海外進出の相談はまずは行政機関に
海外進出を検討し始めたばかりの企業にとって、「まずどこに相談すればいいのか?」は非常に大きな悩みです。
特に中小企業の場合、海外ビジネスに関する情報やリソースが限られていることも多く、最初の一歩が踏み出しにくいのが現実です。
実際に行われた中小企業向けのアンケート調査によると、企業が最初に相談する先としては主に以下の4つの機関・関係者が挙げられています。

- 行政機関や地方自治体
- 金融機関(政府系・信用金庫など)
- 取引先や同業他社(国内外)
- 海外進出コンサルタントや税理士などの専門家
このうち特に【1. 行政機関・自治体】と【2. 金融機関の一部】では、中小企業向けに無料で利用できる「海外進出相談窓口」を用意しています。
また【4. 専門家】でも初回相談無料のケースが見られますが、民間サービスである以上、継続利用には費用が発生することが一般的です。
一方、公的機関の相談窓口では、企業のニーズに応じて専門家・アドバイザーがアサインされる仕組みが整っており、初期段階でのリスクを抑えながら質の高いアドバイスを受けられるのが大きなメリットです。
登録されているアドバイザーの専門性も幅広く、
- 海外駐在や現地法人設立の実務経験者
- メーカー・商社・IT・流通出身の実務家
- 中小企業診断士、弁護士、税理士などの士業系専門家
など、豊富な実績をもとに、実務に即したアドバイスを提供してくれます。
「まだ何を聞いていいか分からない」状態でも対応可能なのが、こうした公的支援機関の頼もしいところです。
海外進出の支援は「複数比較」が成功のカギ
行政や自治体の具体的な相談窓口については後述しますが、海外進出の検討段階では、1つの機関だけに頼るのではなく、複数の支援先を比較することが非常に重要です。
その理由は、大きく3つあります。
1. 情報に「大差」はなくても、「小さな差」は無数にある
最近では、基本的な情報であればインターネットでも入手できるため、どこで相談しても似たような情報提供を受けられることが増えてきました。
しかし、アドバイザーのビジネス経験・知見・価値観・発想の柔軟性には大きなばらつきがあります。
たとえば、同じ商品を同じ国で展開する場合でも、
- 販路開拓の方法
- 現地企業との連携のあり方
- 投資判断の可能性
これらの助言は、担当者によって異なることも珍しくありません。
2. 最初の相談先で、その後の道筋が大きく変わる
実際に企業支援の現場では、「最初からこちらに相談していればよかった」という声をよく聞きます。
たとえば、
- 「別の支援機関では方向性が違っていてピンと来なかった」
- 「後になってようやく、なぜ海外展開がうまくいかなかったか理解できた」
といったケースもあります。
これは逆に言えば、「別の視点」に触れたことで新たな可能性に気づけたという前向きなストーリーです。
とくに無料で相談できる公的支援では、複数の機関を比較しながら進めることが可能です。
早い段階で複数の意見に触れておくことで、自社に合う・合わない助言を見極める力も育っていきます。
これは、海外進出という“正解が1つではない世界”において、タフさを鍛える良いトレーニングにもなるのです。
3. サポートの「範囲」と「深さ」は機関ごとにまったく違う
同じ「行政の無料支援」といっても、実は内容はかなり多様です。
- 現地出張に同行してくれる
- 自社に訪問して毎月アドバイスしてくれる
- 市場調査費用を一部補助してくれる
- 基本は机上のアドバイスのみ(申請で深堀対応)
など、サポートの深さ・関与度・タイミングは機関によってバラバラ。
中には、「えっ、そんな支援があったの!?」と驚かれる“お宝サービス”も存在します。
だからこそ、
- 気になる支援メニューがあれば、まずは電話やメールで問い合わせ
- 海外展開関連のセミナーやイベントにも積極参加
こうした“自ら動く姿勢”が、最終的には大きなチャンスをつかむきっかけになります。
次章では、具体的にどの行政機関・公的機関で支援が受けられるのかをご紹介します。
