海外進出を考え始めたとき、「まず、どこに相談すればいいのだろう」と迷う企業は少なくありません。
海外進出の相談先には、JETROや中小企業基盤整備機構、自治体、商工会議所などの公的機関だけでなく、民間の海外進出支援会社やコンサルティング会社もあります。
それぞれ得意な支援内容が異なるため、重要なのは「有名だから」「無料だから」ではなく、自社がいま何を相談したいのかに合った相談先を選ぶことです。
この記事では、公的機関と民間支援会社の違い、主な相談窓口とその特徴、自社に合った相談先の選び方を解説します。
海外進出の相談先は「何を相談したいか」で選ぶ
海外進出について相談できる先は、一つではありません。
JETROや中小企業基盤整備機構、自治体、商工会議所などの公的支援機関のほか、金融機関、海外進出コンサルティング会社、各分野の専門家など、さまざまな相談先があります。
どこが最も優れているということではなく、それぞれ得意な支援が異なります。
大きく分けると、次のように考えると分かりやすいでしょう。
公的支援機関に相談しやすいこと
公的支援機関は、海外進出を検討し始めた段階での情報収集や、制度・規制などについて相談したい場合に利用しやすい相談先です。
たとえば、
- 海外市場や国・地域についての情報を集めたい
- 輸出や海外進出に関する制度を知りたい
- 利用できる補助金や支援制度を知りたい
- 専門家に一度相談してみたい
- 海外進出について何から調べればよいか知りたい
といった場合です。
無料で利用できる相談や支援も多いため、海外進出を検討する企業にとって有力な選択肢になります。
民間の支援会社に相談しやすいこと
一方、民間の海外進出支援会社やコンサルティング会社は、自社固有の課題について継続的に検討したり、実際の海外展開を進めたりする場合に利用されます。
たとえば、
- 自社の商品・サービスなら、どの市場を狙うべきか考えたい
- 海外でのビジネスモデルや販売方法を検討したい
- 代理店開拓、展示会、Webなどを実際に進めたい
- 海外事業を始めたものの、思うように進んでいない
- 社内だけでは海外事業を進める人材や経験が足りない
といった場合です。
ただし、民間の支援会社も、市場調査、販路開拓、貿易実務、Webマーケティングなど、それぞれ得意分野が異なります。
「民間ならどこでも同じ」ではなく、自社が必要としている支援と合っているかを確認する必要があります。
公的支援と民間支援は併用できる
そして、公的支援と民間支援は、どちらか一方を選ばなければならないものではありません。
たとえば、公的機関から市場情報や制度についてアドバイスを受けながら、自社の商品や事業について具体的な戦略を考えたり、実際の販路開拓を進めたりする部分では民間の支援を利用することもできます。
海外進出では、検討が進むにつれて必要な支援も変わります。
そのため、最初から一つの相談先ですべてを解決しようとするのではなく、
「いま自社は何に困っているのか」
「その問題について誰に相談するのが適しているのか」を考えて、
相談先を使い分けることが大切です。
参考までに、以下は中小企業庁が2013年に実施した調査による、中小企業が輸出にあたって相談した機関・企業等を示したものです。
古い調査ではありますが、公的支援機関だけでなく、金融機関、商社、民間コンサルタント、専門家、現地企業など、海外展開にはさまざまな相談先があることが分かります。

