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【保存版】初めてのベトナム化粧品輸出|やるべき手続き&売れる戦略まとめ

公開 2025年12月8日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Asian woman examining her face in a hand mirror, symbolizing consumer trends and opportunities in Vietnam’s cosmetics industry

「ベトナムに化粧品を輸出したい。でも、どこから始めれば…?」

そんな声を、私たちは何度も聞いてきました。

近年、ベトナムでは中間層の拡大と美容意識の高まりを背景に、日本製化粧品への需要が急増中。

しかし実際には、

「手続きが複雑」
「成分規制が不透明」
「現地パートナーが見つからない」など、

進出を阻む壁も少なくありません。

この記事では、初めてベトナム市場に挑む日本企業のために、必要な輸出手続きから、現地で売れる戦略、注意すべき規制や文化的なポイントまで、実務視点で徹底解説します。

さらに、シンガポール市場との違いにも触れ、貴社の多国展開にも役立つ視点を盛り込んでいます。

今すぐ読み進めて、「輸出できる」から「売れる」へステップアップしていきましょう。

ベトナムの化粧品市場の現状とチャンス

美容大国ベトナム、いまが“仕掛けどき”

ベトナムは現在、中間層の拡大とZ世代の美容志向の高まりを背景に、化粧品市場が急成長しています。

Statistaによると、2025年までに市場規模は15億米ドルに迫る予測。

特に都市部だけでなく、地方都市にも美意識の波が広がりつつあり、「次の成長国」として注目度が高まっています。

日本製コスメは「品質の信頼性」や「低刺激・自然派イメージ」で現地でもファンが増えており、韓国・欧米ブランドに並ぶ存在感を見せつつあります。

“売れる”条件は「ローカライズ」と「価格設計」

ただし、成功するにはいくつかの注意点も。

ベトナムの購買層は価格感度が高く、かつ伝統的な美容観(例:美白信仰や香り重視)が根強いため、「そのまま日本仕様で売る」と失敗のもと。

このあと詳しく解説しますが、現地トレンドに合わせた製品設計・パッケージデザイン、販売チャネルの最適化が大きなカギを握ります。

シンガポール市場との違いにも要注目

同じ東南アジアでも、シンガポールとベトナムでは市場特性がまったく異なるのがポイント。

例えばシンガポールではオーガニックや敏感肌向けが人気ですが、ベトナムでは「美白」「価格」「韓国コスメ風パッケージ」がヒットの要素。

詳しくは後半の《ベトナム vs シンガポール市場比較》で整理しているので、あわせて確認してください。

今こそ、第一歩を踏み出すタイミング

ベトナムは「輸出するだけ」で勝てる市場ではありません。

でも、戦略さえ合えば、中小企業でも十分に成功できます。

次の章では、最初に必ず押さえておきたい「輸出手続きと必要書類」について、実務目線で解説していきます。

まずやるべき輸出手続きと必要書類

化粧品輸出のスタートラインは「現地代理人の選定」から

ベトナムで化粧品を輸出・販売するには、ベトナム国内の“登録代理人”の存在が必須条件。

これは、輸入後に製品を販売可能な状態にするため、化粧品登録(Notification)を現地当局に申請する役割を担う存在です。

日本企業単独で手続きすることはできず、現地法人、または信頼できる輸入パートナーを選定することが第一歩となります。

必要な書類一覧

ベトナムへの化粧品輸出にあたり、登録や通関時に必要となる主な書類は以下の通りです:

・製品情報ファイル(PIF) 
 化粧品の成分、安全性データ、製造工程などを記載した書類。
 英語またはベトナム語で提出が必要です。

・成分リスト(INCI名)
 製品に含まれるすべての成分を国際名称(INCI名)でリスト化。
 禁止成分や制限成分が含まれていないかの確認が必須です。
 処方に変更があった場合は都度更新が求められます。

・製造元のGMP証明書
 製造工場がGMP(Good Manufacturing Practice)認証を受けていることを示す証明書。
 通常、日本語から英語への翻訳版を提出します。

・製品ラベル案(ベトナム語)
 ベトナムで販売するために必要な表記要件を満たしたラベル案。
 使用方法、成分、原産国、注意事項などをベトナム語で記載する必要があります。

・輸出契約書およびインボイス
 実際の通関に必要な書類。
 品名・数量・価格・HSコードなどの記載内容が正確であることが求められます。
 現地通関担当者との連携が不可欠です。

よくあるトラブルと予防策

  • 成分表の不備や翻訳ミス
    → 登録遅延や却下の原因に。
    → 現地パートナーとの事前すり合わせ+専門翻訳が鉄則。
  • GMP証明の未取得
    → 登録そのものが受け付けられない。
    → 輸出前の早めの取得&有効期限確認を。
  • ラベル表示が現地要件に未対応
    → パッケージ変更を余儀なくされ、追加コスト&納期遅延に…。

事前準備で“時間差勝負”に勝つ

ベトナムの手続きは、書類が揃っていても1〜2か月はかかるのが一般的。

しかも、制度変更が多いため、「とりあえず送ってみる」ではNG。

事前に最新の制度確認・現地との意思疎通・スケジュールの逆算が超重要なんです。

化粧品の成分規制と表示要件

ベトナムで禁止されている成分とは?

