海外と日本では、Webサイトデザインの魅せ方にも、様々な『違い』があります。
日本企業の商品・サービスを海外のお客様に分かりやすく理解して頂くには、
”海外のお客様に分かる切り口に表現しなおし、反映させる工夫”
が必要です。
”切り口を表現しなおす”とは、日本語から英語に翻訳する、だけのことを指しません。
適切なWebデザイン表現と共に異文化適応が必要です。
異文化適応能力を短期間で身に着けることは難しいですが、海外進出を成功させるには必須の能力です。
最初のステップとしては、まずは日本と海外で求められるWebデザインの違いに『意識的になる』ことがポイントです。
「日本と海外のWebデザインの違い 51事例」を実際に見比べて頂き、海外進出を目指す中小企業のみなさまの、異文化適応スイッチ切替えの一助となれば幸いです。
海外のWebデザインと日本のWebデザインの違い
海外のWebサイトの特徴
海外のWebサイトの特徴は下記の通りです。
- 海外のどの地域のどの教育レベルのどんな立場の人が読んでも理解できる内容を目指している
- 絞り込まれた情報量
- ナビ、アイコン、動線は必須のものだけ
- どう移動し、何を見れば良いか、考えなくて済むよう、レイアウトの大小強弱が明白
- 意図をもって余韻、余白を作っている
- イマジネーションを駆り立てるような映像や写真を狙って採用
- 瞬時に伝わるデザイン力
- 主なメッセージのほとんどが『相手のメリット』、どう見られているか、どう見られるべきかのマーケティング視点が全編に配備されている
- 社名商品名を同業他社名と入れ替えると、○○会社らしくなくなり、つじつまが合わなくなる
- 商品の良さは当社自らが伝える 芸能人を使って、という発想は少ない(欧米)
- モデル投入の際は人種に偏りのないよう意識している(あるいは意図して偏らせている)
国内のWebサイトの特徴
一方で、国内Webサイトの特徴には下記などがあります。
- 情報が多く、レイアウトも細かく、多色、写真が盛りだくさん
- 『切り口を明確にし情報を絞り込むと、間口が狭まってしまうのでは』という不安が先立ち、伝えたいことを全部盛り込む傾向あり
- 余白や余韻も戦略の1つで、来訪者の気持ちを醸成し行動喚起につながる、ということを劣後しがち
- まじめで忙しく一生懸命、という企業姿勢は伝わるが、それが来訪者にとってどんなメリットとなるのかが、分かりづらい
- 社名商品名を同業他社名に差し替えても、ある程度成り立つコンテンツ、特色の少ないコンテンツ
- 一般的なメッセージが多く、これって○○会社だよね!という会社のカラーが際立つものは少ない
- ホームページは企業パンフレット、商品カタログの電子版という意識がまだ残っている
- 日本の大企業は広告に芸能人をよく使う。TOPページで芸能人が笑っていることに来訪者側も特に違和感がない
ここで、1つだけ注意があります。
日本の企業サイトは前提として、日本市場向けに作られています。日本人が閲覧する限り特に問題はありません。
ただ、そのような一般的な日本企業が、海外市場向けにも進出したいと考え始めるのなら、話が変わります。
同じ内容を言語だけ翻訳すれば良いのかと言えば、それは『否』です。
Webサイトデザインの魅せ方の違いを理解し、考慮せねばなりません。
後述する総評は、海外サイトを褒めるものが多いですが、それは海外ユーザーから見て分かりやすい、アクションを起こしやすい、という視点からであり、日本ユーザーから見ても同じように分かりやすいとは限らず、誰をターゲットにするかでWebデザインの正解は、さまざま変わって参ります。
それでは、さっそく見て参りましょう!
