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信用状とは何か?その仕組みとメリットを解説

公開日時 2024年11月7日 更新日時 2024年11月8日
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信用状とは?

信用状とは、国際貿易において売買契約の履行を確実にするための銀行発行の「決済手段」または「金融手段」の一つです。

銀行が発行する信用状は、買主が指定した条件を満たした場合に、売主に対して決められた金額が支払われることを保証します。

この仕組みは、売主が買主に対して求める支払い保証となります。

信用状によって、「海外企業に支払ってもらえないのではないか?」という売主側の不安は減り、取引の信頼性が高まります。

つまり売主は、買主の信用に依存せずに取引を進めることができるため、安心して商品を供給できます。

また、買主にとっても、契約した通りの商品の受け取りが確実となるため、安心して輸入取引を行うことができます。

このように、信用状は貿易関係者にとって非常に重要な役割を果たしています。

および、信用状は貿易におけるリスクを軽減する手段としても重要です。

特に国際取引では、異なる法規制や商習慣が存在するため、信用状を利用することで、よりスムーズな取引が実現します。

信用状の仕組み

信用状の仕組みは、主に三者間の関係から成り立っています。

まず、買主(発注者)が銀行に対して信用状の発行を依頼します。

銀行は、買主の信用を基にして信用状を発行し、売主に送付します。これにより、売主は受け取った信用状を信頼することができます。

次に、売主(受注者)が商品を発送し、必要書類を銀行に提出します。

銀行は、契約条件と書類が一致しているかどうかを確認します。一致している場合、銀行は売主に対して代金を支払います。この過程で、売主はリスクを軽減でき、安心して取引を行えます。

最後に、銀行は買主から代金を回収し、売主への支払いを完了します。

このように、信用状を利用することで、取引における信用リスクを低減し、スムーズな国際貿易を実現することができます。

信用状の基本構造

信用状の基本構造は、主に以下の要素で成り立っています。

・発行銀行の情報(信頼性の基盤となる機関を示します)

・信用状のタイプや条件(売主がどのような条件を満たす必要があるのかが明確になります)

・支払い金額や通貨、支払い期限(売主は受け取る金額やその時期を正確に把握できます)

・必要な書類や発送方法が具体的に指定(書類はすべて英語です)

・有効期限(期限内に条件を満たさなければ、信用状は無効になります)

これらの要素を網羅している信用状は、国際貿易の安全性を高める重要な役割を果たしています。

信用状のメリットとデメリット

信用状のメリット

信用状には多くのメリットがあります。

まず、取引の安全性を高めることができます。売主は、信用状に基づいて銀行が支払いを保証するため、商品を送り出す際の不安が軽減されます。この安心感は、特に新規の取引先との間で重要です。

次に、信用状は資金繰りを改善する手助けとなります。売主は商品の出荷後にすぐに資金を回収できるため、流動資金の確保がしやすくなります。これにより、ビジネスの成長を促進する要因となります。

また、信用状は国際取引での規制を守るための手段にもなります。契約条件や書類に関する基準が明確になるため、両者の合意が形成されやすく、トラブルの減少にも寄与します。

これらのメリットは、国際貿易における信用状の利用を推奨する理由となります。信頼性の高い取引を実現するために、信用状の活用を検討してみることが大切です。

信用状のデメリット

一方で、信用状にはいくつかのデメリットも存在します。

まず第1に、発行手数料やその他のコストがかかる点です。

銀行によっては、信用状の発行に高い手数料を設定しているところもあり、取引コストを増加させる要因になります。このため、特に小規模な取引では、費用対効果を慎重に考える必要があります。

具体的には、信用状発行手数料として取引金額の0.1~1%程度が発生しますが、取引内容や銀行によって異なります。また、書類審査手数料はおよそ1~3万円程度が一般的です。


