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海外投資をする

海外進出前にF/S調査はしましたか

公開日時:2020年08月14日

更新日時:2025年06月04日

海外進出の際の新規開拓や新規事業展開には、様々な市場調査が行われます。

なかでも海外事業の実現可能性の現地調査、F/S(feasibility study)(フィージビリティスタディ)の実施は海外事業を成功させるためには必須です。

F/S調査(エフエスちょうさ)は海外各地域の市場の詳細を把握するため、海外投資、輸出、いずれを検討する際にも行われます。

海外進出前にF/S調査をする理由

海外進出を検討する際、まずは海外展開事業計画を策定しますが、机上のリサーチだけでは分からないところや確信の持てない箇所がいくつも出てきます。

それらを現地に行って、関係各社に会い、実際に話を聞きながら、不明点を解消すべく、事実を確認していきます。

海外事業を進めるか進めないかを決めるための、客観的な判断材料を集めるF/S現地調査は、一度では終わらず複数回行うこともあります。
F/S現地調査は輸出を始める際にも、海外拠点を立ち上げる際にも、いずれを検討する際にも行われます。

輸出のF/S現地調査を行う理由としては、

  • 商品やターゲットに合う展示会が開催されていない
  • 業界そのものの情報がかなり少ない
  • その国にその商品のニーズはあるのか、あるとすればどんなニーズがあるのか全く見当もつかない

など、海外進出の初期段階で商品やサービスの可否判断、あるいは更なる作り込みの目的のために、実施することがあります。

投資のF/S現地調査の場合は、やや注意が必要でしょう。

なぜならF/S調査をすることはしたものの、適切なF/S調査は行わずに工場設立、店舗開設を進めていき、黒字化を見ることなく撤退にいたる日本企業は表に出ている情報以上に多いためです。

適切で客観的なF/Sを実施していれば、正常性バイアスはある程度排除できますが、少し現地視察をした、という程度のF/S調査では自社に都合の良い調査と情報収集に終始するリスクがあるでしょう。

正常性バイアス・・・自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。
つまり、他社ならともかく自社であれば海外投資も成功するのでは、今を逃すと機会を失うのでは、という冷静さに欠いた、根拠に乏しい甘い期待。

海外投資のF/S調査の進め方

主に

  1. 販売先を確保できるか
  2. 生産拠点を設立できるか
  3. 仕入れ調達先を確保できるか
  4. 従業員を雇用できるか
  5. 事業自体は運営できるか
  6. 注意点は何か

が分かれば海外での投資事業計画を前に進めることができます。

まずは、生産拠点を設立するためにすべきこと=ToDoが一覧で分かるようにリスト化します。

実際の事業運営の可否については、
・現地の規制当局に直接確認
・貿易・投資促進を担う日本の行政機関ジェトロのサイトで情報収集
で調査していきます。

現地のコンサルタントやエンジニアリングの専門家を雇って調べてもらう方法もありますが、どの当局に、どうやって質問し、どう回答を得たかの全プロセスは念のため自社でも入手しておきましょう。

現地の日本大使館ジェトロ商工会議所日本人会にも訪問し、現地でどのようなビジネスを展開したいと考えているかを積極的に伝え、現地の状況説明(ブリーフィング)を受けておくもの良いでしょう。

日系企業ばかりを調査しても、得られる情報に偏りがでるため、ローカル企業と日系企業のどちらにもF/S調査は必要です。

アジア地域以外のほとんどの国では、ローカル企業からの調達となることが多いのですが、ローカルの仕入れ調達先を見つけることや、品質基準の合う先を現地で確保することは中々容易ではありません。

人材確保には、大学や訓練学校などの訪問に加え、人材派遣会社でもヒアリングをします。
会計事務所や弁護士事務所とも顧問契約を前提とした面談で現地事情を確認することができるでしょう。

すでに現地に進出している日系企業へのヒアリングも、同業種、他業種共に確認できるとより良いでしょう。

海外投資のF/Sの注意点としては、訪問した先で耳障りの良い話しか、情報収集できない可能性がある旨を事前に理解しておく必要がある、ということです。

例えば海外投資の現地調査では、ヒアリング先の関連各社の中で、自社に対し「投資しないでください」、という立場の関係者はほとんどいません。いるとすれば現地の競合他社くらいとなります。

工業団地、不動産会社、人材派遣会社、税理士・弁護士・監査法人、仕入れ調達先、ときには顧客でさえ、どうぞ来てくださいと歓迎ムードでいっぱいです。

畳みかけるように、現地の政府機関、行政や投資省からも、特別なインセンティブを提供します、全面サポートいたします、といった強いアプローチを受けることも多いでしょう。

生産拠点を設立できる日本企業は限られている、貴社こそ投資すべきだと、事業拡大構想を美辞麗句と共に具体的に説明を受けると、やはりどんな経営者でもその気になってしまうのは当然かもしれません。

しかしよくよく考えると、歓待を受けることは当然のことです。
現地は投資を受ける側で、日本企業はお金を支払う立場です。

現地では、より多く進出企業が増えることを願っています。

海外現地側が、投資してくれる日本企業を気持ちよく褒めるのは当然のことです、つまりこれは「挨拶」に過ぎません。

これらの「挨拶」を自社の事業の実現可能性を保証するもの、と錯覚しないことが重要です。

そして「ぜひこちらに来てください」と言っていた現地(日系)顧客が、従来の価格では購入してくれなくなり、気がつくと2社購買3社購買へも移行していて、最終的には自社の顧客でも何でもなくなる話などは、枚挙にいとまが有りません。