海外と日本のWebデザイン【メーカー・流通・サービス・金融・不動産・政府系】
鉄道会社 JR東日本 VS アムトラック(米国)
アムトラックのメッセ―ジは『お子様半額』、家族が海辺で身を乗り出している夏の風景、行先検索窓、それだけです。
一方、JR東日本はページ最初に東京オリンピック2020があり、あれ、サイトを間違えた?とウロウロしていると、経営ビジョン変革2027、北海道として小樽函館富良野をまとめてPR、などなどカルーセルで7つも出てきます。
これでは『忙しすぎます』と書こうと思ったのですが、念のため英語サイトを見るとそれ以上の12コ!が・・・・恐れ入りました。
インバウンドの外国人観光客向けに全部盛りなさい、となったのでしょうか。
LIVE JAPAN や TORETABI JAPAN、四季島のブランドサイトは大画面で素晴らしく、各々とてもカッコよかっただけに!
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タレント事務所 STARTO ENTERTAINMENT VS ユナイテッドタレント?(米国)
日本のSTARTO ENTERTAINMENT に相当する、同概念の芸能事務所は、米国では見当たりませんでした。。
芸能界?の仕組みが日米ではかなり異なるため単純比較ができないのですが、TOPページで多くのタレントをスライダー表示させる企業 VS agent契約をしているタレントの写真は出てこない企業(2018年時点)との比較になるでしょうか。。(2024年現在はTOPに動画でタレントが出てきます)、
UTAはNYに拠点をもつ世界最大Agentの1つでジェニファー・ロペス、J・デップ等が所属しています。
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宇宙開発 JAXA VS NASA
JAXAをサイト単体で見ると十分な内容なのですが、NASAサイトを読み込んでいくとコンテンツ質・量ともに別格という感じに。
サイトTOPにしても、NASAは、タブのタイトル付けが分かりやすい。Humans in Space、Moon to Mars、Earth、Space Tech、Flight、・・・、そして最後に Benefits to You。
宇宙映像Movieページにも探さずたどり着ける、なおかつ画像の質は圧巻。
ただJAXAも、プロジェクトの系譜は一覧出来、見ごたえもあり、大変分かりやすいです。
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不動産サービス会社 三菱地所・三井不動産・野村不動産 VS CBRE・JLL・クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド
日本の大手不動産会社3社のサイトには少々驚きました。とても似ています。
全体レイアウト、TOPページの街風景の引き写真、白抜きセンタリング文字、”グローバルでの取り組み”というメインナビゲーションにあるタイトル名、キャッチコピーの『不動産会社ならではの特徴』が無い点。
例えば三菱地所のメッセージを野村不動産の、三井不動産の各々のメッセージに入れ替えても特に違和感はありません。(良く馴染んでいる)。。。
一方で、米国の大手不動産会社の三社三様ときたら、これでもか、というほどの個性(特にJLL!)、
キャッチコピーを入れ替えると各社で内容がチグハグしてしまいます。
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ここから米国の3社。
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日本企業の海外向けWebデザイン 成功事例5つ
さてここからは、1企業の日本本社サイト現地サイト、もしくは日本語サイト英語サイトの比較です。
判りやすくするため、かなり違うバージョンばかりを集めてみました。ゆうちょ銀行以外は、上手く異文化適応できている好事例サイトです。
ゆうちょ銀行
英語サイトなのですが、
コーポレイトカラーのグリーンと雰囲気(?)を引き継いでいますが、TOP写真にゆうちょ銀行とは関連が低いと思われる”新芽と手のひらのアップ”があり、土が見えるのでアグリビジネスへの投資か?と誤解されるかもしれません。
深い意味はなく、”あなたの大切な資産を守ります、一緒に育てましょう”とのイメージ写真、だと想像しますが、
ゆうちょ銀行のことを知らない一見さんや海外顧客にはそのような『拡大解釈』はまず期待出来ないでしょう。(しかしこの手のイメージ写真採用、同じイメージを共有してもらえるはず意識、は日本企業に非常に非常に多いです。)
また日本語サイトと英語サイトの情報量の非対称性も気になります。(つけ足しのようにちょっとだけ英訳しておきましたサイトも、日本企業に非常に多いです。)
