海外進出の本来の目的は、新規顧客の獲得。
つまり、
「海外のお客様からどう見られているか?」
「どう見られたいか?」
を徹底的に見直し、自社と商品を“海外目線”で再認識することから始まります。
海外での自社の存在意義を再定義し、
進出において「重要なこと・重要でないこと」を決定し、それを現実に体現していく。
これが、海外戦略構築の核心です。



中小企業が取り組むべき戦略構築のステップとは?

ここまで、
「はじめに」
「1.実現可能性を検証する」
「2.必要な能力を開発する」
と、題して、下記について説明してきました。
1. 実現可能性の検証(文化や法律の壁を含む)
海外でのビジネスモデルが現実的に機能するかどうか、
法規制や市場の壁を知り、「海外でも勝てるのか?」という問いへの答えを探るフェーズです。
2. 不足能力の特定と強化(web対応力や言語力など)
- ビジネス英語力
- 異文化対応スキル
- 貿易実務や知財対応、リスク管理の知識
これらを整備することで、戦略の土台が固まります。
3. 進出先市場の需要とニーズの分析
海外展示会に出展したり越境ECを構築する前に、まずは「誰に、どのように売るか」の仮説検証が必要。
4. 自社製品の輸出可能性の評価(製造・生産面の対応含む)
規制や技術基準の壁を見越し、必要な仕様調整を行う。
このステップでの準備が、後のトラブルを大幅に減らします。
そしてここからのテーマは、その次のステップ――「海外戦略を構築する」です。
戦略構築とは単なる事業計画づくりではなく、「自社が海外市場でどうあるべきか」を明確にし、そのあり方に沿った仕組みや見せ方を設計することです。
その結果、自社だけの競争優位を生み出し、ぶれない軸を持って海外進出を進めることができるようになります。
つまり海外市場で自社が勝てる方法を具体的にあぶり出していくのが、ここからのテーマとなります。

海外で「勝てる方法」とは?

海外市場で成功する中小企業には、共通した“勝ち筋”があります。
大手と違って資本力や規模では劣っていても、それを補って余りある強みが、日本の中小企業にはあります
1. ニッチな市場に特化する
日本の中小企業が世界と戦うとき、真っ向勝負ではなく「すき間」にこそ勝機があります。
ニッチ市場――つまり、大手が手を出しづらい“狭く深い分野”に特化することで、独自の存在感を築くことができます。
たとえば、ある部品メーカーは「この精度は日本でしか作れない」と言われる特殊加工で欧州の医療機器メーカーに選ばれました。
市場は狭くても、代替がきかない存在になれば、競争相手はほぼいません。
この戦略は、少量生産・高付加価値を得意とする日本の製造業にとって特に有効です。
2. 日本品質・信頼性を強みにする
「Made in Japan」や「日本のサービス精神」は、今も海外では高く評価されています。
特にアジア、中東、欧州では「日本の品質なら安心できる」「誠実な対応をしてくれる」と信じてくれる顧客も多く存在します。
この信頼は、納期の正確さ、クレーム対応の丁寧さ、細部への配慮などから生まれるもの。
海外では当たり前でないからこそ、“信頼できるビジネスパートナー”としての評価が競争力になります。
単なる「日本製」だけでなく、現地の顧客にとって何が“安心感”になるのかを具体的に伝える努力が重要です。
3. 現地とのパートナーシップを活かす
「自己資本100%進出」にこだわるよりも、現地企業との連携をうまく活用することで、海外展開スピードも成功確率も高まります。
たとえば、販売代理店、現地メーカー、共同ブランド開発パートナーなどとの提携は、文化の違いや商習慣の壁を一気に飛び越える武器になります。
特に日本の企業は「協業における丁寧な対応」や「改善提案の柔軟さ」が評価されやすく、長期的な信頼関係を築くスタンスが現地に歓迎される傾向にあります。
このようなパートナーシップ型の展開は、初期コストを抑えながら市場をテストできる利点もあります。
4. ストーリーテリングでブランドを差別化する
海外の顧客は、「誰が、どんな想いで作ったのか」という背景に強く共感し、商品を選ぶことがあります。
価格やスペックだけでなく、“共感できるストーリー”そのものが、ブランドの価値を大きく左右するのです。
たとえば、ある地方の小さな和菓子店が、創業100周年を前に「100日前からのカウントダウン投稿」をSNSで始めたとします。
そこには、四季折々の美しくも厳しい自然、過疎地域での事業継承の苦労、移りゆく日本の原風景などが、写真とともに英語で簡潔に綴られていきます。
「ただ、これだけのことで?」と思うかもしれません。
しかしこの「魅せ方」ができることで「ただの和菓子」ではなく、「物語を持つ特別な体験」として、他の和菓子店や海外の菓子メーカーと一線を画す存在になれるのです。
「大量生産ではない」
「職人の手仕事が活きている」
「日本の伝統と土地の文化が息づいている」
――こうした背景を丁寧に伝えていくことが、単なる“モノ売り”を超えた“意味のある価値提供”につながります。
日本の中小企業だからこそできること。
それは、圧倒的なストーリー性を持った商品やサービスを、海外に向けて戦略的に魅せていく力なのです。
5. 顧客に選ばれる「買いやすさ」を設計する
最後に見逃しがちなのが、“海外顧客目線の導線設計”です。
どれだけ魅力的な商品でも、購入方法が手間だったり、英語情報がなく、大事な説明が届かなかったりすれば、選ばれません。
- 多言語対応のWebサイト
- 簡潔で理解しやすいサービス説明
- 問い合わせ~購入までのレスポンスの速さ
- 決済や納品、保証やメンテナンスの分かりやすさ
こうした小さな“便利さ”の積み重ねが、海外市場での信頼やリピートにつながります。
特に、日本では当たり前の配慮が、海外では驚かれるほどの好印象につながることも多々あります。
「勝てる戦略」は、勝ちやすい土俵を自分でつくること、です。
日本の中小企業が海外で勝つために必要なのは、海外競合企業と同じ視点に立つことではありません。
むしろ、自社の強みや信頼性、文化的背景を武器に、勝ちやすい土俵を自ら設計することが何より大切です。

