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日本の貿易の現状と今後

更新 2026年9月28日 公開 2024年8月15日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Current and Future of Trade in Japan Paccloa

日本は世界各国・地域と幅広く貿易を行っており、輸出入ともに100兆円を超える規模となっています。

2025年の輸出額は約110.4兆円となり、前年比3.1%増加しました。

一方、輸入額は約113.1兆円で、貿易収支は赤字となりました。2025年度では輸出額が増加する一方、輸入額が減少し、貿易収支は黒字に転じています。

日本企業を取り巻く貿易環境も変化しています。

EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)などによって市場へのアクセスが広がる一方、地政学リスク、各国の規制、為替変動、サプライチェーンの再編など、海外取引で考慮すべき要素も増えています。

中小企業が海外市場を目指す場合も、単に「輸出が伸びている国」を探すのではなく、自社の商品や技術がどの市場で競争力を持てるのか、必要な規制対応や販売体制を整えられるのかまで含めて判断することが重要です。

日本の貿易の基本情報

日本の貿易では、自動車、半導体等電子部品、機械類、化学製品など幅広い品目が輸出されています。

2025年は、半導体等電子部品、食料品、原動機などの輸出額が前年から増加しました。

一方、日本はエネルギー資源や原材料、食料品など多くの商品を海外から輸入しており、安定した調達先を確保することも重要です。

また、日本は二国間のEPAに加え、CPTPP、RCEP、日EU・EPAなど複数の経済連携の枠組みに参加しています。

これらを活用することで、対象となる品目や取引条件によっては関税の削減・撤廃などのメリットを受けられます。

一方で、貿易未経験の企業にとっては、人材の確保、海外市場に関する情報不足、規制への対応、海外取引特有のリスクなど、国内事業にはない課題があります。

そのため、海外市場の成長性だけで進出を判断するのではなく、自社の商品・技術の競争力、必要な投資、社内体制などを含めて検討する必要があります。

こうした貿易構造の変化は、自社が海外展開を検討すべきかどうかの判断にも直結します。

→ なぜ今、中小企業は海外進出すべき?メリット・リスクと失敗しない進め方

日本の貿易の歴史

日本は江戸時代にも、中国やオランダなどとの対外貿易を行っていました。

幕末の開国以降は欧米諸国との貿易が拡大し、明治期には近代的な貿易制度や産業基盤の整備が進みました。

第二次世界大戦後は、製造業の発展とともに輸出が拡大し、日本の高度経済成長を支える重要な要素となりました。

その後、日本企業の海外生産や海外投資が進み、現在では単純に日本から製品を輸出するだけでなく、海外拠点での生産・販売、海外企業との連携など、国際的な事業活動は多様化しています。

現在の輸出状況

2025年の日本の輸出額は約110.4兆円で、前年比3.1%増加しました。

品目別では、半導体等電子部品、食料品、原動機などの輸出額が増加しています。

さらに2025年度では、輸出額は約113.2兆円となり、前年度比3.9%増加しました。

特に半導体等電子部品のほか、アジアや西欧向けの輸出額が増加しています。

ただし、輸出額が増えていることと、個々の日本企業が海外で売りやすくなっていることは同じではありません。

為替変動、現地競合との価格競争、各国の規制、物流コスト、地政学リスクなど、海外販売を取り巻く条件は常に変化しています。

中小企業が輸出を検討する場合には、日本全体の輸出動向だけでなく、自社の商品がどの市場で、どの顧客に、どのような条件であれば売れるのかを個別に検討することが重要です。

現在の輸入状況

日本は、原油や液化天然ガス(LNG)などのエネルギー資源、食料品、原材料、電子部品など、幅広い商品を海外から輸入しています。

特にエネルギー資源は海外への依存度が高く、原油は中東地域からの輸入が大きな割合を占めています。一方、LNGについてはオーストラリア、マレーシア、米国など複数の国から輸入しており、調達先は品目によって大きく異なります。

食料品についても、小麦、大豆、食肉などを米国、オーストラリア、カナダなど世界各国から輸入しています。そのため、為替相場だけでなく、海外の天候や生産状況、国際的な商品価格、輸送コストなどの変化も日本の輸入価格に影響します。

