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小売業 × 海外進出:知識ではなく「どう動くか」中小企業が失敗しない判断基準

更新 2025年11月27日 公開 2025年11月29日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Customer making a purchase using a smartphone at a retail store counter, representing local adaptation and branding strategies for global retail expansion

国内の小売市場は、人口減少と消費行動の変化によって、これまで以上に成長の余地が見えにくくなっています。

特に地方では、店舗数の維持だけでも難しい状況が続き、これまで順調だった事業であっても売上の伸びが止まりつつあります。

その一方で、日本の商品やサービスは海外で高く評価され、実店舗や越境ECを通じて「海外なら売れる」というケースが増えています。

とはいえ、中小の小売業が海外に挑戦するとなると、何から始めるべきかが見えにくいのが現実です。

出店かECか、どの国が適しているのか、どれくらい費用がかかるのか、どの順番で進めるのか。

最初の判断を誤ると、時間や費用が大きなロスになり、リスタートが難しくなることもあります。

本記事では、海外進出を検討する中小の小売業が、最初の一歩で迷わないために必要な判断基準を整理します。

実店舗・越境EC・テスト販売などの選択肢を比較しながら、成功企業が共通して行っている進め方を紹介します。

知識の整理ではなく、「どう動けばよいか」が具体的にわかる構成です。

これから海外展開に踏み出す企業の判断材料として、最適な一歩を選ぶための道筋を一緒に確認していきましょう。

小売業が海外進出を検討する理由

中小の小売業が海外を視野に入れ始めている背景には、国内と海外の状況が大きく変化していることがあります。

従来であれば、新規出店や品揃えの改善によって売上を伸ばすことができましたが、市場環境が変わった今、これまでと同じ発想では持続的な成長を描きにくくなっています。

まず、国内市場は人口減少と購買力の低下が重なり、長期的な縮小が避けられません。

特にファッション、日用品、食品など、地域密着型の小売業ほど影響を受けやすく、売上が横ばいから緩やかな減少に向かうケースも増えています。

こうした中では、地域内での競争に勝つという発想自体に限界があり、外に目を向ける必要性が高まっています。

一方で、海外市場には日本の商品や接客品質を評価する顧客層が広がっています。

例えば、アジアでは日本品質への信頼が根強く、生活雑貨、アパレル、食品、コスメなどは特に評価が高い分野です。

また、現地では中間層が増え、可処分所得の伸びが続いているため、新しい小売ブランドに対する受容性があります。

国内では当たり前になっている商品やサービスが、海外では強みとして受け取られるケースも少なくありません。

加えて、越境ECやSNSを活用すれば、以前よりも少ない初期費用で海外の顧客とつながることが可能になりました。

小規模企業でも海外の反応を確かめながら、小さく試し、大きく育てるプロセスが取りやすくなっています。

出店や在庫のリスクを事前に抑えながら、海外の需要を読み取れるようになったことは、海外進出のハードルを大きく下げました。

このように、国内の伸び悩みと海外での追い風が重なり、今は小売業が海外展開を検討するための条件がそろっている時期です。

重要なのは、勢いではなく、どの国の誰に対して、どの方法で、どの順番で取り組むかを明確にすることです。

ここを整理できれば、最初の一歩を誤らず、自社商品の強みが生きる形で海外市場に挑戦できます。

海外市場調査で必ず確認するポイント(需要・競合・法規制・物流)

小売業の海外進出では、「どの国に出すか」 が、その後の 販売チャネル・価格設定・マーケティング施策 を大きく左右します。

特に小売業は、同じ商品であっても国によって“売れ方”がまったく変わるのが特徴です。

例:
・シンガポール → ECの反応が早く、高単価でも買われやすい
・台湾 → POP-UP文化が強く、短期出店でテストしやすい
・タイ → ショッピングモール依存が高く、店舗体験が重視される
・香港 → SNSインフルエンサーの影響力が強く、口コミ拡散が鍵

つまり、「どの国にどんな顧客がいるか」 がわからないと、チャネル選び(実店舗・EC・POP-UP)も的確に判断できません。

とはいえ、最初から高額な市場調査レポートを購入する必要はありません。

初期判断に必要な内容は、シンプルな4つの視点で整理できます。

1つ目:需要の大きさ(誰が、どれだけ買うのか)

人口規模、年齢分布、可処分所得はもちろん、

・商品カテゴリーごとの市場成長率
・その国での「日本製」の位置づけ
・どの価格帯なら買われるか

を確認します。

同じアジアでも、雑貨が強い国、化粧品が伸びている国、生活用品が売れる国など、国ごとに“売れるジャンル”はまったく異なります。

自社の商品がどの層に受け入れられるのか、明確な仮説が必要です。

2つ目:競合環境(戦う相手は誰か)

