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海外進出で補助金を使う前に考えるべきこと

公開 2026年1月26日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Person holding a magnifying glass and a money bag with a yen symbol, representing strategies for utilizing subsidies and business financing in Japan

海外進出を検討し始めると、必ずどこかで

「補助金、使えませんか?」

という話に行き着きます。

検索すると、国や自治体、支援機関による制度が数多く並び、

「選択肢は思ったより多い」

と感じる方も多いでしょう。

一方で実務の現場では、補助金を調べ始めたことで

「自社はどれに当てはまるのか分からない」
「今の段階で申請してよいのか判断できない」

という状態で止まってしまうケースは少なくありません。

補助金は、海外進出を進めるための有効な手段になり得ます。

ただし、使うタイミングや前提を誤ると、かえって動きを鈍らせてしまうことも。

このページでは、どんな補助金があるかを紹介する前に、海外進出で補助金を使う前に必ず整理しておくべき考え方、を解説します。

今の自社はどの段階にいるのか。
補助金は前に進むための手段になるのか。
それとも、まだ使わないほうがよいのか。

補助金を「探す前」に読むことを前提に、判断の軸を整理していきます。

なぜ海外進出で補助金の話から始めると失敗しやすいのか

海外進出の相談を受けていると、最初の一言が「使える補助金はありますか?」というケースは少なくありません。

もちろん、それ自体は間違いではありません。

海外進出には一定のコストがかかり、外部資金を検討するのは自然な流れです。

ただ、補助金の話から始めてしまうと、本来整理すべき前提が後回しになることがよくあります。

たとえば、

  • どの国で、何を、どの方法で売るのか
  • 最初の目的は「調査」なのか「販売」なのか
  • 自社が今できること、できないことは何か

こうした点が曖昧なまま、「この補助金は使えそうか」「申請できそうか」という判断に入ってしまうのです。

補助金は、事業計画の代わりにはなりません。

あくまで、決めた方針を実行するための手段です。

にもかかわらず、先に制度を当てはめようとすると、

  • 計画が制度に引っ張られる
  • 本来必要な検証や準備が抜け落ちる
  • スケジュールや使途の制約で動きにくくなる

といった状況が起こりやすくなります。

海外進出では、

「やりたいこと」ではなく「今、現実的に進められること」

を基準に判断する必要があります。

補助金の検討は、その整理が終わったあとで十分です。

まずは、自社が海外進出のどの段階にいるのか。

何を確かめるために、次の一歩を踏み出そうとしているのか。

その立ち位置をはっきりさせることが、補助金を“役に立つ手段”として使うための第一歩になります。

海外進出のどの段階で補助金を使うべきか

海外進出と一言で言っても、企業が置かれている状況はさまざまです。

まだ情報収集の段階なのか。
すでに売りたい商品や国が決まっているのか。
それとも、テスト販売や商談を始めようとしているのか。

補助金を検討する前に、自社が今どの段階にいるのかを整理することが欠かせません。

ここでは、海外進出を大きく3つの段階に分けて考えます。

段階1:調査・検討フェーズ

この段階では、「海外で売れるかどうか」をまだ確かめている途中です。

  • どの国に可能性があるのか
  • 現地ニーズや価格帯はどうか
  • 自社商品が受け入れられそうか

こうした情報を集め、仮説を立てている段階では、補助金を使う必然性は高くありません。

むしろ、小さく動いて、早く確かめることのほうが重要です。

