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輸出しづらいもの こわれもの パコロア

日本企業の海外進出の失敗要因を、
輸出しづらいものという視点で、商品のカテゴリー別に8つまとめてみました。

輸出しづらいものって、どういう意味ですか?

輸出はできるのですが、「輸出で利益を出すこと」が難しい商品、という意味です。

ほぅ、ぜひ聞いておきたいですね。

海外進出の失敗につながる、利益を出すことが難しい商品のカテゴリーは8つあります。

illustration of 8 categories that are difficult to commercialize as an export

まず、前提として、輸出自体はできます。

ただ、利益を出すのに、あるいは利益が出るまでに、時間とお金がかかるものも現実にはあります。

出来れば、海外進出を始める前に、高い確率で上手くいかない輸出の失敗要因について理解し、海外戦略構築の参考にして頂ければと思います。

海外進出 失敗要因1.重い物/大きい物

国際輸送費の負担が大きい

大きいもの重いものは国際輸送の送料がかかり過ぎますので、現地の代替品と比較し、競争力は弱いでしょう。但し、

  • 代替できない機能、性能
  • 現地で入手できない別格のブランド

があれば、この限りではありません。

海外進出 失敗要因2.国ごとにある規制・規格

海外規制準拠費用の負担が大きい

海外各国には輸出入の規制があります。
海外各国で求められる規制や規格について、調査したり、準拠したりするには数万円レベルではない費用がかかります。

規制はたいていの場合その国の法律となっていますので、現地規制を無視して輸出取引は難しいでしょう。

CEマーキング、知らなかったでは済まされない??

海外進出 失敗要因3.要メンテナンス品

海外メンテナンスの仕組みがない

美理容師用シザーや包丁、畳や業務用水槽など、メンテナンスが必要となる商品となれば、どのようにメンテナンスサービスを組みこむのか、を輸出を開始する前に考える必要があります。

もし、海外ユーザー向けに優れた顧客体験“カスタマーズエクスペリエンス”を構築できれば、メンテナンスのためにかかる手間やコストをいとわず、リピート顧客になってもらえる可能性はあります。

カスタマーズエクスペリエンス(CX)とは、商品やサービスの購入前後のプロセスや利用時に顧客が体験する「心地よさ」「驚き」「感動」「誇らしさ」などの、感覚的、感情的な付加価値のことです。価格や機能以外にも、これら優れた顧客体験は、リピートされる理由として年々重要視されています。

海外進出 失敗要因4.現地安価同等品

現地の安価品で間に合っている

商品の品質やデザイン自体は優れているのですが、現地にもそれに近い同等品、あるいは代替品があり、海外配送費用がかかる分、現地価格に勝てないというものも、多くあるでしょう。

う~ん、色々あるんですね。
ウチは機械もありますが、難しいのでしょうか。

重い機械、定期的にメンテナンスが必要なデバイス装置等であっても、輸出が成立している事業はいくつもあります。

海外競合企業にない仕様や価格が実現できれば、つまり競争力が高ければ、海外市場でも売れますので、心配無用です。

そうですか!

この1.から4.の輸出で利益を出しづらいものですが、ビジネスモデルを変更する、つまり海外現地生産に切り替えることで優位性を築くことはできます。

ほぉ、現地生産ですか、ナルホド、

このあとの5.から8.については、現地生産という切り札も使いづらく、難易度は更に高くなります。

海外進出 失敗要因5.旅の思い出品

リピート購入の仕組みがない

海外からのインバウンド客が、来日時に旅先で「これは素敵」「本当に便利」と思って購入した商品でも、その後も個人輸入してまではリピート買いしてもらえない、というのは、インバウンドの現場では多いお悩みかもしれません。

これも先ほどのカスタマーズエクスペリエンス、顧客が感動体験するための工夫次第で、ピンチをチャンスに変えることはできます。例えば、

  • 購入しやすくする為に越境EC立ち上げを検討する(自社サイト構築、プラットフォーム出店)
  • その企業にしかできない、顧客が真に必要とする情報発信を続ける
  • ワークショップを開催し、特別な体験を商品購入と共に提供する
  • 他では得られない商品を企画し、開発時から顧客を巻き込む
  • 買い続けることで得られる、代替できない関係を築く

などで、ブランドロイヤリティが高まれば海外ユーザーのリピート注文も増えていくでしょう。

海外進出 失敗要因6.異文化・風習

10年単位の文化の啓蒙が必要

海外と日本では文化風習の背景が異なるため、市場ニーズが有るのか無いのかが微妙で分かりづらいというものも多くあります。
例えば、仏壇、着物、扇子、雪駄、和小物、日傘やマスク、などです。

