海外進出を検討し始めると、意外と早い段階で出てくるのが「海外拠点を英語でどう表現すればいいのか?」という悩みです。
branch なのか、subsidiary なのか、それとも overseas office なのか。
辞書を引けば英訳自体はいくつも見つかりますが、どれを使うかで、海外からの受け取られ方が変わることまでは、あまり説明されていません。
実務の現場では、「英語として正しいか」よりも自社の事業実態を、海外にどう理解してもらうかの方がはるかに重要です。
表現を間違えると、実態より大きく見えたり、逆に信用を落としてしまうこともあります。
この記事では、「海外拠点」という言葉を単に英語に翻訳するのではなく、中小企業が誤解されずに海外展開を進めるための英語表現の考え方を整理します。
branch・subsidiary・office などの違いと使い分けを、実務目線で解説しながら、自社の場合はどれを選ぶべきか判断できるように構成しています。
「この英語で本当に大丈夫だろうか?」
そんな不安を抱えたまま海外とやり取りを続ける前に、一度ここで整理してみてください。
なぜ「海外拠点」の英語表現は1つでは危険なのか
「海外拠点」を英語にするとき、多くの人はまず辞書を開きます。
すると、branch、subsidiary、overseas office など、いくつもの候補が並びます。
ここで問題になるのは、どれも英語としては間違いではないという点です。
しかし、ビジネスの現場では、この「どれも正しい」がそのまま通用するわけではありません。
海外企業が見ているのは、その拠点が会社の中でどんな役割を持っているのかです。
英語表現は、その役割や位置づけを短い一語で伝えるためのラベルに過ぎません。
たとえば、実態としては日本本社の指示で動く小規模な営業窓口であるにもかかわらず、subsidiary という表現を使ってしまうと、「独立した現地法人」「現地で意思決定できる組織」という印象を与えかねません。
逆に、すでに現地法人を設立し、採用や契約も現地で完結しているのに、office とだけ表現してしまうと、事業としての本気度が伝わらず、軽く見られてしまうこともあります。
このように、海外拠点の英語表現は単なる翻訳の問題ではなく、自社の事業構造をどう説明するかという判断の問題です。
特に中小企業の場合、海外側は限られた情報から会社の規模や体制を推測します。
だからこそ、英語表現が実態とずれていると、後の商談や契約の場面で説明の手間が増えたり、最初から話が噛み合わなくなったりします。
次の章では、branch・subsidiary・office といった代表的な英語表現について、それぞれが持つニュアンスと、使うべき場面・避けたい場面を整理します。
ここを押さえることで、自社に合った表現が見えてくるはずです。
海外拠点を表す主な英語表現と意味の違い
「海外拠点」を英語で表すとき、よく使われる表現はいくつかあります。
重要なのは、どれが自社の実態に合っているかです。
ここでは代表的な表現について、使える場面/注意すべき点を整理します。
branch を使うケース・使ってはいけないケース
branch は、日本語では「支店」に近い表現です。
法的にも運営上も、本社の一部として位置づけられる拠点を指します。
【使いやすいケース】
- 現地に法人はなく、日本本社の延長として活動している
- 契約・売上・意思決定はすべて日本側
- 小規模な営業・連絡窓口が中心
このような場合、branch は実態に近い表現になります。
一方で注意したいのは、海外では branch という言葉から「本社の直接管理下にある拠点」という印象を強く持たれる点です。
現地での裁量や独立性をアピールしたい場合には、本社の管理下にある印象が前面に出るため、やや消極的な表現になることもあります。
subsidiary が示す法的・経営的なニュアンス
subsidiary は「子会社」を意味し、独立した現地法人が存在することを前提とした表現です。
【使うべきケース】
- 現地法人を設立している
- 採用・雇用契約を現地で行っている
- 現地法人名義で契約・取引をしている
subsidiary を使うと、海外側は「一定の意思決定権を持つ組織」「継続的な事業体」と理解します。
注意点は、法人設立前や、実態が追いついていない段階で使うと、期待値だけが先行してしまうことです。
「そこまでの体制はまだない」という場合には、無理に使わない方が無難です。
office / base / operation が適する場面
office は最も曖昧で、最も使われやすい表現です。
その分、中身を補足しないと実態が伝わりません。
【office が向いているケース】
- 駐在員が常駐している
