょう。
ということで、海外展示会での商談の際、お問い合わせに即答するには、海外向け商談ツールを完備しておく必要があります。
海外展示会での商談ツール例(以下すべて英語もしくは現地公用語)
- プライスリスト(ラインシート)
- カタログ(ルックブック)
- ブランドブック(商品による)
- ホームページ
- 名刺
- 動画
- メディアからの取材まとめ
- サンプル
なお、海外向け商談ツールを完備することと、全ての情報を来場者に開示してしまうことは別の話ですので、来場者全員に渡して見せても良いもの、全員には開示できないもの、例えば担当者が商談に合わせて個別に渡す資料やデータなどは、確実に区別しておきましょう。
海外展示会用の商談シートを作って、行った対応をメモすることも有用ですが、来場者の反応はつきつめると、
- 脈無し
- 単なる賛美、keep in touchレベル(何かあれば連絡する)、そして
- 具体的な案件(現在もしくは1年以内、予算確保済み案件、など)
の3つに分かれます。
具体的な海外案件も、まずはベンダーリスト登録から始まる先の長いものや、ブース内でヒアリングを進めるなかで急に具体的な案件に昇格するもの、
事前リサーチを既に済ませている海外バイヤーご一行が数人で立ち寄り、矢継ぎ早に英語で質問し、疑問点をクリアし発注予告しその担当者の名刺をポンと渡す、といった数分の商談、まで、緩急さまざまです。
(3) にならない(1)(2)に接客時間をかけすぎず、(3)の取りこぼしの無いよう気を配ることが重要です。
(1)と(2)の海外来場者情報については帰国後活用する機会は少ないため(ほぼ無いため)、(1)(2)を含む商談シートを丁寧にまとめるよりは、ブース内での(3)の発見と対応に全力を注ぐ方が対費用効果は高いでしょう。
こんなに準備すべきことがあったんですね。
海外展示会出展のコツ、う~ん、言うは易し行うは難しだなあ・・・。
でも、出展するなら、初回から、売り上げをたてたいものです!
その勢いですね!
海外展示会のブースに立つときは、海外バイヤー用の注文書の持参もお忘れなく、です。
それでは、次は海外営業についてです!