海外バイヤー商談会は、海外市場への第一歩として中小企業にとって非常に価値ある商談の場です。
国内とは異なるビジネス慣習やニーズを持つバイヤーと、直接対話できるこの機会をどう活かすかが、輸出拡大や新規取引先の獲得につながります。
とはいえ、成功には入念な準備が欠かせません。
相手国の市場やバイヤーの関心ポイントを事前に調査し、自社の強みを「相手目線」で伝えることがカギになります。
また、言語や文化の壁を超えるには、通訳への事前共有や相手国のビジネスマナーへの配慮も重要です。
この記事では、はじめて参加する企業でも成果を出せるよう、商談会の基本から成功のコツまでをわかりやすく紹介していきます。
海外バイヤー商談会とは
海外バイヤー商談会とは、海外のバイヤーと日本国内の企業が一堂に会し、製品やサービスの提案・交渉を行うビジネスマッチングの場です。
日本企業にとっては、自社製品を海外に紹介し、新たな取引先や販路を開拓する絶好の機会となります。
一方、バイヤー側は、自社のニーズに合った日本製品を効率的に探すことができ、双方にメリットがあります。
さらに商談を通じて、海外市場のリアルなニーズやトレンドを直接把握できるため、今後の製品開発やマーケティングにも役立ちます。
異文化との対話を通じて得られるアイデアや発見も、グローバル展開を目指す企業にとって大きな刺激となるでしょう。
海外バイヤー商談会の種類と特徴
ここでは、行政機関が主催する代表的な海外バイヤー商談会について紹介します。
中小企業にとって利用しやすく、信頼性の高い支援が受けられるのが特徴です。
海外CEO商談会|主催 中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

中小企業基盤整備機構(中小機構)は、経済産業省所管の公的機関で、全国の自治体や支援機関と連携しながら中小企業の海外展開を支援しています。
この機構が毎年実施しているのが「海外CEO商談会」です。
アジア、欧州を中心とした有望な海外企業の経営者(CEO)を個別に選定・招へいし、日本の中小企業との商談をセッティングする形式で、リアルとオンラインを組み合わせた開催が特徴です。
開催情報は毎年春~夏ごろに発表されることが多いため、最新情報の受け取りには公式サイトのメールマガジン登録が便利です。
※登録は公式ページ右上の赤いアイコンから行えます。中小機構の海外CEO商談会詳細はこちらから
輸出商談会|主催 ジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構 JETRO)

出典元 https://www.jetro.go.jp/news/releases/2019/9a551b0f2221168b.html

日本貿易振興機構(ジェトロ)は、海外74カ所、国内48カ所にネットワークを持ち、海外ビジネスに関する情報提供や中小企業の輸出支援を行っている公的機関です。
ジェトロが主催する商談会には、インテリア雑貨・水産加工品などの分野で国内開催されるものに加え、海外では上海での美容用品ショールーム商談会、シドニーでの日本酒テストマーケティングなども含まれます。
リアルとオンラインを使い分けた多様な形式で開催されています。
これらの商談会は募集期間が短いことがあるため、公式サイトやメールマガジンでの情報収集をおすすめします。
ジェトロの現在募集中の国内商談会一覧はこちらから
ジェトロのメールマガジン登録はこちらから
海外バイヤー商談会の準備と参加方法
海外バイヤー商談会に参加するには、事前準備と申し込み手続きの両方が欠かせません。
まずは公式ウェブサイトで開催情報を確認し、募集要項や参加条件をチェックしましょう。
特に注意が必要なのは、必要な書類やツールの準備です。
以下は、商談会に向けて事前に用意しておくべき代表的なものです。
【事前に準備しておきたいもの】
- 製品カタログ・会社紹介資料(英語版)
- サンプル品や展示可能な現物
- 商品説明動画・自社サイト(英語版)
- 見積書・価格表の英語テンプレート
- 通訳者の手配(主催者が手配しない場合)
価格の提示は、初回は口頭対応でも進行できますが、確度の高い案件では商談後数日以内に正式な見積書提出が求められることが一般的です。
テンプレートは事前に用意しておくと安心です。
また、海外向け価格を設定するには、国際輸送費・梱包形態・納期などの把握が必要です。
不明点がある場合は、主催者を通じて海外展開支援アドバイザーに相談することで、公的機関の無料サポートが受けられるケースもあります。
参加費用は無料のものもありますが、有料の場合は、選定バイヤーの真剣度が高いなど、より実務的な商談が期待されます。
主催団体によって条件が異なるため、各募集要項の確認は必須です。
しっかり準備を整えたうえで申し込みを行い、当日の商談を実りある機会としましょう。
商談を成功させるためのポイント
海外バイヤー商談会で成果を出すためには、いくつかの戦略的な準備が鍵になります。
まず重要なのは、相手企業の事前リサーチです。
海外バイヤーの公式サイトやSNSアカウントをチェックし、どのような商品を扱っているのか、どんな課題を抱えていそうか、自社がどう貢献できるかの仮説を立てておきましょう。
さらに、バイヤーが競合とどう差別化を図っているかを見極めることで、提案の切り口がより具体的になります。
ちなみに…