近年はさらに、国際情勢の変化や地政学リスクを背景に、特定の国や企業に依存するサプライチェーンのリスクが顕在化しています。

これまで価格や品質、納期を中心に決めていた海外調達についても、「必要なものを継続して調達できるか」という経済安全保障の視点が重要になっています。

企業にとっては、既存の海外取引先との関係を維持するだけでなく、調達先の分散や代替調達先の確保など、海外調達そのものを見直す必要性が高まっています。

主要な貿易相手国

日本の主要な貿易相手国・地域には、米国、中国、韓国、台湾、ASEAN、EU、オーストラリア、中東諸国などがあります。

ただし、輸出と輸入では主要な相手国や取引品目が異なります。

輸出では、米国(1位)と中国(2位)が二大市場となっており、台湾、韓国、ASEAN、EUなども重要な輸出先です。

一方、輸入では中国の比重が大きく、ASEANやEU、米国に加え、エネルギー資源の調達先として中東やオーストラリアも重要な位置を占めています。

このように日本の貿易は、製品の販売先として重要な国・地域と、資源・原材料・製品等の調達先として重要な国・地域が組み合わさって成り立っています。

アジア地域の貿易相手

アジアは、日本にとって輸出・輸入の双方で重要な地域です。

中国は日本にとって最大級の貿易相手国であり、日本からは半導体等製造装置や機械類、化学製品などを輸出する一方、中国からは電気機器、コンピューター・周辺機器、衣類をはじめ幅広い製品を輸入しています。

韓国や台湾との間でも、半導体関連をはじめとする電気・電子分野、化学製品、機械類などで活発な取引が行われています。

また、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどのASEAN諸国も、日本にとって重要な貿易相手です。

ASEANには日本企業の製造・販売拠点も多く、日本から部品や製造設備を輸出し、現地で生産された製品や部品を日本へ輸入するなど、長年にわたりサプライチェーンが形成されてきました。

近年はインドも輸出市場として存在感を高めており、アジアの中でも国・地域によって市場の成長性や日本との貿易構造は大きく異なっています

欧米地域の貿易相手

米国は日本にとって最大級の貿易相手国であり、特に重要な輸出市場です。

日本から米国への輸出では、自動車・自動車部品、一般機械、電気機器などが大きな割合を占めています。

一方、日本は米国から航空機・同部品、医薬品、医療機器、穀物、エネルギー資源など幅広い品目を輸入しています。

EUも日本にとって重要な貿易相手地域です。

日本からEUへは機械・輸送機器類を中心に、化学工業製品などが輸出されています。

一方、EUから日本へも機械・輸送機器類、医薬品を含む化学工業製品、食品など幅広い商品が輸出されており、双方向の取引が行われています。

このように、日本の主要な貿易相手は地域によって取引品目や役割が異なります。

実際に海外展開する企業にとって重要なのは、「日本との貿易額が大きい国だから進出する」と考えるのではなく、自社の商品・技術への需要、競合状況、規制、価格、販売方法などを調べ、自社に適した市場を選ぶことです。

→ 海外進出の進め方ロードマップ

日本の貿易政策

日本の貿易政策では、WTO(世界貿易機関)を中心とした多角的な貿易体制に加え、EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)などを通じて、自由で公正な貿易環境の維持・拡大が進められています。

日本は、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)、日EU・EPA、日英EPAなど、複数の経済連携の枠組みに参加しています。

こうした協定は、関税の削減・撤廃だけでなく、サービス、投資、電子商取引、知的財産など幅広い分野のルールを定めており、日本企業が海外で事業を行う際の環境整備にもつながっています。

外務省によると、2024年末時点で、日本の貿易総額の約78.9%が発効済み・署名済みのEPA・FTA相手国・地域との貿易となっています。

また近年は、経済安全保障の重要性も高まっています。

日本政府は、サプライチェーンの強靱化、重要鉱物などの安定供給、重要・新興技術の保護などを貿易・経済政策上の重要課題として位置付けています。

さらに、中小企業を含む日本企業の海外展開に向けて、政府機関などによる情報提供や相談、輸出支援も行われています。

海外展開では、自社だけで判断することが難しい場面もあります。

公的機関や民間の支援機関にはそれぞれ役割や得意分野があるため、相談内容に応じて適切な相談先を選ぶことも重要です。

→ 海外進出はどこに相談する?公的機関・民間の支援先と選び方

貿易自由化の進展

EPAやFTAなどによる貿易自由化が進むと、対象となる品目では関税の削減・撤廃によって輸出時の価格競争力が高まったり、海外から原材料や製品を調達しやすくなったりする可能性があります。

