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グローバル展開は英語でどう説明する?海外企業に伝わる事業戦略の伝え方【例文付き】

公開 2025年12月29日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Business team discussing global strategy around a world map, representing small business expansion into international markets

海外展開を検討し始めると、避けて通れないのが「英語でどう説明するか」という問題です。

ただし、多くの中小企業がつまずくのは、英語力そのものではありません。

「グローバル展開を考えています」と英語で言える。
資料を翻訳することもできる。
それでも、海外企業とのやり取りが前に進まない。

そうした状況に心当たりはないでしょうか。

原因の多くは、英語表現の正しさではなく、何を・どこまで・どんな順序で伝えているかにあります。

グローバル展開は、単語を置き換えれば伝わる概念ではなく、事業の考え方や進め方そのものを説明する行為だからです。

この記事では、「グローバル展開」を英語でどう説明すれば、海外企業に意図が正しく伝わるのかを、実務の場面を前提に整理します。

辞書的な訳語や例文の紹介ではなく、初回のメール、商談、パートナー探しといった実際のシーンで使える説明の組み立て方を中心に解説します。

英語が得意かどうかよりも、「説明できる中身が整理されているか」。

その視点を持つことで、英語でのコミュニケーションは負担ではなく、海外展開を前に進めるための手段になります。

グローバル展開を英語で説明する場面はどこにあるか

「英語で説明する」と聞くと、商談やプレゼンテーションを思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、実際にはグローバル展開を英語で説明する場面は、もっと早い段階から、しかも断続的に訪れます。

たとえば、最初に多いのが海外企業への初回コンタクトです。

問い合わせメール、協業の打診、展示会後のお礼メールなど、正式な商談に入る前のやり取りでも、自社が何を考え、どこまで進めようとしているのかは必ず伝わります。

この時点で説明が曖昧だと、「まだ準備段階の会社」「具体性がない」と受け取られてしまうことも珍しくありません。

次に、パートナー探しや情報収集の場面があります。

代理店候補、現地パートナー、現地支援機関との面談では、商品説明以上に、なぜ海外に出ようとしているのか、どの市場を想定しているのか、といった背景が重視されます。

ここで求められるのは流暢な英語ではなく、考え方が整理されているかどうかです。

さらに、会社紹介資料や事業概要の説明も重要な場面です。

Webサイト、PDF資料、会社紹介用の簡易的なスライドなど、英語で書かれた情報は、そのまま企業の姿勢として受け取られます。

単なる直訳では、「日本語では説明できているが、英語では意味がぼやけている」状態になりがちです。

こうして見ていくと、グローバル展開を英語で説明する場面は、特別なプレゼンの場だけではなく、むしろ日常的なコミュニケーションの積み重ねであることが分かります。

そして、その一つひとつが、海外企業からの信頼形成に影響しています。

だからこそ、英語表現を考える前に、「どの場面で、何を伝える必要があるのか」を整理しておくことが欠かせません。

この整理ができていれば、英語は後からでも何とか間に合います。

英語で伝えるべきなのは「展開」ではなく「考え方」

「グローバル展開」は、英語にすると global expansioninternational expansion と表現できます。

自社のグローバル展開を説明する場面では、We are planning global expansion. という一文から話し始めることも多いでしょう。

ただし、そこで説明が止まってしまうと、相手には何も伝わりません。

次に続けて説明すべきなのは、次のような点です。

  • なぜ海外なのか
  • どの市場を想定しているのか
  • どの段階から始めるのか
  • どこまで検証が進んでいるのか

なかでも、strategyvision といった言葉の使い方には注意が必要です。

英語では、これらの言葉は「中身が伴っていること」を前提に受け取られるため、抽象的な表現が続くと、構想はあるが具体的な検討はこれから、という印象を与えやすくなります。

一方で、完璧な計画を示す必要はありません。

海外企業が評価するのは、すべてが決まっていることではなく、どこまで考え、どこをこれから検証しようとしているかが整理されていることです。

そのため、英語表現を考える際には、「どう訳すか」よりも先に、日本語で自社の考え方を分解してみることが重要になります。

なぜ海外なのか。
なぜ今なのか。
なぜそのやり方なのか。

この整理ができていれば、使う英語は自然と限定され、説明も過不足のないものになります。

英語は目的ではなく、考え方を伝えるための手段にすぎません。

次の章では、こうした考え方をもとに、グローバル展開を英語で説明する際の基本的な構成を、実務で使える形に落とし込みます。

グローバル展開を英語で説明する基本構成(そのまま使える型)

