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はじめての海外展示会・海外営業を成功させよう
海外展示会と海外営業は顧客開拓の第一歩
海外進出で成果を出すためには、見込み客との接点を作ることが欠かせません。
そのために多くの企業が最初に取り組むのが、海外展示会への出展と海外企業への営業活動です。
どちらも、新しい顧客と出会い、自社の商品やサービスを知ってもらうための重要な手段です。
しかし、展示会に出れば売れる、営業メールを送れば返事が来るというものではありません。
成果を出すためには、事前準備と継続的な活動が必要です。
この章では、海外展示会と海外営業を成功させるための基本的な考え方を整理します。
海外展示会は準備で成果が決まる
海外展示会は、単にブースを出展するイベントではありません。
出展前から来場予定企業へアプローチし、商談の機会を作り、当日の動きを計画しておくことが重要です。
また、展示製品の見せ方や説明資料も、海外顧客向けに最適化する必要があります。
特に出展機会が限られている企業ほど、事前準備の質が成果を左右します。
まずは、海外展示会で成果を出すためのポイントを確認してみましょう。
海外営業は商談前から始まっている
海外営業というと、会議室での商談をイメージするかもしれません。
しかし実際には、展示会での立ち話、メールのやり取り、オンライン面談など、さまざまな場面で信頼関係が作られます。
海外営業では、商品説明だけでなく、「この会社と取引したい」と思ってもらうことが重要です。
そのためには、迅速な対応や適切なコミュニケーションも欠かせません。
まずは、海外営業の基本的な進め方について確認してみましょう。
海外展示会から海外営業につなげよう
海外展示会と海外営業は、どちらも顧客開拓に欠かせない活動です。
初めて海外市場へ挑戦する企業にとっては、展示会は市場の反応を直接確認できる貴重な機会です。
そこで得た気づきを、その後の海外営業へ生かしていくことで、顧客開拓はより効果的になります。
まずは海外展示会で顧客の声を聞き、市場の反応を確認しながら、自社に合った営業活動を組み立てていきましょう。
海外展示会を成功させる準備はできていますか
海外展示会に出展しても成果が出ない理由
海外展示会に出展した多くの中小企業が、帰国後に次のような悩みを抱えています。
- 展示会では好反応だったのに、その後問い合わせが来ない
- 初回注文は入ったが、リピートにつながらない
- 何回出展すれば成果が出るのか分からない
- 良い販売代理店が見つからない
- 出展費用に見合う売上が立たない
しかし、こうした結果は決して珍しいことではありません。
なぜなら、海外展示会は「出展すれば売れる場所」ではなく、「売れる準備ができている企業が成果を獲得する場所」だからです。
例えば、
- とりあえずカタログを配る
- 名刺交換をたくさんする
- 展示会後にサンキューメールを送る
だけでは、受注につながる可能性は高くありません。
海外のバイヤーや代理店候補は、展示会当日までに競合企業や市場を調査し、明確な目的を持って来場しています。
そのため、出展企業側も、
「誰に何を売るのか」
「なぜ自社を選ぶべきなのか」
「展示会で何を確認し、何を持ち帰るのか」
を事前に整理したうえで出展する必要があります。
海外展示会を成功させるためには、展示会当日の接客テクニックだけではなく、出展前の準備、当日の仮説検証、帰国後の行動まで含めた全体設計が欠かせません。
ここでは、海外展示会で成果を出すために、事前に知っておきたいポイントを順番に整理していきます。
海外展示会で必要な準備は出展目的で変わる
海外展示会へ出展する際、最初に決めるべきことは、「何のために出展するのか」です。
意外に思われるかもしれませんが、この目的が曖昧なまま出展している企業は少なくありません。
例えば、海外展示会へ出展する目的には、次のようなものがあります。
- 新規顧客を獲得したい
- 販売代理店を探したい
- 市場ニーズを調査したい
- 競合企業の動向を把握したい
- 既存顧客との関係を強化したい
- ブランド認知を高めたい
一見すると、すべて重要な目的に見えます。
しかし、限られた展示期間の中で、これらすべてを同時に達成することは容易ではありません。
例えば、
「代理店候補を3社見つける」
ことを目的とする場合と、
「現地市場のニーズを調査する」
ことを目的とする場合では、準備すべき販促資料、接客方法、ブース設計、会期中の行動が大きく異なります。
海外展示会で成果を出している企業は、自社が今回の出展で何を達成したいのかを明確にしたうえで、その目的に合わせて準備を進めています。
逆に、目的が曖昧なまま出展すると、
「来場者は多かった」
「名刺はたくさん集まった」
「色々な情報収集ができた」
という結果だけが残り、結局何を得られたのか分からないまま終わってしまうことも少なくありません。
まずは、今回の海外展示会で何を持ち帰るのかを、社内で明確にしておきましょう。
海外展示会の準備には「ハード面」と「ソフト面」がある
海外展示会の準備は、大きく「ハード面」と「ソフト面」の2つに分けることができます。
ハード面とは、出展申込み、ブース施工、国際輸送など、展示会へ出展するために必要な実務的な準備です。
一方、ソフト面とは、誰に何を売るのか、どのように商談を進めるのか、といった営業やマーケティングに関する準備を指します。
海外展示会で成果が出ない企業の多くは、ハード面の準備に追われ、ソフト面の準備が不十分なまま本番を迎えてしまいます。
しかし実際には、受注につながるかどうかを左右するのは、ソフト面の準備であることが少なくありません。
まずは両方の準備が必要であることを理解し、計画的に進めていきましょう。
ハード面の準備
海外展示会へ出展するためには、次のような実務準備が必要になります。
- 海外展示会への出展申込み
- 出展マニュアルの確認
- ブース施工会社の選定と発注
- 電気、備品、入出庫など各種オーダー
- 出展品の国際輸送手配
- ATAカルネ等、必要な通関手続きの確認
- 現地での施工確認、撤収準備
特に海外展示会では、日本国内の展示会とは異なり、出展社マニュアルがすべて英語で提供されることも珍しくありません。
また、主催者指定の施工会社や国際輸送会社を利用しなければならない場合もあります。
出展決定後は、早い段階で出展マニュアルを確認し、全体スケジュールを把握しておくことが重要です。
