多言語サイトの作り方と運用戦略|海外Webで成果を出す設計とは
更新 2026年9月10日 公開 2023年11月1日
多言語サイトを作るとき、「日本語サイトを英語などに翻訳すればよい」と考える企業は少なくありません。
しかし、実際には翻訳だけでなく、サイトの構成、デザイン、掲載する情報、SEO、制作会社への依頼方法、公開後の運用など、考えることはたくさんあります。
特に初めて海外向けサイトを作る場合、
「海外ではどのようなサイトが一般的なのか」
「自社はどのようなサイトを作ればよいのか」
が分からないまま、制作が始まることもあります。
このページでは、多言語サイトを作るときに何から始め、どのように設計・制作し、公開後に運用していけばよいのかを、順番に解説します。
まずは海外企業のWebサイトを50社調べてみる
多言語サイトの制作を始める前に、まず海外企業のWebサイトを50社ほど調べてみましょう。
なぜなら、自社自身が海外のWebサイトを見るユーザーになってみることが、多言語サイトを考えるうえで重要だからです。
海外のWebサイトを実際に見てみると、「これは分かりやすい」「この情報は探しにくい」「この会社に問い合わせるにはどうすればいいのだろう」と、自分自身がユーザーとしてさまざまなことを感じます。
多言語サイトを作る側になる前に、まず海外サイトを見る側を経験しておく。
その経験が、後から自社サイトの構成や掲載する情報、制作会社からの提案を判断するときの材料になります。
具体的な探し方は、大きく2つあります。
生成AIを使って、調査する企業を探す
一つは、生成AIを使って、自社と同じ業界やターゲット市場で参考になりそうな企業をピックアップする方法です。
たとえば、次のようなプロンプトから始めることができます。
【生成AIへのプロンプト例】
当社は日本の[業種]で、[製品・サービス]を提供しています。今後、[国・地域]への海外展開を検討しています。[国・地域]および海外市場で、当社と同じ業界・近い製品を扱っている企業、競合または参考になりそうな企業を挙げてください。
各社について、会社名、国、主な事業・製品、公式WebサイトURLを一覧にしてください。大手企業だけでなく、中小・中堅企業も含めてください。
最初から50社すべてを生成AIだけで探す必要はありません。
候補企業を知る入口として使い、実際のWebサイトを自分で確認しながら対象を増やしていきます。
自分でも検索して海外企業を探す
もう一つは、自分のPCから実際に検索する方法です。
自社の製品名や業界名だけでなく、海外の見込み客がどのような言葉で製品や取引先を探すのかを考えながら検索することが重要です。
たとえば、
- [製品名] manufacturer
- [製品名] supplier
- [製品名] company
- [製品名] distributor
- [製品名] OEM
- [業界名] companies
- [用途・課題] solution
などから始めます。
国を絞りたい場合は、国名や地域名を加えて検索してみましょう。
生成AIから候補企業を見つける方法と、自分で検索して見つける方法の両方を使うことで、特定の情報源だけに偏りにくくなります。
見たサイトはExcelやスプレッドシートに記録する
見つけたWebサイトは、ただ次々と閲覧するだけではなく、Excelやスプレッドシートに記録していきます。
たとえば、次の7項目を整理します。
- 会社名
- URL
- 国
- 業種
- 企業規模
- ここはぜひ真似したい
- ここは分かりにくい・自社では同じようにしたくない
企業規模は、従業員数や売上高など、公開情報から確認できるもので構いません。
すべての海外企業について同じ情報が公開されているわけではないため、分からない場合は空欄でも問題ありません。ここで精密な企業分析をすることが目的ではなく、自社と同程度の企業なのか、はるかに規模の大きな企業なのかが大まかに分かれば十分です。
少し面倒ですが、担当者一人が記録を残さず50社を見ていく方法はおすすめしません。
後から「どのサイトがよかったのか」「どこが分かりにくかったのか」と振り返ろうとしても、記憶だけでは比較や検証ができないからです。
一覧にしておけば社内でも共有できます。
さらに制作会社へ依頼する段階では、この一覧をRFP(提案依頼書)の参考資料として、そのまま渡すこともできます。
「海外向けに格好いいサイトを作ってください」と伝えるより、
「このサイトの製品の見せ方は参考にしたい」
「このサイトは欲しい情報がなかなか見つからなかったので、自社では同じようにしたくない」
と実際のWebサイトを示した方が、制作会社にも自社の希望が具体的に伝わります。
正解を見つけるために50社を見るのではない
50社のWebサイトを見たからといって、多言語サイトの正解が分かるわけではありません。
むしろ、この調査でぜひ体験していただきたいのは「分かりにくさ」です。
「何をしている会社なのか分からない」
「製品を探しているのに、どこにあるのか分からない」
「欲しい情報まで何回もクリックしなければならない」
