日本では人口減少が続き、多くの企業にとって「国内市場だけで今後も成長できるのか」を考える必要性が高まっています。
そこで選択肢の一つになるのが海外進出です。
しかし、人口が増えている国へ行けば、日本で減った売上を海外で補えるわけではありません。むしろ、国内市場が縮小するからこそ、限られた人材や資金を海外に振り向けるべきかは慎重に判断する必要があります。
本記事では、人口減少時代に中小企業が海外進出をどう位置づけるべきか、「海外に出るべき企業」と「まだ国内でやるべきことがある企業」の違いも含めて整理します。
人口減少で「国内だけ」の前提はどう変わるのか
人口減少というと、「国内の顧客が減る」という話に目が向きがちです。
しかし企業経営への影響は、それだけではありません。
人口が減れば、
- 自社の商品・サービスを買う顧客が減る
- 取引先や販売先そのものが減る
- 採用できる人材が減る
- 事業承継できない企業が増える
- 地域によっては商圏そのものが縮小する
など、企業を取り巻く事業環境全体が少しずつ変化していきます。
ここで重要なのは、国内市場がなくなるわけではないということです。
人口が減っても成長する市場はありますし、国内でシェアを伸ばせる企業もあります。競合企業の撤退や廃業によって、むしろ事業機会が広がる場合もあるでしょう。
一方で、これまでと同じ顧客、同じ地域、同じ販売方法だけを前提に事業計画を立て続けることは、少しずつ難しくなります。
つまり人口減少時代に必要なのは、単純に「国内か海外か」を選ぶことではありません。
これまで国内市場を前提に組み立ててきた事業を、今後もそのまま続けられるのか。
まずはそこを確認し、必要であれば国内の新市場、新しい顧客層、そして海外市場まで、成長機会を探す範囲を広げていくことが重要です。
人口減少=海外進出、ではない
国内市場の縮小を考えると、「これからは海外市場を開拓しなければ」と考えたくなるかもしれません。
しかし、国内市場が縮小することと、自社が海外で成長できることは別の話です。
海外に出れば、新しい顧客に出会える可能性がある一方で、
- 海外で自社の商品を必要とする顧客がいるのか
- 現地価格でも十分な利益を確保できるのか
- 輸送、関税、認証などを含めても事業が成立するのか
- 海外営業や顧客対応を継続できる人材がいるのか
- 国内事業と並行して海外事業へ時間と資金を投じられるのか
といった新しい条件が加わります。
特に注意したいのは、国内事業が苦しくなってから、その穴を埋めるために海外進出を始めることです。
海外では、顧客を探し、取引条件を整え、実際に売上が継続するまでに時間がかかります。その間も調査、営業、渡航、Webサイト、展示会、認証など、さまざまな費用が発生します。
そのため海外進出は、国内市場が縮小した後の「逃げ道」というより、国内事業にまだ体力があるうちに検討しておく将来の選択肢と考える方が現実的です。
そして検討した結果、「今は海外に出ない」という判断になっても問題ありません。
重要なのは、人口減少という大きな変化を理由に海外進出を決めることではなく、自社にとって海外市場が本当に次の成長機会になり得るのかを、国内事業と比較しながら判断することです。
海外を選択肢に入れるべき企業・まだ入れなくてよい企業
では、どのような企業が海外進出を検討すべきなのでしょうか。
売上規模や社員数だけで決まるものではありません。
むしろ重要なのは、国内事業の現在地と、これから成長する余地をどう見ているかです。
例えば、
- 国内の既存市場だけでは、中長期的な成長が難しいと考えている
- 国内では一定の顧客や実績があり、次の市場を探している
- 海外から問い合わせや引き合いがすでに発生している
- 自社の商品・技術が、海外でも必要とされる可能性を感じている
- 競合企業や取引先が海外市場へ動き始めている
といった企業は、すぐに進出を決める必要はなくても、海外市場について調べ始める意味があります。
一方で、国内事業そのものに大きな課題があり、
- 商品やサービスの強みがまだ整理できていない
- 国内でも顧客が定まっていない
- 利益を確保できる事業モデルになっていない
- 新しい事業に人や時間を割く余裕がほとんどない
という状態なら、海外進出を急ぐより、まず国内事業を整える方が優先される場合もあります。
ただし、「海外へ出られる状態になるまで、海外について何もしない」という意味ではありません。
海外市場を調べてみた結果、国内では気づかなかった用途や顧客、競合、自社の強みが見えてくることもあります。
そのため、海外進出を決めることと、海外市場について調べ始めることは分けて考えてよいのです。
人口減少が進んでから慌てて進出先を探すのではなく、国内事業に余力がある段階から海外市場を知り、自社にとって本当に選択肢になり得るのかを確認しておく。
それが、人口減少時代に海外進出を考える最初の一歩です。
「人口が増えている国」なら売れるわけではない
日本の人口減少と海外市場を比較するとき、よく注目されるのが各国の人口増加率です。
「日本は人口が減っている。一方、この国は人口が増えている。だから市場も成長するだろう」
一見すると、もっともらしい考え方です。
しかし、人口が増えていることと、自社の商品・サービスが売れることは同じではありません。
例えば人口が大きく増えている国でも、
- 自社の商品を購入できる所得層がまだ小さい
- 必要とされる機能や品質と、自社商品の特徴が合わない
- 現地の販売価格では十分な利益を確保できない
- 流通網が未整備で、顧客まで商品を届けにくい
- 規制や認証、輸入条件が参入障壁になる
- すでに強い現地企業や海外企業が市場を押さえている
といったことは十分にあります。