また、海外展示会では、ブース施工費だけではなく、国際輸送費、通訳費、渡航費、備品レンタル費など、想像以上に多くの費用が発生します。
出展を決定する前に、全体予算を整理しておくことも重要です。
ソフト面の準備
一方で、海外展示会を成功させるためには、次のようなソフト面の準備も欠かせません。
- 海外顧客ニーズ仮説の立案
- 海外向け価格設定
- 輸出入規制や貿易実務の確認
- 海外営業資料、カタログ、Webサイトの準備
- 想定Q&Aの作成と商談練習
- 競合企業や市場の事前調査
- 展示会で検証したい仮説の設定
展示会当日に海外バイヤーから質問を受けて初めて、
「現地用の価格を決めていなかった」
「輸送コストを計算していなかった」
「輸入規制を調べていなかった」
という状態では、せっかくの商談機会を逃してしまいます。
海外展示会で成果を出している企業は、展示会を「営業活動のスタート地点」ではなく、「仮説を検証し、受注につなげる場」として活用しています。
海外展示会は単独で成功するものではありません。マーケティング、Webサイト、ブランディング、海外営業など、海外進出全体の流れの中で位置付けることが重要です。
→ 海外進出を検討するとき、中小企業は何から整理すべきか?フレームワークの考え方
ブース内では「説明」より「仮説検証」を重視する
海外展示会のブース内では、自社の商品や技術を説明することよりも、来場者について理解することを重視しましょう。
なぜなら、海外展示会は「売り込む場」であると同時に、「市場を理解する場」でもあるからです。
海外バイヤーや販売代理店候補は、現地市場や競合企業について、私たちよりもはるかに多くの情報を持っています。
そのため、一方的に製品説明を続けるだけでは、受注につながる可能性は高くありません。
重要なのは、事前に仮説を立て、その答え合わせをすることです。
例えば、
- どのような課題を抱えているのか
- 現在はどのような製品を使っているのか
- 比較検討している競合企業はどこか
- 予算や導入時期はいつ頃か
- なぜ自社ブースへ立ち寄ったのか
といった情報を、会話を通じて確認していきます。
海外展示会で成果を出している企業は、展示会を「カタログを配る場所」ではなく、「市場仮説を検証する場所」として活用しています。
カタログや名刺は、相手が必要としたタイミングで渡せば十分です。
それよりも、
「どこまで相手を理解できたか」
「次回の提案につながる情報を持ち帰れたか」
を重視した方が、結果的に受注へつながりやすくなるでしょう。
なお、海外展示会の現場では、接客やヒアリングにも独特のコツがあります。
パコロアでは10年以上前から、海外展示会では一方的に商品を説明するのではなく、来場者へのヒアリングを通じて市場や顧客を理解することが重要だとお伝えしてきました。
新聞コラムとしてまとめた、展示会現場での7つのポイントもぜひ参考にしてください。
ブース内では「即答」が信頼につながる
海外展示会では、展示会後のフォローメールよりも、その場での対応の方が重要になることが少なくありません。
なぜなら、海外のバイヤーや販売代理店候補は、会場内で複数の出展企業を比較しながら商談を進めているからです。
そのため、
「価格は後日連絡します」
「社内へ持ち帰って検討します」
「確認してメールします」
という回答ばかりでは、せっかくの商談機会を逃してしまう可能性があります。
もちろん、すべての質問に即答する必要はありません。
しかし、
- 価格帯の目安
- 最小発注数量(MOQ)
- 納期
- 輸送方法
- 販売地域
- 競合製品との違い
など、頻繁に聞かれる質問については、事前に回答を準備しておくべきでしょう。
海外展示会で成果を出している企業は、商談中にその場で意思決定できる範囲を明確にし、可能な限り即答できる体制を整えています。
また、どうしてもその場で回答できない場合でも、
「いつまでに回答するのか」
を明確に伝えることが重要です。
海外展示会では、スピードそのものが信頼につながることも少なくありません。
会場で生まれた熱量が冷めないうちに、次のステップへ進める準備をしておきましょう。
海外商談で準備しておきたいツール
海外展示会では、その場で商談が進むことも少なくありません。
そのため、必要な情報をすぐに提示できるよう、商談ツールを事前に準備しておきましょう。
例えば、次のようなツールがよく利用されます。
- 価格表(ラインシート)
- 商品カタログ、会社案内
- 海外向けWebサイト
- 英文名刺
- サンプル
- 動画やプロモーション素材
- 技術データ、試験データ、証明書類
- 導入事例や実績資料
- ブランドブック(BtoC商材の場合)
また、商談ツールは「誰にでも渡してよいもの」と、「一定の条件を満たした相手だけに開示するもの」を事前に区別しておくことも重要です。
特に、技術資料や図面など知的財産に関わる情報については、展示会場で安易に開示しないよう注意が必要です。
海外展示会では、商談の熱量に押されて、必要以上の情報を提供してしまう日本企業も少なくありません。
展示会前に、何をどこまで開示するのか、社内でルールを決めておきましょう。
海外展示会で本当に持ち帰るべきもの
海外展示会へ出展すると、多くの企業は名刺の枚数や商談件数を成果として評価しがちです。
もちろん、それらも重要な指標です。
しかし、本当に重要なのは、
「次に何をすれば受注に近づくのか」
を明確にして帰国することです。
例えば、
- どの市場で最も反応が良かったのか
- どの顧客層に需要がありそうか
- 競合企業と比較して何が不足していたのか
- 価格は市場に受け入れられそうか
- 販売代理店候補になり得る企業はあったか
- 現地企業はどのような課題を抱えていたか
こうした情報こそが、海外展示会で得るべき最大の成果です。
また、来場者の反応は大きく次の3つに分かれます。
- 反応が薄く、現時点では脈がない
- 興味はあるが、今すぐ購入する予定はない
- 具体的な案件や導入計画がある
特に重要なのは、3番目の「具体的な案件」を確実に見つけ出し、その場で次のアクションを決めることです。
一方で、1番目、2番目の来場者についても、「なぜ今は購入しないのか」を丁寧にヒアリングすることで、次回の展示会や営業活動の改善につながります。
海外展示会は、一度の出展で終わるものではありません。
仮説を立て、検証し、改善し続けることで、少しずつ成果につながっていく活動なのです。
こんなに準備すべきことがあったんですね。
海外展示会って、商品を持って行けば何とかなると思っていました。
でも、出展するなら初回から成果を出したいです!
その意気です!