そもそも、海外事業が思うように進んでおらず、「何を相談すればよいのか」自体が分からない場合は、まず現在のボトルネックを整理することから始めます。
→中小企業の海外進出の課題とは?失敗の原因とボトルネックを事前に見極める方法
海外進出の相談は「誰に何を聞くか」が重要
海外進出の相談は、いくつもの窓口を気軽に試して、最もよさそうなところを選ぶ、といったものではありません。
自社の事業や商品、これまでの取り組み、課題、予算などを整理し、必要に応じて社外には出していない情報も伝えて、初めて具体的な相談ができます。
だからこそ、できれば最初から、自社が相談したいことに詳しい相手に出会えるのが理想です。
ただし、海外進出では、市場、商品、販路、規制、契約、資金、物流など、さまざまな問題が関係します。一つの支援機関や一人の専門家が、そのすべてに詳しいとは限りません。
たとえば、
- JETROで対象国の市場情報や規制について相談する
- 自治体や商工会議所で利用できる支援制度を確認する
- 金融機関に海外展開に必要な資金について相談する
- 民間の支援会社に、自社の海外事業や販路開拓について相談する
というように、相談したい内容によって適した相手は変わります。
また、同じテーマでも、専門家の経験や得意分野によって回答が異なることがあります。
大切なのは、一度相談して期待した答えが得られなかったからといって、「この問題には答えがない」「自社には海外進出は難しい」と判断しないことです。
一般的な情報しか得られなかった、相談したい分野が相手の専門外だった、自社の状況を十分に理解してもらえなかった、という可能性もあります。
反対に、相談によって自社の課題が整理され、次に何をすべきかが明確になったのであれば、むやみに別の相談先を探す必要もありません。
相談先を増やすことが目的なのではなく、自社がいま知りたいこと、判断したいことに対して、適切な知識や経験を持つ相手を選ぶことが重要です。
海外進出の相談を有意義にする3つの準備
1.自社の状況をできるだけ具体的に伝える
海外進出の相談では、相談相手が自社の状況をどこまで理解できるかによって、得られるアドバイスの具体性も変わります。
申込書や事前ヒアリングシートがある場合は、できるだけ具体的に記入しましょう。
たとえば、
- 海外進出を考えている理由
- 対象としている国・地域
- 商品・サービスの特徴や実績
- これまで海外で行ったこと
- 現在困っていること
- 社内の担当者や体制
- 相談によって判断したいこと
などです。
まだ決まっていないことは、無理に答えを作る必要はありません。「未定」「どの国を選ぶべきか相談したい」と書けば、それ自体が相談事項になります。
一方、「詳しくは面談で説明します」とほとんど空欄のまま申し込むと、相談時間の多くを状況説明に使うことになります。
限られた相談時間を有効に使うためにも、相手が事前に自社の状況を理解できる情報を渡しておきましょう。
2.予算や社内事情もできる範囲で伝える
海外進出について相談するとき、予算を伝えることに抵抗を感じる企業もあるかもしれません。
しかし、100万円でできる方法と1,000万円を使える場合では、検討できる選択肢が変わります。
同じように、
「海外担当者は社長一人」
「英語を使える社員がいない」
「海外営業に割ける時間が限られている」
といった社内事情も、海外進出の方法を考えるうえで重要な情報です。
理想的な方法だけを提案されても、自社で実行できなければ意味がありません。
相談相手には、差し支えない範囲で、自社が実際に使えるお金・人・時間を伝えておきましょう。
3.「何をすればいいですか?」だけで終わらせない
海外進出の相談では、
「どの国がいいですか?」
「どの展示会に出ればいいですか?」
「代理店はどう探せばいいですか?」
といった具体的な方法を聞きたくなるものです。
もちろん、それらも重要な質問です。
ただ、その前に確認しておきたいのが、
「そもそも、自社は何のために海外進出するのか」
ということです。
国内市場の縮小、新しい顧客の獲得、特定市場への依存、既存製品の成長余地など、海外進出を検討する背景には、何らかの経営上の理由があります。
海外進出は、それ自体が目的ではなく、国内事業だけでは解決しにくい経営課題に対する選択肢の一つです。
そのため相談するときは、
「この方法で海外へ行けますか?」
だけでなく、
「自社が解決したい課題に対して、海外進出という方法は適しているでしょうか?」
という視点でも意見を聞いてみてください。
場合によっては、「今は海外へ行かない」「先に国内で整えることがある」という答えになるかもしれません。
それも、海外進出の相談から得られる重要な判断材料です。
海外進出の目的や、自社の商品・市場・販売方法などを相談前に整理しておきたい場合は、事業計画書を作成してみるのも一つの方法です。
→海外進出の事業計画書テンプレート【輸出編・Word】|中小企業の海外展開に必要な書類
海外進出について相談できる主な公的支援機関
海外進出について相談できる公的な支援機関は全国にあります。
海外市場や国・地域に関する情報収集、輸出・規制、事業計画、販路開拓、資金調達など、相談できる内容は機関によって異なります。
ここでは、中小企業が海外進出について相談するときに知っておきたい主な公的支援機関と、それぞれの特徴を紹介します。
日本貿易振興機構(ジェトロ)【独立行政法人】
JETRO(日本貿易振興機構)は、海外市場の情報収集から輸出・海外進出の実務、販路開拓まで、幅広い海外ビジネス支援を行う公的機関です。
「貿易投資相談」では、輸出入制度や貿易実務、海外進出などについて無料で相談できます。海外市場や現地の規制について調べたい場合や、輸出・海外進出の実務について確認したい場合など、海外ビジネスのさまざまな段階で利用できます。
また、「新輸出大国コンソーシアム」では、海外ビジネスに詳しい専門家による支援も行われています。海外展開戦略の策定から事業計画、販路開拓、貿易実務、法務・税務、基準・認証など、企業の課題に応じた支援があります。継続的なハンズオン支援は審査があります。