調査のために申請や報告義務が増えると、スピードが落ちてしまうこともあります。

段階2:検証・テストフェーズ

次に来るのが、実際に海外市場で反応を確かめる段階です。

  • 海外展示会への出展
  • テスト販売やサンプル提供
  • 越境ECでの初期展開

このフェーズでは、補助金が効果を発揮しやすくなるケースが増えてきます。

理由は、「やること」と「目的」がある程度固まっているからです。

ただし、この段階でも重要なのは、補助金があるから動くのではなく、動く計画があるから補助金を使うという順番です。

段階3:拡大・投資フェーズ

海外での手応えが見え、次の一手を検討する段階に入ると、

  • 海外拠点の設置
  • 設備投資
  • 人材配置や体制づくり

といった、まとまった投資が必要になることがあります。

このフェーズでは、条件が合えば補助金や公的支援が資金面の後押しになる可能性があります。

一方で、要件や制約も重くなりやすいため、事業計画の精度が問われます。

まずは「今どこか」を見極める

補助金を使うかどうかは、制度の内容だけでは判断できません。

大切なのは、

  • 今は調査なのか
  • 検証なのか
  • それとも拡大なのか

この立ち位置を自社で認識することです。

この整理ができていれば、次に検討すべき補助金の「型」も自然と絞られてきます。

次の章では、中小企業が実際に検討することの多い補助金を、網羅ではなく、使われ方の視点で整理します。

中小企業が実際に検討することの多い補助金タイプ

実際のところ、海外進出向けの補助金は、それほど多くはありません。

中小企業が検討対象にできる制度は、年度ごとに見ても数えるほどです。

そのため、すべてを把握しようとする必要はなく、自社の段階に合うものだけを整理すれば十分です。

ここでは、実務の現場で相談が多い補助金を、制度名ではなく「使われ方」の視点で整理します。

タイプ1:海外販路開拓に使われる補助金

海外展示会への出展や、越境ECなど、「実際に売りに行く」段階で使われることが多いのがこのタイプです。

  • 海外展示会の出展費用
  • 海外向け販促物の制作
  • 越境ECの初期構築や広告費

比較的、小規模な金額から使えるものが多く、検証フェーズと相性が良いのが特徴です。

一方で、販路開拓と名がついていても、「何を検証したいのか」が曖昧なまま申請すると、成果につながりにくくなります。(採択自体もされづらいのが実際です。)

タイプ2:設備投資・新事業を伴う補助金

海外展開を前提に、設備投資や新しい事業構造に踏み込む場合に検討されます。

  • 生産体制の再構築
  • 海外向け仕様への設備対応
  • 海外拠点設立を含む計画

補助額が大きくなる可能性がある一方で、計画の精度や実行力が強く求められます。

このタイプは、「海外で売れるかどうか」をまだ検証していない段階では、慎重に判断する必要があります。

タイプ3:知的財産(特許・商標)関連の支援

海外進出では、商標や特許の管理を後回しにすると、あとで大きな問題になることがあります。

このタイプの支援は、

  • 海外での商標・特許出願
  • 模倣品対策の初期対応

といった、守りの投資を支えるものです。

販路開拓系の補助金と同時に検討されがちですが、本来は別軸で判断すべきものでもあります。

タイプ4:進出先やテーマが限定された補助金

特定の地域や国、テーマに絞った補助金も存在します。

  • 新興国向け
  • 特定産業向け
  • 政策テーマに沿ったもの

条件が合えば強力ですが、自社の計画を制度に寄せてしまうリスクもあります。

名前だけで飛びつかず、「本来の進出計画と噛み合うか」を冷静に確認することが重要です。

代表的な制度例(参考)

たとえば、海外展示会への出展や越境ECなど、販路開拓の検証フェーズでは、小規模事業者持続化補助金のように、比較的使途が明確で小規模から活用できる制度が検討対象になることがあります。

