海外配送は、海外に荷物を送る際に欠かせない手段です。
特に個人や中小企業にとって、スムーズに海外へ商品やプレゼントを届けることは重要です。
どのような方法を選ぶかによって、配送の速さやコストに大きな差が出るため、計画的に選ぶことが求められます。
(この記事では、海外個人のお客様向け小口商品(B2C)を主とする海外配送について説明しています。海外法人向け商品(B2B)については、こちらの 国際輸送の基礎知識と成功事例 をご参照下さい。)
海外配送の基本
海外配送には基本的なステップがあります。
まず、輸送する荷物のサイズや重量を測定し、適切な配送方法(航空便or船便)を決めます。
次に、配送業者を決めます。大手の国際宅急便会社では、様々なオプションが提供されています。
送料や配達日数、追跡サービスの有無などを比較し、自身のニーズに合った業者を選ぶことが大切です。
さらに、荷物を梱包する際にも注意が必要です。破損しやすい物品は丁寧に梱包し、必要に応じて保険をかけることを検討します。
最後に、輸出通関に必要な書類を揃えて、適切に記入することが求められます。
これらの基本を押さえておくことで、スムーズな海外配送が実現できます。
海外配送とは
海外配送とは、国内から国外へ荷物を送ることを指します。
日本から他国へ輸出する際に、日本国内で輸出通関を行い、海外配送を経て、他国へ商品が到着後、その国で輸入通関を行います。
海外配送ではこれらの輸出、輸入の通関手続きは必須で、個人や中小企業が国際的に取引を行う際に必要不可欠なプロセスです。
海外配送の方法は主に2種類に分けられ、航空便もしくは船便です。
航空便の種類の1つに、国際宅配便があります。
目的地や荷物の特性、予算によって最適な配送方法を選ぶことが重要です。特に、スピードを重視する場合は航空便が適していますが、コストを抑えたい場合は船便が選択肢となります。
海外配送を行う際は、配達先の国の関税や規制について理解することも必要です。
各国には異なる法律や流通規制があるため、トラブルを避けるためにも事前に調査し、必要な手続きをしっかりと行いましょう。
海外配送の方法
海外配送の方法には、主に航空便、国際宅配便、船便の3つがあります。
航空便の利用
航空便は、荷物を貨物専用機で運ぶ方法です。
大型貨物とはいかないまでも、小口貨物でもない(手では持てない)サイズの荷物に適しており、速さを重視する場合に選択します。
通常は数日以内に到着しますが、料金は高めになりがちなため、急ぎの発送が必要な場合に利用すると良いでしょう。
航空便を提供する会社には、近鉄エクスプレス、日本通運、郵船ロジスティクス等の国内大手運送会社があります。
国際宅急便の利用
国際宅配便は、海外へ小口貨物のスピーディな配送が可能なドアツードアサービスです。
UPSやDHL、FEDEXに代表される外資系の国際宅急便会社は、迅速な配送が特徴で、通常は24時間から72時間以内に荷物が届きます。
追跡サービスも充実しており、荷物の状況をリアルタイムで確認できる点が便利です。
安全性が高いため、小口で急ぎの荷物や貴重品を送る際にはこの方法が適しています。
一方で、日本郵便のEMSも相手先のドアまで届けるサービスですので国際宅急便の1種です。
しかし追跡サービスは各国の提携企業が提供しますので、国によっては荷物の行方がタイムリーに報告されないことがあります。
海上輸送の利点と欠点
海上輸送は、コストを抑えて大量の荷物を送ることができるため、多くの企業や個人に利用されています。最大の利点は、その経済性です。
特に大きな貨物や重い荷物を送る際には、他の輸送手段に比べてかなり安価です。また、環境への負荷が少なく、持続可能な配送の選択肢とも言えます。
一方で、海上輸送には欠点も存在します。最も顕著なのは、配送にかかる時間です。
他の輸送手段と比較して、通常数週間かかるため、緊急の配送には不向きです。また、気象条件によっては遅延が発生するリスクもあります。
さらに、荷物の安全性も考慮するべきポイントです。
海上輸送中に発生する事故や盗難のリスクは他の輸送手段と同様か、それ以上となります。
ダメージを受ける可能性もあり、保険付保などは必須となります。
以上のことから、例えば越境ECの海外配送手段として、海上輸送が選択されることは可能性として低くなるでしょう。
総じて、海上輸送はコストと時間を天秤にかけながら利用する必要があります。
梱包と書類の準備
海外配送を行う際には、梱包と書類の準備が非常に重要です。
