貿易業務に興味がある方や、学び始めたばかりの個人にとって、貿易がなぜ必要なのか、そしてどのように行われるのかを理解することは重要です。
本ガイドでは、貿易に関する基礎的な知識や実務の流れについて詳しく解説します。これにより、貿易業務に役立つ情報を身につけ、効果的な実務ができるようになるでしょう。
貿易実務とは
貿易実務とは、国際的な市場で商品やサービスを売買するために必要な一連の手続きを指します。具体的には、輸出業者と輸入業者の間での貿易取引が行われ、それに付随するさまざまな手続きが行われます。
例えば、契約の締結、商品代金決済、適切な輸送手段選択、輸出入通関、関税支払いなどがあります。
貿易実務の全体像を理解しておくことは、国際ビジネスを円滑に進める要となります。
貿易実務の基本的な流れ
貿易実務の基本的な流れについて解説します。
貿易業務にはいくつかの重要なステップがあります。まず初めに、売買契約を締結します。これは、輸出者と輸入者の間で商品の価格や数量、納期などを合意するために必要なステップです。
次に、製品の準備が整えば、輸送手配を行います。運送会社に依頼して、国際輸送の手続きを進めます。ここでは、運送方法やルートの選定が求められます。
その後、輸出に必要な通関手続きを行います。これには、必要書類の提出や税金の支払いが含まれます。これが完了すれば、商品は目的地に向けて輸送されます。
最後に、荷物が輸入国に到着すると、再度通関手続きが必要です。これにより、商品の合法的な受け取りが完了します。この一連の流れを理解することで、貿易業務をスムーズに進めることが可能になります。
ステップ① 契約
ステップ① 契約について詳しく解説します。
貿易における契約は、輸出者と輸入者の間で商品やサービスに関する条件を明確にするための重要なプロセスです。契約を結ぶことで、双方の権利と義務を明確にし、後々のトラブルを避けることができます。
契約書では、商品名、数量、価格、納期、輸送方法、支払条件、包装仕様、品質基準、アフターサービス条件や責任の範囲等を具体的に定めます。
これらの詳細は、貿易取引を円滑に進めるために欠かせない要素です。特に、支払条件の設定は、資金の流れに大きく関わるため、慎重に決定する必要があります。
また、国によっては輸出入に関する法規制もあるため、契約を結ぶ際にはそれらを考慮することも重要です。戦略的に契約内容を組み立てることで、さまざまなリスクを軽減し、安全な取引を実現することができます。
一方で契約書が存在せず、見積書と発注書のみで行う貿易取引も、実際には多く存在します。
貿易成立に必須の情報である、前述の項目、商品名、数量、価格、納期、輸送方法、支払条件等に加え、通貨、建値、インコタームズ、保険条件、原産国等も見積書に記載されており「改めて契約書を交わす必要はない」と当事者間が合意すれば、契約書がない状態でも輸出入取引は可能で、契約書作成のコスト削減や内容取り決めの時間短縮にはなります。
あるいは、特別に契約を交わした覚えがなくとも、見積書のフォーマットに初期設定として裏面約款が記載(印刷)されていて、サインした当事者が気付かないままに、ほぼ契約書同等の内容が含まれていることもあります。
いずれにせよ英語の契約書や裏面約款は、面倒でも一度は日本語に完全翻訳し、社内の複数名が内容を理解し確認した上で契約書や発注書にサインすることが重要です。
本当は契約書内容を正確には理解していないにも関わらず、契約書や発注書にサインしてしまい、後々大きなトラブルになることは、実際によく起こっていることではあります。
契約書にサインしてしまった後では対処出来ることはかなり限られてしまうため、(ほとんどの場合は貸し倒れもしくは泣き寝入りとなってしまうため)少しでも内容に確信が持てない時、自社だけの判断では不安な時は、国際弁護士に相談するか、行政の無料相談等を利用し適切な助言を受け、納得した上で貿易取引を進めるようにしましょう。
海外取引で慎重が「すぎて」失敗することはほぼありません、急がば回れが重要です。
ステップ② 国際輸送と国際物流
ステップ② 国際輸送と国際物流について詳しく説明します。
国際輸送と国際物流は、貿易実務において非常に重要な要素です。商品が無事に目的地に届くためには、適切な輸送選定と物流構築が欠かせません。