こんな相談をしたいときに候補になります。
- 海外市場や国・地域の情報を調べたい
- 輸出入制度、規制、貿易実務について相談したい
- 海外での販路開拓や商談について相談したい
- 海外進出の戦略や事業計画について専門家の助言を受けたい
- 法務・税務・認証など、海外展開に伴う専門的な課題を相談したい
JETROは支援メニューが非常に多いため、「どのサービスを利用すればよいか分からない」という場合も、まず相談窓口で自社の状況と相談したい内容を伝えてみるとよいでしょう。
新輸出大国コンソーシアムでも、コンシェルジュが相談内容に応じたサービスを案内しています。
中小企業基盤整備機構(中小機構)【独立行政法人】
中小企業基盤整備機構(中小機構)は、中小企業・小規模事業者の経営を幅広く支援する公的機関です。
海外展開については「海外展開ハンズオン支援」があり、海外ビジネスの実務経験を持つ専門家に無料で相談できます。海外展開を検討し始めた企業だけでなく、すでに海外進出している企業の課題も相談できます。
特徴的なのは、単発の相談だけでなく、企業の状況をヒアリングしながら課題を整理し、必要に応じて国内外の専門家と連携した支援を受けられることです。法務・税務・規制・現地マーケティングなどの専門的な課題や、海外事業計画についてのアドバイスにも対応しています。

こんな相談をしたいときに候補になります。
- 海外進出に関心はあるが、対象国や課題をまだ整理できていない
- 自社に合った海外展開の進め方を考えたい
- 海外事業計画について相談したい
- 法務・税務・規制・現地マーケティングなどについて専門家の意見を聞きたい
- すでに海外進出しているが、海外企業との取引や海外子会社などで課題を抱えている
また、中小機構が運営する「海外ビジネスナビ」では、海外展開に関する実務情報や事例、セミナーなどの情報も公開されています。
地方自治体(商工会議所・産業局)【各地域の行政・公的団体】
都道府県や市区町村では、地域の中小企業を対象に海外展開支援を行っています。また、自治体と連携する産業支援機関や商工会議所などでも、地域企業向けの海外展開支援を行っています。
支援内容は地域や機関によって異なりますが、海外展開の相談、展示会・商談会への出展、海外バイヤーとの商談、販路開拓、補助金・助成金など、さまざまな支援があります。
たとえば大阪では、大阪府・大阪市などと連携して中小企業を支援する大阪産業局が、海外ビジネスに関する情報提供や販路開拓などの支援を行っています。

また、地域の商工会議所も海外展開の相談先の一つです。
たとえば大阪商工会議所では、国内外の展示会出展支援や、専門家による海外進出相談、現地バイヤーとのマッチングなど、さまざまなサービスを展開しています。

このように、地域の海外展開支援は、自治体だけでなく、産業支援機関や商工会議所などが連携して行っている場合があります。
自社の所在地でどのような支援を利用できるか分からない場合は、都道府県や市区町村のWebサイトだけでなく、地域の産業支援機関や商工会議所も確認してみましょう。
東京都中小企業振興公社【公益財団法人】
東京都中小企業振興公社では、都内の中小企業を対象に、海外取引や海外進出に関するさまざまな支援を行っています。
「海外ワンストップ相談」では、海外ビジネスの専門相談員に無料で相談でき、初めて海外取引を行う企業から、すでに海外展開を進めている企業まで利用できます。来訪だけでなく、Web、電話、メールでの相談も可能です。
相談できる内容も幅広く、輸出や貿易実務、海外規制、契約などに加え、海外展開プランの策定や海外販路開拓、海外拠点の設置など、段階に応じた支援があります。

こんな相談をしたいときに候補になります。
- 海外取引を始めたいが、何から手をつければよいか分からない
- 輸出、貿易実務、海外規制、契約などについて相談したい
- 自社の商品に合った海外展開プランを考えたい
- 海外での販路開拓や商談機会を探している
- 海外拠点の設置を検討している
対象となるのは、原則として東京都内に本社または支店がある中小企業です。
金融機関(信用金庫・政府系金融機関)【民間/政府系金融機関】
金融機関も、海外進出を検討する企業にとって相談先の一つです。
特に、海外進出に必要な資金調達や設備投資、運転資金など、資金面について相談したい場合には重要な相談先になります。
また、金融機関によっては、海外拠点や提携金融機関のネットワークを活用した現地情報の提供、海外展開セミナー、ビジネスマッチング、専門機関の紹介などを行っている場合もあります。

こんな相談をしたいときに候補になります。
- 海外進出に必要な資金について相談したい
- 海外向けの設備投資や運転資金を調達したい
- 海外展開に利用できる融資制度を知りたい
- 取引している金融機関に海外展開支援があるか確認したい
特に日本政策金融公庫などの政府系金融機関には、海外展開を行う中小企業向けの融資制度があります。

