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輸出で利益が出ない8つの理由|中小企業がやりがちな落とし穴と改善策

更新 2026年8月18日 公開 2020年9月19日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Global air cargo logistics and export profit management concept with cardboard boxes and airplane overlay.
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うちもそろそろ海外展開したいんですが、輸出ってやっぱり儲かるもんですか?

pacco10

実は「輸出=利益が出る」とは限りません。

海外で売れたとしても、輸送費や規制対応、現地でのメンテナンスなどに想定以上のコストがかかり、利益がほとんど残らないことがあります。

さらに注意したいのは、コストだけではありません。

日本では売れている商品でも、現地では価格が合わない、継続して買う顧客がいない、そもそもその商品を必要とする市場がまだ育っていない、といったケースもあります。

つまり輸出を考えるときは、

「海外で売れそうか」だけではなく、
「その商品をその市場へ輸出して、継続的に利益を出せる事業になるか」

まで見る必要があります。

今回は、輸出しても利益が出にくい商品・市場の特徴を、8つのパターンに分けて紹介します。

自社の商品が当てはまっていないかを確認しながら、輸出を始める前に何を見極めるべきか整理していきましょう。

illustration of 8 categories that are difficult to commercialize as an export

1. 高すぎる輸送コスト

利益率を下げる国際輸送費の実態

大きくて重い商品は、どの地域へ輸出しても国際輸送コストが跳ね上がります。

特に空輸の場合、サイズや重量によって1商品あたりの送料が製品価格の20〜30%を超えることもあり、薄利商品ではすぐに赤字に転落する可能性があります。

「アジア圏なら近いから安いのでは?」と思う方も多いですが、現地に同等性能の製品がある場合、送料分だけ価格競争で不利になります。

国内価格そのままで展開しても、現地の安価な代替品に勝てないのが現実です。

ただし、以下のような条件を満たす場合は例外です。

  • 現地で調達できない独自機能や品質を持つ
  • 世界的に認知された別格ブランドで価格競争に巻き込まれない

こうしたケースでは、高い輸送費も顧客が納得して負担しやすくなり、利益を確保しやすくなります。

Comparison table of estimated international shipping costs by transport method, product size, and destination, showing impact on export profitability for small businesses
輸出時の想定送料コスト(概算)

この表からも分かるように、航空便での輸出は利益を大きく圧迫する場合があります。

船便は航空便より輸送費を抑えやすい一方、近隣国でも集荷や通関を含めると2週間程度、遠距離では1か月以上かかることがあります。

経由地や混載、港湾の混雑などによってはさらに長期化するため、納期を重視する商材では注意が必要です。

2. 見えないコスト:規制・規格対応

無視できないコンプライアンス費用

各国にはそれぞれ輸出入に関する規制や技術基準があります。

例えば、例えばEUでは、機械、電気・電子機器、医療機器など、対象となる製品についてCEマーキングへの適合が求められます。

CEマーキング、何から始めればいい?費用・指令探し・取得フローを“まず一歩”から解説

こうした認証を取得するには、

  • 現地コンサルや技術者の調査・翻訳費用
  • 製品の試験・書類作成費
  • 登録費・代理申請の代行手数料

などがかかり、数十万円〜100万円超えのケースも珍しくありません。
※第三者認証機関・支援会社11社への対面ヒアリングをもとにしています。

「知らなかった」では済まされず、違反した場合は罰金・輸出停止・ブランド毀損のリスクもあります。

特に中小企業にとって、こうした費用の見落としは利益を大きく削る要因になります。

【改善のヒント】

輸出対象国を絞り、対応が比較的簡単な国・製品カテゴリから始めるのも一手です。

Export compliance cost breakdown for small businesses, including CE marking and regulatory approval fees across different countries
輸出時の規制・認証対応コスト(例)

※上記は機械・電子部品系の一例です。製品カテゴリ・申請ルートにより大きく変動します。

※すべて正式な代理申請や通訳・書類作成を含んだ想定です。

規制対応は一部ではなく、「事前設計」で決まります。

輸出ビジネス検討チェックリスト【PDF】

3. 現地対応が難しいメンテ商品

顧客体験が売上を左右する

美理容師用シザー、包丁、畳、業務用水槽などのメンテナンスが前提となる商品を輸出する場合、事前に「現地でどう対応するか」の戦略が欠かせません。

現地パートナーの育成、メンテナンスの受け付けルートの確保、修理キットの提供など、輸出前の段階で構築しておくべき体制がいくつもあります。

しかし、それらのコストや手間をかけても利益が出るかどうかを考えるうえで、「カスタマーエクスペリエンス(CX)」も重要な判断材料になります。

CXとは、商品やサービスの購入前後に顧客が感じる「心地よさ」「驚き」「感動」などの総合的な体験価値のこと。

たとえ価格が高く、メンテに手間がかかっても、CXが優れていれば、顧客はリピートしてくれる可能性があります。

メンテ商品を海外で成功させるには、製品力+顧客体験の両立がカギになります。

"Matrix comparing maintenance intensity and customer experience importance for export products like scissors, aquariums, and tatami mats."
メンテナンス商品×CXの影響度マトリクス(例)

