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海外ペットビジネス参入ガイド:中小企業が成功するための実践ステップ

公開 2025年11月9日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Small dog sitting in a shopping cart inside a pet store aisle, symbolizing strategies for expanding pet business products and services into international markets

日本のペット市場は、ここ数年も堅調に拡大を続けています。

コロナ禍をきっかけにペットを家族として迎える人が増え、関連サービスや商品も多様化しました。

しかしその一方で、国内市場の競争は激しく、差別化が難しくなっているのも事実です。

「これ以上どう伸ばすか」「次の成長軸をどこに置くか」と悩む企業も少なくありません。

一方、世界に目を向けると、ペット関連ビジネスは今も右肩上がりで成長しています。

特にアジアでは、都市化と生活水準の上昇により、ペットを“家族”として扱う文化が急速に広がっています。

その流れに注目し、海外進出を検討する日本企業も増えていますが、

「どの国から始めればいいのか」
「現地では何が売れるのか」
「規制や検疫はどう対応すべきか」

といった具体的な課題に直面するケースがほとんどです。

本記事では、ペットビジネスを海外で展開するための市場動向、法規制、文化の違い、そして中小企業でも実行できる実践ステップを整理します。

単なる“情報収集”で終わらせず、「どう動くか」まで見える内容で構成しています。

世界のペット市場動向と成長の背景

世界のペット関連市場は、ここ10年で大きく姿を変えました。

Precedence Researchの調査によると、世界のペットケア市場は2025年の3,460億ドルから2034年には6,435億ドルに拡大すると予測されており、年平均成長率は約7.1%に達しています。

