
オンライン商談を活用した海外企業との商談は、今や中小企業にも必要不可欠な手段です。
対面と異なり、国境を越えたスピーディーな商談が可能になる一方で、準備・進行・提案の仕方には独自の工夫が求められます。
この記事では、海外との商談をこれから始める営業担当者に向けて、商談前・商談中・商談後の具体策をお伝えします。
海外企業との商談が生む新価値
「海外企業との取引なんて、自分にはまだ早い」
そう思っていた営業担当者が、オンライン商談をきっかけに新たな世界へ踏み出す。
今、そのようなケースが増えています。
オンライン商談の最大の魅力は、時間や距離といった物理的制約から解放されること。
移動ゼロで国境を超えた相手と顔を合わせ、リアルタイムで価値提案ができるこの手法は、特に限られたリソースで動く中小企業にとって、大きな武器になります。
たとえば、画面共有を通じて製品の構造を説明したり、リアルタイム翻訳を活用して相手の理解度をその場で確認したり、以前は大企業だけの特権だった“グローバル営業”が、誰にでも開かれた時代になりました。
そして何より大切なのは、「オンラインだからこそ伝わる信頼」があるということ。
相手の国に足を運ばなくても、丁寧な対応や事前準備、誠実なフォローで、「この会社なら任せられる」と思ってもらえる瞬間が確実に生まれるでしょう。
準備で差が出る海外対応術
商談前のリサーチ
オンライン商談を成功に導く第一歩は、相手企業の情報収集です。
限られた時間の中で信頼を築くには、事前準備でどれだけ相手のことを理解しているかが鍵になります。
まずは、公式サイトやSNS、ニュースリリースなどから企業の基本情報と最新の動きを把握しましょう。
たとえば展示会への出展歴や新商品リリースの情報は、企業の戦略や成長フェーズを知るヒントになります。
また、経営理念やミッションステートメントを読むことで、その企業が何を大切にしているか、どんな価値観に共感してもらえるかが見えてきます。
こうした背景理解は、商談中の会話の切り出し方や提案のトーンにも大きく影響します。
特に海外企業とのやり取りでは、相手の文脈に寄り添った言葉選びや話題設定が信頼構築の起点になります。
単なる製品説明ではなく、「あなたのことを理解したうえで提案しています」と伝わることが、商談全体の空気を変えるのです。
そのうえで、以下のような点も事前に確認しておきましょう:
- 問い合わせの経緯・目的
- 相手のニーズや課題
- 予算や導入時期
- 決裁者の所在(本社か支社か)
- 競合との比較状況
- 組織体制と意思決定プロセス
これらの情報を把握しておくことで、提案の精度を高めることができ、海外企業側もより具体的な返答をしやすくなります。
商談前に準備する資料のポイント
オンライン商談で信頼を得るには、論理的かつ簡潔に伝わる英語資料の準備が不可欠です。
特に、相手企業の関心に沿った構成や表現を意識することで、説得力が大きく変わってきます。
以下のポイントを押さえて、効果的な資料を整えましょう:
- 翻訳ではなく最適化:
日本語資料をそのまま英訳せず、「相手が知りたい情報」に再構成する - シンプル&短文:
通訳や限られた時間に対応できるよう、要点を短くわかりやすく表現する - 数値や事例で裏付け:
具体的な成果や実績データを盛り込むことで納得感を生む - 図やグラフを活用:
視覚情報は言語の壁を超えて伝わりやすく、印象にも残りやすい - ○×△は使わない:
比較表などではAvailable/Not supported/Limited supportなど言葉で伝える - 過去のやり取りを振り返る:
問い合わせ履歴やメール内容から相手の関心や課題を洗い出す
これらを意識して構成された資料は、単なる情報の羅列ではなく
「この会社なら課題を解決してくれる」
と相手に感じてもらえる後押しとなります。
商談環境の整備とリハーサル
オンライン商談では、通信や機器のトラブルが成果を左右することも。
事前に静かで明るい場所を確保し、背景もビジネスにふさわしいものに設定しましょう。
会社ロゴを活用したオリジナル背景なども、プロフェッショナルな印象を与えます。
使用する機器(カメラ・マイク・ヘッドセット)は必ずテストし、複数の会議ツール(Zoom、Google Meet、Teamsなど)をバックアップとして用意しておくと安心です。
さらに、資料の切り替えや画面共有の練習も実施してください。
本番と同じ資料・言語での通しリハーサルにより、操作や時間配分を把握でき、自信を持って商談に臨めます。
相手によってはこの商談が「最初で最後」の機会になることもあります。
しっかりと環境を整え、万全の体制で臨むことが、次のチャンスにつながる確かな一歩となるでしょう。
オンライン商談中の工夫と信頼構築
オンライン商談中のコツを押さえることで、海外企業との信頼関係を深め、商談の成果を引き上げることができます。
海外企業が当然のように求めていること
海外企業は商談時、以下のような基本動作や姿勢を当然と捉えているケースが多いため、事前に把握して対応することが望まれます。
- 結論ファーストで話す(詳細はその後)
