海外の取引がまとまり、「ではinvoiceを送ってください」と言われたとき、手が止まった経験はありませんか。
見積書はなんとか作れたけれど、請求書はこれで合っているのだろうか。
proforma invoiceと言われたが、普通のinvoiceと何が違うのか。
金額は同じはずなのに、書き方に自信が持てない。
こうした不安は、多くの中小企業の海外担当者が一度は経験するものです。
しかし実務の現場では、請求書そのものが問題になることは、実はそれほど多くありません。
トラブルの多くは、「請求書の書き方」ではなく、その前段階である見積書の内容に原因があることがほとんどです。
たとえば、
・前金100%と言われてproforma invoiceを出したが、条件が食い違っていた
・請求金額が見積書と微妙に違い、支払いが止まった
・通貨や支払条件の解釈がずれて、送金トラブルになった
といったケースでは、請求書の作り方よりも、「見積書の段階で何を決めていたか」が結果を左右します。
この記事では、海外取引でよく使われるinvoiceとproforma invoiceの違いを整理しながら、
・なぜ請求書でトラブルが起きるのか
・スムーズに支払いが進む会社の共通点は何か
を実務目線で解説していきます。
読み終えたときには、「請求書は見積書の写し鏡だったのか」と感じていただけるはずです。
海外取引で使う請求書は2種類ある
海外の取引では、「請求書」とひとことで言っても、実務上は2種類の書類が使われます。
- Invoice(インボイス)
- Proforma Invoice(プロフォーマインボイス)
どちらも見た目はよく似ており、記載内容もほとんど同じですが、使われるタイミングと役割が異なります。
ここを理解しておかないと、「言われた通りに書類を出したのに支払いが進まない」という事態にもなりかねません。
Invoice(正式な請求書)
Invoiceは、取引が成立した後に発行する正式な請求書です。
一般的には、次のようなタイミングで発行されます。
- 商品を出荷した後
- サービスを提供した後
- 契約で定めたタイミング
このInvoiceは、
「この内容で取引が完了しましたので、代金をお支払いください」
という意味を持つ、最終的な請求書です。
そのため、Invoiceに記載されている次の項目は、原則として見積書や契約書の内容と一致している必要があります。
- 商品内容
- 数量
- 単価
- 合計金額
- 通貨
- 支払条件
もしここに差異があると、相手先の経理部門で支払いが止まる原因になります。
Proforma Invoice(プロフォーマインボイス)
一方のProforma Invoiceは、見た目は請求書ですが、役割は少し異なります。
これは主に、次のようなケースで使われます。
- 前金100%の取引
- 出荷前に支払いが必要な場合
- 輸入許可や送金手続きのための書類が必要な場合
つまり、
「この条件で取引を行う予定なので、まずはこの金額をお支払いください」
という、支払いのための事前提示書類です。
実務の現場では、
Please send us a proforma invoice.
と言われたら、
「この内容で前払いしますので、支払い用の書類をください」
という意味になります。
見た目は同じでも、使われるタイミングが違う
この2つの書類の違いを整理すると、次のようになります。
- Invoice
取引成立後に発行する正式な請求書 - Proforma Invoice
支払い前に発行する、事前提示用の請求書
ただし実務では、両者のフォーマットはほぼ同じで、記載項目も大きくは変わりません。
- 会社情報
- 商品内容
- 金額
- 支払条件
- 銀行口座情報
そのため海外担当者の立場からすると、
「結局、何が違うのか分からない」
「ただの名前違いでは?」
と感じることも多いはずです。
実はこの感覚、完全に間違っているわけではありません。
次の章では、Proforma Invoiceが「請求書という名の見積書」と言われる理由を、実務の流れに沿って整理していきます。
(海外向けの請求書の基本フォーマットを確認したい場合は、下記のテンプレートも参考にしてみてください。)
→ 「送り状兼請求書(Invoice)【英語】|海外進出で必要になる書類」
Proforma Invoiceは「請求書という名の見積書」
海外取引で「Please send us a proforma invoice.」と言われたとき、多くの担当者が戸惑います。
「請求書なのか、見積書なのか、どっちなのだろう」
「もう取引は成立しているのか、それともまだなのか」
この混乱は自然なものです。
なぜなら、Proforma Invoiceは見た目は請求書でも、役割は見積書に近い書類だからです。
Proforma Invoiceが使われる典型的な場面
Proforma Invoiceは、主に「前金支払い」が必要な取引で使われます。
たとえば、次のようなケースです。
- 初めての取引で、前金100%を条件にしている
- 小ロットの輸出で、先に支払いを受けてから出荷する
- 相手国の送金手続きに、金額入りの書類が必要
- 輸入許可申請のために、事前のインボイスが求められる
- 信用状(L/C)取引で、銀行に提出する書類としてProforma Invoiceが求められる
このような場合、正式なInvoiceを発行する前に、「この条件で支払ってください」という書類としてProforma Invoiceを発行します。