まず、輸送手段の選定が必要です。代表的な輸送手段には、海上輸送、航空輸送、陸上輸送があります。
海上輸送は大量の貨物を低コストで運ぶことができるため、国際貿易では一般的です。一方、航空輸送は、スピードが求められる商品や高価な製品に利用されます。陸上輸送は、国内や隣接国への輸送に便利ですが、複雑なルート管理が必要となります。
それぞれの利点や欠点を理解し、商品の特性や納期、コストを考慮して最適な手段を選ぶことが重要です。
次に、国際物流についても理解が不可欠です。
国際物流は、商品が生産地から海外の消費地に届くまでの一連の流れを指します。これには、国をまたいだ在庫管理、倉庫や海外配送会社の活用、リードタイムの短縮などが含まれます。
国際物流の最適化により、コスト削減や顧客満足度の向上が実現でき、国際ビジネスの競争力強化に繋がります。
これらを実現するためには、信頼できる国際運送会社を選ぶことが求められます。海外にも拠点のある運送会社との良好な関係を築くことで、円滑な国際輸送を実現できます。
また、運送会社に依頼する際には、サプライチェーンマネジメントの最適化と理解、各国固有に必要な書類や手続きについての知識確認も怠らないようにしましょう。
加えて、国際輸送中のリスク管理も大切です。
商品の破損や遅延などに備えて、海上保険に加入することを検討することは必須です。これにより、万が一のトラブルに対する対策が確立できます。
保険については、後述する「貿易実務で重要な保険の知識」でも詳しくお伝えします。
貿易業務において、国際輸送と物流の最適化はコストとリスク低減に直結する必須事項となります。
ステップ③ 決済
ステップ③は、貿易業務の中でも最も重要な「決済」です。
決済は、輸出者と輸入者が合意した商品やサービスに対して代金の支払いを行うプロセスです。この段階では、信頼性と安全性が非常に重要となります。
決済の方法はいくつかあります。
代表的なものには、信用状決済、銀行送金決済、クレジットカード等電子マネー決済、 Paypal、Wise等海外送金サービス、などがあります。
多くの貿易取引において、信用状決済や銀行送金による「前払い」が採用されています。
信用状決済は銀行を介しての保証を得るため、リスクを低減することが可能です。銀行送金による「前払い」は、輸入者が商品を受け取る前に代金を支払う方法で、輸出者にとってはリスクが低いでしょう。
これら以外にも近年では、越境ECサイトや小口の売買取引にて、B2CのみならずB2B取引も増えており、クレジットカード決済、海外送金サービス利用が活発に活用されています。
決済方法の選択は、輸出者と輸入者の関係性や商習慣、取引の内容によって異なります。安全かつスムーズな決済を行うことで、信頼関係を築くことができ、次回以降の取引にもプラスとなります。
このように、決済は貿易実務において欠かせないステップであると言えるでしょう。
貿易決済の個々の詳細説明は「貿易決済の種類」にても後述いたします。
貿易実務に必要な知識
貿易実務に必要な知識について解説いたします。
まず、貿易業務を行う上で理解しておくべき基本用語には、輸出、輸入、通関、インコタームズなどがあります。これらは貿易の基本的な概念や契約条件を理解するために欠かせません。
次に、国際法や貿易に関する法律についての理解も重要です。
各国の法規制や貿易協定を把握することで、トラブルを避けることができます。また、貨物の流通に関わる物流と輸送手段についての知識も必須です。
どのような輸送方法が最適か、コストや時間をどうかけるかは、ビジネスの成否に影響を及ぼします。
最後に、コミュニケーション能力も重要な要素です。
異文化のクライアントやパートナーとのやり取りにおいて、適切な表現やマナーを心得ておくことが、円滑な取引に繋がります。これらの知識を身につけることで、貿易実務に自信を持って挑むことができるでしょう。
輸出業務の流れ
輸出業務の流れについて解説します。
まず、輸出の第一ステップは市場調査です。ターゲットとする国や地域のニーズや競争状況を把握することで、効果的な販売戦略を立てることができます。
