海外進出では、海外担当者を決めただけでは事業は進みません。
市場調査や海外営業はもちろん、契約、物流、認証、知的財産など、事業が進むにつれてさまざまな業務や専門知識が必要になります。
では、どこまでを社内で担い、どこから外部人材や専門家に任せればよいのでしょうか。
この記事では、海外進出における社内担当者・経営者・外部人材や専門家の役割を整理しています。
海外進出を担う人材の特徴と資質
海外進出を始めるとき、まず必要になるのが、社内で海外事業を担当する人です。
では、どんな人が海外担当者に向いているのでしょうか?
海外担当者に求められる資質は、「新たな挑戦を歓迎し、自ら行動できる姿勢」を持っていること。
いわゆるゼロから構築できる人です。
以下のようなタイプが該当します:
- 未経験領域にも前向きに取り組める(変化を恐れない)
- 不明点を自ら学び、行動で解決しようとする(柔軟性とビジネススキル)
- 成果にとらわれずプロセスを楽しめる(失敗を恐れない姿勢)
逆に、次のようなタイプはストレスを感じやすいかもしれません:
- 結果を重視するあまり、リスクを避けたがる
- 「好きにやっていいよ」と言われると行動を起こしにくい
(うわぁ…どっちも自分に当てはまるような…)
もちろん海外担当者には、業務に必要な英語力も求められます。
ただ、英語が流暢であることと、海外ビジネスを前へ進められることは同じではありません。
重要なのは、コミュニケーションを成立させる力です。
例えば――
あなたが日本企業として海外企業と商談をしたとします。
流暢な日本語を話す現地担当がいたとしても、技術的な内容や仕様の調整になると別の人が対応したり、話が進まなかったり。
一方、多少片言でも、どんな質問にも的確に答え、提案も積極的で、あなたの意図を汲んで動いてくれる担当がいたとしたら――。
後者の人と絶対仕事したいです!
ですよね。英語力は必要ですが、それだけでは海外事業は進みません。
相手の質問を正確に理解し(英語が出来ても、ここが出来ていない人は意外と多い)、相手の意図に応え、必要な人を巻き込みながら次の行動につなげる力が必要です。
たとえ海外経験があっても、「自ら取り組む姿勢」がなければ、成果にはつながりません。
ゼロから現地で価値をつくる“推進力”こそが、最も有効なスキルなのです。
そのため、海外進出の担当者には以下のような基本素養が不可欠です:
- 異文化への適応力
- 貿易実務・海外営業の知識
- 海外ブランディングとマーケティング理解
- 語学スキルの向上への取り組み
- 中長期的な視点でのキャリア構築意識
(頑張ろう、グローバル人材教育…!)
意思決定より難しい判断材料と評価
海外担当者だけでは判断できないことがある
海外進出で最も難しいのは、「意思決定」そのものではありません。
むしろ、
「どの情報を集め、どう評価するか」という意思決定前の
「判断材料の質」
が、その後の成果を大きく左右します。
なるほど……。
では、その判断材料の質を高めるために、社外の人の力も必要になるということですか?
はい。
特に海外事業の立ち上げ段階では、経験の浅い担当者が、集めた情報を正しく評価し、次に何をすべきかまで一人で判断するのは難しいものです。
そこで、必要に応じて海外事業の経験者や外部の専門家を活用します。
担当者の代わりに判断してもらう、ということですか?