海外進出の支援を受けるときの3つのポイント
行政や自治体、金融機関による海外進出支援の多くは無料です。
ただしその内容は、「アドバイスの提供が中心」であり、実際の営業代行や販路開拓を代行してくれるものではありません。
とはいえ、行政から「支援しやすい企業」と見なされることで、
- 海外ネットワークとの接点が得られやすくなったり
- 実務面でのヒントを得やすくなったりするなど
海外展開がスムーズに進むためのチャンスを広げることができます。
支援しやすい企業に見られる3つの特徴
- これまでの経緯が相談申込書にしっかり書かれている
- 社内体制や予算に関して一定の理解と準備がある
- 経営課題に対して、経営者自身に「解決する意欲」がある
ここからは、行政支援をより効果的に受けるための具体的なコツを紹介します。
1 相談申込書は“空欄ナシ”で挑もう!
海外進出の支援相談では、申込書にどれだけ情報を書けるかが勝負です。
支援側(アドバイザーや専門家)は、
- 記載された内容をもとに事前調査を行い
- 助言内容を組み立てて
- 当日の相談に臨みます
そのため、当日の相談内容が申込書と大きくズレてしまうと、準備した内容が無駄になり、相談の質が下がってしまいます。
追記しておくと効果的な3点
- 今、何に困っていて、いつ・なぜその課題が生じたか
- 解決のために何をしたか/何もしなかったか。その結果どうなったか
- 今までに海外進出のために取り組んだこと(or 取り組めなかった理由)
もし「完全にゼロからのスタート」であれば、正直にそう書くことが大切です。
余白だらけ”の申込書より、情報が詰まった申込書の方がアドバイザーから引き出せる情報の質も、段違いに良くなります!
2 社内体制や予算について、正直に・具体的に話す
海外展開には時間もコストもかかります。
たとえば…
これらは、いずれも“実費の先行投資”が必要になる場面です。
「補助金だけでやりたい」
「費用ゼロで進めたい」
といった希望は現実的ではなく、支援側も具体的な助言がしづらくなります。
アドバイザーへのおすすめ質問
「自社が海外展開をする場合、どのような社内体制・予算が必要ですか?」
→ この質問をきっかけに、本当に実現可能な進出プランの輪郭が見えてきます。
3 海外進出で「今の経営課題」が解決しそうか、確認する
海外進出は「目的」ではなく、「手段」です。
売上拡大、人材確保、新規事業構築、BCP対策…
本来の目的=経営課題の解決が見えていなければ、海外展開はうまくいきません。
アドバイザーへのおすすめ質問
「海外進出によって、うちの課題は解決に近づくでしょうか?」
→ この質問をきっかけに、自社の現状を客観視し、進出の方向性に対して自信が持てるようになります。
「海外展開の相談なのに、経営相談までしていいのか?」と思われるかもしれません。
しかし、中小企業基盤整備機構など、国内と海外の両方を同時に支援してくれる行政機関も実際にあります。
限られたリソースを“部分最適”ではなく“全体最適”で活かすためにも、率直にその希望を伝えることがカギです。
海外進出の支援が受けられる行政・自治体・金融機関 7選
日本企業が利用できる海外進出の支援メニューは、欧米、ドイツ、東南アジアなどの王道エリアにとどまらず、中東・アフリカ・中南米といった新興国地域にも拡がっています。
対象国の一例:
タイ、ベトナム、中国、韓国、台湾、香港、マレーシア、シンガポール、フィリピン
インド、インドネシア、カンボジア、ミャンマー、モンゴル、ラオス、他多数
支援の内容も、食品輸出からエネルギー開発まで多岐にわたり、業種を問わず相談が可能です。
では、どんな行政機関・団体がどのような窓口を持っているのか、具体的に見ていきましょう。
日本貿易振興機構(ジェトロ)【独立行政法人】
ジェトロ(JETRO)は、経済産業省所管のもと、日本企業の貿易促進と海外展開を支援する中核的な行政機関です。
国内47カ所、海外54か国に74拠点という広範なネットワークを有し、国際ビジネスの最前線に強みを持っています。