「問い合わせたいのに、次に何をすればよいのか分からない」
海外のWebサイトを見ている自分自身が、こうした場面に何度も出会います。
そのとき自分は、まさにWebサイトを訪れた「海外のユーザー」と同じ立場です。
何が正解なのかはまだ分からなくても、「こういうサイトは分かりづらい、自社では避けるべき」ということなら、自分自身の体験から判断できます。
また海外展開している企業を調べていくと、自国語だけでWebサイトを作っている企業では、海外から訪れた自分には会社や製品についてほとんど判断できない、ということも体験します。
英語など海外顧客が理解できる言語で情報を用意する意味も、実際に海外企業のサイトを見る側になってみると分かります。
こうしたユーザーとしての体験を持ってから自社の多言語サイトを作ることは、大きな失敗を防ぐ一つの材料になります。
50社で足りなければ、100社まで見てみる
まずは50社を目安にしてください。
実際に50社ほど調べてみると、「ぜひこのサイトを参考にしたい」と思える企業が意外に少ないこともあります。
すると、もう少し参考になるサイトを探したくなり、結果として100社近く見ることもあります。
100社を見ること自体が目的ではありません。
自社が「こうしたい」「これは避けたい」と制作会社へ具体的に伝えられるだけの材料が集まれば、この調査の目的は十分に果たしています。
パコロアの海外展開支援でも、多言語サイトを制作する企業には、実際にこうした海外企業のWebサイト調査を行っていただいています。
企業自身がExcelなどに調査結果をまとめ、それを制作会社へ共有することで、制作時の打ち合わせでも「何となくこんな感じ」ではなく、実際のWebサイトを見ながら具体的に話を進めることができます。
多言語サイトは、制作会社に依頼したところから始まるのではありません。
まず自社自身が海外のWebサイトを見るユーザーになってみること。
そこから、多言語サイト制作は始まります。
海外の最新Webサイトが見られるギャラリー
リサーチに疲れたときにおすすめの休憩用サイト3選
大量の海外サイトを見ていると、かなり疲れます。
適度な休憩を挟みつつ、気分転換もしながら進めてみましょう。
(休憩おわり)
自社サイトに必要なページと情報を整理する
海外企業のWebサイトを調べたら、次は自社のWebサイトに必要なページと情報を整理していきます。
ここで、いきなりデザインを考える必要はありません。
まずは50社の調査で記録した「ここは真似したい」「これは分かりにくい」という実体験を振り返りながら、自社の海外顧客に何を見せる必要があるのかを考えてみましょう。
たとえば、製品・サービス、技術情報、導入実績、会社情報、問い合わせ方法など、必要になりそうな情報を一度すべて書き出します。
そのうえで、
「これはトップページからすぐ見つけられるようにしたい」
「この製品情報は用途別に探せた方がよい」
「問い合わせ前にこの資料を確認できるようにしたい」など、
海外企業が情報を探す場面を想像しながら整理していきます。
この段階では、きれいなサイトマップを作る必要はありません。
紙やExcel、PowerPointなど、社内で使いやすい方法で構いませんので、「どんなページが必要か」「そのページには何を載せるか」を整理してみてください。
海外企業が判断するために必要な情報も確認する
海外向けWebサイトでは、自社が伝えたい情報を並べるだけでは不十分です。
海外企業の担当者がWebサイトを見て、
「この会社についてもう少し調べよう」
「社内で検討してみよう」
「問い合わせてみよう」
と判断するための情報も必要になります。
具体的にどのような情報を用意すべきかについては、
海外向けホームページに必要な6つの情報|問い合わせが来ない原因は『情報不足』
でも詳しく解説しています。
このページで確認した情報も、自社サイトに必要なページやコンテンツとしてぜひ追加していきましょう。
Web制作会社へ依頼する内容を整理する
自社サイトに必要なページや情報が見えてきたら、次はWeb制作会社へ何を依頼するのかを整理します。
ここまで調べてきた内容を、制作会社へ伝えられる形にしていきましょう。
最初に調査した海外企業50社の一覧も、この段階で役立ちます。
「このサイトの製品ページは参考にしたい」「このような問い合わせ導線にしたい」「このサイトは情報を探しにくかったので、同じ構成にはしたくない」など、実際のWebサイトを示しながら説明することで、制作会社とも具体的な話ができるようになります。
また、対象国・言語、掲載したい製品やサービス、必要なページ、問い合わせ方法、公開希望時期、予算など、現時点で決まっていることも整理しておきます。
すべてを自社で決める必要はありません。
分からないことは「制作会社から提案してほしいこと」として整理しておけばよいのです。
RFPを作って制作会社へ伝える
これらをまとめて制作会社へ伝える方法の一つが、RFP(Request for Proposal/提案依頼書)です。