実務の流れで見るProforma Invoiceの位置づけ
海外取引の典型的な流れを整理すると、次のようになります。
- 見積書を送る
- 条件交渉を行う
- 条件が合意される
- Proforma Invoiceを発行する
- 前金が入金される
- 商品を出荷する
- 最終的なInvoiceを発行する
この流れを見ると分かるように、Proforma Invoiceは見積書と正式なInvoiceの間にある書類です。
役割としては、
「見積書の内容が確定したので、この内容で支払ってください」
という、確定版の見積書に近い位置づけになります。
なぜ「請求書という名の見積書」と言えるのか
Proforma Invoiceに書かれている内容は、基本的に次の項目です。
- 商品内容
- 数量
- 単価
- 合計金額
- 通貨
- 支払条件
- 銀行口座情報
これらは、見積書に記載されている内容とほぼ同じです。
つまり、Proforma Invoiceは
「見積書の内容をそのまま確定させ、支払い用の書類にしたもの」
と考えることができます。
そのため、Proforma Invoiceを作る段階で
- 金額が見積書と違う
- 通貨が変わっている
- 支払条件が曖昧
- 送料の扱いが不明確
といった状態になっていると、そのまま支払いトラブルにつながってしまいます。
QuotationとProforma Invoiceは何が違うのか
ここでよく出てくる疑問が、
「見積書(Quotation)とProforma Invoiceは、何が違うのか」
という点です。
実務上の位置づけを整理すると、次のようになります。
- Quotation
条件提示の段階で出す見積書
価格や条件を提示し、交渉のベースになる書類 - Proforma Invoice
条件合意後に出す、支払い用の書類
見積書の内容を確定させたもの
つまり、
- Quotationは「この条件でどうですか」という提案書
- Proforma Invoiceは「この条件で確定したので支払ってください」という書類
という違いがあります。
ただし実務上は、記載内容はほとんど同じで、
- 商品内容
- 数量
- 単価
- 合計金額
- 通貨
- 支払条件
などは共通しています。
そのため、Proforma Invoiceは「見積書をそのまま支払い用の書類にしたもの」と理解すると分かりやすいでしょう。
前金100%の取引では、Proformaが実質の最終書類になる
特に中小企業の初期の海外取引では、
- 前金100%
- 出荷前全額支払い
という条件になることがままあります。
この場合、実務上は
- Proforma Invoiceを発行
- 相手が送金
- 入金確認後に出荷
という流れになるため、Proforma Invoiceが実質的な最終書類になります。
つまり、
「Proformaを正しく作れたかどうか」
が、そのまま
「この取引がスムーズに進むかどうか」
を左右するのです。
そしてここで重要なのが、Proformaの出来栄えは、ほぼそのまま見積書の出来栄えに依存しているという点です。
次の章では、実際に請求書の段階で起きやすいトラブルを見ながら、その原因を整理していきます。
なぜ請求書でトラブルが起きるのか
海外取引では、「請求書を出したのに支払いが進まない」「金額の認識が合わない」といったトラブルが起きることがあります。
このとき、多くの企業は「請求書の書き方が悪かったのではないか」と考えがちです。
しかし実務の現場では、問題の原因が請求書そのものにあるケースはそれほど多くありません。
トラブルの多くは、見積書や条件整理の段階での認識のズレから生まれています。
ここでは、実際によくある3つの事例を見てみましょう。
事例1:見積書と請求書で金額が微妙に違う
よくあるのが、次のようなケースです。
- 見積書では「送料別」と書いていた
- 請求書では送料を合算した総額を記載した
- 相手側は「見積書の金額と違う」と判断し、支払いを保留
このように、数百ドル程度の差でも、海外企業の経理部門は簡単には支払いを進めてくれません。
特に海外では、
- 見積書
- 発注書
- 請求書
の内容が完全に一致していることが前提になります。
少しでも違いがあると、
「社内承認が通らない」
「契約条件と一致していない」
という理由で支払いが止まってしまいます。
事例2:通貨や支払条件の認識がずれていた
次に多いのが、通貨や支払条件に関するトラブルです。
たとえば、次のようなケースです。
- 見積書ではUSDで提示していた
- 請求書では円建てに変更していた
- 為替レートの認識が食い違った
あるいは、
- 見積書では「前金100%」と書いたつもりだった
- 相手は「出荷後支払い」と解釈していた
- Proformaを送っても送金されない
といった行き違いもよく起こります。
このような問題は、請求書のフォーマットではなく、見積書の段階で条件が明確になっていなかったことが原因です。
事例3:銀行情報や条件の不一致で送金が止まる
三つ目は、送金手続きの段階で起きるトラブルです。
たとえば、
- 見積書には銀行情報を記載していなかった
- Proformaで初めて銀行口座を提示した
- 相手側の社内審査で追加確認が発生した
あるいは、
- 見積書では支払期限を明記していなかった
- 請求書で急に「7日以内支払い」と書いた
- 条件が違うとして送金が保留になった
このようなケースでは、相手側の担当者は困ってしまいます。