正確な輸出梱包のポイント
まず、荷物を海外に安全に届けるために適切な輸出梱包を行います。
海外での荷物の取り扱いは、日本より乱暴なことも多いため、衝撃や湿気から守るために、クッション材や防水シートを使って、荷物が動かないように固定することが望ましいでしょう。
特に、 fragile(壊れやすい)アイテムの場合は、しっかりとした保護材を使い、振動や衝撃から守ることが大切です。
輸出船他用のトライウォールと呼ばれる強化段ボールやエアパッキングなど、適切な素材を利用することで、破損を防ぐことができます。
また、重量と箱のサイズ、どちらか大きい方で送料が決まることもあり、無駄なスペースがないように梱包することで、送料を抑えることができます。
最後に、送付先の住所や発送内容を英語で記載したラベルを箱の外側に貼り付けます。情報が明確に記載されていることが重要です。
これにより、配送業者が荷物を正確に扱うことができ、スムーズな配送につながります。
必要な書類の準備
次に、輸出通関に必要な書類を用意することが必要です。
送り状やインボイス(商業送り状)、パッキングリストは、荷物の内容や価格、発送日などの情報を記載します。
この書類が正確であることは、通関手続きをスムーズに進めるための要となります。万が一書類が不正確だと、通関手続きが遅れたり、追加料金が発生したりする可能性があります。
さらに、輸出入の規制により、特定の商品には追加の書類が必要な場合もあります。
例えば原産地証明書や、成分表、検査証明書などです。
輸入に必要な書類は、送付先の国によって異なるため、事前に現地に確認して準備しておくと安心です。
輸出通関に必要なインボイスやパッキングリストのひながたは、こちらから無料でダウンロードできます。
海外進出で必要になる書類 【英語】送り状兼請求書 Invoice(インボイス)[Excel]
海外進出で必要になる書類 【英語】梱包明細書 Packing List(パッキングリスト)[Excel]
料金とコストの比較
海外配送を利用する際に留意が必要なポイントの一つが、料金とコストの比較です。
同じサイズや重量の荷物でも、選ぶ配送方法や業者によって料金は異なるため、比較検討することが大切です。
通常、航空便は速さが魅力ですが、その分コストも高くなる傾向があります。
一方で、船便は時間がかかるものの、コストを抑えられるため、大型荷物を送る際には有効な選択肢となります。
主要な配送サービス会社の料金比較
海外配送を行う際は、主要な配送サービス会社の料金比較が重要です。
国際宅急便(クーリエ)の代表的な業者には、先述の通りDHL、FedEx、UPS、日本郵便などがあります。
DHLはドイツポストの傘下企業で書類配送に強く、UPSは伝統ある世界最大の国際輸送会社、FedExは後発企業ながらマーケティングに長け対応に柔軟性があるなど、各社各様の特色があります。
いずれも自社専用機を持ち、数万人の従業員(UPSは数十万人)を配し、迅速なサービスを提供しており、ビジネスユーザーからは絶大な信頼を得ています。
但し海外配送手段(国際宅急便航空便、船便)の中で最も料金が高くなります。
一方、日本郵便はコストパフォーマンスに優れており、郵便局の窓口から出荷できることもあり利便性が高いでしょう。
また、国際eパケットなどの格安プランも利用可能で、発送コストを抑えたい個人や小規模事業者に支持されています。
なお、大手国際宅急便(クーリエ)以外に、格安クーリエと呼ばれる国内各社には下記などもあります。
OCS
ペガサスグローバルエクスプレス
国際宅急便各社へ初めて問い合わせする際は、
1.仕向け国
2.月間輸出件数(予定)
3.商品詳細、および(梱包後の)各サイズと重量
を伝え、見積を入手すると良いでしょう。
<< 航空便、国際宅急便、船便、配送代行の比較表 >>
コスト削減の方法
海外配送のコストは大きな負担となることがありますが、いくつかの方法を取り入れることで効果的に削減することができます。
まず一つ目は、まとめて発送することです。複数の荷物を一度に送ることで、送料が割安になるケースが多くあります。
次に、毎月の海外出荷数を増やすことです。
外資系の国際宅急便各社のタリフ(運賃価格)に大きな違いはありませんが、年間100件以上の貨物を輸出する企業と、年に2,3回しか輸出をしない企業とでは、提示される価格はもちろん異なります。