海外展示会は、単なる情報収集の場ではありません。
誰に何を売るのか、何を持ち帰るのかを事前に決めておけば、初回出展でも十分成果を出すことは可能です。
大切なのは、展示会を「一度きりのイベント」にしないこと。
仮説を立て、検証し、改善を重ねることで、海外市場への理解は少しずつ深まっていきます。
つまり、名刺交換の枚数そのものではなく、「次に何をすれば受注に近づくのか」を明確にして帰国できるかどうかが、その後の海外展開を大きく左右するのです。
しかし実際には、
- 海外企業へ初めて営業するため、聞かれたことに答えるだけで精いっぱいになってしまう
- 価格や取引条件について、どこまで会場で回答すべきか判断できない
- 来場者の会社情報や立場が分からず、相手の課題やフェーズを想像しながら話すため、自信を持って提案できない
- 展示会後に見積書や提案書を送っても、これで本当に受注につながるのか不安を感じている
といった状態で出展してしまい、せっかく得た商談機会を十分に活かせない日本企業は多いのです。
パコロアでは、海外展示会を単なる「出展イベント」ではなく、「次の受注につなげるための営業活動」と考えています。
そのため、
- 今、何が分からないために海外販売へ思い切った投資ができないのか
- 今回の出展で何をどこまで検証するのか
- その検証のために、来場者へどのような質問を行うのか
- 英語で自社の強みや質問内容を正しく伝えられる状態になっているか
- どのような来場者が利益につながる可能性が高いのか、仮説を持っているか
- 価格や取引条件について、流通形態別に複数パターンを準備しているか
- 展示会後に現地訪問を行うのか、帰国後にどのようなフォローを行うのか
といった、展示会前・会期中・帰国後の実務を、各社の商品や事業内容に合わせて、伴走しながら一緒に整理・設計しています。
海外展示会では、
「次に何をすれば受注に近づくのか」を明確にして帰国できるかどうか
が、その後の海外展開を大きく左右します。
「出展は決まっているが、何を準備し、何を持ち帰るべきか具体化できていない」
「前回の出展では多くの名刺を獲得したものの、その後の商談や受注につながらなかった」
「何度も海外展示会へ出展できるわけではないため、できるだけ初回から成果につなげたい」
という企業様は、まずは現状を整理するところから始めてみませんか。
パコロアでは、30年以上にわたる海外ビジネスの実務経験とAIを活用した多角的な分析をもとに、自社の強み・ターゲット市場・販売方法・社内体制を整理し、貴社に合った海外展開の進め方を30ページ超の個別判定レポート『海外進出チェック』としてご提供しています。
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(パコロアは、海外展示会を活用した海外販路開拓を、実務面からサポートしています。展示ブースの現地制作など、展示会上級者向けのご相談も承っています。)
それでは次のテーマとして、展示会で得た商談を実際の売上につなげるために欠かせない、「海外営業」について考えていきましょう。
>4A-2 海外営業で新規開拓はできますか?
海外営業で新規開拓はできますか
中小企業の海外営業は、なぜ難しいのか
海外営業の求人を見てみると、数多くの募集があることに驚くかもしれません。それだけ、多くの企業が海外市場へ販路を広げたいと考えているということです。
しかし、中小企業が海外営業人材を採用し、育成し、成果を出すことは簡単ではありません。
特に、はじめて海外展開に取り組む企業の場合、既存顧客へのルート営業ではなく、ゼロから市場を開拓する「新規開拓営業」が中心になります。
つまり、誰も自社を知らない市場で、最初の顧客を見つけなければならないのです。
さらに、海外企業には、すでに長年取引している既存サプライヤーや、経験豊富な競合企業が存在します。
価格、提案力、レスポンス、デリバリー体制、業界知識など、多くの場合、競合企業は一枚も二枚も上手であることも少なくありません。
近年では、AIによる翻訳や同時通訳ツールの進化により、英語の壁そのものは以前より低くなりました。
しかし、だからといって海外営業が簡単になったわけではありません。
むしろ、世界中の企業が同じようにAIを活用できるようになったことで、企業間の競争はさらに激しくなっています。
AIは、英語の翻訳や、目の前の商談に対する回答案を作ることは得意です。
一方で、
- この問い合わせの背景にはどのような課題があるのか
- 今回の案件の先に、どのような展開可能性があるのか
- 競合から切り替える際に、相手は何を不安に思うのか
- 今ここで何を議論しておけば、半年後の受注につながるのか
といった、複数の可能性を見据えながら仮説を立てることは、依然として人間に求められる重要な役割です。
そのため海外営業では、
- 競合企業から切り替える際のリスクを理解し、一つずつ解消できることを示す
- 一つの問い合わせから、複数の用途や将来的な展開可能性まで想定し、相手以上に事業全体を俯瞰して考え、提案する
- 価格や一部の機能だけではなく、技術力、対応力、安定供給、将来性なども含め、「総合的に見て最も合理的な選択肢」であることを示す
ことが求められます。
つまり、海外営業とは単なる「英語を使った営業」ではありません。
経営、技術、マーケティング、事業戦略などを総合的に理解しながら、自社ならではの強みを見つけ、新しい市場を切り開いていく仕事なのです。
AIによって英語の壁は本当に低くなりました。
しかしその一方で、企業の本質的な営業力や事業構想力は、これまで以上に問われる時代になっているとも言えるでしょう。
海外営業は未経験でもできるのか
もちろん未経験でも、海外の新規開拓に取り組むことは可能です。
ただし、以前よりも「英語ができること」そのものの価値は変わってきています。
近年では、AI翻訳や同時通訳ツールの進化により、海外企業とのコミュニケーションのハードルは大きく下がりました。
実際に、英語が得意でなくても、海外企業とオンライン商談を行うこと自体は珍しいことではなくなっています。
しかし、それでも受注が簡単になったわけではありません。
むしろ、英語という差が小さくなったことで、
「何を提案するのか」
「どのような仮説を持って商談に臨むのか」
「相手の質問の背景をどこまで理解できるのか」
といった、本来の営業力が、海外企業との最初の接点から高いレベルで求められるようになっています。
初回商談では、まだ相手企業の事情や判断基準を十分に把握できていないことも少なくありません。しかし、それを言い訳にすることはできません。