次に、商品を選定し、売買契約の締結に入ります。契約時には、商品の仕様や価格、納期、支払い条件などを明確にすることが大切です。この段階で、相手国の法規制や慣行も考慮する必要があります。
次に、輸出手続きの準備に入ります。輸出する商品の数量や品質に関する書類、例えばインボイス(請求書)やパッキングリストを用意します。これらの書類は、後の通関手続きに必要不可欠です。
その後、商品の梱包と輸送手配を行います。商品が破損しないよう適切に梱包し、国際輸送業者を選定して輸送方法を決定します。これにより、商品の安全な輸送を確保します。
最後に、通関手続きです。用意したインボイスやパッキングリストを元に、通関業者が輸出申告書を代行作成し、税関に提出し、輸出許可通知書を取得します。すべての手続きが終了したのち商品は目的国へと輸送されます。これが基本的な輸出業務の流れです。
輸入業務の流れ
輸入業務の流れについて解説します。
輸入業務は、いくつかの明確なステップに分かれています。まず、海外の供給者から商品を仕入れる際には、取引条件や価格をしっかり交渉します。このプロセスでは、相手方の信頼性を確認することも重要ですので、ほとんどの場合最初の段階で現地の生産工場などの視察が含まれることが多いでしょう。
次に、仕様確定ののち、契約締結後、商品を海外から輸送するための手配を行います。輸送手段には、船便、航空便、工場と空港間の陸送輸送などを組み合わせます。選択する際は、納期やコスト、商品の性質を考慮して決定しましょう。
その後、現地から日本への商品の到着時に輸入通関手続きが必要です。税関では必要書類を提出し、関税や消費税を支払います。必要書類は輸入元の仕入れ先企業が作成したり手配してくれるもの、日本国内で自社が改めて作成するもの、等多岐に渡ることがあります。
商品到着後にあわてることの内容に、事前に確認しておくと安心でしょう。輸入通関が完了すれば、商品を無事に受け取ることができます。
このように、輸入プロセスは多くのステップから成り立っていますが、各段階を理解し、適切に対処することで、効率的な輸入業務を実現できます。
通関手続きと必要書類
通関手続きと必要書類について解説いたします。
貿易を行う際、通関手続きは非常に重要なプロセスです。
輸出入した商品が国境を越えるためには、税関での確認が不可欠です。この手続きが適切に行われないと、商品の遅延や追加のコストが発生する可能性があります。
通関手続きには、いくつかの必要書類があります。まず、インボイス(請求書)が必要です。これは商品の内容、数量、価格を示す書類で、税関はこれをもとに課税します。
また、パッキングリストも重要です。このリストには、包装の内容や重量などが詳しく記載されます。
さらに、原産地証明書や輸出入許可証も求められます。これらの書類は、製品が適切に法令に従って輸出入されていることを証明するものです。
通関手続きをスムーズに進めるためには、必要な書類を事前に準備し、最新の情報を確認することが大切です。
貿易決済の種類
海外取引における貿易決済には、取引の安全性や信頼性を確保するために、さまざまな方法が用いられます。
以下に4つ貿易決済方法を挙げますが、実際に海外でも頻繁に使用される主要な方法は1の信用状決済と3の銀行送金決済となります。
1. 信用状決済(Letter of Credit: L/C)
- 概要: 信用状は、輸入者の銀行(開設銀行)が輸出者に対して支払いを保証する決済方法です。輸出者は、信用状に定められた条件(例:商品の発送、書類の提出)を満たせば、銀行から確実に支払いを受けることができます。
- 特徴: 輸出者にとってリスクが低く、信頼性が高い。特に初めて取引する場合や信頼関係が十分でない取引相手に対して使われることが多いでしょう。
- 実例: 輸出者が船積書類(B/Lなど)を銀行に提出し、銀行がその書類を確認後、輸入者に対して支払いを行います。
2. 信用状なし荷為替手形決済(D/P決済、D/A決済)
- 概要: 信用状なし荷為替手形決済とは、輸出者が荷為替手形を通じて代金を回収する方式で、D/P(Documents against Payment)とD/A(Documents against Acceptance)があります。信用状なしで輸入者に書類が渡されます。