ベトナムでは ASEAN共通の「化粧品指令(ASEAN Cosmetic Directive)」をベースに、化粧品成分に関する規制が運用されています。

そのため、日本国内で問題なく使える成分でも、ベトナムでは禁止・制限対象になっているケースがあるので要注意です。

代表的な禁止・制限成分の一例:

  • ホルムアルデヒドおよびその放出剤
  • 一部の色素・保存料(ベンゾフェノン系など)
  • 動物由来の成分(宗教的配慮含む)
  • 高濃度アルコール(特定カテゴリーにより制限)

製品開発段階から、ASEAN化粧品成分リスト(Annex II & III)との照合が不可欠です。

※最新版は現地の登録代理人経由で入手しておきましょう。

表示(ラベル)に関する要件

ベトナムで販売される化粧品は、すべてベトナム語による製品ラベルの表示が義務づけられています。

輸入時点で未対応だと、税関で止められたり、販売許可が下りないことも。

ラベルに必須の表示項目:

  • 製品名(ベトナム語)
  • 用途・使用方法
  • 全成分(INCI名)
  • 内容量
  • 製造日・使用期限またはロット番号
  • 原産国名(”Xuất xứ: Nhật Bản” 等)
  • 輸入業者名および連絡先
  • 警告・注意書き(必要に応じて)

特に使用期限やロット番号の表記形式は、日本とは異なるルールがあるため注意が必要。

たとえば「月/年表示」はNGで、「日/月/年」または「YYYY-MM-DD」形式が求められるケースも。

「ラベル後回し」は禁物

パッケージ制作が日本語だけで進んでしまい、出荷直前に慌ててベトナム語ラベルをシールで対応…はリスク大です。

シール対応が認められないケースもあり、現地検査でトラブルになる可能性があります。

ベストなのは、「製品設計時からラベル要件を設計に組み込む」こと。

パートナーと連携して、最初から多言語対応パッケージを前提にしておくと、コストも手間も大幅に削減できます。

ベトナム市場で売るための戦略とローカライズ対応

ベトナムの化粧品市場で成功するには、「何を売るか」以上に、“どう売るか”が最重要。

都市部と地方で購買行動が違い、価格感度も高いベトナムでは、日本と同じやり方は通用しません。

では、どこにフォーカスすべきか?を3つのポイントにまとめました。

① 信頼できる販売パートナーの選定

ベトナムでは現地販売代理店や小売チェーンとの連携が売上を左右する超重要要素。

都市部(ホーチミン・ハノイ)では外資系チェーンが伸びてるけど、地方部では地場ディーラーが強いという“地域格差”もあるのが特徴。

注目ポイント:

  • 登録代理人=販売パートナーとは限らない
    →登記上だけのパートナーでは、販売実績に直結しないことも。
  • “プロモーションをしてくれるか”がパートナー選定のカギ。
    →小売先に「売ってもらう仕組み」まで設計できる相手がベストです。

② ベトナム消費者が“好きなもの”を理解する

これはもう、パッケージ・香り・使用感・価格感すべてが日本とは別世界。

ベトナム市場で売れている化粧品の共通点:

  • 美白・ツヤ肌推し(UVケア・透明感重視)
  • 韓国ブランド風のデザイン(カラフル・ポップ・かわいい系)
  • フローラル・石鹸系の香りが人気(無香料が好まれるわけじゃない!)
  • 大容量より“小分け”が売れる(手軽&持ち運びしやすい)

つまり、日本でヒットしている“ナチュラル・無香料・シンプル路線”が、ベトナムではむしろ地味に映るケースもあるのです。

③ 価格設計は“中間層向け”がカギ

ベトナムの中間層はここ数年で一気に拡大中。

でも、まだまだ価格へのシビアさは健在。

「品質で勝てば価格は二の次!」というのは通じません。

よくあるNGパターン:

  • 日本の価格をほぼ据え置きで輸出し、売れずに終わる
  • 高級感を出そうとして、価格を上げすぎてターゲットを外す

ポイントは「手の届く信頼感」。

“ちょっと贅沢”くらいのラインが、一番リピートされるゾーン。

現地の人の目線に立って、“売れる仕組み”を逆算して作る。

それが、ベトナム市場で生き残るブランドの条件です。

シンガポールとの違いを知れば、ベトナム市場がもっと見えてくる

ベトナムに化粧品を輸出しようとする日本企業にとって、「シンガポールとどう違うのか?」という視点は実はとても重要。

似たようなASEAN地域に見えて、市場の性格も、売れる理由も、まるで別モノです。

特に、すでにシンガポールに輸出経験がある企業は、「そのままの戦略では通用しない」という落とし穴に要注意。

【ベトナム vs シンガポール 輸出戦略のリアルな違い】

1)市場の特性

  • シンガポールは高所得層&健康志向が強く、成分や品質に対して厳格な目を持つ都市型市場。
  • 一方ベトナムは、中間層の拡大と価格志向が混在する発展市場。
    伝統的な美容トレンドとの融合も見られる。