事前に相手企業について十分に調査し、商談の流れや必要な資料をできる限り準備しておくことは必須です。
一方で、準備した通りに進まないことが多いのも、海外企業とのオンライン商談の特徴です。
想定していた議論から突然話題が変わることもあれば、その場で新しい課題や条件が提示されることもあります。
そのような状況でも、限られた情報から相手の意図を読み取り、その場で再び仮説を組み立て、次の提案につながる質問や回答を返す必要があります。
海外営業で重要なのは、
- 国内営業以上の入念な事前準備
- その準備が通用しなかった場合のプランB
- 分からない状況でも、相手の反応を見ながら最適な落としどころを探る力
です。
さらに、たとえその場で受注につながらなくても、次回商談につながる情報や課題を引き出し、「次につながる爪痕を残すこと」が重要になります。
国内営業でも、見込み顧客を探し、相手の課題を聞き、提案し、断られた理由を考えながら次の営業へ活かしていきます。海外営業でも、この基本は同じです。
違うのは、国や文化、商習慣、市場環境が異なるうえ、初対面の短時間の商談の中で、
「この会社は本当に国際ビジネスができる会社なのか」
を見極められてしまうことです。
このような状況で成果を出すことは、海外営業未経験者にとっては決して簡単ではありません。
そのため、海外営業経験者に商談へ同席してもらう、展示会で実際の商談を数多く経験するなど、実践知を一つでも多く積み上げていくことが重要になります。
海外営業で成果を出しやすい順番をあえて挙げるなら、
- 英語が話せる営業経験者
- 英語が話せない営業経験者
- 英語が話せる営業未経験者
になるでしょう。
もちろん英語力は重要です。しかし、AIによって、海外営業向けの提案資料や商談スクリプトも簡単に作れる時代になりました。
それでも、人間に求められる営業力や判断力は、むしろ以前より高くなっています。
海外企業が、新しい海外企業との取引を検討する理由は一つです。
「今より良い提案をしてくれる企業かもしれない」
という期待があるからです。
そのためには、
- 相手の質問の背景を理解すること
- まだ顕在化していない課題を想像すること
- 将来的な展開まで見据えて提案すること
が求められます。
AIは優れた補助ツールですが、このような仮説構築や事業全体を見据えた提案力については、依然として人間の営業力が大きく影響します。
つまり、海外営業は未経験でも始めることはできます。
しかし、成果を出すためには、英語力だけではなく、相手企業の期待を上回る提案を行うための営業力を、実践を通じて1つずつ磨いていくことが重要なのです。
下記は、パコロアが日本経済産業新聞へ寄稿した「初めてのエイゴ営業 7つのコツ」は2015年に執筆した記事です。
現在ではAI翻訳やオンライン商談が普及し、海外営業の環境は大きく変化しました。
一方で、
- 相手に好印象を持ってもらうこと
- 短時間で信頼を得ること
- 自社の強みを分かりやすく伝えること
といった基本的な考え方は、現在でも変わりません。
海外営業の原点として、ぜひこちらもご覧ください。
海外営業は、営業担当者一人だけで完結する仕事ではありません。
海外進出に必要となる知識や能力については、こちらで詳しく解説しています。
>海外進出に必要な能力を身につけよう
海外営業では「自社の説明」より「相手の意思決定」を意識する
海外営業では、自社の技術力や歴史を説明することよりも、
「取引先を変えることで、相手にどのようなメリットがあるのか」
を伝えることが重要です。
海外企業には、すでに長年取引している既存サプライヤーや競合企業が存在しており、『なぜ今の取引先から切り替えるべきなのか』を常に判断しているためです。
そのため、
「品質が良い」
「技術力が高い」
「日本製である」
だけでは、新しい取引先として選ばれる理由にはまずなりません。
海外営業では、
・コスト削減できるのか
・品質が安定するのか
・新しい市場を開拓できるのか
・顧客の課題を解決できるのか
・競合製品と比較して何が違うのか
といった、「相手にとっての価値」を明確に伝えながら、相手企業が社内で稟議しやすい材料を具体的に提供できることが求められています。
また、海外向けのプレゼンテーションでは、日本語資料をそのまま翻訳するのではなく、海外企業が意思決定しやすい構成へ作り変えることも重要です。
一般的には、
結論 → 理由 → 根拠データ → 相手へのメリット → 次のアクション
の流れが理解されやすいでしょう。
更に、プレゼンテーションでは、自社について上手に説明すること以上に、
相手から本音や課題を引き出すこと
が重要になります。
なぜなら、相手企業が抱えている課題や、現在のサプライヤーへの不満、今後の事業方針が分からなければ、次回以降の提案精度を高めることができないためです。
そのため、海外企業へのプレゼンテーションでは、話す力と同じくらい、
「相手に話してもらう力」
が重要なのです。
英語プレゼンで最も重要なのは「質疑応答」
海外営業では、プレゼンテーションそのものよりも、その後の質疑応答の方が重要になることも少なくありません。
実際、5分程度プレゼンをした後、30分~1時間近く質疑応答が続くことも珍しくありません。
そのため、長時間一方的に説明するプレゼンは避け、相手から質問を引き出すことを意識しましょう。
また、質問を受けた際は、次のような流れで回答すると論点が明確になります。
- 謝辞(質問への感謝)
- 結論
- 理由
- 必要に応じて補足
- 再結論
例えば、
ご質問ありがとうございます。
結論から申し上げると、現時点では○○です。
理由は△△だからです。
一方で、最近は××という考え方も注目されています。
とても鋭いご質問をありがとうございます。
程度の短い回答でも十分です。
海外営業では、すべての質問にその場で完璧に答えることよりも、
「この会社は、こちらの課題を理解しようとしている」
と思ってもらうことの方が重要です。
分からないことは正直に伝え、その代わり、
・なぜその質問が出てきたのか
・その背景にはどのような課題があるのか
を理解しようとする姿勢を示すことで、商談が次につながることも少なくありません。
海外営業は、オンラインを前提に設計する時代になっている
現在では、海外営業の多くがオンラインを前提に進められるようになっています。
以前のように、海外へ何度も渡航しなければ商談が進まないというケースは少なくなり、
・初回面談
・会社紹介
・技術打ち合わせ
・見積説明
・契約前の調整
など、多くのプロセスがオンラインで完結することも珍しくありません。