英語サイトの情報量がかなり少ないと英語サイト来訪者は落胆します。是非同じボリュームの情報量を心がけましょう。
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海外企業の日本向けWebデザイン 成功事例6つ
さて、続いては、外資系企業の日本市場へのローカライゼーション成功事例6つです。
日本サイトを上に、本国(海外)サイトを下に並べています。
上のサイトをご覧になって、日本人であるみなさまに違和感がなければ、外資系企業の日本市場へのローカライゼーションが成功している、という事になります。
下のサイト(本国サイト)をご覧になって、デザインに圧倒されて、胸躍り、このサイトの日本語版を読みたかったのに~と感じれば、日本市場へのローカライゼーション失敗事例、かもしれません。
本国側が思う程、日本寄りにしなくて良かった、ということになります。
海外展開初心者さまにとっては、
下のサイト(外資系本国サイト)をご覧になって、何だかあっさりしすぎているなぁ、情報の多い日本語サイトの方が ”何となく落ち着く、判りやすい” と感じることもあるかもしれません。
一方で、
外資系本国サイトの、本国での来訪者は、(言語の違いを無視したとして)上のサイトより下のサイトを ”何となく落ち着く、判りやすい” と感じているはずです。
このあたりの、ご自身の違和感、なぜこちらのサイトでは落ち着かないのか?を深堀りすることも、異文化適応能力を鍛えるにはたいへん良いです。
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海外・国内企業のグローバルWebデザイン仕様 成功事例7つ
最後に、本国サイトと現地サイト共に、どちらの国にも偏りすぎていない、最初からグローバル仕様で制作しました、という事例7つです。
日本企業の事例としては、本社サイトがグローバル化を意識して、純・日本風を避け、内容をそのまま英訳しても違和感が少ないコンテンツに整えています。
外資系企業の場合、反対に、日本へのローカライゼーションの微調整が随所に見られます。
三菱UFJ銀行
読み込むと日本サイトとグローバルサイトは違うのですが、トーンが同質に保たれています。
余談ですが、グローバルサイトで頭取の名前がMikeとありました。は~んマイクさん、外国人CEOか~と思ったのですがミケ(三毛)さん、でした。
米国赴任中はさぞかしマイクさんと間違われたのでは、、と関係ないですが思いました。
3枚目は2024年現在のTOP画像です、ここにも大谷翔平選手が!
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こちらは中国大手の中国工商銀行サイトです。
三菱UFJ銀行とコーポレートカラーの赤も、アイコン(円形)、略語がアルファベット4文字、まで同じですが、似て非なるイメージにはなっています。
サポートカラーがブルーとオレンジで異なること、赤の分量、人が出てこない(中国)が違いを作っています。
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こちらは米国大手銀行その①、バンクオブアメリカです。
カード入会で2万円(1ドル100円換算)キャッシュバックキャンペーンなど、日本の大手銀行がしそうにないキャンペーンです。
でもこれが一番響くからでしょうか(2018年時点)。
2枚目ですが、6年の時を経て2024年現在、TOPページのアプローチが同じです(笑)ブレないバンカメのマーケティング戦略。
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こちらは米国大手銀行その②、銀行持ち株会社、投資銀行のJPモルガン・チェース・アンド・カンパニーです。
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このTOPページのジェームズ・ダイモン氏(JPモルガン会長兼CEO)と、前述の我が国の中央銀行総裁とでは、ご自身の魅せ方、ご自身を知る人のみならず、全く知らない人に対してもどういうイメージを与えたいか、の意識が違うことが、判ります。
この違いは、日本の中小企業の海外展開においても、ヒントになる点があります。
モルガンページ撮影日には、専属スタイリストがついたであろう為、当然かもしれませんが、好印象を得られる写真になっています。
先ほどの日銀総裁の白髪・ノーネクタイ・クールビス(たぶん自前)と比較して、いかがでしょうか。
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メッセージと写真で、その人のイメージはほぼ出来上がってしまいます。
本当のところの人物像は全く異なっていたとしても、快活で余裕がある血色の良い風貌は信頼される要素があります。信頼されて初めてメッセージは伝わります。