「力不足」を解決する能力開発とは?

グローバル市場で勝負するには、「これまでの日本的な常識」を一度手放す必要があります。
日本での成功パターンが、海外では逆に足かせになることも少なくありません。
たとえば以下のような項目は、単なる「補助的なスキル」ではなく、これからの海外営業における“武器”そのものです。
1. 24時間対応できる海外向けWebサイト
日本企業のよくある誤解:
「まずは日本語サイトを作って、あとで英訳すればいいよね?」
→ 実際はNG! 海外向けのWebサイトは、最初から英語(またはターゲット言語)で設計することが重要です。
たとえば、海外の見込み顧客が検索するキーワードを最初に調査し、その検索ボリュームから逆算して「サイトマップ」や「ページ構成」を設計します。
それに基づいてコンテンツを設計すれば、後からSEO対策を別料金でやり直す必要もなく、初期投資の費用対効果が最大化されます。
つまり最初に“海外基準で考える”ことで、ムダなく・正確に・速く成果が出せるのです。
2. 英語でのプレゼンやサービス紹介
ありがちな失敗:
「とりあえず翻訳すれば通じるでしょう?」
→ しかし、英語が“通じる”のと“伝わる”のはまったく別の話です。
たとえば、海外向けのプレゼン資料では、数字や事例、ビジュアルの使い方に説得力を持たせることが求められます。
「日本の常識的な順番や背景説明」ではなく、相手の“理解の流れ”を起点に再設計する必要があります。
プレゼンのゴールは「相手のアクションを引き出すこと」。
そのためには、自社だけでは見落としがちな“ロジックと見せ方の差分”を明確にすることが不可欠です。
3. 海外企業との契約整備や法的対応
見落とされがちな盲点:
「口約束で信頼関係を築いてから、あとで契約書をまとめればOK」
→ 実はこれはトラブルの元。
海外では、契約の段階で細かく「責任・範囲・支払い・納期」などを明確にしておくのが常識です。
たとえば、英語で作成される「サービス仕様書(SOW)」や「NDA」などは、海外の商習慣やリスクを理解したうえで、海外の書類フォーマットに沿って、最初にきちんと整備しておく必要があります。
日本語の契約書をそのまま英訳して契約することは大きなリスクです。
自社での対応が難しい場合、当社のようなコンサルタントが入ることで、契約上の抜け漏れや文化的な誤解を事前に防ぐことができます。
外部コンサルタントの目線を入れる意味とは?
日本企業が海外進出を進めるとき、多くの場面で「これでいいはずだ」と思って進めた施策が、
「実は“現地ではズレていた”」というケースがよくあります。
この差分に自社だけで気づくのは難しいのが現実です。
だからこそ、海外進出に特化した支援者(コンサルタント)とともに進めることで、
間違った方向に舵を切りそうになっても、ブレーキをかけ、修正できる体制を持つことが成功への近道になります。
「最初の設計で9割が決まる」――
これは、Webサイトでも、プレゼンでも、契約でも同じです。
海外進出の初期段階から、正しい判断軸と経験値を持つパートナーと手を組むことで、コストも時間も無駄なく、最短で成功に近づく道が開けます。