提供される主な支援内容:
- 国別・業界別の最新レポートやマーケット調査
- 海外バイヤーとのマッチングイベント、商談会
- 越境EC、国際物流、通関などの実務支援
- 海外法規制・現地事情に関するセミナー・相談
さらに、オンラインで貿易実務を学べるe-learningや、ビジネスに役立つ海外情報の発信にも定評があります。
ジェトロが向いている企業とは?
- すでに海外展開の意思決定を済ませた中小企業
- 自社の強みやUSP(独自性)を明確に把握している企業
- 展示会や商談、現地法人設立など、本格的な販路開拓を進めたい企業
「もう少しで海外進出が動き出しそう」「すでに担当者はいる」という段階で、実行支援フェーズにいる企業にとっては、最も頼もしい相談先のひとつです。
中小企業基盤整備機構(中小機構)【独立行政法人】
中小機構(SMRJ)は、経済産業省の所管のもと、全国の中小企業の成長と発展を支援する中核的な機関です。
国内11の地域本部に加え、7つの中小企業大学校、そして国内外に約400名の専門アドバイザーを擁する体制で、中小企業の多様なニーズに応えています。

海外展開の支援においては、各国の優良企業のトップを日本に招いてのビジネスマッチングイベントや、海外向けホームページ制作支援、EC戦略構築などの支援メニューが充実。
特に近年では、リアルとデジタルを融合した「ハイブリッド支援」が強化されています。
中小機構の支援が特に向いている企業とは?
- 海外展開を含めた経営全体の見直しを考えている企業
- 自社の「強み」をどう海外で活かすかがまだ不明確な企業
- オンライン/オフラインの両面でサポートを求めている企業
実際の相談では、オンライン申請後、早ければ1週間以内に90分前後の無料個別相談が実施されます(混雑時は3〜4週間かかることも)。
相談は継続的にも受け付けており、必要に応じて何度でも対応可能。
海外市場調査から事業計画作成、現地法人設立、人材育成、法務対応まで、一貫したサポートを提供してくれるのが中小機構の強みです。
地方自治体(商工会議所・産業局)【各地域の行政・公的団体】
地方自治体や商工会議所も、地域に根ざした中小企業の海外展開支援を行う重要なハブ機関です。
都道府県名や市名に「海外展開」「公益財団法人」などを組み合わせて検索すれば、各自治体の支援機関が見つかります。
例えば大阪府では「大阪産業局」が有名で、地元中小企業の販路開拓やグローバル展開支援を多角的に行っています。

また、市町村レベルでも独自の海外展開プログラムを用意している自治体があり、地場産業に合った実践的な支援が受けられる点も大きな特長です。
さらに、全国に515か所を構える商工会議所も、国際ビジネス支援に積極的です。
たとえば大阪商工会議所では、国内外の展示会出展支援や、専門家による海外進出相談、現地バイヤーとのマッチングなど、さまざまなサービスを展開しています。

商工会議所がおすすめな企業:
- 地元の強みや地域資源を活かして海外展開したい
- 地域密着型のサポートが欲しい
- 相談したい内容が多岐にわたり、まずは身近な相談窓口に頼りたい
地元自治体の担当者は、その地域の産業や中小企業の実情を熟知しているため、「うちの規模でも大丈夫?」という不安にも親身に応えてくれるケースが多く、初めての海外展開には心強い味方になります。
東京都中小企業振興公社【地方独立行政法人】
東京都内の中小企業に対して、海外展開をはじめとした多角的な支援を行っているのが「東京都中小企業振興公社」です。
海外展開支援課という専用の相談窓口を設けており、輸出入・販路開拓・現地規制など多様なテーマに対応したアドバイザーによる支援が受けられます。

提供される主な支援内容:
- 輸出入、販路拡大、現地法規などテーマ別アドバイザーが在籍
- 海外見本市・展示会の出展支援や、商談マッチング支援を実施
- 海外展開支援センターでは事前予約制で無料相談が可能
東京都中小企業振興公社がおすすめな企業:
- 東京都内に事業拠点を持つ中小企業
- 海外展開の第一歩として展示会や商談会への参加を検討している企業
- 自社の強みをどう海外展開に活かすかプロと一緒に整理したい企業
金融機関(信用金庫・政府系金融機関)【民間/政府系金融機関】
金融機関も、海外展開を考える中小企業の強い味方です。
都市銀行、地方銀行、信用金庫、そして日本政策金融公庫などの政府系金融機関が、資金面・マッチング面の両面からサポートを行っています。
たとえば、大阪信用金庫では、海外バイヤーとのマッチングイベントやオンライン商談会を定期的に開催し、地元企業の海外販路開拓を後押ししています。