また、海外向けの設備投資や事業構造の転換を伴う場合には、中小企業成長加速化補助金や、ものづくり系補助金のグローバル枠が候補に挙がるケースもあります。

さらに、海外での商標・特許取得については、外国出願関連の支援制度を別枠で検討することで、後からのトラブルを防げる場合があります。

補助金は「選ぶ」のではなく「当てはめる」

補助金は、多い中から選ぶものではありません。

先に、

  • どの段階にいるのか
  • 何を検証・実行したいのか

を整理し、そこに当てはまる型だけを見る。

この順番を守ることで、補助金は初めて“使える手段”になります。

次の章では、補助金を使ってうまくいった企業と、そうでなかった企業の違いを見ていきます。

補助金を使ってうまくいった企業・うまくいかなかった企業の違い

補助金の採択結果だけを見ると、

「通った企業=うまくいった企業」

のように見えることがあります。

しかし、海外進出の現場では、補助金が採択されたあとに差がつくケースがほとんどです。

ここでは、実務でよく見られる違いを整理します。

うまくいった企業に共通する特徴

補助金をうまく活用できた企業には、いくつか共通点があります。

まず、補助金を前提に計画を立てていないこと。

  • 何を確かめたいのか
  • 海外でどこまで進めたいのか
  • そのために最低限必要な行動は何か

これらを先に整理し、「その一部を補助金で後押しする」という位置づけで使っています。

また、補助金の対象外になる活動についても、自社負担で進める覚悟を持っています。

補助金の範囲に収まらない部分を切り捨てず、全体として海外進出の流れを止めない点が特徴です。

うまくいかなかった企業で起こりやすいこと

一方で、補助金の活用が結果につながらなかった企業では、別の共通パターンが見られます。

たとえば、

  • 補助金に合わせて計画を組み替えた
  • 申請に通すこと自体が目的になった
  • 実行フェーズの体制や準備が足りなかった

といったケースです。

補助金の要件やスケジュールに引っ張られ、本来やるべき検証や判断が後回しになってしまうと、海外進出全体が中途半端な状態で止まることがあります。

「使ったかどうか」より「どう使ったか」

重要なのは、補助金を使ったかどうかではありません。

  • 何のために使ったのか
  • どのフェーズを前に進めたのか
  • 補助金がなくても続けられる設計か

こうした点が整理されていれば、補助金は有効な後押しになります。

逆に、補助金が終わった時点で動きが止まる場合、それは使い方に無理があった可能性が高いと言えます。

成否を分けるのは「申請前」の整理

補助金の成否は、申請書の出来だけで決まるものではありません。

その前段階で、

  • 海外進出の目的が明確か
  • 実行できる体制があるか
  • 想定外が起きたときの判断軸を持っているか

こうした整理ができているかどうかが、結果に大きく影響します。

次の章では、初めて補助金を検討する中小企業が、最低限押さえておきたい実務ポイントを整理します。

初めての補助金申請で最低限押さえる実務ポイント

補助金を初めて検討する中小企業にとって、一番の不安は「申請そのもの」よりも、進め方が合っているのか分からないことではないでしょうか。

ここでは、制度の細かい書き方ではなく、実務でつまずきやすいポイントに絞って整理します。

申請前に必ず決めておくべきこと

補助金の公募要領を読む前に、最低限、社内で決めておきたいことがあります。

  • 今回の海外進出で何を確かめたいのか
  • 補助金がなくてもやること、あるからやることの切り分け
  • 誰が責任を持って進行・判断するのか

これが曖昧なまま申請に入ると、採択後に「誰が何をやるのか」で混乱が起きやすくなります。

事業計画書でズレやすいポイント

補助金申請では、事業計画書の提出が求められることがほとんどです。

ここでよくあるのが、

  • 海外進出の話が抽象的になる
  • 市場調査や検証のプロセスが省略される
  • 実行体制が理想論になってしまう

といったズレです。

採択されることを意識しすぎると、「きれいな計画」になりがちですが、実務では現実的に回るかどうかのほうが重要です。

スケジュールと報告義務の現実

補助金には、実施期間や報告義務が必ずセットでついてきます。

  • 展示会や商談のタイミングが合わない
  • 想定より準備に時間がかかる
  • 計画変更が簡単にできない

こうした制約が、海外進出のスピードを落としてしまうこともあります。

申請前に、「このスケジュールで本当に動けるか」を冷静に確認しておく必要があります。

外部支援を使う場合の注意点

申請支援や計画作成を、外部に依頼するケースもあります。

その場合でも、

  • 海外進出の判断まで丸投げしない
  • 計画の中身を自社で理解しておく
  • 採択後の実行フェーズを誰が担うか決めておく

この点は欠かせません。

補助金申請はゴールではなく、実行のスタートだからです。

申請を見送るという判断もある

すべての補助金に、無理に応募する必要はありません。

  • 今は調査段階に集中したほうがよい
  • 自社負担で小さく進めたほうが早い
  • 次の公募を待ったほうが計画を固められる

こうした判断が、結果的に海外進出を前に進めることもあります。

次の章では、補助金を使うかどうか迷ったときに役立つ判断のチェックポイントを整理します。

【コラム:補助金は「使わないともったいない」ものなのか?】