反対に、人口がそれほど増えていない国でも、自社が狙う特定の業界や顧客層だけを見ると、大きな事業機会が存在することもあります。
つまり、海外進出で見るべきなのは、その国全体の人口が増えているかではありません。
自社が取引できる市場が、その国のどこに存在しているのか。
さらに、
その市場へ自社が参入し、競争し、利益を出しながら取引を続けられるのか。
ここまで確認する必要があります。
人口、GDP、経済成長率などのマクロデータは、進出候補国を探す入口としては役立ちます。
しかし、それだけで進出先を決めることはできません。
「成長している国を探す」のではなく、自社が成長できる市場を探す。
人口減少時代の海外進出では、この違いを忘れないことが重要です。
海外進出の可能性は「市場・自社・実行条件」の3つで考える
海外進出を検討するとき、市場規模や経済成長率だけを調べても、自社が進出すべきかどうかは判断できません。
確認したいのは、大きく分けて次の3つです。
1.その市場に、自社の顧客がいるか
まず確認するのは、自社の商品・サービスを必要とする顧客が本当に存在するかです。
単に「市場規模が大きい」「需要が伸びている」だけではなく、
- どのような顧客が買っているのか
- 何を理由に商品を選んでいるのか
- どのくらいの価格なら購入するのか
- 競合にはどのような企業がいるのか
- どのような販路で購入しているのか
まで見ていく必要があります。
ここで初めて、「その国に市場がある」から、「自社が狙える市場がある」へ解像度が上がります。
2.その市場で、自社が選ばれる理由があるか
顧客が存在していても、すでに十分な商品やサービスが提供されていれば、後から参入する自社が選ばれるとは限りません。
日本で評価されている品質、技術、実績も、そのまま海外で競争力になるとは限らないため、
現地の顧客が、既存の商品ではなく自社を選ぶ理由があるか
を確認します。
ここで十分な理由が見つからなければ、商品そのものではなく、用途、顧客層、価格、提供方法などを変えることで可能性が生まれる場合もあります。
3.実際に売り続けられるか
そして最後に確認するのが、事業として継続できるかです。
海外では、売るまでだけでなく、売った後も考える必要があります。
輸送、決済、契約、規制対応、問い合わせ、納品、アフターサービスなど、取引を続けるための実務が発生します。
市場があり、自社が選ばれる可能性があっても、それを継続して運営できなければ海外事業にはなりません。
だからこそ海外進出では、
「売れそうか」だけではなく、「自社がそこで売り続けられるか」まで確認する。
この3つを一緒に見ることで、海外市場が自社にとって本当に次の成長機会になり得るのかを判断しやすくなります。
国内市場が縮む前に、今から確認しておきたいこと
海外進出は、実際に進出すると決めてから始まるものではありません。
むしろ、国内事業にまだ余力があるうちに、
- 自社の商品・サービスは、海外では誰に必要とされそうか
- 日本で評価されている強みは、海外でも価値になるのか
- すでに海外から問い合わせやアクセスは発生していないか
- 競合企業は、どの国でどのように事業を展開しているか
- 海外で販売した場合、どの程度の価格と利益を確保できそうか
といったことを少しずつ確認しておくことが重要です。
この段階では、進出国を決める必要も、海外拠点を作る必要もありません。
展示会を視察する、海外の競合サイトを調べる、既存顧客に海外での需要を聞いてみるなど、小さな情報収集から始めることもできます。
こうした準備を早めに始める意味は、海外進出を急ぐためではありません。
「国内が厳しくなったから海外へ」という、選択肢の少ない状態で重要な経営判断をしなくて済むようにするためです。
調べた結果、海外より国内の別市場を開拓する方がよいと分かるかもしれません。
海外に可能性はあっても、今ではなく3年後の方がよいと判断するかもしれません。
あるいは、想像していたより早く動くべき市場が見つかることもあります。
人口減少そのものを止めることはできません。
しかし、市場環境が変わる前から選択肢を増やしておくことはできます。
海外進出を考える最初の目的は、「海外へ出ること」ではなく、将来の経営判断に使える選択肢を増やしておくことなのです。
海外進出するかどうかを決めるところから始める
人口減少が続くからといって、すべての中小企業が海外進出すべきとは限りません。
国内でまだ成長できる企業もあれば、海外市場に早めに目を向けた方がよい企業もあります。
大切なのは、「海外へ出る」と先に決めることではなく、
- 国内市場で今後どこまで成長できるのか
- 海外に自社が狙える市場はあるのか
- その市場で自社が選ばれる可能性はあるのか
- 利益を確保しながら事業を続けられるのか
- 今、海外事業に人・時間・資金を使うべきなのか
を整理したうえで、海外進出が自社にとって本当に必要な選択肢なのかを判断することです。
海外市場を調べた結果、「今は進出しない」という結論になることもあります。
それも立派な海外進出戦略です。
反対に、国内事業に余力がある今だからこそ、数年かけて準備を始めた方がよいと分かることもあります。
人口減少によって国内市場の環境が変わってから選択肢を探すのではなく、まだ選べるうちに、自社の次の市場について考えておく。
それが、人口減少時代に海外進出を考える意味ではないでしょうか。
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海外進出ありきではなく、自社の現状や国内事業、海外市場の可能性を整理したうえで、次に何を確認すべきかを一緒に考えます。
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