一方で、オンライン商談が一般化したことで、新たな課題も生まれています。
それは、
「オンライン商談をどう進めるか」よりも、そもそもその場にたどり着くことが難しくなったことです。
海外企業にとって、オンライン商談を設定すること自体のハードルは下がりました。
そのため、多くの企業が世界中からアプローチできるようになった一方で、
「なぜこの会社と話す必要があるのか」を事前に判断されるようになっています。
つまり現在の海外営業では、Webサイト、展示会、紹介、SNS、ホワイトペーパーなどを通じて、商談前の段階で一定の信頼を獲得しておくことがこれまで以上に重要になっています。
オンライン商談は、海外営業のスタート地点ではありません。
むしろ、
相手が自社に興味を持ち、話を聞く価値があると判断した後に訪れる、一つの重要な後工程での初接点
と言えるでしょう。
そのため、「どのように商談するか」だけではなく、
「どのように商談の機会そのものを作るか」
まで含めて海外営業を設計する必要があります。
海外営業は「本番一発勝負」になることもある
海外営業の現場では、日本国内の営業とは異なる難しさを感じることがあります。
例えば、
- 初回面談から価格、納期、独占契約について質問される
- 限られた時間の中で、「この会社と次も話す価値があるか」を判断される
- Webサイトや展示会で事前に情報収集できない初情報が飛び交う
といったことは、決して珍しくありません。
特に中小企業の場合、限られた回数の商談で成果を出す必要があるため、一回一回が真剣勝負になります。
そのため、海外営業では、事前準備と仮説構築が非常に重要です。
一方で、こうした経験を積み重ねることで、国内営業だけでは得られない視点や判断力が身につくことも事実です。
全世界の営業担当者が同じスタートラインに立つ今、日本の中小企業にも十分チャンスがあります。
海外営業の現場で試行錯誤を繰り返しながら、自社ならではの戦い方を見つけていきましょう。
オンライン商談で信頼を築く具体的な進め方については、以下の記事でも詳しく解説しています
なるほど……。
だからこそ、海外営業は難しいのですね。
英語だけの問題ではなく、
・どのように商談機会を作るのか
・限られた商談で何を確認するのか
・その経験をどう次につなげるのか
まで含めて考える必要があるのだと分かりました。
自社に合った進め方を見つけていくことが大切なのですね。
その通りです。
海外営業では、最初から完璧な戦略や答えを持っている企業はほとんどありません。
むしろ、仮説を立てて行動し、相手の反応を見ながら修正を繰り返していくことで、少しずつ自社に合った海外営業の進め方が見えてきます。
一方で、海外営業は一回一回の商談機会が非常に貴重であり、試行錯誤にも時間とコストがかかります。
そのため、
「まず何から始めるべきか」
「この商談で何を確認すべきか」
「次にどのようなアクションを取るべきか」
を経験者と一緒に整理しながら進めることで、海外展開のスピードを高められることも少なくありません。
パコロアでは、AIリサーチと実務経験をもとに、自社の強み・ターゲット市場・販売方法・社内体制を分析し、貴社に合った海外展開の進め方を30ページ超の個別判定レポート『海外進出チェック』としてご提供しています。
「自社の海外営業は何から始めるべきか」「今の進め方で本当に成果につながるのか」を整理したい企業様は、まずは『海外進出チェック』をご覧ください。
個別に相談しながら進めたい場合は、30分間の無料・壁打ち相談もご利用いただけます。
(海外営業をすべて外注するのではなく、社内で判断しながら進められる体制を作っていく、ということですね!)
(はい。パコロアでは、そのためのOJT型伴走支援を行っています。)
→社内だけでは海外事業を進められない企業に、どのような伴走支援を行っているのかはこちら
海外向けに売りたい。でも、社内だけでは事業化できない。【判断整理ガイド④】
さて、「海外営業」まで進んできたことで、海外進出ロードマップの「輸出編」はいったん一区切りとなります。
しかし、海外進出には輸出だけではなく、
・現地法人の設立
・駐在員事務所の開設
・海外工場や店舗の展開
など、「海外投資」という選択肢もあります。
海外拠点の立ち上げや、より本格的な海外市場調査(F/S調査)については、次のステップ「04B 海外拠点を立ち上げる(現地で投資をする)理由はありますか」で引き続き解説していますので、ぜひ続けてご覧ください。
海外拠点を立ち上げる(現地で投資をする)理由はありますか
海外拠点を立ち上げる理由は何か
海外拠点を立ち上げる理由は何か
中小企業が海外で現地法人や生産拠点を立ち上げる理由はさまざまですが、大きく分けると次の4つに整理できます。
- 既存顧客からの進出要望
- 製造コスト削減を目的とした進出
- 新しい顧客の開拓
- 現地発の新規事業展開
実際の海外投資では、これらの理由が単独で存在することは少なく、複数の目的が重なっているケースも珍しくありません。
既存顧客からの要望による進出
取引先の日系企業が海外へ進出する際、
「現地でも引き続き取引したい」
と要請を受け、海外拠点を設立するケースがあります。
この場合、既に取引実績があるため、比較的進出しやすいように見えます。
しかし、現地ではローカル企業との競争が始まるため、既存顧客だけに依存した事業計画では、長期的な成長が難しい場合もあります。
製造コスト削減を目的とした進出
人件費や製造コストの削減を目的として、生産拠点を海外へ移す企業もあります。
かつては「海外=低コスト」という考え方が一般的でしたが、近年では人件費の上昇や物流費の高騰により、必ずしも大きなコストメリットが得られるとは限りません。
設備投資、教育費用、品質管理コストなども含め、総合的な視点で判断する必要があります。
新しい顧客を開拓するための進出
現地市場で新規顧客を獲得することを目的として、販売会社や営業拠点を設立する企業も増えています。
特に近年は、日系企業向けではなく、最初からローカル企業向けに事業展開することを前提として進出するケースが増えています。
そのためには、現地ニーズを理解し、製品やサービスを柔軟に調整していく姿勢が求められます。
現地発の新規事業を立ち上げるための進出
海外市場で新しいビジネスモデルを立ち上げたり、現地企業との共同事業を行ったりすることを目的に進出する企業もあります。
このケースでは、既存事業の延長線上ではなく、現地市場に合わせて新しい価値を創り出す発想が重要になります。
市場調査、パートナー選定、人材育成など、中長期的な視点で事業を育てていく覚悟が必要です。