多言語サイトや越境ECはいつ作るべきか?

「まずWebサイトを作ろう」と考えがちですが、実はそれ、少し待った方がいいかもしれません。
誰に向けて、どのような価値を届けるか──
その答えが見えてくるのは、初回のF/S調査(フィージビリティスタディ)や海外展示会への出展などを通じて、実際に現地の反応やニーズを体感したあとです。
海外の声を一度も聞かずに、自社の想像だけでWebサイトを構築してしまうと、“伝えたいこと”と“求められていること”の間にズレが生じてしまうリスクが高まります。
そのため、Webサイト制作のベストなタイミングは「海外市場のリアルな感触を掴んだあと」。
伝えるべき価値やターゲットが明確になってから取りかかることで、ブレのないコンテンツ設計が可能になります。
海外向けWebサイトは“営業パーソン”
「Webサイトは24時間稼働する海外営業担当」。
その発想で、
- 多言語での製品・実績紹介
- 海外顧客の不安を払拭するQ&A
- 海外市場に合った価格設定、用途と事例紹介
を丁寧に仕上げていきます。
制作には半年以上かかることもありますが、後の武器になります

海外マーケティングへの苦手意識を克服しよう

「よくわからない」「効果が見えづらい」と言われがちなマーケティング。
とくに海外市場では、文化や商習慣の違いもあり、何から始めればいいか迷いやすい分野です。
そもそも、マーケティング=“売れる仕組みづくり”です。
その中には、「誰にどう届けるか」といった販促の工夫だけでなく、「どう見られたいか」をデザインする=ブランディングも含まれています。
つまり、ブランディングの見直しは、マーケティング活動の核のひとつなのです。
海外現地の「反応」とどう向き合うか?
- ドンピシャな問い合わせが来ない
- ビジネスが先に広がらない
- 打ち手が尽きたように感じる
そんな時こそ、立ち返るべきは「自社はどう見られているか」「どう見せていくか」という原点です。
海外の顧客が本当に求めている価値や新規取引の判断基準を、貴社は把握できていますか?
もしその確信が持てないままでは、自社の魅力を正しく伝えることも難しくなります。
だからこそ、重要なのは──
海外顧客のニーズに対して、精度の高い仮説を持ち、検証を重ねること。
そして、その仮説に自社がどう応えられるのかを、相手に伝わる言葉や形で表現しきること。
これこそが、マーケティングの本質であり、ブランディングの役割でもあるのです。

自社だけの「競争優位」を見出すために

他社にはない、自社だけの「強み」は何か?
それは日本市場で磨いてきた経験や技術、対応力の中に眠っているはずです。
海外市場では、その強みをただそのまま持ち込むのではなく、
現地のニーズに合わせてどう抽出しなおすか、どう磨きなおすかが問われます。
「自社ならではの価値」を再定義し、それを現地で伝わる形に変換できるか──
それこそが、海外戦略の成功と失敗を分ける分岐点となるのです。
ここ以降のフェーズでは、
「海外のお客様に選ばれる理由をどう設計するか」
「伝える手段としてのWebサイトや販促ツールをどう活用するか」
といった具体的な施策に迫っていきます。
海外ビジネスの成功に向けて、次なるステップへ進んでいきましょう。
まずはマーケティングについてです!