アメリカを中心に「ペットは家族」という価値観が定着し、2024年の世界市場規模は約3,600億ドル(約54兆円)に到達。

今後も年平均5〜6%で成長が続くと予測されています。

特に急成長しているのは、アジアと中南米です。

可処分所得の上昇に加え、共働き世帯や単身世帯の増加がペット需要を押し上げています。

欧米では高齢化した飼い主層が「健康」「持続可能性」を重視し、オーガニックフードや医療サービスの支出が増加。

一方、東南アジアや中国では「初めてペットを飼う層」が急拡大し、フード・トイレ用品・ウェア・ケア用品といった“生活必需型”アイテムの購入が進んでいます。

つまり、世界のペット市場は「成熟国=高品質志向」「新興国=新規参入層の開拓」という二極化構造が明確になってきたのです。

この変化を支えているのが、デジタル化と価値観の多様化です。

SNSを通じたペットとの日常発信が一般化し、飼い主の購買行動は「情報→共感→購入」へと移行しました。

その結果、ストーリー性のあるブランドや、健康・サステナビリティを訴求できる商品が支持を集めています。

日本企業にとって、この波は大きなチャンスです。

製品品質や衛生基準の高さは海外でも評価されやすく、特に“安全”“信頼”の領域では優位性があります。

しかし同時に、「どの国で」「どの層に」「どんな価値で」届けるかを明確にしなければ、価格競争に巻き込まれるリスクもあります。

次章では、こうした市場の中で生まれている具体的なペットビジネストレンドを整理し、日本企業がどの方向から参入すべきかを考えます。

海外で注目されるペット関連ビジネスモデル

海外のペット市場では、消費者の価値観の変化とテクノロジーの進化が新たなビジネスを生み出しています。

特に成長が顕著なのは、「健康志向」「サービス化」「デジタル連携」の3分野です。

まず注目すべきは、プレミアムペットフード市場の拡大です。

アメリカや欧州では、人間と同等の品質を求める“ヒューマングレード”製品が主流になりつつあり、原材料の透明性やサステナブル調達を重視する動きが強まっています。

一方、アジアでは“高品質×手ごろな価格”が選ばれやすく、無添加や機能性素材をうたうブランドが台頭しています。

中小メーカーでも、原料産地・製造工程を明確に説明できるブランドであれば、現地ディストリビューターの信頼を得やすい傾向があります。

次に成長を牽引しているのが、ペットサービス業の拡大です。

ペットホテル、トリミング、しつけ教室、そして獣医オンライン相談など、サービス提供型ビジネスが収益源として注目されています。

欧米ではサブスクリプション制でのケアサービスが普及しており、飼い主の「手間を省きたい」「常に健康を管理したい」というニーズを取り込んでいます。

この流れは東南アジアにも波及しており、現地企業との提携やフランチャイズ展開の可能性が広がっています。

さらに、デジタル技術の融合も外せません。

IoT首輪で健康状態を可視化したり、AIが食事内容を提案したりといった「スマートペットケア」が普及し始めています。

SNSやアプリ経由で商品購入や定期配送を行う仕組みも一般化し、ブランドは“モノを売る”から“体験を提供する”へと進化しています。

中小企業にとっても、既存製品にデジタル連携を組み合わせるだけで、差別化が実現できる時代です。

こうした動向を踏まえると、海外でのペットビジネス成功のカギは、「製品そのもの」だけではなく「飼い主との関係性」をどう設計するかにあります。

次章では、日本企業がその関係性づくりで直面しやすい失敗と、成功に必要な条件を整理します。

日本企業が海外で成功するための条件

海外進出で成果を出す企業は、戦略よりもまず「現地をどう見るか」という視点が異なります。

成功を分けるのは、情報量ではなく、データの元にある人の行動心理をどれだけ理解できるかです。

【市場データの読み違えに注意】

多くの企業は、品質への自信から「良いものを作れば売れる」と信じ、市場調査の数字を“売れる証拠”として扱いがちです。

しかし実際は、調査結果を正しく読解できていないケースが非常に多いのです。

たとえば、ASEAN市場で「プレミアムペットフードの需要が高い」という調査結果を見て、日本企業は高価格帯を狙いがちです。

ところが実際の消費行動は、「一部富裕層がSNSで話題にしているだけ」で、中間層の購買行動とは乖離している。

結果、現地では「高すぎて試せない」「1回きりでリピートしない」商品になってしまいます。

成功している企業は、数字をうのみにせず、“なぜその数字が出ているのか”という背景を読み取ります。

「購入理由」「使用頻度」「比較対象」をセットで分析し、単なる市場規模ではなく、“顧客心理の深さ”を把握する。

たとえば、タイではペットを家族として扱う意識が高まり、「獣医が勧めた」という信頼性のある情報源を重視するオーナーが増えています。

つまり、「どの価格帯が伸びているか」より、「どのメッセージが刺さっているか」を読む力こそが、海外で成功する企業の条件です。

【文化の違いを理解する】

日本では「かわいさ」や「丁寧さ」がブランドの信頼を支えていますが、海外ではそれが“過剰”と見られることもあります。

欧米の消費者が共感するのは、製品説明よりも「飼い主としての誇り」や「ペットと暮らす幸福」といったストーリーです。

成功する企業は、伝えるではなく共感されるデザインとコピーを選んでいます。

【信頼できるパートナーを選ぶ】

現地販売の失敗で多いのは、「展示会で名刺を交換した相手とそのまま契約」するケースです。

連絡が途絶える、販促が進まない、契約が形骸化する──こうした事例は少なくありません。

成果を出している企業は、「売れますよ、任せてください」という営業トークではなく、うまくいかない時も現場で試行錯誤を続ける力を持つパートナーを選んでいます。

短期の売上よりも、お互いに小さな改善を積み重ねる姿勢を重視することで、信頼関係と再現性を築いています。

【価格とブランドの整合性をとる】

日本価格を単純に換算して輸出すると、現地では「高級なのに無名」という立ち位置になりやすいです。

成功企業は現地の所得層や購買動機、競合ブランドの価格帯を分析し、“ちょうど良い立ち位置”を再設計しています。

海外市場でのブランドは「高級」である必要はなく、“その国の生活水準に合う信頼感”を示せるかどうかが鍵です。

【思い込みを手放す勇気】

海外で成功する条件とは、特別な資金や技術ではありません。

「自分たちの当たり前」をいったん脇に置き、現地のリアルな声を学び取る姿勢です。

市場を正しく読む力と、文化や人を理解する柔軟さ――それこそが、日本企業が海外で信頼を得る最初の一歩です。

成功事例に学ぶ海外進出の進め方(ケーススタディ)