第2に、書類の準備に関する複雑さがあります。

信用状に基づいて取引を行う際、必要な書類が多岐にわたることが多く、正確に提出することが求められます。

しかし、書類に不備がある場合、支払いが遅れたり、最悪の場合は未払いになる可能性もあります。
従い事前に条件をよく理解し、書類の準備を慎重に行う必要があります。

これらのデメリットを理解した上で、信用状を効果的に活用することが、国際貿易における成功につながります。

信用状の種類

信用状にはいくつかの種類があります。

基本的な信用状を3種類、および参考用に追加でもう3種類を解説します。

取消不能信用状 (Irrevocable L/C)

発行後に発行者(輸入者の銀行)および受益者(輸出者)の同意なしに変更や取消ができない信用状です。
取引の安定性と信頼性が高く、貿易取引のリスクを減らすために国際貿易で最も一般的に使われています。実際の貿易実務の現場でも見聞きする回数が多いL/Cです。

確認信用状 (Confirmed L/C)

発行銀行のほかに、確認銀行(通常は輸出国の銀行)が支払いを保証するもので、輸出者にとって支払いの確実性が向上します。
リスクの高い取引で使用されますが、すべての取引で必要とされるわけではありません。

買取銀行指定信用状 (Restricted L/C)

受益者が買取を依頼できる銀行が特定されている信用状で、通常、発行銀行が指名した特定の銀行でのみ買取を行います。
特定の銀行でのみ買取ができる信用状ということで、取引の自由度が制限されるためあまり一般的ではありません。

様々な取引形態や支払条件に対応する信用状の理解を深めるために、さらに追加で3つ信用状の種類を挙げます。

譲渡可能信用状 (Transferable L/C)

輸出者が信用状の受益権を第三者に譲渡できる信用状で、貿易仲介業者などがよく使用します。

回転信用状 (Revolving L/C)

定期的な取引のために、一定の金額まで繰り返し利用できる信用状で、複数回の出荷が予定されている取引に適しています。

後日払信用状 (Deferred Payment L/C)

商品引き渡し後に即時支払いが行われず、一定の支払猶予期間が設定される信用状で、輸入者に猶予が与えられ、輸出者に支払期日が保証されるメリットがあります。

その他も様々な信用状が存在しますが、現実には貿易取引で頻繁に利用されることが少ないため、特定のニーズに応じた選択肢として検討されることが多いでしょう。

信用状取引の具体例

信用状取引の具体例として、ある日本の企業がアメリカのサプライヤーから機械を輸入するケースを挙げてみましょう。

輸入開始にあたり、アメリカのサプライヤーが日本の企業に対して信用状を要求します。
この信用状は、日本の銀行が発行し、アメリカの銀行がその受け取りを行います。

日本の企業が銀行に依頼し、必要な条件を盛り込んだ信用状を発行してもらうと、アメリカのサプライヤーはその内容を確認します。

その後、アメリカのサプライヤーは機械を出荷し、必要書類をアメリカの通知銀行に提出します。
銀行は書類をチェックし、条件が満たされていることを確認した後、サプライヤーに対して支払いを行います。

このプロセスにより、売主のリスクは軽減され、買主側も確実に商品を受け取れるため、双方にとって有益な取引となります。

信用状は、国際取引において安心感を提供する重要な手段であることが理解できるでしょう。

輸出者側のフロー

輸出者側のフローは、信用状取引の中で特に重要なプロセスです。

例えばここでは日本企業側が輸出者だと仮定します。

まず、輸出者(日本企業)は買主(海外企業)から信用状の発行を受けることが必要です。
買主(海外企業)は自社の銀行に信用状を依頼し、適切な条件を提示します。

この段階で、輸出者(日本企業)は信用状の条件をしっかりと確認し、取引に進むかどうかを判断します。

しかし現実的には、買主(海外企業)が信用状を発行し、通知銀行から信用状が輸出者(日本企業)へ届けられた際に、はじめてその条件を知ることも多く、受け入れられない条件については買主(海外企業)へL/Cのアメンド(修正)要請を行う等で対処することもあるでしょう。


次に、輸出者(日本企業)が商品を準備し、出荷します。

この際、契約に基づいて必要な書類を整えることが重要です。

出荷後、輸出者は必要な書類、例えば、信用状に記載されている通りのB/L、インボイス、パッキングリスト、原産地証明書、為替手形、その他Certification等を通知銀行に提出します。
信用状の条件が満たされているかどうかを銀行内で慎重に確認を行います。

