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医療機器の海外進出|規制対応だけでは売れない、中小企業が押さえるべき実践ポイント

更新 2026年8月31日 公開 2025年9月22日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Medical device manufacturing inspection with staff in protective clothing and masks, representing global market entry regulations and quality standards.

医療機器の海外進出というと、まずFDAやCEマーキング、各国の薬事規制への対応を思い浮かべる企業は多いでしょう。

もちろん、規制対応は避けて通れません。

しかし実際の海外展開では、認証を取得しただけでは製品は売れません。

海外展示会に出展して製品の評価は高かったのに、その後の商談が進まない。
現地代理店を見つけたものの、思うように販売してもらえない。
認証取得に時間と費用をかけたのに、その先の販路開拓が続かない。

医療機器の海外進出では、こうした「規制対応の先」で行き詰まることがあります。

特に中小企業の場合、規制対応、市場選定、販売代理店探し、展示会、現地営業、Webでの情報発信などを限られた人員と予算で進めなければなりません。

そのため重要なのは、すべてを一度に進めることではなく、自社の医療機器を「どの市場で、誰に、どのように売るのか」を先に整理し、その販売戦略に合わせて必要な規制対応や販路開拓を進めることです。

この記事では、医療機器の海外進出で必要となる基本的な規制や手続きを押さえながら、「認証を取る」だけで終わらず、「海外で売る」ところまで進めるために中小企業が考えておきたい実践ポイントを解説します。

医療機器の海外進出は「市場が大きい国」を選べばよいわけではない

世界の医療機器市場は拡大しており、日本の中小企業にとっても海外市場は重要な選択肢の一つです。

ただし、医療機器の海外進出では、市場規模が大きい国や成長率の高い国を選べば売れる、というわけではありません。

同じ医療機器でも、国によって規制や認証制度、医療制度、販売ルート、価格水準は異なります。

また、実際に製品を使用する医師や医療機関と、購入を決定する人・組織が異なることもあります。

そのため市場を選ぶ際には、「需要がありそうか」だけでなく、自社製品が誰に評価され、誰が購入を決め、どの販売ルートなら届けられるのかまで考える必要があります。

特に、特定用途に強い技術や専門性を持つ中小企業の場合、巨大市場を広く狙うよりも、自社の強みが生きる用途や顧客層を見つけることが、海外市場を選ぶ出発点になります。

そして、狙う市場と販売方法が見えてきて初めて、「どの認証が必要なのか」「どこまで費用をかけるのか」という規制対応の判断も具体的になります。

医療機器の海外進出で押さえるべき5つのステップ

医療機器の海外進出では、認証取得だけを先に進めても、販売につながるとは限りません。

「どこで売るか」だけでなく、「誰が使い、誰が購入を決め、誰が販売するのか」を確認しながら進めることが重要です。

ここでは、中小企業が海外販売を具体化するために押さえておきたい5つのステップを整理します。

1. 市場調査と現地ニーズの把握

最初に確認したいのは、「市場が大きい国」ではなく、自社製品を必要とする医療現場がどこにあるかです。

同じ用途の医療機器でも、国によって医療現場の課題や既存製品、価格帯、購入決定の仕組みは異なります。

現地の医師や医療機関、ディストリビューターなどへのヒアリングを通じて、「誰が何に困っているのか」「現在は何を使っているのか」「自社製品の何が評価されるのか」を確認します。

ニーズ調査についてはこちらもどうぞ:
輸出マーケティングを成功させる!自社で行う海外市場調査の手順と実践アドバイス
海外進出前にF/S現地調査はしましたか

2. 法規制と認証のクリア

対象市場が見えてきたら、その国で販売するために必要な規制・認証を確認します。

医療機器は、国や製品分類によって必要な申請、登録、現地代理人などの要件が異なります。

重要なのは、認証取得そのものを目的にせず、販売可能性や必要な費用・期間を確認したうえで、取得に進むかを判断することです。

3. 現地パートナーの選定

医療機器では、現地ディストリビューターや代理店が販売だけでなく、医療機関へのアクセスや製品説明、導入後の対応などを担うことがあります。

ただし、「医療機器を扱っている会社」だから適任とは限りません。

自社製品と近い診療科・顧客層への販売実績があるか、誰に営業できるのか、製品教育やアフターサービスをどこまで担えるのかを確認することが重要です。

4. 海外販売に必要な費用と期間を見積もる

医療機器の海外展開では、認証費用だけでなく、市場調査、現地パートナー開拓、契約、翻訳、展示会、渡航、物流、販売支援などにも費用がかかります。

認証を取得した時点で予算を使い切らないよう、販売開始後の営業活動まで含めて必要な費用と期間を見積もっておくことが重要です。

5. 知的財産権の保護

海外展開を具体化する段階では、特許・商標などの知的財産についても確認しておきます。

特に、現地企業への技術情報の開示や共同開発、ライセンス契約などを予定している場合は、「何を開示するのか」「何を自社に残すのか」を整理したうえで交渉を進めることが重要です。