ここからは、ペットフード事業を展開する中小企業「A社」をケーススタディ例として見ていきます。

現実的な課題と改善プロセスを通じて、海外進出を成功へ導くための具体的なステップを整理します。

【課題の背景】

A社は神戸に本社を置く創業20年のペットフードメーカー。

国内では無添加・高タンパクの商品で安定した売上を維持していましたが、少子高齢化による市場停滞を背景に、東南アジア進出を決断しました。

海外展示会を通じて現地代理店と契約し、輸出販売を開始しますが、数か月後には販売が伸び悩み、返品や在庫の滞留に直面します。

【最初のつまずき】

原因はよくあるものとはいえ、クリアするのは簡単ではないものでした。

つまり、現地価格が高すぎて購買層が限定され、さらにラインナップが多すぎて現地消費者がどれを選べばよいか分からない状態になっていたのです。

加えて、“わざわざ海外製商品をリピートしなければならない理由”が明確でなかったことも影響しました。

つまり、「日本で売れている良い商品を輸出した」だけでは、現地での販売の仕組みはつくれなかったのです。

【転換のきっかけ】

A社が方向転換したのは、担当者2名で現地に出張し、現地消費者の声を正面から聞き直したことがきっかけでした。

「お試しサイズが欲しい」「おすすめを絞ってほしい」「健康維持のために定期的に買いたい」——
これらの声を受け、A社は戦略を一から再設計します。

・ラインナップを3種類に絞り、価格を中間帯に統一
・定期購入特典(送料割引・健康管理アプリ連携)を導入
・SNS上で獣医インフルエンサーと協業し、購入体験のBeforeAfterを発信

その結果、輸出が少しずつ伸び、販売開始から1年かかりましたが、リピート率も安定して40%を超えるようになりました。

海外顧客の声を起点に、国内での自社のそれまでのやり方を変えたことが、大きな転機となったのです。

【成功の本質】

海外進出の成功とは、完璧な計画を立てることではありません。

むしろ、市場からの反応を観察し、仮説を検証し、柔軟に修正する姿勢にあります。

A社のケースが示すのは、海外ビジネスを単なる販路拡大ではなく、“市場理解の延長線上にある学びのプロセス”として捉える重要性です。

つまり、「現地の顧客の課題をゼロベースで学び、改めて解決する姿勢を持つ」ことが、海外ビジネスの再現性を高める鍵なのです。

まとめと今後のアクションプラン

海外ペットビジネスの市場は成長を続けていますが、成功できる企業は限られています。

差を分けるのは「情報量」ではなく、現地の課題を自社ならどうするか?と正しく評価し、意思決定し、行動に移せるかどうかです。

どれだけ市場データを分析しても、現場での検証と修正を繰り返さなければ成果にはつながりません。

まずは小さく試し、確かめながら進めることが重要です。

・ターゲット国の消費者ニーズをリサーチする
・展示会やオンライン商談で初期反応を得る
・テスト販売で価格・ラインナップ・訴求を検証する
・現地パートナーと共に販売計画を磨き上げる

この一連のサイクルを早く回せた企業ほど、リスクを抑えながら市場に根を下ろしています。

また、海外展開は単独では進めにくい領域です。

言語・法規制・流通・商習慣の壁を越えるには、外部の知見を活用しながら設計することが成功の近道です。

【まずは専門家に相談してみませんか】

パコロアでは、中小企業が海外進出を検討する際の

「市場調査」「現地パートナー選定」「初期費用計画」などを

支援するサポートを行っています。

海外進出は、情報を集めて終わりではなく、“最初の一歩を踏み出す行動”から始まります。

自社の製品やサービスが海外で通用するのか、どんな風に海外展開すべきか、一度相談してみたい方は、

パコロアの無料相談フォーム からぜひお気軽にお問い合わせください。

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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