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Customs Duty for overseas expansion

関税とは、特定の国に商品を輸入または輸出する際に政府が課す税金で、国境を越える商品に対して課される税金のことです。

この税金は輸入品と輸出品に適用され、国の経済を守るために重要な役割を果たしています。
特に、国内産業を保護するための手段として広く利用されており、欠かせない貿易政策の一つです。

また、関税は国家財政の収入源ともなり、国の公共サービスやインフラの整備に貢献しています。

そのため、関税の仕組みや具体的な運用方法を理解することは、海外ビジネスを行う上で非常に重要で、特に国際的にビジネスを展開する経営者には、関税についての知識が必要不可欠です。

関税の歴史

関税の歴史は古代文明にまで遡ります。

最初の関税は、紀元前3000年のメソポタミアで貨物に対して課されたと言われています。この地域では、交易ルートを通じた物品のやり取りが頻繁に行われており、都市国家や統治者が通行料や税金として取引品に対して課金していたことが記録されています。

これが初期の関税の概念に類似していると考えられています。
その後、様々な国で貿易が拡大するにつれ、関税の役割はますます重要になりました。
特に、中世のヨーロッパでは、国の財政を支える手段として関税が活用されました。

しかし、時代と共に自由貿易の考え方が広がり、関税のあり方にも変化が見られるようになり、現在では、国際貿易のルールに則りつつ、各国の経済政策と連動した関税制度が存在します。

関税の種類

関税には大きく分けて、輸入関税と輸出関税の2種類があります。

輸入関税は、国外からの輸入品に対して課される税金です。輸入税についてはニュースになることも多く、特別関税や報復関税といったトピックスをお聞きになったことも多いでしょう。

一方で輸出関税は、国内から国外への輸出品にかかる税金となります。

輸入関税

まず、輸入関税について考えてみましょう。これは、国外から輸入される商品に対して課され、国内産業を保護する役割があります。輸入品の価格が上昇することで、国内製品の競争力が高まります。

輸入関税には、商品の価格に対して一定の割合を課す従価税や、商品の重量や数量に基づいて課される従量税以外には下記のようなものがあります。

特別関税

特定の国からの輸入品に対して設定される一時的な関税には、特別関税があります。この制度は、国内産業を過度に侵害する恐れがある場合に適用されます。多くの場合、特定の状況や輸入品の種類に応じて、政府が判断します。

特恵関税

特定の国や地域からの輸入品に対して、通常の関税よりも低い税率を適用する制度です。開発途上国からの輸入品に対してよく適用されます。

報復関税

報復関税は、他国が自国に対して不当な関税を課した場合に応じて設定される関税です。このような関税は、国際的な貿易関係の中で必要な手段とされ、国の利益を守るために利用されます。双方の国が互いに制裁を施すことで、交渉を促進する効果も期待されます。

輸出関税

次に、輸出関税です。これは、国内から国外へ輸出される商品に対してかけられる税金です。資源や農産物などの特定の品目に適用され、国内での供給を確保する狙いがあります。

(現在、日本では輸出関税制度は用いられておらず、輸出の際に関税は発生しません。)

このように、輸入関税と輸出関税は、それぞれ異なる目的を持ちながらも、国の経済政策において重要な役割を果たしています。

関税の計算方法

関税の計算方法は国によって異なりますが、基本的には商品の課税価格に対して一定の税率が適用されます。課税価格は通常、商品の購入価格に輸送費や保険料などの関連コストを加えたもので決まります。

税率は商品によって異なるため、財務省の実行関税率表を参照することが重要です。

規則に従って具体的な税率や計算方法を確認することで、予算の適切な設定やコストの見積もりが可能となります。特に海外進出を考える企業にとって、関税の理解は不可欠です。