グローバル展開を英語で説明する際、多くの企業が「何から話せばいいのか」で迷います。

そこで有効なのが、あらかじめ説明の順序を固定しておくことです。

ここでは、海外企業との初回コミュニケーションでも使いやすい、基本的な構成を4つの要素に分けて整理します。

① なぜ海外なのか

最初に求められるのは、「なぜ海外に目を向けているのか」という背景です。

市場規模、成長性、国内とのバランスなど、理由はシンプルで構いません。

重要なのは、海外展開が思いつきや流行ではなく、事業判断として位置づけられていることが伝わることです。

ここが曖昧だと、その後の説明全体が軽く見られてしまいます。

② どこから始めるのか

次に伝えるべきなのは、展開の範囲です。

いきなり「世界」を語る必要はありません。

特定の国や地域、テスト的な市場、限定的なチャネルなど、最初の一歩がどこなのかを示すことで、現実的な印象になります。

海外企業は、最初から大きな計画を期待しているわけではありません。

③ 何を検証しようとしているのか

グローバル展開では、すべてが確定している状態はほとんどありません。

むしろ、「何をこれから検証するのか」を明確にしている企業のほうが、信頼されやすい傾向があります。

顧客の反応、価格帯、販売方法、パートナーの役割など、検証対象を整理して伝えることで、現実的な進め方が見えてきます。

④ どこまで考えているか

最後に、「現時点でどこまで考えているのか」を示します。

これは完成度の高さを競うためではなく、検討の深さを共有するためのものです。

決まっていること、まだ決まっていないこと、その理由。

この線引きができていると、相手もどのレベルで話せばよいか判断しやすくなります。

この4つの要素を意識するだけで、英語表現は必要以上に増えません。

たとえば、初期段階の説明であれば、次のような英語で十分に意図は伝わります。

例文

We are planning to expand into overseas markets, starting with a limited test in [country/region].

At this stage, our focus is on validating market demand and pricing, rather than scaling immediately.

Based on the results, we will decide on the next steps for expansion.