アジア圏では「売り手が一方的に話す」のではなく「信頼関係を丁寧に築く」スタイルが重視されます。
一方、欧米では「結論ファーストで、交渉力とロジック」が求められることが多く、国ごとにアプローチは意外と違います。
【商談中の注意ポイント】
- 無表情にならず、口角を上げて笑顔を心がける
- 相手の目をしっかり見て話す
- 背筋を伸ばし、はっきりとした声で話す
- 相手の発言に対し、適度な相づちやリアクションを返す
たとえば、どんなに魅力的な商品やサービスでも、
プレゼンが肩に力が入りすぎていたり
緊張が伝わってきたり
棒読みになってしまっては
バイヤーに「この企業と組んで大丈夫かな?」という不安を与えてしまいます。
そして、商談を単なる「売り込み」ではなく、「未来のパートナー候補と話す時間」として捉える視点も欠かせません。
すぐに成約につながらなくても、再アプローチや次のフェーズに進む可能性は十分あります。
柔軟さと長期的視野を持って商談に臨むことが、最終的な成功への近道となるでしょう。
効果的なプレゼンテーション
海外バイヤー商談会におけるプレゼンテーションでは、まず相手国のビジネス文化や商習慣に合った構成を選ぶことが重要です。
とくに注意したいのは、プレゼンの「出だし」。
日本企業にありがちな「会社概要から始める」スタイルは、海外バイヤーにはあまり響きません。
彼らがまず知りたいのは、「自分たちにどんなメリットがあるのか」。
つまり、最初の1分以内に次の2点を明確かつ簡潔に伝えることがポイントです。
- 海外バイヤー自身の課題をどのように解決できるか
- 日本企業と新たに取引を始める理由・価値があるか
この時、数字や事例、図解などを使って論理的かつ感覚的に納得させることが重要です。
「この商品を導入したら、うちの〇〇が改善しそう」とバイヤーが感じ始めたら、ようやく商品の特徴や技術的な強みの出番です。
先に魅力を押しつけるのではなく、相手のニーズから逆算して、論理の地ならしをしてから詳細説明に進むことで、商談の成約率がぐんと上がります。
ちなみに、プレゼンでよくあるNGはこんな感じ:
- 緊張しすぎて、質問に「えっ…それって…」と2秒沈黙
- 無表情でスライドをめくるロボット状態に
- 相手がうなずいてるかも見ずに、ひたすらプレゼン続行!
プレゼンはあくまで“対話”。
口角を上げてニコッ、アイコンタクトを取りながら、相手のペースに合わせたやり取りを心がけましょう。
そして、質疑応答の時間こそが“商談の本番”とも言えます。
質問が次々と出てくる=「もっと知りたい」「興味がある」のサイン。
そこを丁寧に拾い、回答できれば成約にぐっと近づきます。
最後は、明確なアクションを提示して締めくくりましょう。
- 〇日までに見積もりを送る
- 次回は〇〇をテーマに打ち合わせする
- サンプル送付の予定日を確認する
海外バイヤーにとって、「この会社と進めて大丈夫そう」と思ってもらえる信頼の土台を作ること。
それが、プレゼンテーション成功の最大のカギです。
フォローアップの方法
海外バイヤー商談会は、商談が終わった瞬間で完結…ではありません。
むしろ、「その後」こそが勝負どころ。
まずは、商談当日に伝えた「バイヤーにとってのメリット」を、簡潔にまとめた資料を送付するところから始めましょう。
長々とした会社案内ではなく、「あの話、これですね」とすぐに思い出してもらえる要約が効果的です。
続いて、商談中に出た質問への回答や、追加の資料・事例・リンクなどを送れば、相手の関心をさらに引きつけられます。
さらに、こんな工夫が信頼感をぐっと高めます:
- 相手の業界ニュースや動向に絡めて「御社にとって有益かもしれません」と一言添える
- 次の提案や連絡のタイミングを“こちらから”提案しておく(例:「来週初めにもう1件ご紹介できそうです」)
定期的で、かつ相手のタイミングに合わせたスマートなフォローは、長期的な信頼構築につながります。
海外のバイヤーにとっても、「熱心で、こちらの状況を理解してくれる相手」は記憶に残るもの。
だからこそ、商談後のひと手間を惜しまず、関係構築の第一歩を丁寧に踏み出しましょう。
成功事例と教訓
海外バイヤー商談会では、多くの日本企業が成功体験とともに、数々の学びを得てきました。
その中でも、特に印象的な事例をご紹介します。
ある成功事例では、「海外バイヤーの立場に立って商談を組み立てた」ことが決め手となりました。
海外では転職が一般的なため、バイヤーが異業種から移ってきたというケースも少なくありません。
そのため、高い専門知識や情報収集力を持っている一方で、日本企業にとっては当たり前となっている現場の情報や業界の裏話には、まだ触れていないこともあります。
だからこそ、何気ない一言や補足情報が、バイヤーにとって貴重な“ヒント”になることもあるのです。
実際にある企業では、特定エリアにおける競合情報や時系列での市場変化、今後の業界見通しをまとめた独自の業界マップまで親切に提示。
そして用途によっては「うちでは適していません」と正直に伝えながら、相手の立場を最優先にした提案を行いました。
その誠実な姿勢が信頼につながり、結果的に自社商品の注文だけでなく、業界アドバイザーとしての関係性まで築かれたのです。
一方、教訓となる失敗事例もあります。
ある企業では、商談の場を自社にとっての「情報収集の場」と定義して臨んでしまい、
限られた時間の中で、以下のような“尋問スタイル”の質問を連発してしまいました。
- この製品、御社には可能性がありますか?