商品別の関税率

商品別の関税率は、国や地域の経済政策に基づいて設定されており、異なる分類商品に対して異なる税率が適用されます。

例えば、農産物や衣料品、自動車など、多岐にわたります。これにより、国内産業の競争力を維持し、消費者の選択肢を守ることが目的です。

参考として以下に、いくつかの産業における具体的な商品の関税率の例を挙げます。

(一般的な関税率を記載していますが、FTA(Free Trade Agreement)「自由貿易協定」や EPA(Economic Partnership Agreement)「経済連携協定」の影響で異なる場合があります)。

1. 農産物(牛肉)

対象商品: 冷凍牛肉
関税率: 38.5%
冷凍または冷蔵の牛肉は、日本国内の畜産業保護のために高い関税が設定されています。
ただし、TPP(環太平洋パートナーシップ)参加国やEUとのEPAにより、これらの国々からの輸入品には関税が段階的に引き下げられています。

2. 衣料品(アパレル)

対象商品: Tシャツ(綿製)
関税率: 10.9% ~ 12.8%
衣類は原産国によって異なる関税がかけられています。多くのアジア諸国から輸入される衣料品には比較的高めの関税が設定されていますが、EPAやFTAにより、一部の国からの輸入品は関税が軽減されることがあります。

3. 自動車(乗用車)

対象商品: 乗用車(排気量1500cc未満)
関税率: 0%
日本では自動車の関税はゼロです。これは日本が自動車を主力産業として国内生産を強化しており、輸入車に対する関税を課していないためです。これにより消費者は、国内外の自動車を競争条件で購入することができます。

4. 電子機器(スマートフォン)

対象商品: スマートフォン
関税率: 0%
電子機器全般、特にスマートフォンなどの通信機器には関税がかけられていません。これは日本が技術製品の輸入促進を図り、競争力を高めるために関税を課さない方針を取っているためです。

5. 食品(ワイン)

対象商品: ワイン(750mlボトル)
関税率: 15%または1リットルあたり125円のうち、どちらか高い方
ワインは従価税(価格に基づく税)と従量税(容量に基づく税)が適用されます。日EU経済連携協定(EPA)により、EU産ワインは関税が撤廃されつつあり、段階的に引き下げられているか、すでにゼロとなっています。


これらの例は、一般的な税率を示したものであり、EPAやFTAによって関税が免除または削減されるケースも多くあります。
輸入する国や商品の種類によって異なるため、最新の関税率を確認することが重要です。

輸入元の影響

どの国から輸入するか?は関税額に大きな影響を与える要素の一つです。
各国は特定の国から輸入される商品に対して異なる関税率を設定しており、これにより実質的な輸入コスト、税額が変わります。

たとえば、自由貿易協定(FTA)を締結している国からの輸入には、関税が免除されたり低減されたりすることがあります。そのため、企業は輸入元を選定する際に、関税の影響を常に考慮しなければなりません。

結果として、同じ商品でも輸入元が異なることで、最終的なコストや競争力に大きな差が生じることになります。これがビジネス戦略において重要な要素となるのです。

関税が経済に与える影響

関税は経済にさまざまな影響を与えます。

まず、輸入品に対する関税は、国内産業を保護するための重要な手段です。これにより、国内企業は競争力を維持し、雇用の創出に寄与することが期待されます。

しかし、関税が高く設定されると、消費者の選択肢が制限され、物価が上昇するリスクもあります。さらに、国際的な貿易関係が悪化し、報復的な関税措置を招く可能性も否定できません。

関税設定は消費者、企業、国際貿易への影響が大きいため常に調整が難しい課題となっています。

消費者への影響

関税は消費者に直接的な影響を与えます。

輸入品にかかる関税が高ければ、それに伴って販売価格も上昇するため、消費者が支払う金額が増える傾向があります。これにより、特に必要な商品を手に入れる際の負担が増すことになります。

また、関税によって国内産業が保護される一方で、選択肢が限られる場合もあります。輸入品の競争が減ると、国内市場が独占的になり、商品の品質の低下やサービスのバリエーションが減る可能性もあります。消費者にとって、これはデメリットであると言えるでしょう。