現地の実店舗やECサイトを見ると、

・競合の価格帯
・商品の見せ方
・購買層
・日本ブランドの扱われ方

がわかります。

競争が激しくても需要が大きければチャンスがありますし、市場が未成熟でも購買層が育ちつつある国は、先行者になれる可能性があります。

3つ目:法規制・コンプライアンス(売っていい条件か)

小売はBtoCのため、国によって規制が細かく、

・食品表示・成分基準
・輸入許可
・返品ルール
・個人情報・データ保護
・化粧品・食品の販売許可

などが求められることがあります。

特に生活雑貨、化粧品、食品は日本とルールが大きく異なるため、販売開始後に止められるリスクを避けるためにも、初期段階での確認が必須です。

4つ目:物流・販売体制(届けられるか)

・在庫を国内に置くのか、現地倉庫を使うのか
・配送日数とコスト
・返品対応の仕組み
・現地配送の品質

これらが整っていないと、越境ECでも実店舗でも顧客満足度に影響します。

最初の段階で“どのレベルのスピードで届けられるか”を把握しておくことで、販売計画や利益シミュレーションが正確になります。

以上が海外市場調査の重要ポイントですが、市場調査を完璧にやる必要はありません。

しかし、「この国の、この層に、こういう理由で売れそうだ」

と言えるだけの根拠(仮説)があると、その後のチャネル選択・展開方式・マーケティング戦略が正しく決められます。

ここまでの市場調査は、次に紹介する“販売チャネル・展開方式・顧客開拓方法”の最適な組み合わせを決めるための土台になります。

最初に決めるべき「販売チャネル、展開方式、顧客開拓方法」

海外進出を検討する際、小売業にとって最初の意思決定は

「どの販売チャネルを軸に始めるか」
「どの展開方式で現地との接点をつくり」
「どう顧客開拓をするか」

です。

前章で整理した“国 × 顧客 × 商品ニーズ”の仮説をもとに、この3つを正しく選び分けることで、最初の一歩の精度が大きく高まります。

販売方法を誤ると、どれだけ商品力があっても成果につながりにくくなるため、ここは最初にしっかり整理しておくことが重要です。

ここでは、小売業が実際に選択しやすい方法だけを整理し、製造業型の卸や代理店などは扱いません。

消費者との接点をどう作るかという視点で、小売業の海外進出に適した選択肢をまとめます。

【販売チャネル】

販売チャネルは大きく 「実店舗」 と 「デジタルチャネル(EC・SNS・広告)」 に分かれます。

● 実店舗(常設店舗・POP-UP)

実店舗はブランド体験を直接届けられる強みがあり、顧客単価も上げやすい一方で、賃料、内装、スタッフ運営などの負荷が大きくなります。

POP-UPは低リスクで現地生活者の反応を確かめられるため、最初の一歩として選ばれやすい手法です。

● デジタルチャネル(越境EC・現地EC・SNS)

デジタルチャネルは初期負担が小さく、小規模でも商品の反応を試しやすい点が大きな魅力です。

越境EC(Shopify・Amazon等)、現地ECへの出品、SNSや検索広告を使ったテストマーケティングは、「どの国のどの顧客層に響くか」 を小さく検証できるため、実店舗展開と組み合わせる際の判断材料になります。

ECを“売り場”、SNSや広告を“集客装置”と捉えることで、実店舗とデジタルを一つの戦略として設計できます。

【事業展開方式】

展開方式は「どの程度、自社が現地オペレーションを管理するか」で判断します。

● 直営(現地法人)

