中小企業が海外で拠点を立ち上げる4つの理由を教えてください。
- 既存顧客からの進出要望
- コストメリット
- 新しい顧客開拓
- 新しい事業展開
です。
なるほど。
でも最近では、既存顧客である現地日系企業から請われて進出したものの、ローカル企業との競争激化は避けられず、その後がたいへんだったと聞いたことがあります。
おっしゃる通りです。
近年は、
- 既存顧客からの進出要望
- コストメリット
よりも、 - 新しい顧客開拓
- 新しい事業展開
を理由とする海外投資の割合が増えています。
それは、海外進出したものの
・人件費が安くても、それ以外の費用が掛かったり
・頼みの日系企業の発注量がかなり少なかったり
等がある、ということでしょうか。
そうなんですか。
はい、仰る通りです。
つまり、
・海外での人件費が高騰し、海外現地生産によるコストメリットが減少していること
・海外ローカル企業(現地競合企業)の生産技術向上もあり、日系企業からの受注がさほど見込めないこと
などがあるため、
最初から現地ローカル企業向けにビジネス展開する覚悟で進出する企業が増えている、ということになります。
難易度がとても高そうです。
はい。
(1)既存顧客からの進出要望、(2)人件費削減が目的の進出である
生産拠点を設立するよりも、
(3)新しい顧客開拓、(4)新しい事業展開を目的とした進出である
海外での新規開拓、販売拠点設立、新規事業展開の方が、
難易度は高く、
入念な海外事業計画と、
マネジメントができて経験豊富な、その会社のエース級の人材配置が必要です。
そうだと思います。
その他にも、海外拠点設立には、様々なリスクが想定されると思っています。
海外拠点を立ち上げることのリスクについて教えて下さい。
海外拠点を立ち上げる(海外投資をする際の)リスクには下記などがあります。
・コストの上昇
ー設備調達、仕入れ調達が困難になる
ー優秀なローカル社員雇用が困難になる
ー(順調だった)事業計画の変更が必須になる
・売上の伸び悩み
ー日系企業からの受注減
ーリピートオーダーが少ない
ー既存顧客を海外企業(現地競合)から奪取される
・組織内コミュニケーション不全
(ローカル社員から適切な情報が上がってこないことによる)
ー市場のニーズ変更への未対応
ー流通のルール変更への未対応
ーマーケットからの低評価
(ローカル社員をローカル市場の方法で適切に評価しないことによる)
ー優秀なローカル社員や通訳の離職
ー社内不正とその発見の遅れ
・政権交代、法令や外資規制の変更
ービジネスモデルの見直し
ー利益減少による経営圧迫
ー労務管理不備による罰金等
こんなに・・・。
従い、
海外拠点を立ち上げる際には専門家にも相談し、立ち上げるべき理由を冷静に熟考しておくことが重要です。
例えば、
・現地駐在員は、経営判断ができるレベルの人材を確保できているか
・駐在員1人に任せるのではなく、経営者の全面協力、本社からのサポート体制の仕組みはあるか
・多くの場合進出して3年は赤字だが、それでも耐えられる事業計画になっているか
・売上減少の際の具体的なプランBプランC はあるか
・撤退基準はあるいか
そして、そもそも論として、
・今のタイミングで海外進出することは最適か
・この国に海外進出することは最適か
・この商品、サービスで戦える勝因は何か
が、検討し尽くされていることが、海外進出中に訪れるピンチを自ら救うことにつながります。
・・・分かりました。
ところで。
海外拠点を設立する場合、東南アジアや欧米への進出が過去5年増加傾向とお聞きしましたが、具体的な国名を教えてください。
東南アジア
ミャンマー、カンボジア、スリランカ、ベトナム、インドネシア、そして、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、台湾、韓国、中国、香港、インド、バングラディシュなど
欧米
アメリカ、メキシコ、ドイツ、イギリス、フランス、スペイン、オランダ、オーストラリア、あるいは、トルコ、チェコ、ポーランド、ルーマニアなど
が増加傾向にあります。
とは言え拠点設立企業数としては、アジアでは、タイ、ベトナムがやはり多く、欧米ではアメリカが多いでしょう。
中小企業が海外進出して現地で拠点を設立する際、何から始めたらいいですか?
まずは海外展開事業計画書(投資編)を策定しますが、机上のリサーチだけでは、分からないところや確信の持てない部分が、いくつも出てきます。
それらを海外現地に行って、海外の関係各社に会い、実際に話を聞きながら、確認していきます。
海外現地でF/S(feasibility study)調査ですね。
そうです!
海外でのF/S調査を、自社だけで行うと、判断材料の集め方が甘くなりがちですので、是非、専門家帯同のもと、自信をもって意思決定できる適切なF/S調査を実施することが大切です。