- 今の価格、高いですか?安いですか?
- 競合製品は何ですか?
- ご担当に決裁権はありますか?
質問攻めにあったバイヤーは早々に関心を失い、商談はそこで終了。
実はこのような“聞きたいことだけ聞く”日本企業の姿は、商談会場でしばしば目にする光景です。
たしかに「分からないことはその場で聞く」のは海外では常識かもしれません。
しかし、「相手に敬意をもって情報を引き出し合う」のが、グローバルなビジネスマナー。
一方的なヒアリングや、搾取的な態度と受け取られれば、せっかくの商談も台無しです。
海外では、言葉の壁以上に、ビジネス観や文化の“距離感”が成功を左右します。
お互いに対等な立場で、礼儀をもって、気持ちよく情報交換ができる日本企業は、バイヤーの中でもしっかり印象に残る存在になるでしょう。
失敗から学ぶポイント
海外バイヤーとの商談を成功させるためには、ありがちな“うっかり”を事前に回避しておくことが大切です。
以下、商談現場でよく見かけるNG例と対策ポイントをご紹介します。
本番同様の練習は必須!
練習なしでぶっつけ本番は危険です。
社内で通訳付きのシミュレーションを行い、準備不足の箇所を洗い出しましょう。
初動でバイヤーに「誠実さ」を伝える
「挨拶・着席・資料提示」など、動きにメリハリを。
たとえば…
椅子に腰かけながら「ヘロー」と言いながら荷物を置きつつ、片手で資料を出しつつ…では、雑な印象に。
まずは しっかり顔を見て挨拶、資料は落ち着いて順を追って。通訳が入る場合でも、常に海外バイヤーの目を見ることを忘れずに。
会話は「結論ファースト&短めの文で」
通訳を介する商談では、1文を短く、区切りよく話すことが基本。
また、最初に「本日の流れ」を軽く共有しておくと、双方安心して会話が進みます。
ニーズが合わなくても、途中で諦めない
途中で「これは成約に繋がらなさそう」と気づいても、商談は関係構築の場でもあります。
次に繋がる質問やヒントを拾い、未来のチャンスに備えましょう。
商談の“締め”が勝負
見積依頼や次のステップを提示されたら、「後ほどメールします」ではなく、その場で必要情報を確認するのが鉄則!
よくあるのが、その後やりとりが止まってしまうパターン…。
確実な一歩を残すためにも、商談中のフォローが重要です。
海外商談で成果を上げるコツ
海外バイヤー商談会は、新しい販路やビジネスチャンスを切り拓く大きな可能性を秘めています。
国内市場とは異なる文化や商習慣に対応するためには、海外バイヤーとの対話そのものが貴重な学びと実践の場になります。
成功のカギは、やはり「準備」にあります。
相手国のビジネス文化や商品ニーズをリサーチし、プレゼンでは“自社の強み”を的確に伝える工夫が求められます。
また、言語の壁を越えるための英語力強化や、現地のマナーを理解する姿勢も重要です。
何より大切なのは、バイヤーとの信頼関係を築く姿勢。
相手の価値観や進め方にまず寄り添い、バイヤーが「この企業となら」と思ってくれたタイミングで、自信をもって自社の魅力を伝える──
それが長く続く海外取引の第一歩になります。
そして、商談会は一過性のイベントではなく、未来につながる“出会いの場”です。
しっかりとした準備と柔軟な姿勢をもって臨めば、自社の成長を後押しする貴重な機会になることでしょう。
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