この5つは、必ずしも順番どおりに進むものではありません。市場調査を進めた結果、認証費用に見合わないと判断することもあれば、先に有力なパートナー候補が見つかり、そこから市場参入の方法が具体化することもあります。

重要なのは、認証取得を海外進出のゴールにせず、「実際に誰がどう売るのか」まで並行して確認することです。

【自社の場合、どこから進めるべきか迷っていませんか?】

・どの国から始めるべきか決めきれない
・認証取得に進んでよいのか判断できない
・代理店探しと認証、市場調査のどれを先にすべきか分からない

海外進出の進め方は、製品や対象国、現在の準備状況によって変わります。

迷っているポイントがあれば、一度壁打ちして整理してみてください。

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各国における輸入規制と通関手続き

「認証をクリアしたから、あとは輸出すればOK!」

――そう思っていたら、現地の通関で止められてしまった…。

これは医療機器の海外進出でよくある落とし穴です。

なぜなら、輸入国ごとに別のルールや登録制度があるからです。
たとえば下記などがあります:

  • 中国:
    NMPA(国家薬品監督管理局)での輸入登録が必須
  • 韓国:
    MFDS(食品医薬品安全処)による事前承認が必要
  • インド:
    CDSCO(中央医薬品標準管理機構)での登録制度あり
  • ASEAN諸国:
    国ごとに独自規制があり、英語での資料提出や現地代理店の登録を求められるケースも多い
  • ブラジル:
    ANVISA(国家衛生監督庁)による承認が必要

つまり、輸出国での「認証取得」と、輸入国での「登録・通関プロセス」は別物。

両方をクリアして初めて、製品を現地市場に届けられるのです。

さらに医療機器は、輸送条件にも厳しい規制があります。

温度管理や滅菌状態の維持など、通関時にチェックされる項目が多いため、輸送会社選びも重要です。

中小企業にとっては難しく感じるかもしれませんが、安心してください。

実際には、現地パートナーや専門の物流業者に任せることでスムーズに進められます。

大事なのは、「輸入規制を事前に調べ、現地に登録済みのパートナーを確保する」ことです。

これを怠ると、せっかく認証を取った製品が現地に届かず、時間も費用もムダになるリスクがあります。

医療機器は「誰が買い、どう支払われるか」まで確認する

認証を取得し、輸出できる状態になっても、そこから自動的に販売が始まるわけではありません。

医療機器の海外展開では、「製品を使う人」「導入を評価する人」「購入を決める人」「販売する人」が異なることがあります。

そのため、製品の性能や技術力を説明するだけでなく、それぞれの関係者が導入を判断するために必要な情報を用意することが重要です。

米国市場ではGPOなどの流通構造も確認する

米国の医療機器市場では、日本メーカーから医療機関までの間に、複数の事業者や組織が関わることがあります。

たとえば、日本メーカー側では現地の販路開拓を支援する「レップ」、販売・流通を担う「ディストリビューター」、医療機関側では購入条件の交渉などに関わる「GPO」といったプレイヤーが存在します。

つまり、単純化すると、

日本メーカー → レップによる販路開拓 → ディストリビューター → 医療機関

という販売の流れが考えられ、その医療機関側の購買にGPO(Group Purchasing Organization:共同購買組織)が関わる場合があります。

GPOは、病院などの医療事業者に代わって、医薬品や医療機器などの購入条件についてメーカーやディストリビューターと交渉する組織です。

一方、Manufacturer’s Representative(Manufacturer’s Rep)やSales Representative(Sales Rep)などの「レップ」は、日本メーカー側の販路開拓を支援する存在です。

レップが担う業務は契約によって異なり、販売会社の開拓を支援する場合もあれば、医療機関などのエンドユーザーへの営業を担う場合もあります。

そのため米国市場への進出では、単に「代理店を探す」「病院へ営業する」と考えるのではなく、

自社は誰と組んで販路を開拓するのか、
誰が製品を販売・流通させるのか、
医療機関ではどのような購買の仕組みがあるのか、

を確認することが重要です。

保険償還の仕組みが導入を左右することもある

医療機器では、製品そのものの販売価格だけでなく、その製品を使った診療や処置が保険でどのように扱われるのかが、医療機関の導入判断に影響することがあります。

たとえば米国のMedicareでは、Coding(コード)、Coverage(保険給付の対象になるか)、Payment(どのように・いくら支払われるか)は、それぞれ関連しながらも別の仕組みです。

FDAの承認・クリアランスを得たからといって、自動的に保険給付の対象となり、支払額が決まるわけではありません。

また、医療機器が単独で支払われる場合もあれば、使用される診療や処置などの支払いに含まれる場合もあり、使用される医療現場によって支払いの仕組みも異なります。

そのため海外市場を検討する際には、「いくらで売りたいか」だけでなく、その国で誰が費用を負担し、医療機関がどのような仕組みで支払いを受けるのかまで確認することが重要です。

