「日本の化粧品は世界で勝てる」
…そう信じて、いざシンガポール市場に挑戦しようとした瞬間、
規制?届出?成分チェック?え、英語ラベルも?と、思った以上のハードルに戸惑っていませんか?
特に化粧品は、食品・医療品と並ぶ“輸出難関ジャンル”。
でも逆にいえば、きちんと手順を踏めば“信頼を勝ち取れる商材”でもあるんです。
この記事では、初めてシンガポールへ化粧品を輸出しようと考えている中小企業向けに、
-必要な手続き
-規制の全体像
-販売戦略&現地ニーズ
-品質維持・物流で気をつけたい実務ノウハウ
などを実務目線でやさしく・行動に落とし込める形で解説します。
また、近年注目されるベトナム向け化粧品輸出の記事も近日公開予定です。
「東南アジア2国同時展開」も視野に入れている方は、ぜひそちらも合わせてご覧ください!
シンガポールの化粧品市場と需要傾向
成熟市場、だけど“日本製”にはチャンスあり
シンガポールは東南アジアの中でも所得水準が高く、美容への関心も非常に強い都市国家。
特にスキンケアやヘアケア製品は日常的に使われる消耗品として需要が安定しています。
一方で、欧米・韓国・ローカルブランドとの競争も激しく、単に「輸出すれば売れる」わけではありません。
差別化の鍵は“品質”と“信頼”。
その点で、日本製コスメは「安全・高品質・肌にやさしい」といったブランドイメージが浸透しており、中価格帯以上の製品でしっかりポジションを取ることが可能です。
消費者層は“ミレニアル&Z世代の都市型”
特に注目すべきは、SNSやECを通じて情報を得る20〜30代の若年層。
彼らは「機能性」「ナチュラル志向」「クルエルティフリー」などを重視し、パッケージのデザインやサステナブル性にも敏感です。
また、国民の約4分の1が中華系以外のマレー系・インド系など多民族であるため、肌タイプや美容文化の違いを意識した商品設計やマーケティングがポイントになります。
販売チャネルの中心は「EC+ドラッグストア」
主な購入チャネルはShopeeやLazadaといった越境EC、そしてWatsonsやGuardianといったドラッグストア。
初期段階では「小ロットからECで展開し、反応を見ながら実店舗へ広げる」戦略が定番です。
現地法人なしでも出品できるプラットフォームを活用することで、比較的低リスクで進出が可能です。
【ポイント】
シンガポール市場は「信頼される製品」としてのブランド構築が成功の鍵。
日本製=高品質というアセットを最大限活かしましょう!
シンガポール化粧品輸出に必要な手続きと規制
スタート地点は「届出」から。HSA登録がカギ
シンガポールでは、化粧品の輸入・販売前に、HSA(Health Sciences Authority/保健科学庁)への届出が義務付けられています。
これは「登録」ではなく「Notification=通知制」ですが、情報が不備だったり、禁止成分を含んでいた場合は販売NGになるため、実質的にはかなり厳格な審査体制です。
届出には以下の情報が必要です:
- 製品の製品名・ブランド名・形状など
- INCI(国際化粧品成分名)による全成分リスト
- 製造元および販売者情報
- 使用方法・注意表示(英語ラベルが必須)
なお、届出は現地法人 or 現地代理人を通じてオンライン提出(PRISM)で行います。
成分規制と禁止物質に要注意
シンガポールではEUの化粧品規制に近いルールを採用しており、一部成分(例:ハイドロキノン、高濃度サリチル酸など)は使用不可または制限対象になっています。
特に日本国内で許可されている成分が、そのまま使えないケースもあるため、事前に成分チェックをしっかり行い、現地基準に適合させることが重要です。
ラベリング規定も抜かりなく
パッケージや容器に記載するラベル表示も、HSAのガイドラインに沿って正しく表示する必要があります。
以下が基本要件です:
- 製品名・成分・使用方法(すべて英語で)
- 警告・注意事項(対象年齢、目に入った場合の対応など)
- 製造番号・使用期限または製造日
- 輸入業者または現地代理人の情報
表示ミスがあると、輸入時に通関が止まるリスクもあるので、専門家によるチェック推奨です。
【ポイント】
「手続きが簡単」と言われるシンガポールですが、実際はミスすると通関・販売できず足止めに。
事前の確認とプロのサポートを入れることが、安心の第一歩になります。
シンガポールでの化粧品販売戦略
小さく始めて、反応を“見ながら伸ばす”のが鉄則
シンガポール市場はコンパクトだからこそ、小ロット・短期スパンでPDCAを回すのに適した市場です。
いきなり大量展開するよりも、「ECでテスト販売 → 反応が良ければ卸先や店舗開拓へ」といった段階的戦略がベター。
特に、日本国内でも販売実績がある商品をピックアップして展開すると、現地での説得力も上がります。
越境ECの活用:はじめての足がかりに最適
