「ヤクルトって、なぜ海外でこんなに売れてるの?」
そう思ったことはありませんか?
あの小さな甘い飲み物が、アジアから南米まで、世界40カ国以上で日常的に飲まれている
——これは偶然ではありません。
実はヤクルトの海外進出には、「売れるかどうか」ではなく、「売ると決めた」強い意思がありました。
現地の人々が欲しがるかどうか、競合がどうか、市場が未成熟かどうか——そうした要素を超えて、
「あの商品を世界で売る」と最初に決断したことこそが、すべての起点だったのです。
もちろん、その道は簡単ではありません。
文化、嗜好、価格、物流、そして健康への意識の違い
——どれをとっても、日本のやり方がそのまま通用するはずがない。
けれどヤクルトは、そこで立ち止まらなかった。
「売ると決めたから、売れる方法を探し続け」ました。
本記事では、そんなヤクルトの海外展開から「なぜ売れたのか?」「なぜ売れ続けているのか?」を紐解き、
中小企業が明日からヒントにできる“売ると決める”戦略思考を紹介します。
ヤクルトが“世界で売れる”ようになるまで
「どこでも売ってるヤクルト」は、最初から世界中に歓迎されたわけではありません。
むしろ、文化も価値観も違う“よそ者”として、どうやって信頼を得るかに悩み、各地で試行錯誤を繰り返してきました。
たとえばアジアでは「健康=予防」という文化に合い、中南米では“家族に届ける”価値観がヤクルトレディと親和。
しかしアメリカでは、まったく異なる現実が待ち受けていました。
ここでは、ヤクルトがどんな挑戦をし、何に失敗し、どう軌道修正したか。
そして中小企業がそこから学べる“地に足のついた海外戦略”を、リアルな事例とともに掘り下げます。
アジア・中南米での成功と、現地との“つながり方”
ヤクルトが比較的スムーズに浸透したのが、アジア(フィリピン・インドネシア)や中南米(メキシコ・ブラジル)といった地域です。
これらの地域には共通して、「家族の健康を守る」という価値観が生活の根幹にあります。
ヤクルトの掲げる「毎日1本、健康を守る」というメッセージは、こうした文化的土壌と親和性が高く、自然と受け入れられやすかったのです。
とはいえ、現地対応は“ただ出せば売れる”ほど簡単ではありませんでした。
ヤクルトはその中で、販売スタイルを国ごとに大きく変えています。
- フィリピン
まとめ買い文化が根づいていないため、1本単位でのバラ売りを実施。 - インドネシア
屋台に近い移動販売方式を採用し、冷蔵庫のない家庭でも手に取れる流通設計を整備。 - メキシコ
ヤクルトレディが学校や地域イベントに出向き、「腸内環境と健康の関係」を説明する教育型マーケティングを実施。
商品の価値だけでなく、“健康知識”そのものをセットで届ける戦略が機能しています。 - ブラジル
ヤクルトレディの訪問販売は「信頼されている証」として歓迎され、地域のネットワークの中に自然と溶け込むモデルが確立されています。
どの国も、ヤクルトがただ商品を「売る」のではなく、“その商品が生活の一部として自然に根づくよう、文化・販路の地ならしまで徹底して行っている”ことが共通点です。
ヨーロッパと“保守的市場”で通用したヤクルトの科学戦略
ヤクルトにとって、ヨーロッパ市場は決して簡単な相手ではありませんでした。
この地域では、食品の安全性や機能性に対する基準が非常に厳しく、一方で「健康は医療機関で管理するもの」という保守的な価値観が根強くあります。
つまり、「腸に良い飲み物です」というアピールだけでは、なかなか信頼を得られないのです。
そこでヤクルトは、販売戦略の軸を大きく変えました。
- イギリス
医療・薬局ルートでの展開を強化し、医師や薬剤師からの信頼を得ることで消費者への浸透を狙いました。
広告トーンも他地域とは一線を画し、「おいしいから健康に良い」ではなく、「科学的根拠に基づく健康支援飲料」というブランドポジションを徹底しています。 - フランス
消費者向けの啓発活動として、研究成果をベースにしたセミナーやパンフレット配布を行い、「医療と日常の間にある食品」という新しい立ち位置を築いています。
こうした取り組みの裏にあるのは、「売れる方法ではなく、“この市場で信頼される方法”を見つける」という執念に近い思考です。
事実、ヨーロッパでは初期こそ伸び悩んだものの、今では継続購入者が多く、「健康管理の一部」として定着しています。
海外展開というと「現地の好みに合わせた味や価格」に意識が向きがちですが、「信頼はどう築くか?」という視点がなければ、本当の意味での定着はできない。
その事実を、ヤクルトはヨーロッパ戦略で証明しているのです。
アメリカ市場での失敗と、学べる教訓
「私たちは、アメリカ市場でヤクルトレディを導入しようとして…失敗しました。」
ヤクルト本社の担当者は、そう率直に語っています。