一方、信用金庫や地方銀行などの支援内容は金融機関によって異なります。
まずは日頃から取引のある金融機関に、海外展開についてどのような支援があるか確認してみるのも一つの方法です。
海外進出に利用できる支援策を自分で探すには
海外進出の支援は、相談窓口だけではありません。
国や自治体、支援機関では、海外展開に関する補助金、セミナー、商談会、専門家相談、海外現地支援など、さまざまな支援施策を実施しています。
ただし、支援策は実施機関ごとに分かれており、募集期間が決まっているものもあります。
「いま利用できる支援策がないか調べたい」という場合は、公的機関がまとめている支援情報サイトを確認してみましょう。
近畿経済産業局
たとえば、近畿経済産業局が毎年発行する「海外展開支援施策ナビ」では、関西エリアの行政・自治体・公的支援の情報が160項目以上も集約されています。
PDF形式でのダウンロードも可能で、必要な支援情報をピンポイントで探しやすいのが特長です。

なお、関東・東北・中部(愛知)・北海道・中国・四国・九州など、各地域経済産業局でも「海外展開支援ガイド」や「相談窓口」を整備しています。
日本商工会議所
また、日本商工会議所(JCCI)では、海外進出を支援する全国の商工会議所・関連機関の情報を提供しています。
国や自治体などと連携した海外展開支援や、セミナー・相談会などの情報を探すこともできます。

ミラサポplus【中小企業庁】
中小企業庁の「ミラサポplus」では、海外進出に限らず、中小企業向けの補助金や支援制度などを調べることができます。
海外展開だけを目的としたサイトではありませんが、自社が利用できる支援制度を幅広く探したい下記のような場合に便利です。
- とりあえず支援制度全体を俯瞰したい
- 地方と中央の両方の支援情報を確認したい
- 補助金・相談窓口・専門家支援などを幅広く探したい

また、中小企業の海外展開を支援する制度は、これまでにもさまざまな形で実施されてきました。
現在は終了しているものもありますが、長く利用されてきた代表的な支援事業として、次のようなものがあります。
JAPANブランド育成支援事業【中小企業庁】
日本企業の海外展開を後押ししてきた「JAPANブランド育成支援事業」は、2004年から2022年まで続いた長寿支援策で、海外展開における知名度アップや現地プロモーション支援で多くの成果を残してきました。
2023年度以降は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」の中にある「グローバル市場開拓枠(JAPANブランド類型)」へと統合され、支援内容は引き継がれています。

デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業【中小企業庁】
過去には、Webサイト、越境EC、SNSなどのデジタルツールを活用し、中小企業の海外需要獲得を支援する「デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業」も実施されました。
海外向けのデジタルマーケティングや販路開拓などについて、支援パートナーとともに取り組む事業で、海外展開にデジタルを活用する企業を支援する制度の一つでした。
現時点では、中小企業庁のデジタルツール等を活用した海外需要拡大事業の支援パートナー検索ページから、JAPANブランド類型の支援を担う民間支援事業者を検索できます。
この事業はすでに終了していますが、海外展開に利用できる支援策は年度によって変わります。過去に利用したかった制度が終了している場合も、類似する新しい支援策がないか、経済産業局や中小企業庁などの最新情報を確認してみましょう。


行政の支援機関を活用することで、海外進出の初期段階に必要な情報は効率よく収集できます。
ただし、実際に海外展開を進める際には、どの進出方法を選ぶかによって難易度やリスクは大きく変わります。
進出形態ごとの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→海外ビジネスの難易度とリスクを徹底解説|進出パターン別に比較【マトリックス図】
海外進出の相談先に迷ったら、まず自社の課題を整理する
海外進出について相談できる公的機関や支援制度は数多くあります。
市場情報、輸出制度、補助金、資金調達、専門家相談など、必要な支援が明確であれば、その分野に強い相談先を選ぶことができます。
一方で、
- 海外進出を考えているが、何から始めるべきか分からない
- すでに海外展開しているが、思うように進んでいない
- 展示会、代理店、Webなど、次に何をすべきか迷っている
- そもそも今の課題を誰に相談すればよいのか分からない
という場合は、相談先を探す前に、現在の海外事業を一度整理してみることも必要です。
パコロアでは、特定の海外進出方法を最初からおすすめするのではなく、事業全体を俯瞰し、何がボトルネックになっているのかを確認したうえで、次に取り組むべきことを整理しています。
その結果、公的支援機関や他の専門家へ相談した方がよい課題が見つかることもあります。
「どこに相談するか」の前に、「いま何を解決する必要があるのか」を整理したい場合は、海外進出チェックまたは無料壁打ち相談をご利用ください。
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