海外拠点を立ち上げる理由が、
「海外市場が伸びそうだから」
「競合も進出しているから」
だけである場合、投資判断としては危険です。
海外投資は輸出以上に撤退コストが大きいため、自社が現地で何を実現したいのかを明確にした上で判断する必要があります。
なるほど。
以前は「人件費が安いから」「取引先についていくから」という理由で海外進出する企業が多いと聞いていましたが、最近は事情が変わってきているのですね。
はい。
近年は、現地ローカル企業向けの販売や、新規事業の立ち上げを目的に進出する企業が増えています。
その一方で、海外拠点を立ち上げれば自然に売上が伸びるわけではありません。
現地市場を理解し、継続的に事業を改善していく覚悟が求められます。
イメージしていたより、かなり難易度が高そうです……。
そうですね。
生産拠点、販売拠点、新規事業のいずれであっても、海外投資には長期的な視点と、高度なマネジメント能力が必要です。
特に中小企業では、その会社のエース級人材を配置する覚悟が成功の鍵になるでしょう。
海外拠点を立ち上げると、どのような課題が起こるのか
海外拠点を立ち上げた後、多くの企業が直面する課題には共通点があります。
進出前には十分な事業計画を立てていたとしても、実際に事業を開始すると、現地市場、組織運営、制度変更など、想定していなかった問題が次々と発生します。
特に中小企業では、限られた人員で海外拠点を運営するため、一つの問題が経営全体に大きな影響を与えることも少なくありません。
コストが想定以上に増える
海外進出では、
「現地の人件費が安いから」
という理由で投資を決断するケースもあります。
しかし実際には、
- 設備投資
- 教育費用
- 品質管理費用
- 物流費
- 駐在員費用
- 為替変動
など、多くのコストが発生します。
その結果、想定していたほど利益が出ず、事業計画の見直しを迫られる企業も少なくありません。
売上が思うように伸びない
海外拠点を設立したからといって、すぐに売上が増えるわけではありません。
特に、
- 日系企業からの受注が想定より少ない
- リピートオーダーが増えない
- 現地競合との価格競争に巻き込まれる
といったケースは頻繁に見られます。
進出前に想定していた顧客だけに依存せず、新しい顧客を継続的に開拓していく姿勢が重要になります。
組織内のコミュニケーションがうまくいかない
海外拠点では、言語や文化、価値観の違いにより、本社と現地拠点の意思疎通が難しくなることがあります。
例えば、
- 現地市場の情報が本社へ共有されない
- 本社の意思決定が遅れ、市場変化に対応できない
- 人事評価制度が現地文化に合わず、優秀な社員が離職する
- 問題や不正が報告されず、発見が遅れる
といった問題が起こることがあります。
海外拠点では、制度そのものよりも、日常的なコミュニケーションの質が成果を左右する場面も少なくありません。
政治・法制度の変更に影響を受ける
海外では、政権交代や法改正によって、事業環境が大きく変わることがあります。
例えば、
- 外資規制の変更
- 税制変更
- 労働法改正
- 環境規制の強化
などによって、当初想定していたビジネスモデルの見直しを迫られることもあります。
海外投資では、事業開始後も継続的に情報収集を行い、変化に柔軟に対応していく姿勢が欠かせません。
海外拠点を設立すると、日本からの輸出だけの場合とは異なり、現地法人税や人の派遣、取引形態など、税務上の確認事項も増えていきます。
現地法人を設立する前に、どの段階から税務対応が複雑になるのかも確認しておきましょう。
海外拠点を成功させるために必要なこと
海外拠点の運営では、製品やサービスそのものよりも、「どのような組織をつくるか」が成果を左右することが少なくありません。
海外では、言語、文化、商習慣、価値観が日本とは異なります。
そのため、日本国内と同じやり方をそのまま持ち込むのではなく、現地の状況に合わせながら、柔軟に組織や事業を運営していく必要があります。
1. 情報共有と意思決定の仕組みを構築する
現地市場の変化をタイムリーに把握し、適切な経営判断を行うためには、本社と海外拠点の情報共有が不可欠です。
定期的な会議やレポートだけではなく、日常的に相談や報告ができる環境を整備し、現地の情報が経営層まで届く仕組みを構築しましょう。
また、何を現地で決定し、何を本社で決定するのか、権限の範囲を明確にしておくことも重要です。
2. 評価制度を現地文化に合わせて調整する
人材の定着は、海外拠点運営の大きな課題の一つです。
日本本社の評価制度をそのまま導入すると、現地社員との間に認識のズレが生じることがあります。
給与、昇進、評価基準、働き方に対する考え方は国によって異なるため、現地文化や労働慣行を理解したうえで制度を設計することが重要です。
3. 法規制や投資環境の変化に対応できる体制を整える
海外では、政権交代や法改正によって、事業環境が急激に変化することがあります。
現地の会計事務所、法律事務所、コンサルタントなど、信頼できる専門家とのネットワークを構築し、必要な情報を継続的に入手できる体制を整えておきましょう。
4. 製品やサービスを現地仕様にローカライズする
日本国内で成功した商品やサービスが、そのまま海外でも受け入れられるとは限りません。
現地顧客のニーズ、商習慣、流通構造を理解し、必要に応じて製品仕様や販売方法を見直す柔軟性が求められます。
海外市場では、「日本で売れているから売れる」のではなく、「現地で必要とされる形に変えられるか」が重要です。
5. 現地の人材をパートナーとして育成する
海外拠点を長期的に成長させるためには、現地社員を単なる労働力として考えるのではなく、事業を共に育てるパートナーとして捉える姿勢が重要です。
教育や権限移譲を進めながら、現地人材が主体的に事業を推進できる組織をつくることで、海外拠点はより強い組織へと成長していきます。
海外拠点の成功は、制度や仕組みだけで決まるものではありません。
現地の人々を理解し、信頼関係を築きながら、試行錯誤を続けられる組織こそが、海外市場で長く成長していくことができるのです。
実際の現場では、制度や戦略だけでなく、現地での進め方や体制構築の精度が成果を左右します。
→ 海外進出の戦略を構築しよう
海外投資先はトレンドではなく事業戦略から選ぶ
海外投資を検討する際、
「最近はどの国が人気なのか」
という質問を受けることがあります。
確かに、日本企業による海外投資は、東南アジアや欧米を中心に活発に行われています。
しかし、投資先の選定をトレンドだけで判断することはおすすめできません。
重要なのは、