4. 現地の格安品に負けるリスク

品質より価格が決め手になる現実

日本の商品は品質もデザインも優れている——そう信じたいところですが、

実際には「それでなくても現地品で十分」というケースも多くあります。

特に、現地でも似たような機能・見た目の商品が出回っており、そこに送料や関税が加わると、価格競争で太刀打ちできないことも。

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うちは機械も扱ってますが、やっぱり難しいですかね…。

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重くてメンテが必要な装置でも、競合にない仕様やブランド力があれば、

海外で売れている日本の製品はたくさんあります。

「価格+機能+信頼」で差をつければ、勝機はあります。

価格で勝てないなら、どうするか?

ひとつの手は、海外現地での生産・組立モデルへの転換です。

現地化すればコストを抑え、競争力を維持しつつ利益を出すことが可能です。

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なるほど、現地生産か……

構造転換的な視点が必要ですね。

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ただし、次に紹介するタイプの商品は、それも難しい。

5番目以降は、より慎重な判断が必要になります。

Comparison chart showing export product pricing vs local alternatives, highlighting the impact of shipping costs on competitiveness.
価格競争で苦戦する理由(例)

5. 思い出は残るが、売上が続かない商品

越境ECが生む“第2の旅体験”

インバウンド客が日本で「便利!」「かわいい!」と心を掴まれた商品。

けれど、帰国後に再購入の手段がないと、それはただの“旅の思い出”で終わってしまいます。

これは「リピートの壁」と呼ばれ、インバウンド商品の海外展開において大きな課題です。

  • 越境ECの整備(公式サイト or プラットフォーム)
  • SNSで体験と商品を結びつけるストーリー発信
  • ワークショップや開発過程に顧客を巻き込む仕組み
  • 継続利用で知識や価値が高まる“ガイド的ブランド”構築

旅の記憶と商品が“つながり続ける仕組み”を持つことで、帰国後の再購入やリピートにつながる可能性が高まります。

Table showing strategies for turning inbound souvenir products into repeat purchases through cross-border e-commerce and customer experience design.
旅の思い出品”の売上持続モデル

「売れる」だけではなく「続く仕組み」がなければ、せっかくの海外ビジネス、意味がありません。

海外ビジネス成功例|中小企業の海外展開に共通する5つの法則【業界別・成功事例&ビジネスモデル解説】

6. 異文化への対応が難しい商品

定着には長い時間と資金が必要

海外と日本では文化や風習の背景が異なるため、「売れるか売れないか」が見えづらい商品が存在します。

たとえば──
仏壇、着物、扇子、雪駄、和小物、日傘、マスクなど。

いずれも日本では日常でも、海外では“何に使うの?”となりがちです。

文化的に強く共感される理由がなければ、現地のごく一部の層にしか響かず、販売は限定的になりがちです。

特に文化普及が必要な商品では、以下のような課題があります:

  • 商品の用途や背景を説明する必要がある
  • 異文化の中での「違和感」や誤解を乗り越える必要がある
  • 教育や発信に長期的な投資が必要になる

たとえば、キッコーマンの醤油。

アメリカ市場に浸透するまでに40年をかけ、ようやく「KIKKOMAN=しょうゆ」という定着に成功しました。

貼り薬文化がなかったアメリカで、サロンパスは30年以上の啓蒙活動を通じて、今では同国の貼り薬シェアNo.1ブランドとなっています。

このように、文化そのものを変えるほどの挑戦には、時間も費用も、そして粘り強さも必要です。

現地市場で「育てる覚悟」がなければ、撤退を前提にした柔軟な方向転換も視野に入れるべきです。

"Table comparing the cultural distance, estimated time to market acceptance, and required strategies for exporting culturally unique Japanese products."
異文化商品を普及させるまでにかかる時間とコスト

