はじめに
海外進出を検討する際、まずは海外展開事業計画を策定しますが、机上のリサーチだけでは、分からないところや確信の持てない箇所が、いくつも出てきます。それらを現地に行って、関係各社に会い、実際に話を聞きながら、確認していきます。
その事業を進めるか進めないかを決めるための、客観的な判断材料を集めるF/S現地調査は、一度では終わらず複数回行うこともあります。
輸出のF/S調査を行う理由としては、
- 商品やターゲットに合う展示会が開催されていない
- 業界そのものの情報がかなり少ない
- その国にその商品のニーズはあるのか、あるとすればどんなニーズがあるのか全く見当もつかない
など、海外進出の初期段階で商品やサービスの可否判断、あるいは更なる作り込みのために、実施することがあります。
投資のF/S調査の場合は、やや注意が必要でしょう。
なぜならF/S調査をすることはしたが、適切なF/S調査は行わずに、工場設立、店舗開設を進めていき、黒字化を見ることなく撤退にいたる企業が意外に多いためです。
適切なF/Sであれば正常性バイアスはある程度排除できますが、することはしたレベルのF/S調査では正常性バイアスを外すことが容易ではないでしょう。
F/S(フィージビリティスタディ)ってはじめてです。投資の場合、どんなことを現地調査しますか?
主に
- 販売先を確保できるか
- 生産拠点を設立できるか
- 仕入れ調達先を確保できるか
- 従業員を雇用できるか
- 事業自体は運営できるか
- 注意点は何か
が分かれば投資事業を前に進めることができます。
生産拠点を設立するためのToDoや、事業運営の可否については、貿易・投資促進を担う日本の行政機関ジェトロのサイトで事前に調べられることも多いですが、現地の規制当局に直接確認すべきこともあるでしょう。
ジェトロ 進出時の制度・手続きを知る
現地のコンサルタントを雇って調べさせることもありますが、どの当局に、どうやって質問し、どう回答を得たかの全プロセスは念のため自社でも入手しておきましょう。
現地の日本大使館やジェトロ、商工会議所、日本人会にも訪問し、現地でどのようなビジネスを展開したいと考えているかを積極的に伝え、現地の状況説明(ブリーフィング)を受けておくもの良いでしょう。
ローカルの仕入れ調達先を見つけることや、品質基準の合う先を確保することは容易ではありませんが、日系企業ばかりでは価格優位性は低くなるため、ローカルと日系のどちらも調査が必要でしょう。アジア以外ではほとんどがローカル企業からの調達となることもあります。
人材確保には、大学や訓練学校などの訪問に加え、人材派遣会社でもヒアリングをします。会計事務所や弁護士事務所とも顧問契約を前提とした面談で現地事情を確認することができるでしょう。
すでに現地に進出している日系企業へのヒアリングも、同業種、他業種共に確認できるとより良いでしょう。
投資のF/Sの注意点としては、例えば投資の調査で現地に行くと、ヒアリング先の現地の関連各社の中で、投資しないでください、という立場の関係者はほとんどおらず、いるとすれば競合他社くらいとなります。
工業団地、不動産会社、人材派遣会社、税理士・弁護士・監査法人、仕入れ調達先、ときには顧客でさえ、どうぞ来てくださいとウエルカムモードいっぱいです。
畳みかけるように現地の行政や投資省も特別なインセンティブや全面サポートといった美辞麗句を並べることもあるでしょう。
しかしよくよく考えると、現地は投資を受ける側で、日本はお金を支払う側です。進出企業が増えると現地はうるおいます。
現地側が、投資してくれる会社を気持ちよく褒めるのは当然のこととなります、挨拶に過ぎません。これらのウエルカムモードは、自社の事業の実現可能性を保証するものでも何でもないのです。
そして「どうぞ来てください」と言っていた現地(日系)顧客が、気がつくと2社購買3社購買へ移行し最終的には顧客でも何でもなくなる話などは、枚挙にいとまが有りません。
(1.販売先を確保できるか、は後述の輸出のF/S項目を参照してください)
F/S(フィージビリティスタディ)ってはじめてです。輸出の場合、どんなことを現地調査しますか?