- 会社紹介は1分以内に簡潔に済ませる
- 自己紹介は名前と部署名だけの簡潔な形で
- 質問を歓迎し、途中でも丁寧に対応
- 質疑応答に多く時間を割き、FAQも準備
- 価格や条件は選択肢を複数用意し即答可能に
- 自社PRではなく、相手課題に焦点を合わせる
- 挨拶や今後の流れの説明は日本側がリードする
こうした点を意識することで、海外企業との信頼関係が生まれやすくなります。
相手の関心を引くストーリー構成
「本日の進め方」「参加者紹介」「お互いのゴール」などを冒頭で共有することで、商談の着地点が明確になり、安心感を与えます。
製品やサービスの紹介は、いきなりスペック説明に入らず、事例やエピソードからはじめると、理解が深まることも。
具体的には、「お困りごと→変化→結果」という流れで構成すると、自社への置き換えがしやすくなります。
インタラクティブな要素で記憶に残す
VR動画や図面、未公開製品の画像、マーケティング支援素材など、相手が「特別扱いされている」と感じる素材を活用することで、商談後の印象が大きく変わります。
相手の文化とビジネス習慣を理解する
国によって好まれる伝え方は大きく異なります。
- ドイツ/アメリカ:率直さと結論重視。「条件が合わない」などは明確に伝える方が好印象。
- インド/イギリス:遠回しな表現や婉曲的な断り方が多いため、表現の裏の意味を読む姿勢が必要。
相手文化への理解は、誤解防止だけでなく信頼獲得にも直結します。
国ごとに異なる商談スタイルと価値観
国によって商談スタイルは多様です。
- スウェーデン/カナダ:Win-Winを重視。価格交渉も協調的。
- イタリア/サウジアラビア:Win-Lose傾向。交渉は長引き、再交渉が前提の場面も。
それぞれの商習慣を理解し、最適な交渉姿勢を選ぶことが必要です。
オンライン商談後のフォローアップ
商談後48時間以内に感謝メールを送るのが理想です。
To Doリストや今後のスケジュール、疑問点への回答などを含めると、相手企業の信頼を得やすくなります。
フォローアップメールの書き方
- 件名に「お礼」や「フォローアップ」を明記
- 内容には合意事項、次のステップ、責任者、締切を明示
- 商談で出た課題には具体的回答を添える
- 相手の懸念への対応姿勢を示す
フォローアップ電話や訪問の重要性
メールだけでは意図が伝わらないケースもあります。
相手の反応が鈍い場合、通訳を通じた電話、資料の現地語版作成、訪問の提案など、柔軟かつ積極的な対応が重要です。
複数人で商談に参加し、録画の許可が得られるならば、内容を振り返ることでさらなる質の向上が図れます。
オンライン商談の問題と対策法
海外企業とのオンライン商談では、文化・言語・習慣の違いから、意図がうまく伝わらずにすれ違いが起きることも珍しくありません。
画面越しのやり取りでは、ちょっとした誤解が信頼関係の障害になることもあります。
コミュニケーションのズレを防ぐには
【BtoBの商談】
相手の関心度に応じて柔軟に対応する姿勢が重要です。
事前情報と異なる反応があっても慌てず、以下のように切り替えましょう。
- 関心が高い場合:予定通りの提案+具体的な資料提示で一気に前進
- 関心がやや低い場合:事例紹介、最近の課題の再確認で巻き戻す
- さらに低い場合:業界情報提供や見直し提案、場合によっては早めに終了
ポイントは、相手の反応をよく観察し、小さな納得感を積み上げること。
データ・画像・図表を活用し、端的な英語で「一緒にゴールへ向かっている」感覚を共有することがカギです。
【BtoCの商談】
先方の関心が低ければ商談自体がキャンセルになるリスクもあります。
逆に、予定通り実施される場合は関心が持続している証。
以下のような情報を、視覚的に分かりやすく伝えるのが効果的です。
- オンライン売上TOP10や市場シェア率
- 店頭ディスプレイや販売実績
- 海外ユーザーのリピート理由
- 抱き合わせ販売の成功例
- SNSやメディアでの評価
- コロナ禍の売上変動とその回復
- 最近取引を開始した海外バイヤーの声
- 今後のリスクと対応姿勢(物流・原材料など)
オンライン商談ではこちらが一方的に話すより、相手に「話してもらう」ことが重要です。
質問や共感のリアクションを積極的に挟み、相手の本音を引き出すことで、対面では得られない深い信頼関係が築けます。
あらゆる想定外への即時対応法
海外企業とのオンライン商談では、予期せぬトラブルがつきものです。たとえば…
- 商談開始時間になっても相手が入室しない
- 話の途中で突然相手が退出してしまう
- 相手の英語が速すぎて聞き取れない、または自分の英語が伝わらない
- 共有資料が開かない、文字化けしてしまう
- 動画を再生していたら、相手が離席してしまった
- 何でも「OK」と返ってくるが、本当に理解しているか不安
- 相手のニーズがつかめず、通訳のせいなのか判断できない
このような“想定外”の事態に直面した際は、まず「原因が自分側か相手側か」を冷静に切り分けることが大切です。
たとえば、入室が遅れたり突然の退出・離席があった場合、相手の回線トラブルやスケジュール変更が理由かもしれません。