海外投資の場合の現地調査では、良い事だけではなく現実的な話、聞きたくない話も情報収集してくることが肝要です。

(1.販売先を確保できるか、は後述の輸出のF/S項目を参照してください)

輸出のF/S調査の進め方

主に

  1. 海外現地で売れるかどうか
  2. 海外で売るときの障壁は何か
  3. 海外市場でより多く売るには何が必要か
  4. 海外輸出をする際の注意点は何か

が分かれば、輸出事業を前に進めることができます。

そのためには、現地の消費者インタビューをしたり、実際の使い心地をヒアリングします。

あるいは顧客候補企業にアポイントをとり商談をするなかで、(1)~(4)を聞き出します。
競合企業への納入業者やその関係者にも会い、競合企業の実情を探ります。

業界の専門家や、○○工業会、△△産業協会から、業界の全体像や時系列の情報を得ます。
輸入規制や流通の違いについてはディストリビューターや卸業者にもヒアリングします。
メディアやフリーペーパーからは業界の反応や消費者動向が確認できるでしょう。

輸出のF/Sの注意点としては、生産財の場合は、新しい商品への切り替え懸念を丁寧にヒアリングすること、消費財の場合は特に現地販売価格について他社動向も含め、できるだけ具体的に情報収集することが肝要でしょう。

また、その商品の周辺商品、カテゴリー違い商品についても合わせてリサーチできれば判断材料に厚みもでてきます。

輸出の場合は、投資のF/Sとは逆で、現地はお金を支払う側で、日本はお金を受け取る側です。

従い、F/S調査時に歓迎ムードなどはほぼなく、掛け値なしの評価、率直な意見、現実に近い海外市場の実態を知ることができるでしょう。

海外進出の可能性の判断方法

海外事業の実現可能性がほとんどない場合、実は海外展開事業計画の紙面もほとんど埋まりません。

いえ、紙面はある程度埋まるのですが、今、海外投資すべき理由、海外市場での使命感、海外進出することによる、企業の過去・現在・未来のつながりに、腹落ち感がとぼしく、対外的な説得が難しく感じます。

海外事業の実現可能性が無いわけではないが、可能性が有るとも言い難い、どちらでもない、という場合は、実際にはままありますが、経営判断がとても難しいでしょう。

しかし厳しいことを言えば、激変するVUCAの時代だからこそ、「意思決定ができない現状」に、まずは真摯に向き合うべきなのかもしれません。

”海外進出はしない”と意思決定すれば、国内事業にリソースを全部投入できます。
”海外進出をする”と決めれば、そのためのToDoを整理し新しい挑戦が始まります。

そのどちらにも舵を切れないというのは、停泊する時間が増えることを意味します。

経営陣が今、持て余しているものは何か?
お客さまの”今の本質的な”お困りごとをリアルに理解しているか?
今あるリソースや実績から無理に未来や海外展開へ線をひこうとしていないか?
自社が本当にやりたいことは何か?

などなどを一度じっくり考えてみる良い機会なのかもしれません。

VUCAとは Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた言葉で、想定外が次々に起こり未来予測が困難な状態のこと。21世紀の世界情勢はVUCAそのもの、と言えます。
Warren Bennis and Burt Nanus 1985 book titled Leaders : The Strategies for Taking Charge

海外進出が特別ではなくなる未来

一方で、海外展開事業計画策定後、ここだけがどうしても分からない、ここが分かれば事業展開の可否が見極められる、といった段階までつめて現地調査が実行できそうな事業であれば、実現の可能性が「ある程度はある」と言えるでしょう。

あとは、掛け算です。

事業の実現可能性×経営者の覚悟×企業体力×担当者の資質


実際にF/S現地調査のあとで、海外進出を決断し、輸出や海外投資を進めた日本企業は毎年一定数おられます。

海外進出を成功させる企業に共通することは、

  • 常に意思決定を続ける(←ここがかなり大変です)
  • 変容することを恐れない

ということかもしれません。

私たちは、これから100年かけて100年前の人口にゆっくり戻っていく稀有なタイミングに立っています。

人口が減るため会社の数も減っていくでしょう。

労働者減を補うためにDX戦略やAI活用も加速し、今までと異なる世界の扉が次々と開いていくことでしょう。

海外進出を志し、必要な能力を開発することで、中小企業は確実に強くなります。

結果的に海外進出しなくとも、これからやってくる未知の波に乗れるだけの筋力はついていくでしょう。

海外進出は特別なことではありません。

海外顧客について知り、必要な能力を開発し、戦略を構築したあとは、chin up!、情熱をもって、ただただ実践あるのみです。

ただただ実践あるのみですか。
いやあ、壮大な話になってきた。
なおかつ、先は長そうです、これは心してかからないと!

稀有な時代に、私たちは、生きているんですね!
何だかワクワクしてきたぞ=

(あんなにいやがっていたのに)ワクワクですか・・(泣)

見える景色も、変わってきました。

海外進出、想像していたより「ずっと」スゴいかもです。

いいですね!
お二人の熱量、ビンビン伝わっています!!

経営者の志あってこそ、担当者の熱意あってこその、海外進出です。
御社の商品が海外で普通に売れている未来をぜひ創ってください。

楽しみです!

もし困ったことがあればいつでも、パコロアQを呼び出してください。
馳せ参じます!

>パコロアのサービスについて

ハセ、サンジル・・って??

・・・(涙)

冗談ですっ(笑)
期待しててください、がんばります!!

その勢いです!
Good Luck !!

PaccloaQ

中小企業のコンサルティング&実務(OJT)支援ならパコロアにお任せください。
延べ1900社以上の海外進出支援実績