企業への影響

関税は企業にとっても大きな影響を及ぼします。

特に、輸入品を多数使用する製造業にとって、関税の引き上げはコスト増加につながるため、経営戦略を見直す必要があります。

さらに、高関税の影響で海外市場への進出が難しくなる場合もあります。企業は競争力を維持するために、製品の品質向上やコスト削減を図る必要があります。

このように企業は、関税の動向を常に把握し、柔軟な対応が求められます。関税戦略は企業の勝ち残りに直結する時代になっています。

国際貿易への影響

国際貿易において、関税は産業間の競争力に直接的な影響を与えます。

関税が課されると、輸入品の価格が上がるため、消費者は国内製品を選択する傾向が強まります。これにより、国内企業は市場シェアを獲得しやすくなります。

しかし、関税が高騰すると、他国との貿易摩擦が生じ、逆に輸出が減少するリスクもあります。また、貿易相手国は報復措置を取りがちで、国際的な関係が悪化することも考えられます。結果的に、国際貿易の流れが減速する恐れがあるため、バランスの取れた関税政策が求められます。

日本の関税制度

日本の関税制度は、国際貿易を円滑に進めるための重要な枠組みです。

例えば、日本は自由貿易協定(FTA)を多く締結しており、特定の国からの輸入品に対しては関税が減免される場合があります。
これにより、日本国内での競争力を高め、安定した経済成長を促進することが目指されています。

またマルチラテラル(多国間交渉)やバイラテラル(二国間交渉)の自由貿易協定を通じて、関税の引き下げや撤廃を推進し、貿易の自由化も図っています。企業は関税制度を理解することで、戦略的な経営が可能になります。

さらに、日本の経済連携協定(EPA)は、物品の貿易だけでなく、サービス、投資、知的財産保護など多岐にわたる分野での協力を促進しています。これにより、企業は新たなビジネスチャンスを獲得しやすくなり、経済全体の発展に寄与します。

EPAはFTAに比べ、より包括的な枠組みを提供するため、国際的な競争力の強化に重要な役割を果たしています。

税関の役割

税関は、国境での輸出入に関連する業務を担当する重要な機関です。
主な役割は、関税の徴収や輸入品の検査を行い、不正な取引を防止することです。これにより、国家の経済や安全を守ることに寄与しています。

また、税関は貿易のデータを集約し、政府に対して統計を提供する役割も持っています。
この情報は、経済政策の策定や貿易戦略の見直しに活用されます。特に企業経営者にとって、税関の動向を把握することは、ビジネス戦略の立案において非常に重要です。

税関の手続き

税関の手続きは、国境を越える際に欠かせないプロセスです。

輸入者は、税関で必要な書類を提出し、関税の支払いを行う必要があります。これには、インボイスやパッキングリストなどが含まれます。

輸入者は輸出者から、インボイスやパッキングリスト、その他輸入通関に必要な書類を、電子データや郵送などで事前に入手しておき、輸入通関業者へ渡します。

輸入通関業者が輸入申告手続きを進めることで、税関が商品の内容を確認し、適切な関税が適用されます。

この際、虚偽の申告を行った場合には罰則が科せられることがありますので、正確な情報を提供することが重要です。グローバルなビジネスを展開する企業にとって、税関手続きの理解は成功のカギとなります。

まとめ

関税とは、国境を越える商品に課せられる税金であり、国の経済政策において重要な役割を果たしています。国内産業を保護するだけでなく、国家財政の収入源ともなっています。

特に海外進出を考える企業にとって、関税についての理解が不可欠です。適切な情報を持つことで、貿易に関するリスクを軽減し、効率的な戦略を立てることが可能になります。

関税の知識を深めることで、ビジネスチャンスを自社に合う方向に最大限に活用できるでしょう。



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