ブランド統制がしやすく、サービス品質を保ちやすい。
ただし固定費は重い。

● POP-UPや短期イベント

国や地域との相性を確かめやすい。
「小さく始めて大きく外すリスクを減らす」実験プロセスとして有効。

● フランチャイズ

拡張性は高いが、相手企業の熱量と運営品質に依存するため、相手選定と契約条件の精査が不可欠。

実店舗とデジタルは対立する手法ではなく、「どこを軸にし、どこを補完にするか」 の組み合わせで戦略が決まります。

【顧客開拓方法】

販売チャネルと展開方式が決まっても、お客様との接点を増やす仕組みを組み合わせなければ成果は出ません。

● 展示会や現地イベント
→ バイヤーや生活者との直接接点を作れる

● 越境ECのSEOやSNS広告
→ 低コストで反応を確認できる

● インフルエンサーや現地コミュニティとの連携
→ 認知の初速を上げる

ここを誤ると、チャネル選択が正しくても成果が出にくくなるため注意が必要です。

ここまでで、小売業が海外進出を始める際の“選ぶべき選択肢”を整理しました。

しかし、実際の現場では、正しい選択肢を知っていても 事前に想定していなかったリスク が進行を止めてしまうことが少なくありません。

次のパートでは、小売業が最初の段階で必ず押さえておきたいリスクと、その具体的な対策を紹介します。

小売業の海外進出で「事前に潰しておきたい」リスクと対策

小売業の海外進出では、実際に動き出してから見えてくる課題も多い一方で、出店前の段階でかなりの部分を減らせるリスクもあります。

ここでは、中小の小売企業が事前に潰しておきたい主なリスクと、その考え方を整理します。

1つ目は、物件・契約まわりのリスクです。

賃料や契約期間だけでなく、解約条件、共益費、売上連動の有無、内装工事に関するルールなど、ランニングコストに直結する項目を事前に洗い出しておく必要があります。

特に小売は家賃・人件費・在庫が一度動き出すと止めにくいため、“売上が追いつく前に固定費が積み上がる → 判断が鈍る” という連鎖が起きやすいです。

これが悪循環の入口になり、損切りすべきラインを見誤りやすくなります。

出店候補エリアは複数比較し、「売上が想定より2〜3割低くても耐えられるか」という視点で契約条件を検討することがたいへん重要です。

2つ目は、商品と規制に関するリスクです。

食品やコスメ、ベビー用品などを扱う小売では、成分表示やパッケージ表記、輸入許可に関するルールを事前に確認しておかないと、販売開始後に仕様変更や販売停止が必要になることがあります。

また、返品やクーリングオフのルールも国によって違うため、「どの条件なら返品対応が必要か」を事前に整理し、社内ルールと現地法規制の両方に沿った形に整えておくことがポイントです。

3つ目は、在庫と資金繰りのリスクです。

小売はどうしても在庫を抱えるビジネスのため、「どのくらいの回転で売れる前提か」「在庫が滞留した場合にどこで手を打つか」を事前に決めておく必要があります。

越境ECでの販売データがあれば、売れ筋とそうでない商品を分け、出店初期は売れ筋に寄せた絞り込みを行うことで、在庫リスクを抑えられます。

また、決済手数料や為替変動による影響も含めて、キャッシュの動き方を簡単なシミュレーションで確認しておくと安心です。

4つ目は、模倣や情報漏洩によるブランド毀損のリスクです。

小売は製造業と異なり、商品そのものよりも “編集力(品揃え)・売れ筋データ・売場づくり” が価値の源泉になります。

そのため、一度店頭オペレーションや商品構成が現地に浸透すると、競合店舗が容易に模倣できてしまう点が大きなリスクです。

特に、現地スタッフや外部業者が売れ筋カテゴリ、仕入れ先、在庫の回転スピードなどの情報をそのまま他社に提供してしまうケースは、アジア圏の小売でも実際に発生しています。