これらは何らかの理由で「異なる文化と風習を乗り越えてでも手に入れたい必須アイテムとなる場合」を省き、異文化なりの美しさやストーリーに共鳴した少数派からの購入に留まることが多いでしょう。

今回のコロナ禍において、海外ではマスクを着用したがらない人が多くいることが伝えられました。

文化風習の異なる一部の人々にとっては、マスクはたとえば犯罪や弱さをイメージさせるものであり、拒絶感、違和感が日本人の比ではないことを理解する1つの機会となりました。

なお、商品を普及させるために、まずは「用途の認知度を上げる」、つまり「文化の啓蒙」が必要となった場合は、市場普及までに多くの時間がかかる覚悟が必要でしょう。

例えばキッコーマンの場合、アメリカでは醤油のことを今では「KIKKOMAN」と呼びますが、市場に浸透するまでに40年ほどかかっています。

サロンパスはパッチテクノロジーが根付いていないアメリカで30年以上かけてユーザーを啓蒙し、近年米国において貼り薬シェアno.1を獲得しました。

このようにもともとその国に無いか馴染みの薄いもので、ニーズはなく、一から啓蒙が必要な商品は、資金という体力と長い時間が必要です。

たとえその商品がどんなに優れたものであっても、海外市場に根付くまでには遠い道のりが待っているため、それを見越した戦略もしくは、方向転換が必要となります。

海外進出 失敗要因7.客層未細分化

中間層がまだ少ない

日本の小売店は、ターゲットとする顧客が実に細分化されています。
これは中間層が大きい日本市場だからこそ実現できることです。

例えば、ビレッジバンガードとマツモトキヨシとドン・キホーテはそれぞれターゲット顧客が違います。

似ている点もありますが、それぞれやはり違います。ただ、その違いをニーズとすれば、そのニーズに応えるための多店舗展開は、海外各国によっては一般的ではないでしょう。

中間層のボリュームが日本ほど大きくない海外市場では、顧客ニーズがそこまで細かく分かれていないため、日本ほどの細かい商品施策が不要で、そもそも誰のための商品だろう?と、計画がスタート地点に戻ってしまうこともよくあります。

日本で売れに売れていたとしても、もしかすると想定するターゲットがその国にはまだいないかもしれない、という着地になることも多いでしょう。

これは日本市場が他のどの国とも異なる特殊な市場であることが理由です。

東京で流行れば、名古屋でも大阪でも福岡でも仙台でもある程度は売れる、という現象は、海外では少ないと言えるでしょう。

海外進出 失敗要因8.導入時期尚早

海外デビューのタイミングが難しい

商品やサービスを買うより、「人力」の方がまだまだ安いという国はあります。

たとえば、インドでとある家庭用品(日本で売れに売れている、必ずどの家庭にもあるものです)について海外現地で市場調査(F/S調査)を行った際には、該当商品を買うより大工さんにオーダーメイドで作ってもらう方が「断然安い」ということが分かりました。

(そこから3年後から、インドでその商品は売れ始めました。)

お客様のお困りごと=面倒な修理、を改善するため、「耐久性の高い商品を輸出する」とのミッションを掲げても、

現地からは「壊れても代替品は安い」「壊れても修理をする人件費も更に安い」ことから、日本の商品を買う必要はないと言われることもあります。

但し、タイミングとして、そのように人力の方が安い状態から、いつのまにか、長持ちするものを買った方がお得な状況に切り替わる状況へ、ほんの1-2年で変わることはよくあります。

いつ輸出を開始するかは、注意深く検証、検討する必要があるでしょう。

モノより人の方が安いんですか、日本では考えられないなぁ。

5.から8.の商品も決して売れないことはありません。
ただ、売るのがたいへんな部類に入るため、事前に入念な海外事業計画が必要となるでしょう。

これから輸出を始める方は、上記の失敗要因をうまく避けて輸出計画を立てられるとより良いです。

実際に、ハサミ、マスク、畳、着物、5本指ソックスにいたっても輸出事業化できている日本企業はキチンといらっしゃいます!

陰には並々ならぬ努力があります。

ところで、
異文化の影響がなく、
海外規制も少ない商品であれば、
それは、それだけ最初から輸出優位性がある、ってコトですかね??

その通りです!

そういった恵まれたポジションをお持ちであれば、その機会、ぜひ活かしたいですね!!

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