RFPというと難しい書類のように感じるかもしれませんが、目的は、自社が何を実現したいのか、何が決まっていて、何を提案してほしいのかを制作会社へ伝えることです。
特に複数の制作会社から提案や見積りを取る場合、各社へ同じ条件を伝えておくことで、提案内容も比較しやすくなります。
最初に作った海外企業50社の調査表も、参考資料としてRFPと一緒に渡すことができます。
RFPの具体的な作り方については、
ホームページ提案依頼書(RFP)【Word・記入サンプル付き】|海外進出で必要になる書類で、
テンプレートと記入例を紹介しています。
Web制作会社に依頼する前に、自社で決めておくこと
海外向けWebサイトを制作するとき、Web制作会社に相談すれば、サイト構成やデザイン、システムなどについて専門的な提案を受けることができます。
一方で、Web制作会社では決められないことがあります。
それは、当社の海外事業そのものに関することです。
- どの市場を狙うのか
- 競合に勝てる強みは何で、どう伝えるのがよいのか
- どのような問い合わせを期待して公開するのか
これらはWebサイトを作るためだけの条件ではなく、海外事業の方向性そのものです。
そのため、Web制作会社が代わりに決めることはできません。
一方、事業会社側では「海外向けWebサイトのことだから、Web制作会社が考えてくれるだろう」と思っていることがあります。
ここに、海外向けWebサイト制作で見落とされやすい谷間があります。
Web制作会社は、依頼された条件をもとにWebサイトを設計・制作する専門家です。
しかし、その前提となる海外事業について、根拠をもって考えた方向性が依頼主から明確に示されなければ、どれほどきれいなWebサイトが完成しても、「誰に何を伝えるサイトなのか」は誰にも分からないままです。
だからこそ、制作会社へ依頼する前に、少なくとも次の3つは事業会社側で整理しておきます。
- 海外のどこで、どのような企業から選ばれたいのか
- 競合と比較されたとき、何を理由に自社を選んでもらうのか
- Webサイトを見た相手に、次にどのような行動を起こしてほしいのか
ここまでは、事業会社側が責任をもって差し出す必要があります。
実際には、これらを十分に整理できている中小企業は多くありません。
それが、海外向けWebサイトを作っても海外事業の中で十分に機能しないケースが生まれる理由の一つです。
「海外向けに、こうしたい」「このような顧客と取引したい」「こういう問い合わせにつなげたい」。
それが決まっていないのに、それを実現するWebサイトだけが自動的に完成することはありません。
検索から海外顧客を獲得したいなら、制作前にSEOを決める
海外向けWebサイトを作る目的が、会社や製品の情報を海外企業に確認してもらうことであれば、Web制作会社にその目的を伝え、必要なサイトを設計してもらうことができます。
一方、Googleなどの検索から、まだ自社を知らない海外企業を見つけ、問い合わせにつなげたいのであれば、話は変わります。
SEOは、Webサイトが完成してから追加する「集客施策」ではありません。
どの国の、どのような企業に、どのような検索から見つけてもらいたいのか。
それによって、必要なページ、コンテンツ、サイト構成も変わります。
つまり、検索から海外顧客を獲得したいのであれば、その方針は制作会社へ依頼する前に決めておく必要があります。
Web制作とWebマーケティングは同じ仕事ではない
ここでも、事業会社側が気づきにくい谷間があります。
Web制作会社は、Webサイトを設計し、デザインし、構築する専門家です。
一方、検索市場を調査し、狙うキーワードを考え、どのようなコンテンツで見込み客を集め、問い合わせにつなげるかを設計する仕事は、Webマーケティングの領域です。
もちろん、両方に対応する会社もあります。
しかし、Webサイト制作を依頼すれば、SEOやWebマーケティングまで当然含まれているとは限りません。
「SEO対策あり」と書かれていても、検索エンジンがサイトを認識しやすくするための基本的な設定なのか、海外市場の検索ニーズを調査して集客戦略まで設計するのかでは、業務の範囲が大きく異なります。
当然、必要な専門性も予算も変わります。
制作会社を探す前に、Webサイトに何を期待するか決める
大切なのは、「どの制作会社がよいか」を最初に探すことではありません。
まず、自社が海外向けWebサイトに何を期待するのかを決めます。
展示会や営業で接点を持った海外企業に、自社や製品について詳しく確認してもらう場所にしたいのか。
それとも、検索からまだ接点のない海外企業にも自社を見つけてもらい、新しい問い合わせを獲得したいのか。
後者まで求めるのであれば、Web制作だけでなく、海外SEOやWebマーケティングをどこまで依頼できるのかも確認したうえで、依頼先を選ぶ必要があります。
入口を間違えると、Webサイトが完成してから「検索から問い合わせが来ない」と気づき、あらためてSEOのためにサイト構成やコンテンツを見直すことにもなります。
Webサイトを作ることと、Webサイトを使って海外顧客を獲得すること。
