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CISTECに相談する前に知っておきたい5つのこと|中小企業のための準備ガイド

公開 2025年10月14日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Two engineers in a smart factory discussing export control data visualization on transparent digital screens.

「CISTEC(システック)に相談したいけれど、何を準備して行けばいいのか分からない」

――そう感じていませんか?

CISTECは、経済産業省の外郭団体として、安全保障貿易管理や輸出関連の技術相談を受け付けています。

しかし、相談前の情報整理が不十分だと、肝心の回答までたどり着けず、再面談が必要になるケースも少なくありません。

本記事では、「CISTECに相談する前に知っておくべき5つの準備ポイント」を中小企業向けに分かりやすく解説します。

リスト規制や非該当証明の確認をはじめ、社内で整理すべき情報やよくある落とし穴を実例を交えて紹介。

この記事を読めば、初めてのCISTEC相談をスムーズに進めるための実務準備が整います。

そもそもCISTECとは?

CISTEC(システック/安全保障貿易情報センター)とは、経済産業省の外郭団体として設立された、輸出管理に関する専門機関です。

正式名称は「Center for Information on Security Trade Control(安全保障貿易情報センター)」で、

企業が安全保障貿易管理を適切に行うための情報提供・相談・教育・支援を行っています。

CISTECでは、企業からの次のような相談を受け付けています。

  • 自社製品や技術が「リスト規制」に該当するかどうか
  • 「非該当証明書」を発行すべきケースかどうか
  • 経産省への申請が必要なケースかどうか
  • 安全保障貿易管理体制をどう整えるべきか

中小企業にとってCISTECは、「行政への問い合わせの前に、専門家の目線で助言をもらえる場所」と考えると分かりやすいでしょう。

ただし、CISTECは判定を“代行”する機関ではありません。

相談内容をもとに、企業自身が法令に基づいて判断できるよう、方向性を示してくれる立場です。

また、現在はオンライン面談(Web相談)も可能で、図面や仕様書を共有しながらの技術的なヒアリングにも対応しています。

時間を有効に活用するためにも、事前の準備が相談の質を左右します。

CISTECに相談すべきタイミングとは

CISTECは「安全保障貿易管理の専門相談窓口」ですが、すべての輸出関連案件で相談が必要というわけではありません。

「自社で判断が難しい」と感じた段階で、早めに相談するのが理想です。

たとえば、次のような場面に該当する場合は、CISTECへの相談を検討しましょう。

  • 製品や技術が「リスト規制」に該当する可能性があるとき
    仕様や構成要素が複雑で、該当・非該当の判断があいまいな場合。
  • 取引先や最終ユーザーが海外の軍事関連企業・研究機関などの場合
    用途が民生目的でも、最終用途や転用の懸念がある場合は確認が必要。
  • 顧客から「非該当証明書」を求められたとき
    証明書を発行する前に、判断根拠の妥当性をチェックしたい場合。
  • 社内で判断が分かれた・根拠を示せないとき
    営業部門と技術部門の見解が異なるケースは特に注意。

CISTECは主に法人・企業を対象に面接相談を提供しており、メール相談は賛助会員や大学のみが対象となっています(個人的な相談や個人事業主ベースの相談は原則対象外)。