海外進出の話をしていると、

「補助金は使わないともったいない」
「税金なんだから、もらわないと損だ」

という声を聞くことがあります。

たしかに、そう感じるのも無理はありません。

制度として予算が用意されており、条件が合えば活用できる以上、使わないことが損に見える場面もあります。

ただし、この考え方が成り立つのは、もともと進める計画があり、補助金が“後押し”になる場合に限られます。

海外進出の実務では、「補助金を使うこと」が目的になってしまい、

本来検証すべきことや判断すべきことが後回しになるケースも少なくありません。

その結果、

  • 計画は立派だが、実行が追いつかない
  • 補助金期間が終わった途端に動きが止まる
  • 次の判断に進めなくなる

といった状態に陥ることもあります。

補助金は、使えば必ず得をするものではありません。

使い方とタイミングを誤ると、むしろ負担になることもあるのが現実です。

大切なのは、「もらえるかどうか」ではなく、今の海外進出に本当に必要かどうか

その視点を持てていれば、補助金は“もったいない存在”ではなく、必要なときに選べる選択肢の一つになります。

補助金を使うかどうか迷ったときの判断チェックリスト

補助金を調べていると、「使えそうだけど、本当に今なのか?」と迷う場面が必ず出てきます。

そんなときは、制度の条件ではなく、自社の状況に照らして判断することが大切です。

以下は、実務の現場でよく使うチェックポイントです。

チェック1:補助金がなくても、最低限やることは決まっているか

  • 補助金がなくても進める前提の行動がある
  • 使えたら加速させたい内容が明確
  • 補助金が取れなかった場合の代替案がある

この3つが揃っていない場合、補助金ありきになっている可能性があります。

チェック2:検証したいことが具体的に言語化できているか

  • 何を確かめるための海外進出か
  • 成功・失敗の判断基準は何か
  • どの時点で次の判断をするのか

これが曖昧なままでは、補助金を使っても「やった感」だけが残りやすくなります。

チェック3:スケジュールと体制に無理がないか

  • 公募スケジュールと自社の動きは合っているか
  • 誰が主担当として動くのか決まっているか
  • 想定外が起きたときの判断者は明確か

海外進出は予定通りに進まないことが前提です。

制約が多すぎる場合は、一度立ち止まる判断も必要です。

チェック4:補助金終了後の次の一手が見えているか

  • 補助金期間が終わったあと、どう続けるか
  • 自社負担で継続できる設計になっているか
  • 一度きりで終わらない流れになっているか

補助金は一時的な支援です。

終了と同時に止まる計画は、リスクが高くなります。

チェック5:今は「使わない」という選択も現実的か

  • 自費で小さく試したほうが早くないか
  • 情報収集や調査を優先したほうがよくないか
  • 次の公募までに計画を練り直せないか

補助金を使わない判断は、決して後ろ向きではありません。

判断に迷ったら「今の目的」に立ち返る

補助金を使うかどうかで迷ったときは、制度の条件ではなく、今の海外進出の目的に立ち返ってください。

  • 目的に合っているか
  • 動きを止めないか
  • 次につながるか

この3点で整理できれば、補助金は自然と「使う」「使わない」が見えてきます。

次の章では、このページの内容を踏まえ、海外進出を現実的に前に進めるための次の一手を整理します。

海外進出を現実的に進めるための次の一手

ここまで、海外進出で補助金を使う前に整理しておきたい考え方を見てきました。

大切なのは、「使える制度を探すこと」ではなく、自社がどこまで進めたいのかを見極めることです。

海外進出は、一度決めた計画を最後までやり切るものではありません。

小さく試し、
手応えを確認し、何度も修正し、
次の判断を重ねていくプロセスです。

その中で補助金は、条件が合えば有効な後押しになります。

ただし、判断を代わってくれるものではありません。

迷ったまま進めないために

もし今、

  • 何から手を付けるべきか迷っている
  • 補助金を使うべきか判断がつかない
  • 計画を立てたいが、前提整理に不安がある

こうした状態であれば、一度立ち止まって全体を整理することが有効です。

海外進出では、最初の判断が、その後の負担やスピードを大きく左右します。

パコロアができること

パコロアでは、補助金ありきではなく、海外進出そのものをどう設計するかという視点から支援を行っています。

  • 今の段階に合った進め方の整理
  • 補助金を使うかどうかの判断支援
  • 計画と実行がズレないための事前設計

「まだ申請する段階ではないかもしれない」

そう感じている企業こそ、相談のタイミングです。

次の一歩を、整理された状態で踏み出すために

海外進出は、情報が多いほど判断が難しくなります。

だからこそ、制度や手法の話に入る前に、自社の前提を一度整理することが重要です。

パコロアでは、その整理を一緒に行うための無料相談を用意しています。

補助金を使うかどうかを決める前に、今の状況を客観的に整理したい方は、ぜひ一度ご相談ください。

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

著者プロフィールを見る

PaccloaQ

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