まずトライしやすいのが、ShopeeやLazadaといった越境ECでの販売。
現地法人がなくても出品でき、配送もフルフィルメントサービスが利用可能なので、初期投資を抑えて反応をテストできる場として最適です。
注意点としては、英語での商品説明やカスタマー対応、物流の遅延や返品リスクへの対応体制を整えておくことが成功のカギになります。
現地パートナーとの連携で、販路が一気に広がる
ECと並行して重要になるのが、現地パートナー(代理店・卸・バイヤー)との提携です。
特にドラッグストアや美容系リテーラーは、実績や信頼関係を重視するため、展示会出展や商談会参加を通じて、継続的なコミュニケーションの場を持つことが大切です。
加えて、SNSを活用した共同プロモーションや、店舗でのPOP展開、テスター設置など、“売る仕掛け”まで一緒に組んでいけるパートナーを選ぶのが成功への近道。
トレンド発信は「現地インフルエンサー」に頼るのもアリ
最近では、現地のナノインフルエンサーや美容系KOL(Key Opinion Leader)を起用して、リアルなレビューや体験動画をシェアする手法も増えています。
「いきなり広告出稿」ではなく、「信頼される人のおすすめ」という導線が、ブランドの世界観や“肌へのやさしさ”を伝えるのにぴったり。
【ポイント】
販路構築は“広げる”より“深める”が正解。
現地文化に合わせた見せ方・売り方を、一緒に考えてくれるパートナーと組むことで、売上だけでなく、ブランドのファンも着実に増やしていけます。
輸送・品質・保管で失敗しないためのチェックリスト
輸送中に“品質劣化”…そのリスク、本当に大丈夫?
化粧品の輸出で見落としがちなのが、「届いた時には品質が変わっていた」問題。
温度や湿度、衝撃に弱いアイテムも多く、輸送方法ひとつで製品価値がガタ落ちすることも…。
ここでは、実際にありがちな失敗例をもとに、出荷前に押さえるべき実務ポイントをチェックリスト形式でご紹介します。
チェック1:温度管理できてる?輸送中の「暑さ」が敵
- 【☐】化粧品の保管適温を確認している(例:25℃以下など)
- 【☐】冷蔵輸送や保冷梱包が必要な商品は専用の梱包を依頼している
- 【☐】コンテナ便を利用する際、積み込み前後の“港湾倉庫内の温度”も想定している
<注意>
常温でも高温多湿の港で数時間放置されるだけで、分離・変色・香り変化が起こるケースもあります。
チェック2:保管体制は輸送後も万全?
- 【☐】現地の保管倉庫の温度・湿度管理状況を確認している
- 【☐】配送遅延時に備え、一定期間ストックを安全に保管できる場所がある
- 【☐】輸送後の商品検品(ロットチェック)体制を整えている
<注意>
シンガポールでは多くの倉庫が「エアコン未設置」なので、保管条件の指定は契約時に必須です。
チェック3:サプライチェーンの“詰まり”を防いでる?
- 【☐】出荷→通関→納品までのフローとリードタイムを可視化している
- 【☐】繁忙期や祝日による通関遅延リスクを見込んでスケジュール設計している
- 【☐】欠品リスクを下げるための安全在庫ラインを設定している
チェック4:万が一に備えて“保険”入ってる?
- 【☐】化粧品輸送に対応した貿易保険(輸送保険)に加入済み
- 【☐】破損・紛失時の対応フロー(保険会社・現地物流業者)が明文化されている
- 【☐】配送トラブル時の“代替商品発送のルール”を社内で共有している
<注意>
高単価商品や新製品の初回出荷時は、追加補償の検討もおすすめ。
事業全体の信頼性に関わるため、ここはしっかり備えておきましょう。
【ポイント】
売る準備を整えるのは、輸出の“スタートライン”に立つため。
どんなに商品が良くても、届いたときに壊れていたり、変質していたら信頼はゼロ。
物流や品質管理は、つい後回しにされがちですが、ここをおろそかにすると、そもそも海外ビジネスとして成り立たなくなってしまうため重要です。
シンガポール化粧品輸出は「手続き+販売+品質管理」の三位一体
シンガポールへの化粧品輸出は、法規制の対応がスタート地点。
でも本当の勝負は、その先の「売り方」と「品質を守る体制づくり」です。
特に初めて海外輸出に取り組む企業にとっては、現地の購買傾向・法規制・物流事情をすべて踏まえた戦略が必要になります。
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【参考・出典一覧】
- シンガポール保健科学庁(HSA)
- JETRO|シンガポール市場の制度・規制・流通情報
- 貿易実務ハンドブック2025(ジェトロ刊)
- ASEAN Cosmetics Directive
- 化粧品成分・表示に関するASEAN統一基準(ACSBガイドライン)
- 各越境ECモール(Shopee、Lazada)出品ガイドライン
- NUS Business School シンガポール消費者動向調査(2023)