似ているようで、この二つは同じ仕事ではありません。
ここで少し、海外で「伝える」ということについて考えてみましょう。
近藤麻理恵さんの世界的ベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』。
その英語タイトルはこう訳されました:
The Life-Changing Magic of Tidying Up:
The Japanese Art of Decluttering and Organizing
一見すると直訳に見えますが、実は最も象徴的な言葉「ときめく」が、どこにも登場していません。
「ときめく」は英語で訳すのが非常に難しい言葉です。
辞書的には “exciting feelings,” “romantic,” “heart skip a beat” などが候補に挙がるものの、どれもニュアンスがずれてしまいます。
そこで採用されたのが「Spark Joy(スパーク・ジョイ)」という表現でした。
これは単に“喜びを感じる”ではなく、「心が反応して、行動につながるポジティブな衝動」を表す言葉。
つまり、“ときめく”を訳したのではなく、「英語圏でも刺さる概念」に再構築したわけです。
「ああ、これは“訳す”ってレベルじゃなくて、“作る”なんだな」
と腑に落ちてもらえる代表例です。
この翻訳は、翻訳者の語学力だけでなく、コピーライター、ブランド設計者、マーケターたちの知見が結集したもの。
こうした「超意訳」のレベルになると、企業の多言語サイトにおいても、
単なる言語変換ではなく、コンセプトの再構築という視点が必要です。
そのため、企業のスローガンやキャッチコピーを海外向けに展開したい場合は:
- 英語でコピーライティングができるプロに依頼する
- ブランド戦略や現地文化理解に長けたクリエイターをチームに加える
といった体制づくりが、成果を分けるポイントになります。
多言語サイトは、公開したあとにこんな失敗が起こる
多言語サイトは、完成して公開すれば終わりではありません。
実際には、公開したあとに次のようなことが起こります。
翻訳は正しい。でも、海外顧客には伝わらない
日本語の商品名や専門用語を正確に翻訳しても、海外市場で実際に使われている言葉とは限りません。
検索される言葉と違えば見つけてもらいにくくなり、海外顧客が普段使わない表現であれば、意味は通じても自社の商品として伝わりにくくなります。
大切なのは「正しく訳されているか」だけではなく、海外市場でどの言葉を使い、どの言葉を使わないかを判断することです。
GA4やGoogle Search Consoleを入れた。でも、誰も見ていない
アクセス解析の設定をして、そのまま数か月、1年と経過してしまうこともあります。
GA4やGoogle Search Consoleを確認すれば、どの国から、どのページに、どのような検索で訪問しているのか、想定した海外顧客に届いているのかを確認できます。
ただし、数字を見るだけでも十分ではありません。
その数字から何を問題と判断し、何を変えるのか。
ここまで考えて初めて、アクセス解析がサイト改善につながります。
海外担当者がWebも兼務。でも、更新する時間がない
中小企業では、海外営業の担当者がWebサイトも兼務することは珍しくありません。
問題は、専任担当者がいないことではありません。
毎週確認するもの、月に一度でよいもの、製品や展示会など変更があったときに更新するものなど、自社では何を、どの頻度で確認するのかが決まっていないことです。
必要な確認項目や頻度は、業種や海外営業の方法によっても異なります。
翻訳、アクセス解析、Webサイトの更新作業そのものは、外部の専門会社へ依頼できます。
しかし、
- 海外市場でどの言葉を使うのか
- 数字を見て何を問題と判断するのか
- 自社では何を、どの頻度で確認するのか
という判断まで、すべてを外注することはできません。
なぜなら、Webサイトも海外事業の一部だからです。
制作会社や翻訳会社、SEO会社などの専門家の力を借りながらも、自社の海外事業として何を判断し、何を任せるのかを決める役割は、自社に残ります。
海外展開をご検討中の企業さまへ
海外向けWebサイトは、海外の企業に自社を知ってもらい、製品やサービスを検討してもらうための大切な接点の一つです。
一方で、実際に制作を進めてみると、どの情報を掲載するのか、海外では何を強みとして伝えるのか、SEOをどこまで行うのか、公開後に何を見ながら改善するのかなど、自社だけでは判断しにくいことも出てきます。
パコロアでは、海外向けWebサイトの制作を検討している企業や、すでにサイトを公開しているものの十分に活用できていない企業に対して、海外事業の視点から必要な整理や改善を支援しています。
「制作会社へ依頼する前に、一度方向性を整理したい」「今の海外向けWebサイトで何を見直せばよいのか分からない」という段階でもご相談いただけます。
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