特に、進出先のビジネス環境や文化、制度などを正しく理解するためには、F/S(Feasibility Study=実現可能性調査)の実施が極めて重要です。
F/S調査(エフエスちょうさ)は、現地の市場環境やインフラ、法規制、パートナー候補、コスト構造などの具体的な状況を把握することで、進出判断に必要な客観的なデータを得るためのプロセスです。
この調査は、単にwebで情報を探すだけでは補えない、現場の空気やリアルな声を収集する役割も果たします。
準備を怠ると、進出後の想定外の課題に直面し、取り返しのつかない費用や時間がかかるリスクも高まります。
ここでは、輸出・投資それぞれの視点から、F/S調査の重要性と具体的な進め方について解説します。
進出先での確実な判断材料を得るために、実施すべきポイントと手法をぜひご確認ください。


海外進出前にF/S調査する理由
海外展開を検討する際には、まず海外事業計画を策定します。
しかし、国内でのwebリサーチや統計データの分析だけでは、現地の市場環境や制度、文化的背景までを把握するのは困難です。
そこで行われるのがF/S(フィージビリティスタディ)現地調査です。
現地の取引先候補や関係者に直接会い、事業の具体的な可能性や課題を探ります。
特に制度や商習慣、ロジスティクスなど現地インフラに関する情報は、インターネット上では得にくく、実際に行動して確かめる必要があります。
この調査は1回では終わらず、進出対象国の状況に応じて複数回行うケースも少なくありません。
輸出を前提としたF/S調査では、以下のような課題を確認するために行います:
- 商品やターゲットに合う展示会が開催されていない
- 業界情報が乏しく、市場規模が把握しづらい
- その国にその商品のニーズはあるのか、あるとすればどんなニーズがあるのか全く見当もつかない
など、海外進出の初期段階で商品やサービスの可否判断、あるいは更なる作り込みの目的のために、実施することがあります。
こうした場合、現地の商業環境に即した価格設定や、現地向けにローカライズしたプロモーション施策を検討するために、基礎的なデータ収集が必要です。
一方で、投資型のF/S調査にはより深い注意が必要です。
例えば、製造拠点の設立や直営店の出店など大きな資本が動く場合、「何となく行った」程度の視察に終わってしまい、調査結果が主観的・楽観的な期待に偏っていることがあります。
特に正常性バイアス*によって、想定されるリスクを正確に評価できなくなることも。
費用をかけたF/S調査であっても、調査会社や専門機関に丸投げせず、自社がどう判断し、何を得るべきかを明確に設定したうえで、具体的な行動と仮説検証を伴うことが重要です。
正常性バイアス・・・自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。
つまり、他社ならともかく自社であれば海外投資も成功するのでは、今を逃すと機会を失うのでは、という冷静さに欠いた、根拠に乏しい甘い期待。

海外投資のF/S調査の進め方

海外に生産拠点を構える、仕入れ先を確保する、販売網をつくる
——このような海外投資における事業計画を前に進めるには、以下の6つの観点から現地調査を進めることがポイントです。
- 販売先を確保できるか
- 生産拠点を設立できるか
- 仕入れ・調達先を確保できるか
- 従業員を確保できるか
- 継続して事業運営営できるか
- 法規制・文化的ギャップ・注意点は何か
が分かれば海外での投資事業計画を前に進めることができます。
まずは、生産拠点を設立するためにすべきこと=ToDoが一覧で分かるようにリスト化します。
実際の事業運営の可否については、
・現地の規制当局に直接確認
・貿易・投資促進を担う日本の行政機関ジェトロのサイトで情報収集
で調査していきます。
現地のコンサルタントやエンジニアリングの専門家を雇って調べてもらう方法もありますが、どの当局に、どうやって質問し、どう回答を得たかの全プロセスは念のため自社でも入手しておきましょう。
現地の日本大使館や日本貿易振興機構(ジェトロ)などの機関による最新レポートの活用が有効です。
海外進出後、現地でどのようなビジネスを展開したいと考えているかを積極的に伝え、現地の状況説明(ブリーフィング)を受けておくもの良いでしょう。
商工会議所や日本人会への訪問も、信頼性の高いデータやネットワークの獲得につながります。
加えて、ローカル企業と日系企業の両方に対してF/S調査を行い、情報の偏りを防ぐことが重要です。
とくにアジア地域以外では、調達や購買先は現地企業が中心となるケースも多く、調査対象は広く設定しましょう。
人材確保に関しては、現地の大学や訓練校、さらには人材派遣会社へのヒアリングが有効です。
また、会計・法務分野では、現地の専門家(会計士、弁護士など)と面談し、文化や制度の違いから発生しうるリスクも事前に洗い出しておきましょう。
ここで注意したいのは、訪問先から得られる情報が“歓迎ムード”に偏ってしまう点です。
投資先の各ステークホルダーはたいてい「どうぞ進出してください」という姿勢で接してきます。
実際、工業団地、不動産会社、人材紹介会社、税理士事務所など、関係先の多くが投資を歓迎し、行政機関からもインセンティブの案内を受けることが珍しくありません。
これは当然のことです。
なぜなら現地は「投資を受ける側」、日本企業は「費用を払う側」だからです。
相手のプロモーションを“成功確約の証拠”と捉えてしまうのは危険です。
実際には、海外進出後に「価格が高い」と既存顧客(日系企業)からの発注が止まり、いつのまにか競合(ローカル企業)への切り替えが起こっていたというケースも頻発しています。
だからこそ、F/S調査では良い情報ばかりでなく、耳の痛い話・課題・デメリットも掘り起こす必要があります。
それらを含めて、客観的な分析と冷静な判断を下すことが、海外投資成功の鍵となります。
(1.販売先を確保できるか、は後述の輸出のF/S項目を参照してください)