ただし、相談時間は限られており、回答内容は「法的判断」ではなく技術的助言にとどまります。

そのため、事前に製品情報・用途・国情報を整理しておくことが、相談の精度を高める第一歩になります。

CISTECに行く前に自社で準備すべき5つのチェックポイント

CISTECの相談をスムーズに進めるためには、「何を聞きたいか」だけでなく、「どこまで整理できているか」が重要です。

限られた相談時間の中で的確なアドバイスを得るためには、最低限、以下の5つを社内で確認しておくと良いでしょう。

1.リスト規制表との照合を行ったか

CISTECがまず確認するのは、製品や技術が「リスト規制」に該当するかどうかです。

相談前に、外為法(輸出貿易管理令別表第1)に掲載されている項目と自社製品の仕様を照らし合わせておきましょう。

特に「数値」「機能」「用途」がどの条項に関係しそうかを把握しておくと、面談が格段にスムーズになります。

CISTECの相談員も、どの条文を前提に話すかが明確な方が、的確に回答できます。

2.技術内容・図面・資料を整理したか

CISTECでは、製品や技術の具体的な仕様や構造を基に助言を行います。

そのため、図面・仕様書・製品カタログなどの技術資料は、開示可能な範囲で整理して持参または共有しましょう。

図面が複雑な場合は、主要構成と性能値をまとめた簡易資料でも構いません。

情報が整理されていないと、相談員が判断に必要な前提を把握できず、再面談になるケースがあります。

3.顧客国・最終用途を確認したか

安全保障貿易管理では、「何を輸出するか」だけでなく、「どこへ」「誰に」「何のために」が重視されます。

取引先の国・最終ユーザー・用途を明確にしておくことで、リスク判断がしやすくなります。

特に懸念国(米国制裁国、国連安保理決議対象国など)や、軍民両用(デュアルユース)用途の場合は、具体的な説明資料を用意しておくと信頼性が高まります。

なお、近年は「米国 EAR(輸出管理規制)」に関する照会が急増しており、CISTECでも個別対応が難しいケースが増えています。

CISTEC自身も公式に、EAR関連の個別判断は対応を控える旨を公表しており(CISTEC 米国規制に関する個別のご照会についてのお願い)、

現在はウェブ上で「米国 EAR の輸出規制と関連動向等」の情報を提供しています。

そのため、該当しそうな取引を扱う場合は、まずこれらの公開情報を確認したうえで相談すると効果的です。

4.非該当判断の社内フローを把握しているか

相談時に、「社内でどのような手順で該非判定をしているか」を聞かれることがあります。

担当者一人の判断で完結していないか、技術・営業・管理部門が連携できているかを見直しておきましょう。

CISTECは、単なる相談機関ではなく、自社のコンプライアンス体制を整えるための教育の場でもあります。

社内体制を簡潔に説明できるようにしておくと、相談後の改善点も明確になります。

5.過去の相談・他社事例を調べたか

CISTECのサイトには、過去の判定事例やFAQ集が多数掲載されています。

似たような製品や技術が既に取り上げられていないかを事前に確認しておくと、相談の重複を避け、より具体的な質問に時間を使うことができます。

また、同業他社の対応状況を把握することで、自社の判断基準の位置づけも見えやすくなります。

以上、これらの5項目を整理してから相談すれば、「何が分からないのか」が明確になり、CISTECの助言を最大限に活かすことができます。

次の章では、こうした準備をしていても陥りがちな中小企業の“落とし穴”について解説します。

中小企業がやりがちな3つの落とし穴

どれだけ準備を整えていても、「相談の進め方」や「社内の体制づくり」でつまずくケースは少なくありません。

ここでは、CISTEC相談を経験した中小企業が陥りやすい“3つの落とし穴”を紹介します。

1.製品仕様を営業部門だけで説明しようとする

輸出管理の判断には、技術的な仕様や構成の理解が欠かせません。

営業担当だけで相談に臨むと、「具体的な数値や構造が分からない」となり、結果的に技術部門への再確認が必要になります。

可能であれば、技術担当・品質管理・営業の3者で情報を共有してから相談に臨むのが理想です。

2.「非該当」と判断しても、証拠資料を残さない

CISTECで助言を受けたあと、「非該当だから問題なし」と判断しても、その根拠を記録・保管していない企業は意外と多いものです。

のちに取引先や経産省から確認を求められた際、「どうやって非該当と判断したのか」を説明できないと、内部統制や信頼性の欠如とみなされるリスクがあります。

相談結果はメモや議事録として残し、図面や照合資料もセットで保管しましょう。

3.提出先や相談先を混同してしまう

CISTECは「相談・助言」を行う機関であり、法的な申請や承認を行う場所ではありません。

一方、経済産業省(安全保障貿易管理課)への申請や届出は、行政手続きにあたります。

この二つを混同してしまうと、「CISTECに出したから完了した」と誤解し、申請漏れや遅延につながるおそれがあります。

「CISTECで方向性を確認したうえで、必要に応じて行政への正式な手続きを進める」、という流れを意識しておくことが大切です。

CISTEC相談は、法令の最前線に触れる絶好の学びの場でもあります。

「判断の正しさ」だけでなく、「判断を支える仕組み」を整えることが、企業の輸出管理体制を強くする第一歩です。

どうしても難しいときは専門家に相談を

CISTECは、安全保障貿易管理に関する助言と方向性の提示を行う専門機関です。

ただし、企業の実務に入り込んだ「該非判定の根拠づくり」や「英文ドキュメントの整備」など、日々の業務レベルでの対応支援まではフォローしていません。

また、米国のEARやEUのデュアルユース規制など、海外規制との複合判断が求められる案件は、CISTEC側でも個別対応が難しい場合があります。

このような場合は、輸出管理や海外法規制に詳しい専門家・コンサルタントにサポートを依頼することが効果的です。

自社で抱え込まない「準備相談」という選択肢

中小企業の現場では、「社内に詳しい人がいない」「どこから整理すべきか分からない」という理由で、CISTEC相談すら後回しになってしまうことがあります。

しかし、最初の整理さえできれば、相談内容の質は大きく変わります。

たとえばパコロアでは、輸出管理や海外取引の初動段階における「CISTEC相談前の棚卸し支援」や「相談書面の事前整理」もお手伝いしています。

技術内容・用途・顧客国の整理などを一緒に行うことで、限られたCISTEC面談時間をより有効に活用できるようになります。

CISTECでの相談は“ゴール”ではなく“スタート地点”

CISTECでの相談は、法令対応のスタートラインに立つための第一歩です。

自社の情報を整理し、法令理解を深めることで、輸出管理だけでなく海外ビジネス全体のリスクマネジメント力が向上します。

「社内でどこまで準備すべきか」
「CISTECに何を聞けばいいのか」

そんな段階で迷っているなら、パコロアに一度ご相談ください。

現場の実務目線から、CISTECを最大限に活かすためのサポートを行っています。

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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