出荷数によっては最安で50%オフ、あるいはそれ以上の値引きを受けられることもこともあり、特定の国際宅急便会社とより強固な関係を築くことは、トータルでお得な価格の提示を受けることにつながります。
さらに、梱包サイズや重量を見直すことも効果的です。
必要最小限のサイズに収めることで、送料を減少させることができます。
様々な方法を組み合わせることで、無駄なコストを削減し、効率的に海外配送を行うことができます。
もし、徹底した配送コスト削減を行っても、利益が出づらい海外向け販売の場合、輸出ビジネスモデルの見直しが必要なこともあります。
よろしければこちらをお読みください。
海外進出の失敗要因(輸出編)
国別の配送方法
海外配送を行う際には、送付先の国によって最適な配送方法が異なります。
各国の事情を理解し、それに応じた選択をすることが重要です。
アメリカへの配送
アメリカへの配送では、全米にネットワークが整備されている大手国際宅配便会社の活用が便利です。
迅速かつ安定したサービスの提供が受けられ、追跡番号を取得できるため、荷物の状況を常に把握することが可能です。
かさばる荷物や、オーダーメイド輸送が必要な場合は、航空便、海上便、という選択肢も充実しています。
一方で、関税や規制について注意が必要です。
アメリカでは輸入に対する関税について、不慣れな個人客も多いため、場合によっては『海外送料が見積もりと異なっていた』、『高い配送料金を後から請求された』と、誤解されることもあります。
また商業用の荷物にはしばしば追加の通関書類が求められますが、輸入者の中にはこれらの準備が出来ず、荷物が中々受け取れない状況になることもあります。
想定されるトラブルを見越したうえで、荷受人である現地のお客様に正確な情報を提供しておくことは、輸出者として必要なコミュニケーションとなります。
ヨーロッパへの配送
ヨーロッパへの配送を行う際は、いくつかのポイントを考慮することが重要です。
まず、ヨーロッパは多くの国で構成されており、各国の税制や関税が異なるため、事前に確認することが不可欠です。
配送方法としては、国際宅配便や郵便サービスが一般的です。
国際宅配便を利用すると、迅速な配送が可能で、追跡サービスも充実しています。特に、ドイツやフランスなど主要国への発送には適しています。
また、EU内には「シングルマーケット」があるため、一度関税手続きを行えば、EU内の他の国々に自由に配送でき、追加の通関手続きは通常不要です。これにより、コストを抑えつつ効率的に商品を届けられます。
ただし、以下の点に注意が必要です。
特定の商品の場合、特定の規制(例:食品、薬品、化学物質)が適用されることがあります。
および輸出入に関するVAT(付加価値税)や特定の手続きは依然として各国ごとに異なる場合があります。
しかし、これもシングルマーケット内での取引においては簡素化されてはいます。
EU圏内においても同様に、顧客とのコミュニケーションが大切です。
発送前に納期や送料、配送オプションについての詳細をしっかりと伝えることが、顧客満足度の向上につながります。
アジア地域への配送
アジア地域への配送は比較的スムーズに行えることが特徴です。
特に、近隣諸国への発送は距離が近いため、時間的な利点があります。主に航空便が利用されますが、国によっては船便も選択肢となります。
まず、配送業者は国際的に信頼されている大手配送会社を選ぶと良いでしょう。
これにより、追跡サービスや保険が充実しているため、安心して荷物を送り出せます。
ただし、中国や韓国、東南アジア諸国は、急速に発展している市場ですので、価格の安さのみで配送会社を選定してしまうと、適切な輸出梱包が行われていなかったとして、荷物にダメージを受けることもあります。
配送中のトラブルを避けるためには、実績豊富で信頼できる会社を選ぶことが重要になります。
トラブルの対処法
海外配送では、トラブルが発生することがありますが、事前に対処法を知っておくことで、懸念点を減らすことが可能です。
具体的には、荷物の追跡情報は常に確認することが重要です。
配送業者のウェブサイトやアプリを利用すれば、荷物がどこにあるのかを簡単に把握できます。
配送遅延の対処方法
配送遅延は、海外配送において一般的なトラブルの一つです。
もし荷物の到着予定日を過ぎてしまった場合、まずは冷静に状況を確認しましょう。
配送業者の追跡サービスを利用して、荷物の現在位置やステータスをチェックします。
この情報をもとに、どの段階で遅延が発生しているのかを把握することが重要です。
次に、配送業者に直接問い合わせることをお勧めします。