海外では、中身が良ければ外見は二の次でも、、、ということは、ほぼ通用しない為、相手にどうみられるか、どう魅せたいか、を常に意識し、少しでもビジネスを円滑に進めやすい環境を、自ら整える積極性が必要です。
エヌエヌ生命保険
同社のホームページにある、代表取締役社長(フランク・エイシンク氏)のご挨拶は下記の通りです。
”皆さまにおかれましては、日頃よりエヌエヌ生命をお引き立ていただき、厚く御礼申し上げます。・・・中略、今後とも、ご支援、お引き立てを賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。”
これはまさに日本仕様ですね。(原文にはお引き立て、とか、何卒よろしく、とか、まず無いでしょう。)
その挨拶の締めの署名サインが独特だけに(コチラ↓)
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(海外ではこのようなサインも良くありますが、日本では何じゃこれは・・!?)そのギャップが異文化適応されている証で、とても素敵です。(2023年に確認したところ、社長さんが変わられ、上記サインは掲載されていません・・)
長年日本市場開拓に取り組んでいる外資系企業ならではの試行錯誤の成果と言えます。
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TOP写真の、社長(と思しき男性)が従業員と共に作業着を着て微笑む写真は正に、日本の中小企業のあるあるイメージ。
誰向けのメッセージか?が明確で本当に的を射ています。
2024年現在は、本国のエヌエヌ生命のTOPページは元気いっぱいのヤングの顔に変わっていました。↓
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ディズニーランド
2018年以前は日本のディズニーランドサイトと本国サイトは魅せ方がかなり異なっていました。
キャラクターを全面に出すのか(日本)、ゲストの喜ぶ顔をクローズアップするのか(本国)。
今回(2018年)調べると両社は限りなく近いイメージになっていて、
両国ともナイトパレードを全面に出す!でした。
そして2024年が3,4枚目。
東京ディズニーランドはかなりあっさりした魅せ方。本国サイトは7月10日時点でもうハロウィーンイベントの告知、どれだけ楽しみなのかハロウィーン!
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海外進出の第一歩は海外のWebデザインを知ること
いかがでしたか。。
海外進出の第一歩は、海外企業のWebサイトデザインを知ることですが、
今回、海外と日本の各企業のWebサイトデザインを比較して見ることで、海外デザイナーのWebデザインの魅せ方のcoolさはもとより、これまで気が付かなかった日本独特の訴求方法も再認識できたかもしれません。
日本と海外では求められる魅せ方が異なるため、商品やサービスによっては、情報過多の日本語サイトはそのまま日本市場向けに残し、海外向けには、異なるサイトマップやWebデザインで新たにwebサイト制作することが解決になることもあります。
他にも、一部のページのみコンテンツを海外向けに変更する、もしくは、日本も海外も全く同じ内容にして情報発信する方法もあるでしょう。
各企業ごとに商品とサービスそしてどの国向けにどう海外進出していきたいのがそれぞれ異なりますので、最終的には各企業で海外向けWebサイトの最適解を見出す必要があるでしょう。
株式会社パコロアでは、海外向けWebサイトの最適解を見出すお手伝いを、海外進出OJT支援サービスに含めて、日夜行っております。
海外向けWebサイトを制作する際は、おおまかな海外ユーザーのニーズを把握するために、海外競合サイトの調査や現地Googleのキーワード検索ボリューム調査等が必要です。
海外の実際の検索状況を把握することなく、海外の顧客企業はこのようなサイトであれば読んでくれるだろう、というイメージでホームページを制作しても、新サイト立ち上げ後、海外企業から問い合わせが来ることはまずありません。
残念ながら、英語のホームページを制作する際に、海外競合調査まで実施するWeb業者さんはかなり少なく、またそれに費用をかけてもよいと考える日本企業も同じくらい少ないのですが、中には少数派ではありますが、しっかり調査を行う日本企業もいらっしゃいます。
そんな日本企業ー海外市場についてしっかり知った上で戦おうとするグローバルマインドセットを携えた日本企業のー海外向けWebサイトが、イメージした通りの海外顧客をざくざく呼び入れ、海外顧客から見ても、お、分かってるね、この会社!と言わしめる、素晴らしいWebデザインサイトとなることを日々心より願っております。
海外進出や海外向けWebサイト構築を成功させたい企業さまは、Web業者さんに相談する前に、ぜひ株式会社パコロアまで一度お問い合わせ頂ければと思います。