インバウンド接客では、流暢な英語を話せなくても対応できる場面は多くあります。
来店時の挨拶や商品案内、会計など、よく使う短い英語フレーズを準備し、翻訳ツールや案内表示を組み合わせれば、基本的な接客は可能です。
一方、外国人のお客様への対応で困る原因は、英語力だけとは限りません。「分からない質問を受けたら誰に確認するか」「どこまで現場で答えるか」といった社内ルールも必要です。
本記事では、インバウンド接客で使える基本の英語フレーズと、英語が得意でなくても外国人のお客様に対応できる会社の準備について紹介します。
インバウンド接客で使える基本の英語フレーズ
インバウンド接客では、長い英文を覚える必要はありません。
来店時の挨拶、商品案内、会計、困ったときなど、よくある場面で使う短いフレーズを準備しておくだけでも対応しやすくなります。
来店時の挨拶
外国人のお客様が来店したら、まずは笑顔で挨拶します。
- Hello.(こんにちは)
- Good morning.(おはようございます)
- Welcome.(ようこそ)
- Please take your time.(ごゆっくりご覧ください)
無理に会話を続ける必要はありません。笑顔や会釈を添えるだけでも、歓迎していることは伝えられます。
商品・サービスを案内するとき
商品や場所を案内するときは、短い表現と指差しやジェスチャーを組み合わせると伝わりやすくなります。
- This is popular.(こちらは人気です)
- You can try this.(こちらをお試しいただけます)
- Please follow me.(こちらへどうぞ)
- It’s over there.(あちらです)
詳しい説明が必要になった場合は、無理に英語だけで対応せず、翻訳ツールなどを使う方法もあります。
会計・支払いのとき
会計は金額や支払い方法の認識違いを避けたい場面です。よく使う表現を決めておくと、スタッフも対応しやすくなります。
- Cash or card?(現金ですか、カードですか)
- We accept credit cards.(クレジットカードをご利用いただけます)
- Please tap here.(こちらにタッチしてください)
- Thank you very much.(ありがとうございました)
金額や利用できる決済方法は、英語で説明するだけでなく、画面や案内表示を見せて確認してもらうと確実です。
分からない・困ったとき
インバウンド接客で特に覚えておきたいのが、すぐに答えられないときの表現です。
- One moment, please.(少々お待ちください)
- Let me check.(確認します)
- Please wait here.(こちらでお待ちください)
- Let me ask my manager.(責任者に確認します)
特に覚えておきたいのは、分からないときに無理に答えず、「確認します」と伝える表現です。
外国人のお客様への接客では、すべてを英語で説明できることより、分からないときにも対応を止めないことが重要です。
英語が話せなくても接客を止めないための準備
英語が得意でなくても、英語以外の方法をあらかじめ準備しておけば対応できる場面は増やせます。
翻訳ツールは「困ったときに使う」のではなく最初から準備する
- 店舗や現場で使用する翻訳ツールを決めておく
- 使用するスマートフォンやタブレットを決めておく
- スタッフが事前に一度使っておく
- 必要なときにすぐ使える場所に端末を置いておく
外国人のお客様を前にしてからアプリを探すのではなく、接客ツールの一つとして最初から準備しておくことがポイントです。
英語で説明しなくても分かるものを増やす
- 商品名や価格
- 支払い方法
- 営業時間
- 免税対応の有無
- 商品の使い方
- 店内や施設の案内
毎回スタッフが説明していることは、英語表示だけでなく、写真や図、マークなどで伝えられないか考えてみましょう。
「英語を話せるようにする」だけでなく、
「英語を話さなくても伝わるようにする」ことも、
インバウンド接客の準備です。
答えられないときのルールを決めておく
例えば、次のような質問は英語が分かっても、その場では答えられないことがあります。
- 返品・交換はできますか
- 特定のアレルギー物質は含まれていますか
- 海外へ発送できますか
- 帰国後に商品が故障した場合はどうなりますか
そのため、
- どこまでなら現場で回答してよいか
- 分からない場合は誰に確認するか
- その場で回答できない場合はどうするか
を決めておきます。
すべてのスタッフが英語を話せることより、「分からないときに次に何をするか」が決まっていることの方が重要です。
まずは外国人のお客様の動きを一度たどってみる
インバウンド接客を改善するとき、英語の案内やフレーズを増やす前に、一度、自社を初めて利用する外国人のお客様になったつもりで、予約や来店から支払い、退店までをたどってみましょう。
日本では当たり前になっているルールや仕組みが、外国人のお客様には分かりにくいことがあります。
予約・来店する前に分かるか
まず、利用する前に知っておく必要がある条件が、きちんと伝わっているか確認します。
- キャンセルや変更はいつまで可能か
- キャンセル料はいくらかかるか
- 台風や地震などで利用できなくなった場合はどうなるか
- サービス料、深夜料金など、表示価格以外に必要な料金はあるか
- クレジットカードは利用できるか
- カード利用に条件や追加費用があるか
- 1人1品の注文など、利用するための条件はあるか
特に料金やキャンセル条件は、利用するときになって初めて伝えるのではなく、予約や購入を決める前に確認できる状態にしておくことが重要です。
店に入ってから「日本独自のルール」で迷わないか
日本人なら説明されなくても分かることでも、初めて日本を訪れた人には分からないことがあります。
例えば、
- どこで靴を脱ぐのか