また、経済連携協定では関税だけでなく、投資、サービス、電子商取引、知的財産などについても共通のルールが定められるため、企業が国境を越えて事業を行う環境の整備にもつながります。

CPTPPも、関税だけでなくサービス、投資、電子商取引、知的財産、国有企業など幅広い分野のルールを定めています。

一方で、貿易自由化は日本企業にとってメリットだけをもたらすものではありません。

海外の商品や企業も日本市場へ参入しやすくなるため、国内市場でも海外企業との競争が激しくなる可能性があります。

また、日本企業が海外市場へ参入しやすくなったとしても、現地企業や他国企業との競争がなくなるわけではありません。

そのため、関税面で有利になったとしても、日本製品であることや品質・技術力だけで売れるとは限りません。

価格、現地ニーズ、販売方法、サービス体制などを含めて、競争力を構築する必要があります。

制度が整っていても、それを活用できる企業とできない企業に分かれるのが実務の現実です。

→ 海外進出は実現可能ですか

保護主義の影響

一方、自由貿易を拡大する動きとは逆に、近年は各国が国内産業や経済安全保障を重視し、関税や輸出入規制などを強化する動きもみられます。

特に米国と中国の間では、追加関税や輸出規制などをめぐる対立が続いています。

こうした大国間の政策変更は、当事国だけでなく、国際的なサプライチェーンに組み込まれている日本企業にも影響します。

保護主義は、特に経営資源の限られた中小企業にとって大きなリスクとなります。

関税が上がれば現地での最終価格が上昇し、それまで成立していた価格条件では契約を更新できなくなることがあります。

輸出入規制が変更されれば、これまで取引できていた商品が輸出できなくなったり、追加の手続きや対応が必要になったりする場合もあります。

さらに海外取引では、こうした政策変更だけでなく、原油価格の上昇や航空便・船便の減便などによる国際輸送費の高騰が重なることもあります。

関税、物流費、為替など複数の条件が同時に悪化すれば、当初想定していた利益が確保できなくなり、価格改定や契約条件の見直し、場合によっては取引そのものの継続が難しくなることもあります。