展示会で「Very interesting」と言われても売れるとは限らない

海外展示会で医師から高い評価を受けたり、ディストリビューター候補から関心を示されたりしても、それだけで販売につながるとは限りません。

製品そのものが評価されても、流通経路、価格、保険償還、導入後のサポートなどが合わなければ、実際の導入まで進まないことがあります。

医療機器の海外マーケティングでは、「製品をどうPRするか」より前に、「その国でどうすれば購入されるのか」を理解することが重要です。

ケーススタディから学ぶ医療機器の海外展開

ここからは、海外進出を考える中小医療機器メーカーが直面する典型的な場面を2つ紹介します。

「展示会でデモはできたけど契約に進まない」「規制はクリアしたのに販売が伸びない」

――どちらもよくあるケースです。

(なお、以下は医療機器の海外展開で起こり得る課題を理解するために設定した仮想ケースであり、特定企業の実例ではありません。)

ケーススタディ①:展示会デモを導入契約につなげるには

多くの中小医療機器メーカーが経験する典型的なパターンに「展示会でのデモは好評だったのに、その先の契約に進まない」というものがあります。

これは決して珍しいことではなく、医療機器の海外展開で多くの企業が直面する“壁”です。

なぜデモの先に進めないのか? その理由として考えられるのは――

  • 病院側は「購入後のメンテナンスや消耗品供給の安定性」を重視している
  • 販売代理店は「市場でどれくらい需要が見込めるのか」に不安を抱いている
  • 医師は「既存機器との互換性や、トレーニング体制の有無」を気にしている

つまり、デモだけでは「安心して導入できる根拠」が不足しているのです。

ここで有効なのが、補強データやサポート体制の提示です。

  • 現地での臨床データを追加で示し、科学的な裏付けを強化する
  • 現地パートナーと連携し、アフターサービス体制を明確にする
  • 医師向けに小規模なトレーニングセミナーを開催し、使用イメージを具体化する

こうした対応によって「単なるデモ」から「信頼できる導入選択肢」へと評価が変わり、契約につながりやすくなります。

ポイントは、デモで終わらせず、導入後の安心感をどう証明するか。

この視点を持つことで、競合と差をつけることができるのです。

ケーススタディ②:現地営業とWeb対応を軽視した結果…

欧州市場向けに製品を開発し、CEマークまで取得した中小医療機器メーカーがありました。

規制対応はクリアしたものの、販売は思うように進みませんでした。

理由は「販売活動そのもの」を軽視していたことにありました。

  • 初回の展示会には出展したものの、2回目以降の継続出展や現地出張を渋り、フォローアップが途絶えた
  • 日本語のWebサイトは充実していたが、海外向けサイトは翻訳アプリで作った不自然な英語ページのまま。
    問い合わせの受け皿が整っていなかった
  • 海外市場でのプレゼンスが減った結果、せっかく興味を持った医師や代理店も「本当に信頼できる相手なのか不安」と感じ、商談が進まなかった

このケースが示す教訓は、規制クリア=販売成功ではないということ。

むしろ大切なのは、販路が確立するまでは、現地でのリアルな営業活動を継続すること、そして海外向けに正しく設計された多言語Webサイトを整備し、問い合わせを確実に受けとめることです。

医療機器の海外進出は「技術や規制」だけでなく、「販売の現場力」と「情報発信の受け皿」がそろって初めて成果につながるのです。

この2つのケースから分かるのは、医療機器の海外進出では、認証取得や展示会出展だけで海外販売につながるわけではないということです。

製品への評価を実際の導入につなげる営業活動を続けること。

そして、現地の医療関係者や販売パートナーが必要とする情報を届け、問い合わせを確実に受け取れる体制を整えておくことが重要です。

認証を取得すること、製品を知ってもらうこと、そして実際に売ること。それぞれに必要な活動は異なります。

医療機器の海外進出で活用できる外部支援

医療機器の海外進出では、市場調査、規制対応、販路開拓など、分野によって必要となる専門知識が異なります。

すべてを自社だけで抱えるのではなく、必要な分野に応じて公的機関や専門家を使い分けることも、海外展開を進める方法の一つです。

公的機関のサポート

JETROや中小機構、自治体・地域の産業支援機関などでは、海外市場や規制に関する情報提供、専門家相談、商談会・展示会など、海外展開を支援するさまざまな事業を実施しています。

また、医療機器については、AMEDなどによる海外展開・事業化支援が実施されることもあります。

利用できる制度や支援内容、募集時期は変わるため、自社の対象国や現在の段階に合う支援がないか、各機関の最新情報を確認してみましょう。

専門家を活用した方がよい場面

医療機器の海外進出では、薬事規制であればその国・製品分野に詳しい専門家、契約や知的財産であれば弁護士・弁理士など、課題によって必要な専門家は異なります。

一方、規制対応そのものではなく、

  • どの市場を優先するか
  • 認証取得に進む前に何を確認するか
  • ディストリビューターをどう開拓するか
  • 展示会後の営業をどう続けるか
  • 海外向けWebをどう販路開拓につなげるか

といった課題は、海外事業全体を見ながら整理する必要があります。

「認証は進めているが、その先の販売方法が見えていない」
「展示会や代理店開拓を続けているが、海外事業が広がらない」

という場合は、一度、規制対応と販売活動を切り離さずに海外事業全体を見直してみるのも一つの方法です。

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小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・BtoB・BtoC・DtoCなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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