また、POP-UPやイベント出店で陳列やパッケージを撮影され、そのまま類似商品が市場に出回ることも珍しくありません。

これらのリスクを避けるためには、

・重要情報にアクセスできる範囲の制限
・売場デザインや見せ方の差別化(真似しづらい設計)
・特定商品への依存を避け、カテゴリで勝つ戦略
・仕入れ先情報の管理

など、“模倣されても店全体がコピーされない仕組みづくり”が必要です。

小売の海外進出では、人的な労務リスクよりも、こうした“情報が漏れた瞬間に競争力が下がる”という構造リスクの方が深刻です。

早い段階から「何が自社の核なのか」「どこまでオープンにするか」を整理しておくことが、長期的なブランド維持につながります。

以上、これらのリスクは、完全にゼロにはできませんが、「知らなかった」「想定していなかった」という状態を減らすことはできます。

失敗パターンの多くは、こうした事前整理が不十分なまま意思決定を進めてしまった結果でもあります。

どの国で、どのチャネルで、どの順番で動くかが曖昧なまま出店や投資に踏み切ると、中小企業ほど取り返しがつきにくい状況に陥りやすくなります。

だからこそ、実際にどんな“つまずき”が起きているのかを把握しておくことが、最初の一歩を誤らないために欠かせません。

中小の小売業が海外進出で失敗する典型パターン

小売業の海外進出で成果が出ない多くのケースは、商品力の不足ではなく 「最初の判断を誤ったこと」 が原因です。

準備不足というよりも、動き出す順番を間違えたことで、現地ニーズとズレた戦略を取ってしまうことが少なくありません。

ここでは、小売企業が実際に直面しやすい失敗パターンを、代表的な5つに整理して紹介します。

まず1つ目は、調査やテストを十分に行わず、いきなり実店舗から始めてしまうケースです。

国内で手応えがある商品でも、海外では色、サイズ、価格帯が合わないことがあります。

たとえば、インバウンドで手応えがあったことを理由に日本と同じ商品構成で出店し、蓋を開けてみると現地の生活者には全く必要とされていなかった、というケースがあります。

これは現地の需要を読み違える典型例です。

海外出店のターゲットは旅行者ではなく日常を暮らす生活者であるため、ゼロから正しいリサーチを行う意識が欠かせません。

2つ目は、現地の顧客像を日本の感覚で決めてしまうことです。

日本では30代女性が主要顧客でも、海外では異なる層が購入するケースがあります。

例えば、東南アジアで高評価の雑貨が、実際には若年層ではなく所得の高い外資系勤務層に売れているなど、データと実感がずれることがよくあります。

誰向けの商品なのかを固定してしまうと、価格や販促が不自然になり、売れ行きに直結します。

3つ目は、現地のオペレーションを過度に日本式で進めてしまうパターンです。

日本では許容される残業も、国によっては制度上実施が難しかったり、遅刻や休日勤務への考え方も大きく異なります。

こうした労働文化の差を理解しないまま日本式のルールを適用しようとすると、スタッフの離職やコミュニケーションのすれ違いにつながりやすくなります。

この状態では、顧客満足度を安定させることが難しくなります。

4つ目は、マーケティングの方向性を誤るケースです。

SNSが普及していても、国によって反応する投稿内容や広告の効果は大きく異なります。

日本の商品をそのまま紹介しても反応が弱く、クリエイティブの調整に時間がかかってしまうこともあります。

特に「現地で刺さらない理由」がわからないまま広告費を使い続けてしまうと、無駄なコストが積みあがります。

5つ目は、複数の課題が同時に発生し、社内リソースが不足して迷走するパターンです。

出店準備、EC運営、物流、マーケティング、人材採用など、やるべきことが並行して発生するため、担当者が「本当に優先すべきこと」に手を付けられないまま時間が過ぎてしまいます。

結果として、出店の遅れ、在庫トラブル、販促の弱さが連鎖し、想定よりも成果が出ないまま初年度が終わってしまうこともあります。

これらの失敗パターンに共通するのは、海外進出そのものの難しさではなく、「最初の一歩の選び方」「進める順番」を見誤ったことにあります。

小さく試し、現地の顧客像をつかみ、運営の型を正しく整えることができれば、リスクは大幅に下げられます。

次のパートでは、成功企業の実例から、どのように一歩ずつ進めれば成果につながるのかを紹介します。

成功事例:中小小売でも実現できる海外展開(ケーススタディ)

ここでは、小規模な小売企業でも実現できる海外進出の流れを、ケーススタディとして紹介します。

特別な資本力や海外経験がなくても、正しい順番で進めれば成果につながることがわかります。

今回取り上げるのは、生活雑貨を販売する国内3店舗の小売企業A社です。

A社はコロナ明けのインバウンドで外国人客の購入が増えたことをきっかけに海外展開を検討し始めましたが、まずは現地生活者にも商品が受け入れられるかを確認する必要がありました。