主に
- 売れるかどうか
- 売るときの障壁は何か
- より多く売るには何が必要か
- 注意点は何か
が分かれば、輸出事業を前に進めることができます。
そのためには、現地の消費者インタビューをしたり、実際の使い心地をヒアリングします。あるいは顧客候補企業にアポイントをとり商談をするなかで、(1)~(4)を聞き出します。競合企業への納入業者やその関係者にも会い、競合企業の実情を探ります。
業界の専門家や、○○工業会、△△産業協会から、業界の全体像や時系列の情報を得ます。輸入規制や流通の違いについてはディストリビューターや卸業者にもヒアリングします。メディアやフリーペーパーからは業界の反応や消費者動向が確認できるでしょう。
輸出のF/Sの注意点としては、生産財の場合は、新しい商品への切り替え懸念を丁寧にヒアリングすること、消費財の場合は特に現地販売価格について他社動向も含め、できるだけ具体的に情報収集することが肝要でしょう。
また、その商品の周辺商品、カテゴリー違い商品についても合わせてリサーチできれば判断材料に厚みもでてきます。
輸出の場合は、投資のF/Sとは逆で、現地はお金を支払う側で、日本はお金を受け取る側です。従い、F/S調査時にウエルカムモードなどはなく、掛け値なしの評価、率直な意見、現実に近い実態を知ることができるでしょう。
F/S(フィージビリティスタディ)の後、この事業の可能性は有る、もしくは無い、はどのように判断しますか?
事業の可能性がほとんどない場合、実は海外展開事業計画もほとんど埋まりません。いえ、文面は埋まるのですが、今、投資すべき理由、使命感、会社の過去・現在・未来のつながりに、腹落ち感がとぼしく対外的な説得が厳しいでしょう。
可能性が無いわけではないが有るとも言い難い、どちらでもないという場合は、判断がとても難しいでしょう。
なぜなら、そのどちらでもない事業や、そのような事業を持つ会社は、海外展開してもしなくても、判断が難しい意思決定の場面が、その後も続くと思われるためです。
つまり今の市場の声がその事業やその会社に届いていない可能性、そのことに自覚できていない可能性が高いのです。
激変するVUCA*の時代、意思決定できない今の状態に真摯に向き合わないことは、更なる”わからない”を増やすリスクとなります。
”海外進出をしない”と意思決定すれば、国内事業にリソースを全部投入できます。”海外進出をする”と決めれば、そのためのToDoを粛々と進めていけます。
そのどちらにも舵を切れないというのは、停泊する時間が増えることを意味します。
持て余しているものは何か?
お客さまの”本質的な”お困りごとを理解しているか?
今あるリソースや実績から無理に未来や海外展開へ線をひこうとしていないか?
本当にやりたいことは何か?
などなどをじっくり考えてみる良い機会なのかもしれません。
一方で、海外展開事業計画策定後、ここだけがどうしても分からない、ここが分かれば事業展開の可否が見極められる、といった段階までつめて現地調査ができる事業であれば、実現可能性は無いのではなく(程度は未知ですが)“ある”状態といえます。
あとは、掛け算です。
事業の実現可能性×経営者の覚悟×企業体力×担当者の資質
実際にF/S調査のあとで、海外展開を決断し、輸出や海外投資を進めた中小企業は毎年一定数おられます。
海外進出を成功させる企業に共通することは、
- ずっと先を見ている
- 努力と無理を間違えない
ということかもしれません。
私たちは、これから100年かけて100年前の人口にゆっくり戻っていく稀有なタイミングに立っています。
人口が減るため会社の数も減っていくでしょう。
労働者減を補うためにDX戦略やAI投入も加速し、今までと異なる世界の扉が次々と開いていくことでしょう。
海外進出を志し、必要な能力を開発することで、中小企業は確実に強くなります。
結果的に海外進出しなくとも、これからやってくる未知の波に乗れるだけの筋力はついていくでしょう。
海外進出は特別なことではありません。
海外顧客について知り、必要な能力を開発し、戦略を構築したあとは、chin up!、情熱をもって、ただただ実践あるのみです。
ただただ実践あるのみですか。
いやあ、壮大な話になってきた。
なおかつ、先は長そうです、これは心してかからないと!
稀有な時代に、私たちは、生きているんですね!
何だかワクワクしてきたぞ=
(あんなにいやがっていたのに)ワクワクですか・・(泣)
見える景色も、変わってきました。
海外進出、想像していたより「ずっと」スゴいかもです。
いいですね!
お二人の熱量、ビンビン伝わっています!!
経営者の志あってこそ、担当者の熱意あってこその、海外進出です。
御社の商品が海外で普通に売れている未来をぜひ創ってください。
楽しみです!
もし困ったことがあればいつでも、パコロアQを呼び出してください。
馳せ参じます!
>パコロアのサービスについて
ハセ、サンジル・・って??
・・・(涙)
冗談ですっ(笑)
期待しててください、がんばります!!
その勢いです!
Good Luck !!