輸出のF/S調査の進め方

輸出事業を前に進めるためには、以下のような点を把握する必要があります:
- 海外現地で売れるかどうか
- 海外で売るときの障壁は何か
- 海外市場でより多く売るには何が必要か
- 海外輸出をする際の注意点は何か
これらを確認するため、現地の消費者へのインタビューを行い、実際の使い心地や反応をヒアリングすることが重要です。
また、顧客候補企業へのアポイントを取り、商談を通して生の声を聞き出すアプローチも有効です。
競合企業への納入業者やその関係者にも会い、競合の販売方法やシェアの実態を掴むと良いでしょう。
業界の専門家や業界団体(例:○○工業会、△△産業協会)からは、業界の全体像や時系列変化の情報を収集できます。
輸入規制や流通経路については、現地のディストリビューターや卸業者にヒアリングし、流通上の課題や商習慣を把握しましょう。
現地メディアやフリーペーパーも、消費者の嗜好やプロモーション効果の手がかりとなる場合があります。
輸出F/S調査において特に重要なのは、生産財の場合「新しい商品への切り替えに対する懸念」を丁寧に聞き出すこと。
消費財では「現地販売価格」について他社動向を含め、具体的に情報を集めることが成功のポイントです。
また、その商品の周辺商品や別カテゴリーの商品も合わせてリサーチすることで、競合との差別化や価格設定のヒントが得られます。
輸出F/Sの調査では、投資型F/Sと異なり、日本企業はお金を“受け取る側”であるため、現地では歓迎ムードはほとんどなく、むしろシビアな意見が得られます。
これは、客観的で正確なデータや評価を収集するうえで、非常に貴重な機会となるでしょう。

海外進出の可能性の判断方法

F/S調査を経てもなお、海外事業の実現可能性が感じられない場合は、事業計画自体の紙面もなかなか具体化しません。
ある程度書けたとしても、海外投資の理由や使命感、会社の未来像が曖昧で、社内外への説得力に欠ける内容となることが多いのです。
一方、現地調査によって「ここさえ分かれば意思決定できる」という課題が特定されている段階ならば、実現の可能性は「ある程度はある」と言えるでしょう。
ただし、「進出すべきか、やめるべきか、判断がつかない」という状態も現実にはよくあります。しかし、この曖昧な状態をそのままにせず、真摯に向き合うことが経営判断の第一歩です。
進出しないと決めれば国内にリソースを集中でき、進出すると決めればToDoを整理して動き出せます。判断を保留したままでは、企業活動は停滞してしまうのです。
ここで問い直したいのは:
- 経営陣が今、最も持て余しているのは何か?
- 顧客の本質的なニーズを把握しているか?
- 既存のリソースや実績から無理に未来を描こうとしていないか?
- 企業として本当に目指したい姿とは?
——こうした根源的な問いを考える良い機会でもあります。
海外進出が特別ではなくなる未来
VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代において、海外展開の意思決定には、事業の実現可能性 × 経営者の覚悟 × 企業体力 × 担当者の資質、の「掛け算」が必要です。
事業の実現可能性×経営者の覚悟×企業体力×担当者の資質
* VUCAとは Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた言葉で、想定外が次々に起こり未来予測が困難な状態のこと。21世紀の世界情勢はVUCAそのもの、と言えます。
Warren Bennis and Burt Nanus 1985 book titled Leaders : The Strategies for Taking Charge
F/S調査の後、海外進出を決断して成功した日本企業も確実に存在しています。
その共通点は下記の通りです:
- (答えがなくとも)常に意思決定をつづける(←ここがかなり大変です)
- 変容を恐れず、進化しつづける
私たちは、これから100年かけて100年前の人口にゆっくり戻っていく稀有なタイミングに立っています。
人口が減るため会社の数も減っていくでしょう。
労働者減を補うためにDX戦略やAI活用も加速し、今までと異なる世界の扉が次々と開いていくことでしょう。
海外進出を志し、必要な能力を開発することで、日本の中小企業は確実に強くなります。
結果的に海外進出しなくとも、これからやってくる未知の波に乗れるだけの筋力はついていくでしょう。
海外進出は特別なことではありません。
海外顧客について知り、必要な能力を開発し、戦略を構築したあとは、chin up!、情熱をもって、ただただ実践あるのみです。

ただただ実践あるのみですか。
いやあ、壮大な話になってきた。
なおかつ、先は長そうです、これは心してかからないと!

稀有な時代に、私たちは、生きているんですね!
何だかワクワクしてきたぞ=

(あんなにいやがっていたのに)ワクワクですか・・(泣)

見える景色も、変わってきました。

海外進出、想像していたより「ずっと」スゴいかもです。

いいですね!
お二人の熱量、ビンビン伝わっています!!

経営者の志あってこそ、担当者の熱意あってこその、海外進出です。
御社の商品が海外で普通に売れている未来をぜひ創ってください。

楽しみです!

もし困ったことがあればいつでも、パコロアQを呼び出してください。
馳せ参じます!
>パコロアのサービスについて

ハセ、サンジル・・って??

・・・(涙)

冗談ですっ(笑)
期待しててください、がんばります!!

その勢いです!
Good Luck !!