2)規制の難易度

  • シンガポールではHSAによるオンライン届出が整備されていて、比較的スムーズ。
  • ベトナムでは登録制度が複雑で変更が多く、現地代理人の存在が必須となる点に注意が必要。

3)販売チャネルの違い

  • シンガポールはECが強く、ShopeeやLazadaなどオンライン中心。
  • ベトナムでは実店舗での購入が主流であり、地方展開や対面プロモーションがカギになる。

4)消費者の好みとトレンド

  • シンガポールでは、オーガニック・低刺激・高機能な製品が好まれ、清潔感重視。
  • ベトナムでは、美白・香り・韓国系パッケージなど“感覚に訴える”要素がより重要とされる傾向。

5)成功のための戦略軸

  • シンガポールでは品質・サプライチェーンの管理が勝負の決め手。
  • ベトナムでは現地パートナー選びと価格戦略、文化への適応力が問われる。

シンガポールは「品質と仕組み」、ベトナムは「現地対応力と売り場づくり」がカギ。

どちらも重要ですが、やり方は全然ちがう!というのを、ぜひ戦略に組み込んでみてください。

物流と品質維持のために注意すべき点

ベトナムに化粧品を輸出する際、意外と見落とされがちなのが、

「現地に届いた時点での品質管理」。

日本国内と同じ感覚で出荷してしまうと、高温多湿の環境や地方倉庫の管理体制によって品質が変質するリスクがあります。

しかも、ベトナムは都市部と地方とで物流インフラの差が大きいため、現地販売を広げるほどこの問題が大きくなります。

そこで、実務で押さえておきたいポイントを、チェックリストとしてまとめましたのでぜひご活用ください。

【出荷前にチェック!】ベトナム向け輸送・品質・保管の実務ポイント

チェック①:高温・高湿度対策は十分?
【☐】製品の最適保管温度・湿度(例:25℃以下・60%以下)を確認し、梱包仕様に反映している
【☐】空輸・船便それぞれでの温度変化を想定した梱包材を選定している
【☐】“積み替え拠点(港・倉庫)”での長時間待機に備え、保冷・保護材の追加対策を講じている

*ベトナムの港湾は夏季に40℃を超える場所も…。
 荷降ろしの“数時間放置”が品質トラブルの元に。

チェック②:地方倉庫の管理体制は確認済み?
【☐】都市部以外の倉庫を利用する場合、温度・湿度・清掃状態のチェックリストを取得している
【☐】配送遅延時に保管できる“緊急用のストック環境”を確保している
【☐】現地パートナーと倉庫管理の責任範囲(検品・保管・返品対応)を事前に書面化している

*地方の倉庫は「設備がある=安心」ではありません。
 虫害・湿気・スタッフ教育など、見えない盲点も想定しておきましょう。

チェック③:輸送フローは“詰まり”なく見える化されてる?
【☐】製造〜通関〜納品までのリードタイムと担当者をマッピングしている
【☐】テト(旧正月)など、現地の大型連休による通関停止を想定してスケジュールを組んでいる
【☐】配送中・倉庫内でのロットチェック体制を整えている

*「予定より遅れに遅れて在庫ゼロ・・。」は本当によくあるミスです。
 納品フローの見える化が重要です。

チェック④:物流トラブル時の保険&代替対応は?
【☐】輸送保険(破損・紛失・温度逸脱)に加入している
【☐】トラブル時の連絡ルートと再出荷手順が社内マニュアル化されている
【☐】現地パートナーにも、緊急時の判断基準を共有している

*品質トラブルは“信頼の喪失”につながるため、予防だけではなく初動対応の準備もセットで対応を。

まとめ:物流は「攻めの武器」にもなる

輸送や保管は、つい後回しにされがちです。

しかし、きちんと管理されているブランドこそ現地で信頼されます。

特にベトナムでは、「ちゃんとしてる日本企業」という評価がつくかどうかが、リピートや紹介に直結します。

まとめ|2025年のベトナム市場に乗り遅れるな!

ベトナムは、化粧品輸出の新たな“主戦場”とも言える市場へと急成長しています。

中間層の拡大、都市部以外への購買力の浸透、そして韓国や日本ブランドへの根強い人気。

これらの追い風を、「今」つかむかどうかで数年後のポジションは大きく変わってきます。

ただし、制度の煩雑さや現地パートナーとの連携難など、参入障壁があるのも事実。

だからこそ、日本企業が「勝てる戦い」をするには、次のような視点が必要です

ベトナム化粧品輸出で差をつけるために、今すぐ動くべきこと

  • 現地の法制度や文化にフィットした製品・パッケージを整える
  • 柔軟な価格戦略と、リアル店舗中心の販売チャネルを設計する
  • 現地パートナーとの“信頼構築”を優先し、販路と情報網を持つ
  • 物流・品質管理体制を強化し、長期的なブランド信頼を得る

そしてもし、

「何から始めればいいかわからない」
「他国との違いをちゃんと知りたい」

そんな方は、シンガポール編とセットで読むのがオススメです

【保存版】初めてのシンガポール化粧品輸出|やるべき手続き&売れる戦略まとめ

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小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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