- トイレ用スリッパに履き替えるのか
- 券売機で先に食券を購入するのか
- どこで注文し、どこで会計するのか
- 1人1品の注文が必要なのか
- 喫煙できる場所、できない場所はどこか
などです。
重要なのは、外国人のお客様に日本のやり方をすべて合わせることではありません。
守ってほしいルールがあるなら、守れるように先に伝えること。
知らないルールを守れなかった後で注意するより、入口や予約画面、メニュー、写真、ピクトグラムなどで事前に分かるようにした方が、スタッフ側の接客負担も減らせます。
食事や健康に関わる質問に答えられるか
飲食店や宿泊施設では、単なる「分かりにくさ」で済まないこともあります。
- アレルギー物質が含まれているか
- ベジタリアン対応が可能か
- 宗教上食べられない食材が含まれているか
- 調理方法や原材料を確認できるか
- 対応できない場合、そのことを明確に伝えられるか
こうした質問に、分からないまま「たぶん大丈夫」と答えることは避けなければなりません。
すべての要望に対応する必要はありませんが、対応できること・できないことを確認し、正確に伝えられる状態にしておく必要があります。
会計するときに初めて分かる条件はないか
最後まで問題なく接客できていても、会計で不信感を持たれることがあります。
- 現金しか使えない
- 利用できるカードが限られている
- カード払いに条件がある
- サービス料や追加料金が加算される
- 表示されていた金額と実際の支払額が違う
こうした条件そのものより、「支払う段階になって初めて知った」ことが問題になる場合があります。
料金や決済条件は、会計時ではなく、お客様が利用するかどうかを判断する段階で確認できるようにしておきましょう。
困ったときに「No English」で終わっていないか
そして、もう一つ確認したいのが、予定どおりにいかなかったときです。
予約が見つからない、体調が悪くなった、商品に問題があった、食べられない食材が入っていた――。
こうした場面では、完璧な英語を話せることよりも、相手が何に困っているのかを理解しようとすることが重要です。
英語が得意でなければ、翻訳ツールを使う、別のスタッフに確認する、紙に書く、写真を見せてもらうなど、方法はいくつもあります。
「英語が話せないから対応できない」で終わらせず、コミュニケーションを続ける方法を準備しておきましょう。
実際に起きたことを次の改善につなげる
最初から外国人のお客様が困ることをすべて予測する必要はありません。
実際の接客で、
- 何を聞かれたか
- どこでお客様が迷っていたか
- 何の説明に時間がかかったか
- どこで不満や戸惑いが生まれたか
- 何があれば説明しなくても伝わったか
を少しずつ記録していきます。
そして、英語フレーズを追加するのか、表示を変えるのか、予約画面を直すのか、社内ルールを決めるのかを考えます。
インバウンド接客の改善は、英語をたくさん覚えることではありません。
外国人のお客様がどこで迷い、何に困り、何を知りたがっているのかを見つけることから始まります。
英語は「接客するため」だけでなく、外国人顧客を知るために使う
ここまで、英語が得意でなくてもインバウンド接客を止めないための準備を紹介してきました。
短い英語フレーズや翻訳ツール、案内表示などを使えば、注文や会計、店内案内といった基本的な接客はできます。
しかし、インバウンド事業をその先へ広げたいのであれば、外国人のお客様とのコミュニケーションは欠かせません。
例えば、実際に話してみることで、
- なぜこの店を選んだのか
- どの商品に興味を持ったのか
- 何と比較して購入を決めたのか
- 何が分かりにくかったのか
- 日本の商品やサービスのどこに価値を感じたのか
- 母国でも購入したいと思うのか
- どのような商品やサービスがあれば利用したいのか
といったことが見えてきます。
こうした情報は、外国人のお客様をただ「接客する」だけでは分かりません。
商品を渡し、会計を済ませ、「Thank you very much.」で終われば、そのお客様が何を評価し、何に困り、次に何を求めているのかを知る機会もそこで終わってしまいます。
完璧な英語を話せるようになるまで待つ必要はない
もちろん、すべてのスタッフが流暢な英語を話せる必要はありません。
分からない単語があれば翻訳ツールを使う。聞き取れなければ、もう一度話してもらう。写真や商品を見せながら確認する。
現在はAIを使った翻訳や音声通訳も利用できます。大切なのは、英語が完璧かどうかではなく、相手を知るためにコミュニケーションを続けることです。
英語が苦手だからと必要最低限の接客だけで終わらせてしまえば、価格や機能だけで比較される商品・サービスから抜け出すヒントも得にくくなります。
反対に、目の前の外国人のお客様と話し、
「なぜこれが好きなのか」
「何が他の商品と違うと感じるのか」
「自国でも欲しいのか」
まで聞くことができれば、自社では気づかなかった価値や、次の海外ビジネスにつながるニーズが見つかるかもしれません。
英語は、外国人のお客様を問題なく接客するためだけのものではありません。
目の前にいる海外顧客を知り、自社の商品やサービスの可能性を知るためのコミュニケーション手段でもあります。
まずは短い英語と翻訳ツールでも構いません。
外国人のお客様が来たら、対応するだけで終わらず、少し話してみる。
そこから得られる情報が、インバウンド対応の改善だけでなく、その先の海外展開を考えるヒントになることがあります。
なお、接客方法だけでなく、「そもそも自社でインバウンド事業に取り組むべきか」「インバウンドをその先の海外ビジネスにどうつなげるか」から整理したい場合は、
→ インバウンド事業は中小企業でも成立する?始める前に確認すべき5つの判断軸
もあわせてご覧ください。
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