いいえ。そこが重要です。
外部人材の役割は、会社に代わって海外事業を決めることではありません。
「この市場を見るなら、ほかにこの情報も必要です」
「この会社の反応だけでは判断できません」
「この条件は専門家に確認したほうがよいです」
といったように、社内だけでは気づきにくい判断材料や評価の視点を補うことです。
最終的に「では自社はどうするか」を決めるのは、自社です。
海外進出では「何を見て判断するか」が繰り返し変わる
海外事業では、最初に必要な情報を集めて方向性を決めれば、その後はそのまま進められる、とは限りません。
たとえば、最初は「この国なら売れそうだ」と考えていても、実際に海外企業へ提案すると、価格が合わない、求められる仕様が違う、競合製品のほうが選ばれている、といったことが分かってきます。
すると、
「価格を変えるべきか」
「商品を変えるべきか」
「そもそも顧客や市場の選び方を変えるべきか」
と、次に確認すべきことも変わります。
海外進出では、
情報を集める → 評価する → 市場で試す → 反応を見る → もう一度評価する
という流れを何度も繰り返します。
そのため、最初に正しい答えを持っていることよりも、市場から新しい情報が入るたびに、何を見直すべきかを適切に判断できることが何より重要です。
経営者が担う“判断材料の質”管理
経営者が「どの判断材料が必要か」を共に議論し、評価の枠組みをつくることで、担当者は成長し、組織の学習力も高まります。
つまり、経営者が“伴走”する姿勢を持つかどうかが、実は海外展開が途中で止まるか、継続できるかの分岐点になるのです。
このように、海外進出における成功のカギは、「正しい意思決定」よりも、
「その前提となる材料と評価の質」をいかに組織として整備できるかにあります。
そしてその責任は、担当者だけでなく、経営者自身にもあるという視点を忘れてはなりません。
協力会社と外部人材の連携が鍵となる理由
なぜ協力会社と外部人材が必要か
海外進出では、すべての業務を社内だけで完結させる必要はありません。
事業が進むにつれて、契約・法務、税務、通関・物流、認証、知的財産、ITセキュリティなど、さまざまな専門知識が必要になります。
これらすべての専門人材を自社で雇用し、社内に揃えることは、中小企業にとって現実的ではありません。
だからこそ、必要になった段階で、その分野に詳しい協力会社や専門家を活用します。
たとえば、契約内容については弁護士、認証については認証機関、国際輸送については物流会社など、専門的な知識や判断が必要な部分を、その分野の専門家に任せるという考え方です。

ただし、この図にある協力会社や専門家を、最初からすべて揃える必要はありません。
海外事業を進める中で、「今、自社だけでは対応できないことは何か」が見えてきた段階で、必要な専門家を活用します。
一方で、契約、認証、物流、知的財産など、今後必要になる可能性が高い分野については、どの段階で、どのような専門家が必要になりそうかをあらかじめ把握しておくと、急に必要になったときにも対応しやすくなります。
重要なのは、「海外進出だから外部に頼む」のではなく、自社でできることと、専門性が必要なことを切り分けることです。
協力会社・外部人材の費用感と選定の現実
協力会社や外部人材を選ぶ際には、費用感も大きな判断材料となります。
たとえば、海外進出支援コンサルティングの契約費用は、安価なもので月額10万円台から、フルサポート型では月額100万円を超えるケースもあります。
スポット契約でも、3か月程度で30万円〜500万円程度までと、支援内容によって非常に幅があります。
そんなに違うんですか…!
はい。
弁護士や第三者認証機関への依頼も、内容によって数十万円〜100万円以上となることがあります。
また、デザイン会社やブランディング会社についても、依頼する範囲によって費用は大きく異なります。
部分的な支援であれば月額数万円台から、企画や設計を含む大規模な案件では、1案件で500万円を超えるケースもあります。
(費用の差が大きすぎて判断が難しい…)
海外進出で外部人材を活用しながら「自走」するには
色々よく分かってきました。
外部の専門家に頼ることと、自社で海外事業を進められるようになることは、両立するんですね。
はい。
外部人材は、社内にない知識や視点を補う「補助輪」のような存在です。
市場調査の進め方、海外企業との商談で分かったこと、契約や物流で確認すべきことなど、外部人材と一緒に仕事をする中で得た知識や判断の仕方を、少しずつ社内に残していきます。
外部に頼む範囲が同じまま何年も続くのではなく、自社でできることが増えていけば、外部人材の役割も変わっていきます。
担当者一人ではなく、会社に残る仕組みにする
でも、担当者が育っても、その人が異動したり退職したりしたら、また最初からになりませんか?
そこまで考えて初めて「自走」です。
海外企業とのやり取り、判断した理由、失敗したこと、専門家に確認した内容などを担当者個人の経験だけにせず、社内で共有できる形に残していきます。
海外進出の自走とは、「外部を一切使わなくなること」ではありません。
自社で判断すべきことは自社で判断し、専門性が必要なところでは適切な外部人材を使い、その経験がまた社内に蓄積されていく。
この状態ができれば、特定の担当者や外部支援会社だけに依存せず、会社として海外事業を続けられるようになります。
海外進出は、社内と外部の役割を整理するところから
海外進出では、すべてを社内だけで進める必要はありません。
一方で、海外事業そのものを外部へ任せきりにしてしまうと、自社に経験や判断力が蓄積されません。
大切なのは、自社で担うこと、経営者や海外担当者が判断すること、外部の専門家に任せることを、その時々の課題に応じて切り分けることです。
海外事業が進めば、必要になる外部人材や専門家も変わります。
外部の知識や経験を活用しながら、自社でできることを少しずつ増やしていくことが、継続的な海外展開につながります。
自社の場合、どこまで社内で進めるべきか迷っている方へ
「海外担当者にどこまで任せればよいのか」
「今の社内体制で海外進出を進められるのか」
「どの段階で、どの専門家に相談すればよいのか」
パコロアでは、こうした海外進出における社内体制や外部人材の活用についても、現在の事業状況に合わせて整理しています。
自社の海外展開で何が不足しているのかを整理したい方は、自社分析レポート「海外進出チェック」をご覧ください。
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