最後に、銀行が書類をチェックし、条件に合致した場合、輸出者は迅速に代金を受け取ることができます。もし条件に合致しない場合は、書類の修正が必要です。

これらフローを通じて、輸出者は安心して貿易取引を進めることができます。信用状は、輸出者にとっての重要なリスク管理手段と言えるでしょう。

輸入者側のフロー

輸入者側のフローは、信用状取引の成功において重要なステップです。

次は日本企業側が輸入者だと仮定します。

まず、輸入者(日本企業)は海外サプライヤーとの契約を締結し、商品の詳細や納期、価格などを確認します。それから、海外サプライヤーが要求する形で信用状の発行を銀行に依頼します。

この際、海外サプライヤーから必要な条件や書類について細かく指示されることもありますが、現実的に出来ること、出来ないこともあるため、冷静に条件内容について交渉することが重要です。

次に、銀行は輸入者(日本企業)からの依頼を基に信用状を発行します。
その後、信用状は海外サプライヤーが指定した銀行へ送付されます。
この段階で、海外サプライヤーは信用状の内容を確認し、取引を進める意思を固めます。

商品が海外サプライヤーから出荷された後、海外サプライヤーは必要書類を整えます。
このことをL/C買取書類を作成する、と言います。

L/C買取書類を提示することにより、銀行に対して支払いを請求できます。

しかし、このL/C買取書類が信用状の指示内容と少しでも異なっていた場合、銀行は支払いを留保し、海外サプライヤーに書類の修正を求めます。

なお、この間にも出荷した貨物は日本へ向けて輸送されていますので、書類修正に時間がかかり過ぎると、輸入者(日本企業)の貨物の受け取りが遅れることもあります。

あるいは、貨物が仕向け港にすでに到着しているにもかかわらず、船荷証券(B/L)等の船積書類の到着が間に合わないという無理なスケジュールで進めてしまうと、輸入者(日本企業)が貨物を受け取れないトラブルに発展することもあります。

従い、海外サプライヤーは銀行提出用書類に正確を期する必要があり、

一方で輸入者(日本企業)側は、出荷や船積みの時期について、事前に海外サプライヤーと契約等により合意したうえで無理のない信用状を開設する慎重さが必要です。

このように、輸入者側のフローにおいても、繊細な管理と確認作業は必須です。

銀行の役割

銀行は信用状取引において重要な役割を果たしています。

まず、銀行は信用の供給者として機能します。売主と買主の間に立ち、取引の安全性を担保します。

具体的には、買主が指定した条件に基づいて信用状を発行し、その内容をサプライヤーに伝えることで、互いの信頼を強化します。

次に、銀行は書類審査を行い、契約の履行状況を確認します。

サプライヤーが必要書類を銀行に提出した際、銀行はその内容が信用状の条件に合致しているかどうかを慎重にチェックします。

この審査が行われることで、取引の透明性が確保され、リスクが軽減されます。

最後に、銀行は支払いの実行を行います。

条件が満たされていれば、銀行はサプライヤーへの支払いを迅速に行い、取引を完了させます。

このように、銀行は信用状取引を円滑に進めるための中心的な存在となり、貿易取引の信頼性を高めています。

他の決済方法との比較

他の決済方法との比較を行うことで、信用状の特徴がより理解しやすくなります。
ここでは銀行為替、外国為替送金、その他の決済方法をご説明します。

1. 銀行為替(Bank Draft, B/E)

銀行為替は、買主が銀行を通じて売主へ為替手形を発行する方法です。
売主はこれを現金化することで支払いを受けることができます。

メリット

コストが抑えられる:信用状に比べて手数料が低いため、比較的安価に利用可能。

比較的手続きが簡単:信用状ほど複雑ではない。

デメリット

売主側にリスクがある:手形を現金化するまでの支払い保証が低く、買主の支払い能力に依存するため、リスクが伴う。

支払いまでに時間がかかる:手形を銀行で換金するのに一定の時間が必要。

手数料の相場

為替手形発行手数料:発行額の0.1~0.5%程度です。

現金化手数料:3,000~5,000円程度が一般的ですが、銀行や手形の金額により異なります。

2. 外国為替送金(Telegraphic Transfer, TT送金)