特に代替となる販売先や調達先、輸送手段をすぐに確保できない中小企業では、その影響が大きくなります。

そのため海外取引では、販売先の市場動向だけでなく、各国の関税・輸出入規制、物流、為替など、自社の取引条件を左右する変化を継続的に確認する必要があります。

日本の貿易の課題と展望

日本の貿易には新たな市場を開拓する機会がある一方、海外で事業を継続するために対応しなければならない課題も増えています。

現在の課題

まず、国内市場が縮小する中、海外市場に販路を広げる必要性は高まっています。

一方、海外市場では日本企業だけでなく、現地企業や世界各国の企業が同じ市場を狙っています。

日本製品だから、高品質だからという理由だけで選ばれるとは限りません。

品質はもちろん、現地市場で受け入れられる価格、顧客ニーズに合った商品・サービス、販売後のサポートまで含めて競争力を構築する必要があります。

特にアジア市場では、価格はローカル企業と競争できる水準を求められる一方、海外企業である日本企業には、現地企業以上のサービスや対応を期待されることもあります。

次に、各国・地域の規制への対応です。

海外で商品を販売する場合、日本では問題なく販売できる商品でも、現地の安全規格、製品認証、表示、環境規制、輸出管理などへの対応が必要になることがあります。

必要な認証の取得や商品仕様の変更には、想定以上の費用と時間がかかることもあります。

特にリソースの限られた中小企業では、販売活動を始めた後に規制上の問題が判明すると、事業計画そのものを見直さなければならない場合があります。

貿易における制度や規制は、知らないまま進めると後戻りできないリスクにつながります。

基本的な輸出入ルールは事前に整理しておく必要があります。

→ 海外の輸出入の規制について知っていますか

さらに、サプライチェーンの変化も重要な課題です。

自然災害、感染症、国際情勢の変化、輸出入規制、物流の混乱などによって、それまで安定していた調達や輸送が突然止まる可能性があります。

特定の取引先や国、輸送ルートへの依存度が高い企業ほど影響を受けやすいため、代替調達先や物流ルートの検討、在庫方針の見直しなど、平時から備えておくことが重要です。

こうした海外事業の課題は、短期間ですべて解決できるものではありません。必要な予算と人材を確保し、中長期的に取り組む必要があります。

海外事業では、問題が起きてから対応するのではなく、事前に起こり得るリスクを整理しておくことで、影響を抑えることができます。

→ 海外進出のリスク管理はできていますか

未来への展望

一方、デジタル化によって、中小企業が海外企業や顧客と接点を持つ方法は大きく増えました。

海外向けWebサイトやSNS、オンラインプラットフォームなどを利用すれば、日本にいながら海外へ情報を発信できます。

また、以前は海外へ出張しなければ難しかった海外企業との商談も、現在ではZoomなどのオンライン会議ツールを利用することで、日本にいながら実施できるようになりました。

海外出張に行くたびに数十万円の費用を要していた新規顧客開拓も、海外企業とのアポイントさえ取れれば、商談そのものはほとんど費用をかけずに行える環境が整っています。

これは、海外事業に使える予算や人員が限られている中小企業にとって、大きな変化です。

ただし、海外企業と商談するコストが下がったことと、海外企業とのアポイントが簡単に取れるようになったことは別の話です。

海外進出や貿易経験のない中小企業の場合、そもそも海外で自社が知られていないことも多く、Webサイトを公開したりオンライン商談に対応できる環境を整えたりするだけで、海外企業から問い合わせや商談を獲得できるわけではありません。

どの市場のどの顧客を狙うのか、自社の何を強みとして伝えるのかを整理し、Webサイト、展示会、代理店開拓、直接営業など、自社に合った方法で海外企業との接点を作っていく必要があります。

また、グローバルなサプライチェーンも変化しています。

COVID-19による混乱に加え、その後の地政学リスク、経済安全保障政策、物流や人件費などのコスト構造の変化を背景に、企業は生産・調達拠点や取引先の見直しを進めています。

こうした変化は既存の取引関係を不安定にする一方で、新しいサプライヤーや販売パートナーを探す動きにもつながります。

日本企業にとっても、これまでの貿易で培ってきた現地市場に関する知識や海外企業とのネットワークを活用しながら、新たな取引先や市場を開拓する機会があります。

ただし、海外市場全体にチャンスがあることと、自社にとって海外進出が有効であることは別の問題です。

ここまでの内容を踏まえ、自社の商品・技術、市場、競合、必要な投資、社内体制などから、海外に進むべきか、進むならどのような方法が適しているのかを整理することが重要です。

→ 海外進出の戦略を構築しよう

日本の貿易の変化を踏まえ、これから何を判断すべきか

日本の貿易を取り巻く環境は、関税や輸出入規制、経済安全保障、サプライチェーン、為替、物流など、さまざまな要因によって変化しています。

一方で、企業の海外展開は商品の輸出だけではありません。技術やノウハウのライセンス販売、海外企業との業務提携、現地生産、サービス業の海外進出など、その方法は多様化しています。

また、デジタル化によって海外企業と接点を持つための手段や商談にかかるコストは以前より大きく下がりました。

しかし、前述したように、海外で顧客を獲得すること自体が簡単になったわけではありません。

そのため、「日本の輸出が伸びている」「この国の市場が成長している」といった大きな貿易動向だけで、自社の海外進出を判断することはできません。

自社の商品や技術に海外で需要があるのか、どの市場なら競争できるのか、現地の規制に対応できるのか、どのような販売方法が適しているのか、必要な予算や人材を継続して確保できるのか。

こうした条件を自社に当てはめて整理し、海外に進むのか、進むならどの市場にどのような方法で進むのかを判断することが重要です。

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小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・BtoB・BtoC・DtoCなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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PaccloaQ

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