- 情報収集・連絡・調整が主な役割
- 将来的な拠点化を見据えた準備段階
base や operation を使う場合は、「活動の拠点」「機能単位」という意味合いが強くなります。
例:
- manufacturing base(生産拠点)
- sales operation(営業機能)
業務内容をセットで説明できる場合に有効です。
「とりあえず overseas office」が危険な理由
よく見かけるのが、深く考えずに overseas office という表現を使ってしまうケースです。
確かに無難そうに見えますが、海外側からすると「結局、何をしている拠点なのか分からない」という状態になりがちです。
特に初回の商談や企業紹介では、曖昧な表現は相手に余計な質問を増やします。
大切なのは、名称そのものよりも、その拠点が担っている役割を明確にすることです。
次の章では、こうした英語表現を踏まえたうえで、自社の場合にどの表現を選ぶべきかを整理するための判断の考え方を紹介します。
自社の場合、どの英語表現を選ぶべきか
海外拠点の英語表現は、単語の好みで選ぶものではありません。
拠点の実態を分解して考えることで、自然と選択肢は絞られます。
ここでは、判断の軸を3つに分けて整理します。
現地法人があるか、ないか
まず最初に確認すべきなのは、現地に法人を設立しているかどうかです。
- 現地法人がある
→ subsidiary を検討する前提になります - 現地法人がない
→ branch や office が現実的な選択肢です
この時点で、subsidiary を使えるかどうかはほぼ決まります。
法人がない段階で subsidiary を使うと、実態とのずれが生じやすくなります。
売上・契約の主体はどこか
次に確認したいのは、誰が売上を立て、誰が契約責任を負っているかです。
- 日本本社が契約主体
→ branch / office の方が実態に近い - 現地法人が契約主体
→ subsidiary の説明が自然
この点は、海外企業が最も気にするポイントの一つです。
英語表現と契約実態が食い違っていると、後の確認作業が増え、信頼構築の妨げになります。
拠点が担っている役割は何か
最後に、その拠点が何をするために存在しているのかを整理します。
- 営業・マーケティング中心
- 情報収集・調整業務が中心
- 生産・開発・サポートなど機能特化型
この場合、office や base、operation といった表現を使い、役割を補足することで実態が伝わりやすくなります。
例としては、
sales office、manufacturing base、support operation
といった形です。
迷ったときの考え方
判断に迷った場合は、「少し控えめな表現」を選ぶ方が安全です。
実態以上に大きく見せてしまうと、後から説明を修正するのは簡単ではありません。
subsidiary など法的な位置づけに関わる呼称は、登記や実態に合わせて正確に使う必要があります。
一方で、会社紹介やメールで用いる office や operations といった補足的な表現は、体制の変化に合わせて調整するのが安全です。
次の章では、こうした考え方を踏まえたうえで、会社紹介やメール、商談などの具体的な場面でどのように英語で説明すればよいかを例文で紹介します。
海外拠点を英語で説明する実務シーン別例文
海外拠点の英語表現は、使う場面によって、求められる粒度が変わります。
ここでは、実務でよくある3つの場面に分けて整理します。
会社紹介・Webサイトでの書き方
会社概要やWebサイトでは、法的な位置づけ+拠点の役割をセットで伝えるのが基本です。
例:現地法人がある場合
We operate a subsidiary in Germany, which serves as our sales and customer support base for the European market.
例:法人はなく、営業拠点のみの場合
We maintain a sales office in Singapore to support our regional partners in Southeast Asia.
ポイントは、subsidiary / office といった呼称だけで終わらせず、何をしている拠点なのかを必ず補足することです。
海外企業へのメールでの書き方
メールでは、相手に余計な誤解を与えない簡潔さが重要です。
例:初回連絡の場合
Our head office is located in Japan, and we have a local office in Thailand handling sales coordination.