外国為替送金は、銀行を通じて直接売主の口座に資金を送金する方法です。
TT送金とも呼ばれ、最もスピーディーに資金を移動できる方法のひとつです。

メリット

迅速な決済:銀行間で直接送金が行われるため、決済が早い。

手続きが簡単:送金指示のみで決済が完了し、手続きがシンプル。

デメリット

支払い保証がない:前払いが多く、売主に対する支払い保証がないため、買主の信用に依存する。

為替リスク:為替レートの変動により、受け取り額が変動する可能性がある。

手数料の相場

送金手数料:3,000~8,000円程度が一般的ですが、取引金額や銀行によって異なります。

為替手数料:取引額の0.1~0.3%程度。銀行のレートによって異なることが多いです。

3.その他の決済方法

a. オープンアカウント(Open Account)

買主が商品を受け取った後に支払う方法です。相手の信用に依存しますが、信頼関係がある場合に便利です。

b. 前払い(Advance Payment)

買主が商品受け取り前に全額を支払う方法です。売主のリスクが低いが、買主のリスクが高い方法です。

c. 後払い(Deferred Payment)

一定の猶予期間(クレジットターム)後に支払う方法で、買主にとってメリットがあります。

信用状の今後の展望

信用状は国際貿易において重要な役割を果たしていますが、今後の展望については注目が必要です。

近年、デジタル化の進展に伴い、伝統的な信用状の運用方法も変わりつつあります。

ブロックチェーン技術を用いたスマート契約の導入が期待されており、これにより取引の透明性や迅速性が向上するでしょう。

また、環境に配慮した貿易が求められる中で、サステナブルな信用状の導入も進むと考えられます。

企業は環境に優しい製品やサービスを調達する際に、信用状の条件にESG(環境・社会・ガバナンス)要素を盛り込むことが増えるでしょう。

これらの変化は、経営者や貿易担当者に新たな機会を提供する一方で、従来の運用方法との違いを理解する必要も生じます。

信用状の未来に目を向け、柔軟に対応していくことが重要です。

信用状のブロックチェーン技術活用

ブロックチェーン技術は、信用状の発行や管理において革新的な変化をもたらす可能性があります。

従来の信用状は、書類のやり取りや管理が煩雑で時間がかかることが多く、リスクが伴う場面もありました。

これに対し、ブロックチェーンを活用することで、デジタル化され、安全かつ迅速な処理が実現できます。

ブロックチェーンは、分散型のデータベース技術で、すべての取引履歴が透明に記録されます。

このため、信用状の発行、確認、決済のプロセスが簡略化され、煩雑な書類作業が不要になります。
また、各関係者がリアルタイムで同じ情報を共有できるため、信頼性も向上します。

今後、ブロックチェーン技術の普及に伴い、国際貿易における信用状の利用がさらに進むでしょう。

これにより、貿易関係者は効率的な取引環境を享受でき、競争力を高めることが期待されます。
ブロックチェーンは、未来の貿易業界を変革する重要な技術となるでしょう。

まとめ

信用状とは、海外取引における支払い保証のための銀行発行の非常に有用な「決済手段」または「金融手段」です。

売主が商品を供給する際、買主からの支払いが確実であるという保証を得るために利用されます。これにより、取引のリスクが軽減され、双方が安心して取引を進めることが可能になります。

この仕組みは、銀行が関与することで信頼性が高まり、国境を越えた取引において重要な役割を果たします。

また、信用状にはいくつかのタイプがあり、それぞれに異なる機能や特徴があります。これにより、取引の内容やリスクに応じて適切な信用状を選ぶことが可能です。

最後に、信用状を活用することで、貿易関係の円滑化が図れます。特に貿易を行う企業や銀行職員にとっては、この仕組みを理解し、上手に利用することが成功につながるのです。




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