特別な表現は使っていませんが、「なぜ」「どこから」「何を検証するのか」「どこまで考えているか」が一通り含まれています。

伝える内容が整理されていれば、使う英語は自然と限定されます。

次の章では、こうした構成を意識せずに話してしまった場合に、どこで誤解が生まれやすいのかを見ていきます。

その英語、どこで誤解されているか

グローバル展開を英語で説明しているつもりでも、話がかみ合わないと感じる場合、原因は英語力ではないことがほとんどです。

誤解は、伝え方の構造で生まれています。

実務でよく見られるのは、次のようなケースです。

前提条件を合わせないまま話を始めている

海外企業は、日本市場や自社の置かれている状況を前提として知っているわけではありません。

前提説明がないまま話を進めると、話の重要度や現実味が正しく伝わりません。

何を話すのかの全体像を最後まで見せていない

話しながら考えを補足していく説明は、日本語では通じやすくても、英語では理解しづらくなります。

最初に「今日は何について説明するのか」が示されていないと、相手は判断軸を持てません。

結論より先に背景を話してしまう

背景や経緯を丁寧に説明しても、結論が見えない状態が続くと、相手は話の着地点を探し続けることになります。

英語でのビジネスコミュニケーションでは、結論や方向性を先に示す方が理解されやすい場面が多くあります。

エビデンスや具体例がなく、意見なのか事実なのか分からない

市場が成長している、ニーズがありそう、といった表現が続くと、それが事実なのか自社の見解なのかが判別できなくなります。

数値、過去の実績、テスト結果など、根拠の種類を明確にすることが重要です。

主語が曖昧で、誰の判断なのか分からない

「検討しています」「進めています」といった表現では、自社の判断なのか、顧客の反応なのか、外部要因なのかが伝わりません。

主語を補わないと、責任の所在も見えにくくなります。

こうした状態では、文章として英語に訳せたとしても、相手の理解は進みません。

誤解されているのは単語ではなく、説明の設計そのものです。

次の章では、こうした誤解を避けるために、業界ごとにどの点を意識して英語表現を選ぶべきかを整理します。

業界別に見る「グローバル展開」の英語表現の違い

「グローバル展開」という言葉は同じでも、業界によって、英語で伝えるべきポイントは大きく異なります。

重要なのは、単語を業界用語に置き換えることではなく、相手が最初に確認したい論点がどこにあるかを押さえることです。

IT・SaaS系の場合

ITやSaaS分野では、スピード感と検証姿勢が重視されます。

海外企業が関心を持つのは、完成度の高い計画よりも、どの仮説をどの順で検証しているかです。

そのため、英語で説明する際は、

  • どの課題を解決しようとしているのか
  • すでに試している市場やユーザーはいるのか
  • どの指標で手応えを判断しているのか

といった点を、簡潔に示す方が理解されやすくなります。

たとえば、次のような説明であれば、今どこまで進んでいるかが一文で伝わります。

For our global expansion, we are currently testing our service with a small number of users in [region] to validate product-market fit.

将来の構想を語るよりも、「今、何を試しているのか」を示す方が、現実的な印象になります。

製造業の場合

製造業では、再現性と安定性が重視されます。

製品そのものよりも、品質管理、供給体制、継続性といった点に質問が集まりやすいのが特徴です。

英語表現でも、

  • どの工程が自社の管理下にあるのか
  • 海外向けに仕様や規格をどう考えているのか
  • 量産や継続供給をどう想定しているのか

といった要素を整理して伝えることで、現実的な印象になります。

英語で説明する際も、成長戦略より、運用の見通しが伝わる表現を意識することが重要です。

We are exploring overseas expansion by working with local partners, while maintaining quality control and production management in Japan.

どの工程を自社で管理し、どこを現地に委ねるのかが読み取れる説明は、安心感につながります。

サービス業の場合

サービス業では、人や運用への依存度が高いため、仕組み化の度合いが注目されます。

海外展開において、誰がどのようにサービスを提供するのかは、特に慎重に見られます。

英語で説明する際は、

  • サービスの品質をどう担保するのか
  • 現地パートナーやスタッフの関与はどこまでか
  • 日本と同じ提供方法を想定しているのか

といった点を明確にすることで、誤解を防げます。

例えば下記のように誰が、どのようにサービスを運用するのかが明確になっていれば、過度な期待や誤解を防ぐことができます。

Our overseas expansion focuses on building a service model that can be operated consistently with local staff and partners.

このように、業界ごとに重視される論点が異なるため、同じ「グローバル展開」という言葉でも、説明の組み立ては変える必要があります。

英語表現を考える前に、「この業界の相手は、まず何を確認したいのか」を意識することが、誤解を避ける近道です。

次の章では、こうした整理を踏まえて、パコロアが英語表現より前に必ず確認しているポイントを紹介します。

パコロアが英語表現より前に確認していること

パコロアに寄せられる「英語でうまく説明できない」という相談の多くは、実は英語そのものが原因ではありません。

話を整理していくと、英語にする前段階で、考えがまだ言葉になっていないケースがほとんどです。

私たちが最初に確認しているのは、英語力ではなく、次のような点です。

まず、自社のグローバル展開が「検討段階」なのか、「検証段階」なのか、それとも「実行段階」なのか。

この整理が曖昧なままでは、どんな英語表現を使っても、相手には準備不足に見えてしまいます。

次に、海外展開で何を成功と定義しているのか。

売上なのか、人材獲得なのか、ブランディングなのか。

目的が定まっていないと、英語での説明も自然とぼやけます。

さらに、自社で判断できることと、外部と一緒に決めたいことの切り分けです。

どこまで自社の意思決定で進め、どこから先は相手の知見を借りたいのか。

この線引きができていないと、英語では「丸投げ」か「独りよがり」に見えてしまいます。

これらが整理できていれば、英語表現は後からでも何とか間に合います。

むしろ、整理が不十分な状態で英語だけを整えてしまう方が、誤解や期待値のズレを生みやすくなります。

グローバル展開を英語で説明するとは、流暢に話すことではありません。

自社の考え方と現在地を、相手が判断できる形で共有することです。

もし、「英語でどう言えばいいか」以前に、「何をどう説明すべきか」で立ち止まっているなら、そこが整理の出発点です。

パコロアでは、英語表現の前に、そうした前提の確認から一緒に行っています。

海外進出を検討されている段階でしたら、ぜひ30分の無料相談を一度ご活用ください。

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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PaccloaQ

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