例:現地法人が契約主体の場合
The contract will be handled by our local subsidiary in the United States.
ここでは、大きく見せようとする必要はありません。
契約や責任の所在がどこにあるかが分かれば十分です。
展示会・商談での口頭説明例
展示会や商談では、短く、分かりやすく伝えることが求められます。
例:
We have a small office here mainly for sales and market research.
Our main decision-making remains with our headquarters in Japan.
あるいは、
We established a local subsidiary last year, and it now manages sales and after-sales support in this region.
口頭の場合は、正式名称よりも、役割と権限の範囲を伝えることが重要です。
その方が、相手の理解が早く、会話も進みます。
次の章では、こうした英語表現を使う際に、中小企業がよくやってしまう失敗例を整理します。
ここを押さえておくことで、無用な誤解を避けやすくなります。
海外拠点の英語表現と契約実態がずれてしまうリスク
海外拠点の英語表現で、中小企業が最も無意識にやってしまいがちなのが、表現と契約実態が食い違っているケースです。
特に多いのが、「海外拠点(subsidiary や local office)がある」と説明している一方で、契約書上の主体は日本本社になっているという状態です。
「契約書上の主体が日本本社」とはどういうことか
契約書上の主体とは、その契約において、法的な責任を負う会社のことです。
たとえば、海外企業との取引契約書に
- 会社名:Japan Head Office
- 署名者:日本本社の代表者
と記載されていれば、
その契約の当事者は日本本社になります。
現地に subsidiary があっても、その子会社が契約書に登場していなければ、法的には取引に関与していない扱いになります。
なぜこのずれが問題になるのか
この状態で問題が起きやすいのは、トラブルや責任の所在が問われる場面です。
たとえば、
- 納期遅延
- 品質クレーム
- 支払い条件を巡る紛争
こうした場面で、海外側は「現地法人と取引しているつもり」でも、契約書を見ると、日本本社が責任主体になっている。
結果として、
- 連絡先が二転三転する
- 判断権限の所在が不明確になる
- 日本本社が想定外の重い責任を負う
といった事態が起こりえます。
悪意がなくても起こる、よくあるパターン
重要なのは、このずれが意図的ではないケースがほとんどだという点です。
たとえば、
- 英語での契約書作成に慣れておらず、日本本社名義のまま進めた
- 現地法人はあるが、契約管理体制が整っていなかった
- 拠点説明と契約実務が別の担当者で進んでいた
こうした理由から、説明上は subsidiary、実務上は日本本社、という状態が生まれます。
表現を決める前に確認すべきポイント
海外拠点の英語表現を決める際は、次の点を一度整理しておく必要があります。
- 実際に契約書に記載されている会社名はどこか
- 取引上の責任はどの法人が負っているか
- 海外側は、どの会社と取引していると認識しているか
この整理ができていないまま英語表現を選ぶと、後から修正が難しくなります。
表記は「信用」と「リスク管理」の問題
海外拠点の英語表現は、見た目や言葉選びの問題ではありません。
誰が責任を負うのかを、相手に正しく伝えるための表示です。
だからこそ、表現を考えるときは、契約実態と必ずセットで確認する必要があります。
海外拠点の英語表現は「翻訳」ではなく「判断」
海外拠点の英語表現は、辞書で正解を探すものではありません。
branch、subsidiary、office といった言葉は、自社がどんな体制で、どこまでの責任を持って事業を行っているのかを一語で伝えるための判断結果です。
特に中小企業の場合、英語表現と実際の契約・責任の所在がずれていると、意図せずリスクを抱え込んでしまうことがあります。
だからこそ、海外拠点をどう呼ぶかを考えるときは、英語そのものよりも、自社の事業構造や進め方を一度整理することが重要です。
パコロアでは、
海外拠点を持つべきかどうか、
どの形態が自社に合っているのか、
そして海外にどう説明すべきかを、
実務の視点から一緒に整理しています。
「この表現で本当に大丈夫か?」
「海外にどう伝わっているのか不安がある」
そんな段階であれば、一度立ち止まって整理することで、後の手戻りを減らすことができます。
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