自社の事業内容、顧客、競争環境、そして進出目的と、その国との相性です。
同じ国であっても、
- 製造拠点を設立したい企業
- 販売拠点を設立したい企業
- 新規事業を立ち上げたい企業
では、適した国は異なります。
また、現地市場の規模だけではなく、
- 人材の確保しやすさ
- 法制度や政治の安定性
- 物流インフラ
- 現地パートナー候補の有無
- 自社が継続的にマネジメントできるか
といった観点からも判断する必要があります。
東南アジア
東南アジアでは、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどを中心に、日本企業の進出が続いています。
これらの国々は、比較的人口が多く、経済成長率も高いため、製造拠点や販売拠点の候補として検討されることが多い地域です。
一方で、現地ローカル企業との競争も年々激しくなっており、
「日本企業だから売れる」
時代ではなくなっています。
近年では、現地企業との協業や、ローカル市場向けの商品開発など、新しいビジネスモデルに挑戦する企業も増えています。
欧米
欧米地域では、アメリカ、ドイツ、イギリスなどを中心に、販売・サービス拠点として進出する企業が多く見られます。
特に、
- 高付加価値製品
- 医療・IT・環境分野
- アフターサービスが重要な産業
では、現地法人やサービス拠点を設立するメリットが大きい場合があります。
一方で、人件費や運営コストは高いため、
「なぜ現地拠点が必要なのか」
をより慎重に検討する必要があります。
海外投資では、
「どの国が人気か」ではなく、「自社はなぜその国へ進出するのか」
を明確にすることが、成功への第一歩となります。
海外拠点の設立はゴールではなくスタートです。進出前に何を整理し、どのような順番で進めるべきかは、こちらのロードマップでご確認ください。
→ 海外進出の進め方ロードマップ
海外投資では、最初に事業計画を書いてみる
「まず現地へ行けば何か分かるはず」――そう考える企業は少なくありません。
しかし、中小企業の場合、最初に行うべきことは現地視察ではなく、海外展開事業計画書(投資編)を作成することです。
例えば、
・なぜ現地法人が必要なのか
・何年で黒字化する計画なのか
・誰が現地責任者になるのか
・現地でどのような顧客を獲得するのか
・撤退基準をどう設定するのか
こうした項目を書き始めると、多くの企業は、
「実は何も決まっていなかった」
ことに気づきます。
そして、分からないことが明確になった段階で、初めて海外現地へ行き、顧客、代理店候補、専門家、行政機関などから情報を集めながら、その仮説を検証していきます。
つまり、海外で行うF/S(事業可能性調査)とは、ゼロから答えを探しに行くものではありません。
自社で立てた仮説や事業計画を検証し、投資判断の精度を高めるために行うものなのです。
海外へ行ってから考えるのではなく、まずは事業計画を作ってみることが重要なのですね。
その通りです。
事業計画を作成すると、自社に不足している情報や、現地で確認すべきことが自然と見えてきます。
その上で海外現地へ行き、事業可能性調査(F/S調査)を行うことで、より自信を持って意思決定できるようになります。
海外進出前にF/S現地調査はしましたか
海外進出前にF/S調査を行う理由
海外進出を検討するとき、最初に行うべきことは、海外事業計画を策定することです。
しかし、実際に計画を書き始めると、
・本当に顧客は存在するのか
・価格はいくらなら受け入れられるのか
・販売パートナーは見つかるのか
・現地で人材を確保できるのか
など、多くの「分からないこと」が出てきます。
F/S(Feasibility Study=実現可能性調査)は、こうした不明点を現地で検証し、経営判断に必要な材料を集めるために行います。
つまり、F/S調査は「海外へ行くこと」そのものが目的ではありません。
海外事業計画の仮説を現地で検証し、進むか、見送るか、あるいは計画を修正するかを判断するためのプロセスです。
国内でのWebリサーチや統計データの分析だけでは、現地の商習慣や制度、競争環境、人々の価値観までを把握することはできません。
そのため、現地の顧客候補、代理店候補、業界関係者、行政機関などに直接会い、事業の実現可能性を確認していきます。
特に、
・業界情報が少なく市場規模が把握できない
・その国に本当にニーズがあるのか分からない
・価格や流通の仕組みが想像できない
・現地パートナー候補を探したい
といったケースでは、F/S調査は非常に有効です。
一方で、F/S調査には注意点もあります。
例えば、海外投資を前提とした調査では、「せっかく現地まで来たのだから進出したい」「今を逃すとチャンスを失うかもしれない」という思いが強くなり、客観的な判断ができなくなることがあります。
これを正常性バイアスと呼びます。
正常性バイアスとは、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう心理傾向のこと。
海外進出では、良い情報だけではなく、課題やリスク、進出しないという選択肢も含めて検討する姿勢が欠かせません。
F/S調査で重要なのは、海外進出を正当化することではなく、自社にとって本当に進出すべき市場なのかを冷静に判断することなのです。
海外投資のF/S調査の進め方
海外投資のF/S調査では、まず海外事業計画を作成し、
「何が分かれば投資判断できるのか」
を整理します。
特に下記6項目は必ず確認したいポイントです。
1. 販売先を確保できるか
進出後、誰に、何を、いくらで販売するのかを確認します。
既存の日系顧客だけに依存せず、ローカル企業への販売可能性も検証します。
(→詳細は後述する輸出F/S調査を参照)
2. 生産拠点を設立できるか
工業団地、不動産会社、規制当局などを訪問し、立地、インフラ、許認可取得の難易度を確認します。
3. 仕入れ・調達先を確保できるか
現地サプライヤー候補を訪問し、品質、価格、供給能力、納期を確認します。
特別な部素材以外は現地調達比率が高いケースも多く、ローカル企業の調査は不可欠です。
4. 従業員を確保できるか
現地大学、訓練校、人材紹介会社などを訪問し、採用難易度、賃金水準、人材定着率を確認します。
5. 継続して事業運営できるか
会計士、弁護士、日本人会、商工会議所などから、事業運営上の課題や撤退事例についても情報収集します。
特に、
- なぜ撤退した企業があるのか
- 何が想定外だったのか
という「耳の痛い話」は必ず聞いておきましょう。
6. 法規制・文化的ギャップ・注意点は何か
法規制や投資制度は、