特に遅延が長引いている場合、業者側からの説明や対策を早めに確認することで、次の行動を考える手助けになります。必要に応じて、代替手段や補填についても尋ねてみましょう。
また、遅延の原因を理解することも大切です。
天候不良や交通事情、国際的な規制が影響していることがあります。
これらの情報を知ることで、次回以降のスケジュールを立てる際に役立てることができます。
あるいは輸入通関に必要な書類の不備なども考えられます。
輸出者側に書類訂正が求められることもあるかもしれません。
冷静に行動することで、配送遅延への対処をスムーズに進めることが可能です。
破損や紛失への対応
海外配送の際に、荷物が破損したり紛失することは非常に心配なことです。
しかし、事前の対策と迅速な対応をすることで、被害を最小限に抑えることができます。
まず、荷物を発送する前に、内容物をしっかりと梱包しましょう。日本と異なり、相当乱暴な取り扱いをする国々が多くあることを頭に入れて、特に壊れやすいものは緩衝材で包み、頑丈な輸出専用段ボール箱に入れることが重要です。
もし荷物が破損して届いたと、海外のお客様から連絡を受けた場合は、速やかに配送業者に連絡を入れましょう。
速やかに、というのはかねがね配達完了から2週間以内を指します。この期間中に、出荷時に付保した輸送保険や、配送業者の規定に従って補償請求を行います。
この際、破損の状態を示す写真を撮影し記録に残すことが重要です。
紛失の場合も同様に、追跡番号を元に状況を確認し、早急に業者に連絡します。
多くの場合、紛失に関する調査が配送会社にて行われますので、必要な情報をすぐに提供できるよう準備しておきましょう。
適切な対応をすることで、貴重な荷物を守ることができます。
よくある質問(FAQ)
海外配送に関するよくある質問(FAQ)をまとめました。
これから海外に荷物を送る際に役立つ情報を提供いたします。
まず、荷物の追跡についてですが、多くの配送業者では追跡番号を提供しており、荷物の現在の状況をオンラインで確認できます。
追跡サービスを利用することで、安心して送付状況を把握できます。
次に、関税についての質問です。荷物によっては、送付先国で関税が発生します。
関税の額は商品内容や価値によって異なるため、事前に調査しておくことが重要です。当該商品の現地のHSコードを調べることは役に立ちます。
(日本に輸入する際のHSコードと、現地で輸入する際のHSコードは、商品が同じものでも若干異なる場合が多く、常に同じではないため注意が必要です。)
さらに、配達日数についてですが、目的地や配送方法によって異なります。
急ぎの場合は航空便を選ぶべきですが、重量、サイズによっては航空便はかなり高額になることがあるため、予算に応じた選択が求められます。
これらの情報を考慮し、スムーズな海外配送を目指しましょう。
まとめ
海外配送において、大切なのは事前の準備と選択です。
まず、どの配送方法を選ぶかが鍵となります。
全く初めての海外配送の場合は、正式な海外配送の運用前に、トライアルの配送を試してみるのも1つです。
正規品ではなくサンプル品を発送したり、海外の知り合いや、海外の関連先企業宛てに商品を配送したり、取引予定の配送会社で試すことで、ボトルネックを早期発見できる可能性があります。
実際の海外配送上でどのようなリスクが内在されているかは、商品ごと国ごとに異なるため、特に商品が高価な場合は、自社商品での確認作業を終えておくと、より安心でしょう。
次に、発送する際の関税や規制について、輸出者側として、把握しようと努力することも重要です。
一般的には、輸入規制については、輸入者(海外のお客様)の責任において、情報収集や対応をする必要があり、輸出者側の責任ではない、とされています。
理由は、輸出者側からは、言語の異なる当該国の最新の輸入に関する法律や規制について常にキャッチアップすることが大変難しいためです。
しかしながら現実的には、それでは海外のお客様の満足度を高めることが難しいため、輸出の流れや納期、現地税関から書類の提出や関税が求められることがある、等のある程度の情報提供は、必要でしょう。
最後に、信頼できる海外配送業者を選ぶことも成功の秘訣です。
評判やサービス内容をよくチェックし、自分に合った業者とパートナーシップを築くことで、より安心して海外配送を行うことができるでしょう。
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