また、日本政策金融公庫(通称「日本公庫」)では、海外進出のための事業資金に関する融資制度をはじめ、各種支援機関と連携した展開支援を行っています。
「ゼロイチ・海外展開支援サイト」では、海外進出に取り組む中小企業や農林水産業者向けに、補助金・制度・支援機関が一覧できる便利なプラットフォームが用意されています。

日本政策金融公庫がおすすめな企業:
- 海外進出に必要な資金調達の相談をしたい
- 現地販路やバイヤーと実際につながる機会が欲しい
- 自社の取り組みにマッチした補助金や融資制度を知りたい
海外事業は多くの企業にとって初期投資がかかるもの。だからこそ、地域金融機関や政府系金融機関との連携は大きな武器になります。

海外進出の支援施策サイト(公的機関のプラットフォーム)【中央省庁・支援連携サイト】
海外進出を考える企業にとって、「どこに」「何を」「どうやって」相談すればよいか分からない——。
そんな時に便利なのが、各行政機関が公開している支援施策まとめサイトです。
近畿経済産業局
たとえば、近畿経済産業局が毎年発行する「海外展開支援施策ナビ」では、関西エリアの行政・自治体・公的支援の情報が160項目以上も集約されています。
PDF形式でのダウンロードも可能で、必要な支援情報をピンポイントで探しやすいのが特長です。

なお、関東・東北・中部(愛知)・北海道・中国・四国・九州など、各地域経済産業局でも「海外展開支援ガイド」や「相談窓口」を整備しています。
日本商工会議所
また、日本商工会議所(JCCI)では、海外進出を支援する全国の商工会議所・関連機関の情報を網羅したポータルを提供中。
国や自治体が連携するプロジェクトや専門相談会も掲載されており、検索性も抜群です。

ミラサポplus【中小企業庁】
さらには、中小企業庁の「ミラサポplus」では、海外進出に限らず、補助金・支援制度の一覧を企業の課題別で検索可能。
民間企業による支援パートナー情報も掲載されており、より多角的な情報収集に役立ちます。

こんなときに便利!
- とりあえず支援制度全体を俯瞰したい
- 地方と中央の両方の支援情報を一覧で確認したい
- 補助金・相談先・専門家など網羅的に知りたい
最後は、海外進出をサポートする民間の支援事業者を中小企業庁が紹介しているページです。
JAPANブランド育成支援事業【中小企業庁】
日本企業の海外展開を後押ししてきた「JAPANブランド育成支援事業」は、2004年から2022年まで続いた長寿支援策で、海外展開における知名度アップや現地プロモーション支援で多くの成果を残してきました。
2023年度以降は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」の中にある「グローバル市場開拓枠(JAPANブランド類型)」へと統合され、支援内容は引き継がれています。

デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業【中小企業庁】
現時点では、中小企業庁のデジタルツール等を活用した海外需要拡大事業の支援パートナー検索ページから、JAPANブランド類型の支援を担う民間支援事業者を検索できます。


海外進出の実務支援なら、株式会社パコロアにお任せください!
自社に合った支援機関を選び、上手に活用していくこと。
それは、もうすでに海外進出の一歩を踏み出している状態です。
どの支援機関に、どのタイミングで、何を相談するかによって、その後の海外展開にかかる時間・コスト・成果の質が大きく変わってきます。
たとえば、こんな方はまず公的な無料相談から始めるのがおすすめです:
- 「もし海外で売れるなら売ってみたい」
- 「進出するかどうか、まだ決めかねている」
- 「なるべくリスクを抑え、コストはかけたくない」
行政の無料相談でも、企業フェーズに応じた中立的なアドバイスを受けることができ、基本的な知識も身につきます。
その中で、徐々に「海外に行くか・行かないか」「今やるか・あとにするか」といった判断軸も明確になっていきます。
一方で──
- 「来年には海外進出したいが、何から手をつけるべきか迷っている」
- 「すでに色々試したが、成果に結びつかず悩んでいる」
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