- 現地規制当局
- ジェトロ
- 現地専門家
など複数の情報源で確認します。
どの当局に、どうやって質問し、どう回答を得たかの全プロセスはトラブル防止のために自社で管理しておきましょう。
また、文化や商習慣の違いによるトラブル事例も収集し、事前に対策を考えておきます。
F/S調査で最も注意すべきこと
投資先の関係者(工業団地、不動産会社、人材紹介会社、税理士事務所、その他)の多くは、
「ぜひ進出してください」
という歓迎姿勢で接してきます。
しかし、相手は投資の恩恵を受ける側、日本企業は費用を払う側です。
相手の称賛やプロモーション(売り込み)を“成功確約の証拠”と捉えてしまうのは危険です。
実際には、海外進出後に「価格が高い」と既存顧客(日系企業)からの発注が止まり、いつのまにか競合(ローカル企業)への切り替えが起こっていたというケースも頻発しています。
そのため、F/S調査では良い情報だけを集めるのではなく、デメリットやリスク、撤退事例まで積極的に確認し、客観的に判断する姿勢が重要です。
輸出のF/S調査の進め方
輸出事業のF/S調査では、
「その国で本当に売れるのか」
を検証します。
海外事業計画を作成する中で、
・その国にニーズはあるのか
・いくらなら売れるのか
・競合との差別化はできるのか
・どのような販売方法が現実的なのか
といった疑問が出てきた場合に、現地で仮説検証を行います。
特に、以下の4つの観点から調査を進めると良いでしょう。
1. 海外現地で売れるか
まず確認すべきは、その商品やサービスに現地ニーズが存在するかどうかです。
現地の消費者へのインタビューを行い、実際の使い心地や反応をヒアリングします。
また、顧客候補企業へのアポイントを取り、実際に商談をしながら生の声を聞き出すアプローチも有効です。
展示会への訪問や出展も、市場の反応を確認する方法のひとつとなります。
2. 海外で売る際の障壁は何か
輸入規制、認証、流通構造、商習慣など、日本国内とは異なる障壁が存在することがあります。
現地のディストリビューターや卸売業者にヒアリングし、流通上の課題や取引慣行を把握しましょう。
また、
・なぜ今の仕入先から切り替える必要があるのか
・新しい商品を採用する際、どのような懸念があるのか
といった点を丁寧に聞き出すことも重要です。
3. 海外市場でより多く売るためには何が必要か
現地競合企業の製品、価格、販促方法を調査します。
さらに、競合企業への納入業者やその関係者にも会い、競合の販売方法やシェアの実態を把握すると良いでしょう。
業界の専門家や業界団体(例:○○工業会、△△産業協会)からは、業界全体の構造や市場の変化について情報収集します。
また、現地メディアやフリーペーパーも、消費者の嗜好やプロモーション方法を知るうえで貴重な情報源です。
その商品の周辺商品や別カテゴリーの商品も合わせて調査することで、新たな販売機会や差別化のヒントが見つかることがあります。
4. 輸出する際の注意点は何か
国によって、
・商談スタイル
・意思決定プロセス
・契約慣行
・アフターサービスへの期待
は大きく異なります。
現地企業や業界関係者へのヒアリングを通じて、取引上の注意点を確認しておきましょう。
輸出F/S調査で特に重要なこと
輸出事業というのは現地顧客に商品を買ってもらい、日本企業はお金を受け取る側です。
そのため、海外投資のF/S調査とは異なり、輸出のF/S調査では、現地は歓迎ムードよりも、むしろ厳しく率直な意見を聞く機会が多くなります。
これは、客観的で正確なデータや評価を収集するうえで、非常に貴重な機会です。
相手が言いづらそうにしている指摘ほど、海外展開を成功させるための重要なヒントが隠されています。
良い反応だけでなく、なぜ買わないのか、何が障壁となるのかまで丁寧に確認しながら、事業計画を修正していきましょう。
海外進出の可能性をどう判断するか
人口減少、DX、AI活用の進展など、日本企業を取り巻く環境は急速に変化しています。
これから100年かけて、日本は100年前の人口規模へとゆっくり戻っていくと言われています。
人口が減れば、企業の数も減っていくでしょう。
労働力不足を補うため、DXやAI活用はさらに加速し、これまでとは異なる世界の扉が次々と開いていくはずです。
こうした環境変化の中で、海外進出の意思決定に必要なのは、単なる市場性だけではありません。
パコロアでは、海外事業の実現可能性は、次の掛け算で決まると考えています。
事業の実現可能性=経営者の覚悟×企業体力×担当者の資質
どれか一つでも大きな弱点があれば、海外事業は前に進みません。
F/S調査の後、海外進出を決断し、実際に成功した日本企業も確実に存在しています。
その企業に共通していることは、とてもシンプルです。
- 今、答えが見つからなくても、それでも意思決定を続ける
- 変化を恐れず、進化し続ける
この2つです。
海外進出を志し、必要な能力を開発し、戦略を構築することで、日本の中小企業は確実に強くなります。
たとえ結果として海外進出しなかったとしても、その過程で得た知識や経験は、これからやってくる未知の波を乗り越えるための大きな筋力となるでしょう。
海外進出は特別なことではありません。
海外顧客について知り、必要な能力を身につけ、戦略を構築したあとは、
chin up!
情熱を持って、ただただ実践あるのみです。
ただただ実践あるのみ、、、壮大な話です。
そして私たちって稀有な時代に、生きているんですね!
何だかワクワクしてきたぞ=
海外進出って、もっと特別なことだと思っていました。
でも、変化に対応しながら会社を成長させていくための選択肢の一つなんですね。
海外進出をするかどうかだけではなく、会社の未来そのものを考えるという・・・。
その通りです。
海外進出するかどうかに正解はありません。
大切なのは、自社の未来を考え、自分たちで意思決定し、行動することです。
見える景色も、変わってきました。
まずは、海外事業計画を書いてみます。
その一歩が、未来を変えるかもしれません。
海外進出の判断を、自社に合った形で整理しませんか?
F/S調査を行っても、「結局、自社はどう進めるべきか」「どこまで投資すべきか」という判断に迷う企業は少なくありません。
パコロアでは、30年以上にわたる海外ビジネスの実務経験とAIを活用した多角的な分析をもとに、自社の強み・ターゲット市場・販売方法・社内体制を整理し、貴社に合った海外展開の進め方を30ページ超の個別判定レポート『海外進出チェック』としてご提供しています。
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