- 見積書と条件が違う
- 社内承認を取り直さないといけない
- 上司や経理に説明が必要
となり、結果として支払いが遅れてしまいます。
トラブルの多くは「請求書の問題」ではない
ここまでの事例を見ると分かるように、トラブルの原因は、請求書のデザインや英語表現ではありません。
問題の多くは、次のような点にあります。
- 見積書と請求書の金額が一致していない
- 通貨や支払条件が曖昧だった
- 銀行情報や支払期限が事前に共有されていなかった
つまり、請求書の段階で問題が起きているように見えても、
実際には見積書の段階での設計不足が原因になっていることがほとんどなのです。
次の章では、請求書がスムーズに通る会社にはどのような共通点があるのかを見ていきます。
請求書がスムーズに通る会社の共通点
ここまで見てきたように、請求書の段階で起きるトラブルの多くは、見積書や条件整理の段階に原因があります。
逆に言えば、請求書がスムーズに通る会社には、いくつかの共通点があります。
それは、請求書の作り方が上手いというよりも、見積書の段階で実務条件が整理されているという点です。
共通点1:見積書の時点で通貨と総額が確定している
請求書で揉める会社の多くは、
- 通貨をあとから変更している
- 送料や手数料を後出ししている
- 合計金額の考え方が見積書と違う
といった状況になっています。
一方、請求書がスムーズに通る会社は、見積書の段階で次の点がはっきりしています。
- 請求通貨(USD、EUR、JPYなど)
- 商品代金と送料の扱い
- 最終的な支払総額
そのため、請求書は単に「見積書の内容を写しただけの書類」になります。
共通点2:支払条件が明確に書かれている
海外取引では、支払条件が曖昧なまま進むと、請求書の段階で必ず問題が起きます。
たとえば、
- 前金100%
- 出荷後30日払い
- 信用状(L/C)決済
など、支払いのタイミングや方法はさまざまです。
請求書がスムーズに通る会社は、見積書の段階で次のような情報が明確になっています。
- 支払タイミング(前払い、後払いなど)
- 支払方法(銀行送金、L/Cなど)
- 支払期限
この情報が見積書に明記されていれば、Proforma Invoiceや正式なInvoiceを発行しても、相手側の社内承認が止まることはほとんどありません。
共通点3:銀行情報を最初から共有している
中小企業の海外取引で意外と多いのが、
「銀行口座は、請求書のときに初めて知らせればいい」
というケースです。
しかし海外企業の社内手続きでは、
- 見積書の内容確認
- 社内承認
- 送金手続き
という流れになることが多く、銀行情報が後出しになると、そのたびに承認を取り直す必要が出てきます。
請求書がスムーズに通る会社は、見積書の段階で次の情報を共有しています。
- 銀行名
- 支店名
- 口座番号
- SWIFTコード
- 口座名義
そのため、Proforma Invoiceを受け取った時点で、相手側はすぐに送金手続きに入ることができます。
請求書が「写し鏡」になっている状態
これらの共通点をまとめると、請求書がスムーズに通る会社では、
- 金額
- 通貨
- 支払条件
- 銀行情報
が、すべて見積書の段階で確定しています。
その結果、請求書は
「見積書の内容をそのまま転記しただけの書類」
になり、特別な調整や説明をする必要がありません。
つまり、請求書の出来栄えは、見積書の出来栄えをそのまま映し出した写し鏡なのです。
次の章では、この考え方をもう一歩進めて、なぜ「請求書の完成度は見積書で決まる」と言えるのかを整理していきます。
請求書の完成度は、見積書で決まっている
ここまで、請求書の種類やトラブル事例、スムーズに進む会社の共通点を見てきました。
その流れを振り返ると、ある共通点に気づくはずです。
請求書の段階で起きている問題の多くは、実は請求書そのものではなく、見積書の段階での条件整理に原因があります。
たとえば、
- 金額の考え方が見積書と違っていた
- 通貨の認識がずれていた
- 支払条件が曖昧だった
- 銀行情報を後から共有していた
といったケースでは、請求書は単に「問題が表面化した場所」にすぎません。
本当の原因は、その前の段階にあります。
海外取引の書類は、次のような一本の流れでつながっています。
- 見積書
- 発注書または契約書
- Order Confirmation
- Proforma Invoice
- 最終的なInvoice
この流れの中で、見積書の段階で条件が整理されていれば、その後に作る書類はすべて同じ内容をベースに作ることができます。
結果として、請求書は
「すでに合意した条件を、そのまま書類にしたもの」
になり、特別に悩む場面はほとんどなくなります。
つまり、請求書の完成度は、見積書の段階でどれだけ取引条件を設計できていたかで決まっているのです。
海外取引の見積書設計に迷ったら、パコロアにご相談ください
海外取引では、「請求書をどう書くか」よりも、「見積書の段階で何を決めておくか」の方がはるかに重要です。
通貨、支払条件、送料の扱い、銀行情報などを見積書の段階で整理しておけば、Proforma Invoiceも最終Invoiceも、同じ内容をベースに作ることができます。
逆に、見積書の段階で条件が曖昧なまま進んでしまうと、請求書の段階で認識のズレが表面化し、支払い遅延やトラブルにつながります。
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