そこで越境ECを使い、主要商品の反応をテストすることからスタートしました。

テストの結果、国内の主力商品ではなく、価格帯が高めの収納用品のほうが現地の購入率が高いことがわかりました。

SNS分析でも、中間層がインテリアへの投資意欲を高めている傾向が確認され、A社の商品コンセプトとの相性が見え始めました。

越境ECでの検証には約1年強を要し、プラットフォーム出店費用や倉庫管理費、担当者の兼務による運営負荷といったコストも発生していますが、

ここで得た「現地生活者に響くカテゴリー」という仮説が、次の判断を後押しする材料になりました。

この仮説を確かめるため、次にA社は、POP-UP出店を実施しました。

品揃えは収納用品を中心に絞り込み、価格帯も越境ECのデータに合わせて調整。

POP-UPでは、文化の違いによる接客のギャップを避けるため、商品説明パネルや動画を充実させ、スタッフが説明に追われない売場づくりを行いました。

その結果、想定していた20〜40代女性に加えて、インテリアに関心の高い男性層の来店も多く、1日の平均売上は予測を上回りました。

この反応を受けて、A社は1年後に常設店へ移行することを決定します。

初期段階で現地生活者のニーズを把握していたため、出店後の在庫回転も安定し、マーケティング施策も調整しやすくなりました。

現実的には、海外展開を決めてから自社の常設店舗オープンまでに約3年、2年目からは専任担当者を1名雇用というコストを要しましたが、

越境EC → POP-UP → 常設店という流れは、小規模な小売企業でも十分に実現可能な海外展開の一つの形です。

重要なのは規模ではなく、どのターゲットにどの商品が響くのかを丁寧に確認しながら、会社全体で事業を段階的に進めていくことです。

小売業の海外進出を成功させる最初の1年ロードマップ

小売業の海外進出はどうしても長期戦になりがちですが、最初の1年でどこまで進めるかを具体的に描いておくと、社内の動きが整理しやすくなります。

ここでは、小売業が海外展開を始める際の「最初の1年」を、現実的なステップに分けて整理します。

【0〜3ヶ月:方向性とターゲットの仮決め】

最初の3ヶ月は、「どの国で、どの層に、どの商品を売るのか」を仮決定する期間です。

インバウンドの購買データや既存顧客の情報を整理し、候補となる国とターゲット層を絞り込みます。

同時に、市場規模や競合、法規制、物流条件をざっくり確認し、「本当にこの国で勝負する価値があるか」を検証します。

【3〜6ヶ月:小さなテスト販売の開始】

方向性が固まったら、越境ECや少量のテスト出品を通じて、実際の購入データを取りにいきます。

価格帯、商品構成、ページ内容、SNSからの流入などを試しながら、「どの組み合わせならお客様が反応するか」を見極めます。

この段階では、いきなり売上を狙うのではなく、「売れるパターンの仮説づくり」に集中することがポイントです。

【6〜12ヶ月:テスト結果を踏まえた次の一手】

半年ほどテストを続けると、売れやすいカテゴリーや価格帯、反応の良い訴求軸が見え始めます。

これをもとに、POP-UP出店や現地イベントへの参加など、オフラインでの接点づくりに踏み出すかどうかを判断します。

テストで手応えがあれば、品揃えを絞り込んだ形で短期出店を行い、現地生活者の反応やオペレーションの感触を確かめます。

最初の1年では「どこまで成果を出すか」よりも、「どの国・どの層・どの商品で勝負するか」の見通しを持てる状態にすることが大切です。

この土台ができていれば、2年目以降の常設店出店や販路拡大の判断がブレにくくなります。

小売業の海外進出を支援するパコロアの実務サポート

小売業の海外進出は、製造業やサービス業と比べても「現地生活者への深い理解」が求められるため、判断材料が揃うまでに相応の時間と労力がかかります。

特に、中小企業では担当者が国内業務と兼務して進めるケースが多く、情報収集や検証の順番を誤ってしまうことがあります。

パコロアでは、小売企業が最初の一歩を誤らないよう、次のような実務支援を提供しています。

●ターゲットと販売方法の整理

どの国で、どの層に、どの商品を届けるべきかを、一緒に棚卸ししていきます。

インバウンドデータや既存顧客の購買情報を読み解き、初期の方向性を明確にします。

●越境EC・SNSテストの設計

いきなり出店するのではなく、まず「どの組み合わせなら売れるのか」を小さく検証できるよう、越境ECやSNSを使ったテスト設計を行います。無理なく始められる方法を提案します。

●現地での実売テスト(POP-UP・イベント出店)の伴走

POP-UPや短期イベント出店は、現地生活者から最もリアルな反応が得られる場です。

品揃え、価格調整、レイアウト、接客方法など、現地特性を踏まえた実務のサポートを行います。

●常設店出店の計画づくり

テスト結果をもとに、常設店へ進むべきか、それとも別の国・別のターゲットを試すべきかを整理し、判断基準を明確にします。

最終的な意思決定をサポートし、出店後の運営も伴走します。

小売企業が海外へ展開するためには、特別な資本や海外経験よりも、「正しい順番で考え、必要な情報を揃えること」のほうが重要です。

判断の土台さえ整えば、海外進出は決して大企業だけの選択肢ではありません。

もし今、「どこから始めればいいか」「自社の商品は海外で受け入れられるのか」を整理したい段階であれば、ぜひパコロアの無料相談をご利用ください。

パコロアからの営業は一切行っておりませんので、判断材料をそろえる場としてお気軽にご活用いただけます。

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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