アメリカでは、訪問販売が「不審」「プライバシーの侵害」と受け止められやすく、消費者からの拒否反応が想像以上に強かったのです。
その結果、ヤクルトはアメリカ市場での戦略を大きく転換。
現在では、ドラッグストアや大手小売店を通じた販売チャネルを中心に展開しています。
Do:「失敗する前提」で“現地適応”を設計せよ
中小企業が海外進出に臨むときは、「最初からうまくいくわけがない」という前提で戦略を立てる方が健全です。
ヤクルトのように、大企業でさえ現地文化とのギャップに直面し、販売方法を抜本的に見直す必要があったのですから。
たとえば:
- 「この売り方、現地でウケると思ったけどダメだった」
- 「SNS広告、意外と全然反応なかった」
- 「現地の代理店、最初は熱心だったけど、半年で連絡が途絶えた」
こうした“あるある失敗”を、どう乗り越えるか?が、その後の展開のカギです。
そして失敗を社内で共有・アップデートできる仕組みを持つことで、現地対応の“筋力”がついていくのです。
中小企業が今すぐ始められる“現地適応”のヒント
ヤクルトのような強大なリソースがなくても、現地適応の視点そのものは中小企業にも実行可能です。
例えば:
- 現地企業との小規模テスト販売から始める
- SNSや動画広告を使った反応テスト
- “売る前”に、現地の生活者ヒアリングを行う
- 現地市場に合わせた価格・パッケージ変更を柔軟に検討
「完璧に準備できたら進出」ではなく、「試して、失敗して、直していく」。
この姿勢こそが、ヤクルトがグローバルブランドになった本当の理由なのです。
なぜヤクルトは“売れないはずの飲料”を世界に売ったのか?
ヤクルトの海外進出は、一般的に「地域密着が鍵」「ヤクルトレディが強い」と語られがちです。
でも、もっと本質的な問いを投げかけてみましょう。
そもそも…ヤクルトって、本当に“売れる商品”なんでしょうか?
甘くて小さい乳酸菌飲料。それ、必要ですか?
- 一般的な飲料に比べてサイズが小さい
- 健康飲料と言いつつ、砂糖も多く“薬効”はない
- 他にも似た商品はたくさんある
- 味も、初見の外国人には「子ども向け?」と思われがち
- 販売は訪問形式や個人ルート…販路構築が超大変
…どう考えても、“売れる確信”は持ちづらい商品です。
でも、ヤクルトはこう考えました。
「売れるかどうか」じゃない。「売ると決めたかどうか」だ。
ヤクルトが世界40カ国以上に展開できた理由は、商品の優位性ではなく、覚悟の有無でした。
- 味が微妙?→ 現地で徐々に受け入れられるまで諦めずPR
- 医薬品じゃない?→ 科学的に“整腸作用”を伝え続ける
- 市場がなさそう?→ まず数本置いて、買う人の顔を見た
- 販売方法が難しい?→ ローカルに合った手法に切り替える
- 文化が違う?→ 時間をかけて、信用を築いた
つまり、ヤクルトは「売れるか分からない」ではなく、「どうすれば売れるか?」を、売れるまで考え続けた会社なんです。
中小企業が学べる最大のこと:「売る」と決めなきゃ「売れない」
海外進出は、売ると決めないと売れない、が現実です。
「海外でも売れるようなら売ってみたい・・」というレベルの海外進出は、ただの夢に終わることが大半なのです。
中小企業もよく「ローカライズが大事」と言います。
どの企業も頭では十分分かっていることです。
でも、そのローカライズ、売ると決めた前提でやってますか?
- 気に入ってもらえたら売る?
- 買ってくれそうなら進出する?
- ダメだったら撤退でいい?
それでは、ローカライズはただの“気配り”止まりです。
ヤクルトのすごさは、
「売ると決めたから、売る方法を、売れるまで検証し続ける」姿勢。
その覚悟が、海外進出計画の土台になっています。
今日からできる“ヤクルト流”の実践法
- (日本の成功体験起点ではなく)海外で売れるものを売る、と決める
- 売れるまで試す前提、正解を自ら作る前提で設計する
- ローカライズは机上ではなく、現場の声で組み立てる
- 成功の確率を高めるシナリオではなく、やり抜くシナリオを描く
最後に:売ると決めた、その先へ
ヤクルトは、「あの商品を売ると決めた」から、世界で売れてる。
中小企業が学ぶべきは、“売れそう”じゃなく、“売ると決める”冷静な決意。
その決断を、1社で抱える必要はありません。
パコロアは、あなたの「売ると決めた」を現実に変える伴走者です。
海外進出に必要な「現地調査」「販路開拓」「マーケティング戦略」
—すべて、あなたのビジネスに合わせて実行プランに落とし込みます。
海外進出を“始める前”に、まずは無料相談から
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御社の「売る」を、いっしょに形にしていきましょう!