この場合、慌てず日程再調整や内容の簡素化などで対処できます。
一方、うまく伝わらない、反応が薄い、資料が正しく表示されないといった課題は、こちら側の準備不足が原因であることも。
商談の目的や伝えたいメッセージが相手のニーズとズレていないかを見直す必要があります。
特に「話が進んでいる感触が持てない」「相手からの質問が少ない」と感じたら、提案内容やプレゼンの構成、さらには英語での説明力自体を再検討すべきタイミングかもしれません。
こうした状況に備え、改善の第一歩は以下の通りです:
- プレゼン資料の構成見直し:
相手の関心ごとに即した順番・視点へ - 英語での表現練習:
通じやすく、短く、明快な説明を徹底 - 通訳との連携強化:
背景や目的を共有し、補足対応を依頼 - 組織内での情報共有:
営業個人の問題ではなく、全体での対策検討を
オンライン商談は、個人のスキルだけでなく、企業全体の連携力が試される場面です。
だからこそ、現場だけに責任を押し付けず、経営者も巻き込んで“即応力のある体制づくり”を考えることが、継続的な成果につながります。
オンライン商談の成功事集
オンライン商談は「準備さえすればうまくいく」わけではありません。
現場では、予想と違う反応が返ってくることもしばしば。
けれど、そこで柔軟に対応できた企業こそが、海外との関係を築き、成果を上げています。
ここでは、実際にあった成功事例を紹介します。
商談中の“ちょっとした判断”や“その場での軌道修正”が、大きな成果につながったケースです。
成功事例1:日系企業A社の中国進出
中国市場にオンラインで挑んだ日系企業A社。
当初は「高い技術力」を強みに据えてプレゼンを組み立てていました。
事前の調査でも、それが響くはずだと判断していたのです。
ところが商談が進むうちに、相手の関心は「コスト重視」にあると判明。
会話の中でその空気を察知し、急きょ“仕様の簡略化+価格調整”に方向転換しました。
この瞬時の判断が功を奏し、最終的には競合他社の中でも有力な候補に残ることに。
結果として、相手企業の具体的な要望に応える形で、取引に結びつきました。
この事例が教えてくれるのは、
- プレゼンの完成度よりも、相手の空気を読む柔軟さ
- 想定外のニーズにも即応できる「準備の幅」
が、オンライン商談ではとても重要だということです。
成功事例2:多国籍企業B社の欧州展開
ヨーロッパ各国への進出を目指した多国籍企業B社は、商談準備の徹底ぶりで相手の信頼を勝ち取りました。
彼らが重視したのは、「文化と交渉条件の違いを理解したうえで、それぞれに合わせた提案をすること」。
商談相手ごとに異なる価値観を事前に分析し、各国向けに最適化したプレゼンを用意しました。
- イスラエル企業向けには、結果重視の文化に合わせて、導入効果と実現方法を結論から提示。
- ドイツ企業向けには、エンジニアが登壇し、技術の裏付けや応用展開の可能性を論理的に解説。
- スペイン企業向けには、価格競争力と「売り方のサポート」を強調し、人間関係重視の姿勢を示しました。
- フランス企業向けには、EU規格への適合性、サステナビリティへの取り組み、販売後の手離れの良さを丁寧に伝えました。
結果として、各国の代理店候補との議論は「契約前提の条件調整」に集中。
文化や条件の違いを尊重したことが、信頼とスピードのある意思決定につながったのです。
この成功例が伝えているのは、「誰にでも同じ説明」では伝わらないということ。
海外商談の壁は、距離ではなく「想像力の差」――
「きっとこうだろう」ではなく、「もしかしたら、こう考えるかもしれない」と一歩深く踏み込んだ準備が、信頼をつなぐ最初の一歩になるのです。
オンライン商談のまとめと提案
海外企業とのオンライン商談を成功させるには、文化や商習慣への理解、通信環境の整備、そして相手に響く構成の英語資料といった“基本の準備”が欠かせません。
しかし、どれだけ準備を整えても、言語や文化の違いからすれ違いが起きてしまう
――そんな場面に、直面したことがある方も少なくないはずです。
「しっかり説明したのに、なぜか伝わらない」
「何度も提案しても、先に進まない」
それは、言語の壁というより、“見えない常識の違い”による誤解かもしれません。
海外商談で成果を上げる企業の多くは、その「見えない違い」を乗り越えるために、現地視点に基づいたノウハウや経験を持つパートナーの力を活用しています。
株式会社パコロアでは、日々、多くの中小企業様とともに、海外とのオンライン商談を含めた実践的な海外展開支援を行っています。
現場感覚を持つコンサルタントが、商談前の準備から提案内容の精査、文化ギャップへの対応まで伴走いたします。
「せっかくの引き合いをチャンスにつなげたい」
「海外進出の壁を、乗り越える手応えがほしい」
そんな想いをお持ちの方は、どうか一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
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