7. 顧客層が未成熟な市場

商品の細分化が通じにくい理由

日本の小売市場は、顧客層が非常に細かく分かれています。

これは、日本に中間層がしっかり存在しているからこそ成り立つ現象です。

たとえば、

  • ビレッジバンガード
  • マツモトキヨシ
  • ドン・キホーテ

これらは似たような商品も扱いますが、顧客ターゲットや店舗演出は全く異なります。

日本ではこのような多様な店舗戦略が成立していますが、海外市場では事情が異なります。

特にアジアの新興国では、中間層がまだ成長途上。

そのため、細かい顧客ニーズに応じた商品展開や多店舗戦略は、そもそも成立しないことが多いのです。

日本では「誰のための商品か」が明確でも、その“誰か”が、海外にはまだ存在しない。

このような状況は珍しくありません。

日本市場の特殊性を見落とし、同じ戦略をそのまま海外で適用しても、ターゲットがいないため販売が振るわないという結果に至ることもあります。

たとえば、日本では「東京で流行すれば、地方都市でも売れる」という構図がよくありますが、これは極めて例外的です。

海外では国や地域によって文化・所得・嗜好が大きく異なり、一括りにはできません。

Table comparing the size of the middle class in different countries, and its impact on product segmentation and retail expansion strategies.
中間層の厚みと商品戦略の関係

8. 市場投入のタイミングが早すぎる

現地ニーズの成熟度を見極める

国によっては、製品やサービスを導入するよりも、人手で対応する方が安上がりというケースがあります。

たとえば、ある日本企業がインドで市場調査(F/S調査)を行った際、日本では必需品となっている家庭用品が「大工にオーダーメイドで作ってもらう方が安い」と判明。

製品化された輸入品よりも、現地の人力コストの方がはるかに低かったのです。

このように、「壊れても安価に買い替えられる」「修理も人手が安い」状況では、日本製品の耐久性や品質の高さが評価されにくいことがあります。

しかし、こうした市場も永遠にそのままではありません。

実際には1〜2年などの短期間で状況がガラッと変わることも。

  • 人件費が上昇する
  • 消費者の生活水準が上がる
  • 時間効率が重視され始める

こうした変化によって「長持ちする製品を買った方が得だ」と市場の認識が変わり、日本製品が受け入れられるようになることも多いのです。

つまり、輸出を始めるタイミング次第で、結果は大きく異なるのです。

事前に現地の経済状況や所得水準の変化を把握したうえで、輸出・進出の計画を練ることが成功への近道になります。

Table showing export feasibility based on local labor cost trends and market readiness, highlighting timing strategies for international expansion.
市場導入タイミングによる輸出可否の変化

市場の見極めを誤ると、たとえ日本で成功している商品やサービスでも失敗します。

海外進出前にF/S現地調査はしましたか

president4

モノより人の方が安いんですか、日本では考えられないなぁ。

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そうなんです。

日本では当たり前に評価される商品の価値が、海外でも同じように評価されるとは限りません。

ただし、5から8に当てはまる商品も、決して売れないわけではありません。市場やタイミング、売り方によって事業化できる可能性はあります。

輸出できる商品と、輸出して利益が出る商品は違う

ここまで紹介した8つのケースに当てはまるからといって、「海外では売れない」ということではありません。

実際に、ハサミ、畳、着物など、一見すると海外展開の難易度が高そうな商品でも、海外市場で事業化に成功している企業はあります。

重要なのは、「輸出できるか」だけで判断しないことです。

商品を海外へ送ることができても、輸送費や規制対応、現地でのメンテナンス、価格競争、文化の違い、市場の成熟度などを考慮すると、十分な利益が残らないことがあります。

また、最初は売れても、継続購入されなければ事業としては続きません。

輸出を検討するときには、

  • 現地価格でも競争力があるか
  • 輸送費や規制対応費を含めても利益が残るか
  • 現地で販売・メンテナンスを継続できるか
  • その商品を必要とする顧客層が十分に存在するか
  • 今が市場投入に適したタイミングか

といった点を、輸出を始める前に確認しておくことが重要です。

「日本で売れているから海外でも売れる」
「海外から問い合わせが来たから輸出できそう」

と考えるのではなく、自社の商品と対象市場の組み合わせで、事業として成立するかを見極める必要があります。

もしここまで読んで、「自社の商品はどうなのだろう」と感じた場合は、商品だけでなく、対象市場、販売方法、必要なコスト、社内体制まで含めて整理してみてください。

なお、パコロアでは、30年以上にわたる海外ビジネスの実務経験とAIを活用した多角的な分析をもとに、自社の強み・ターゲット市場・販売方法・社内体制を整理し、貴社に合った海外展開の進め方を30ページ超の個別判定レポート『海外進出チェック』としてご提供しています。

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小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・BtoB・BtoC・DtoCなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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