- 特徴: D/P決済では輸入者が代金を支払うと書類が引き渡され、D/A決済では輸入者が手形を承諾した時点で書類が引き渡されます。信用状を使わないため取引のリスクが高まります。
- 実例: D/P決済の例として、輸出者が船積み後に銀行へ書類とともに手形を送付し、輸入者が銀行で支払ってから書類を受け取るケースがあります。
3. 銀行送金決済(T/T: Telegraphic Transfer / Wire Transfer)
- 概要: 電信送金は、輸入者が輸出者の銀行口座に直接送金する方法です。一般的には、発注のタイミングでの前払い、出荷後の後払い、商品到着後の後払い送金等が行われます。
- 特徴: 信用状に比べてコストが低く、手続きも簡単です。ただし、前払いの場合は輸入者がリスクを負い、後払いの場合は輸出者がリスクを負います。
- 実例: 輸入者が契約に基づき、商品到着後に輸出者へ代金を送金する。または、信頼関係のある取引先には前払いを行う、など。
4. 取引信用保険付きの掛売り(Open Account with Trade Credit Insurance)
- 概要: 掛売り(オープンアカウント)は、輸出者が商品を出荷し、輸入者が後払いする形態です。この場合、輸出者は一定期間後に輸入者から代金を回収します。信用リスクを回避するために、取引信用保険(貿易保険)が付けられることがあります。
- 特徴: 輸入者にとって有利な決済方法で、信頼関係が築かれている取引相手との間で使用されます。取引信用保険を利用すれば、輸出者は輸入者の支払い不履行リスクを軽減できます。なぜなら取引信用保険(貿易保険)は輸出企業が掛け売り(代金後払い)の取引における回収リスクを軽減するための保険で、輸出先の信用リスクや、政治的リスク(戦争や通貨制限など)によって支払いが受けられない場合に、損失の一部を補償するものだからです。
- 実例: 90日後に支払いを行う条件で商品が輸出され、万が一輸入者が支払いをしない場合は、取引信用保険がカバーします。
インコタームズの基本
インコタームズの基本を理解することは、貿易実務において欠かせません。
インコタームズとは、国際商業会議所が定めた貿易条件のことで、売主と買主の責任や費用負担について明確に定義されています。
インコタームズは、国際的な売買取引における条件を示すもので、最新の2020年版として12のルールが制定されています。
このルールは、売主と買主の間でどのように費用やリスクが分配されるかを明確にします。例えば、FOB(Free On Board)は、船が港を出発するまでは売主の責任であり、その後は買主がリスクを負うことを意味します。
また、CIF(Cost, Insurance and Freight)は、運賃や保険料も売主が負担する条件です。これにより、買主は商品が目的港に到着するまでを安心して待つことができます。
インコタームズの基本を知ることで、契約の内容が理解しやすくなり、取引における意識の共有が図れます。これを学ぶことで、貿易業務に対する自信が深まることでしょう。
インコタームズ2020の11規則
インコタームズ2020は、国際取引における11の規則を定めています。
それぞれの規則は、売主と買主の義務や責任範囲を明確にするために設けられています。具体的には、EXW(工場渡し)、FCA(運送人渡し)、CPT(運賃込み)、CIP(運賃込み保険料込み)、DAP(指定地点持ち込み)、DPU(指定地点持ち出し)などがあります。
これらの規則は、輸送の段階に応じて異なった条件が設定されており、貿易取引におけるリスクとコストの分担を明確にします。特に、FACやCPTなどの条件では、運送手段の選択や費用の負担が重要なポイントとなります。
このように、各インコタームズの規則を理解し、適切に選定することで、国際的な取引におけるリスクを軽減し、円滑な取引を実現することができます。新たに貿易に挑戦する方は、ぜひインコタームズを把握し、実務に活かしていきましょう。
貿易実務で重要な保険の知識
貿易実務で重要な保険の知識について解説します。
国際貿易においては、商品が輸送中に損傷や紛失するリスクが常に存在します。そのため、貿易業者は適切な保険に加入することが不可欠です。ここでは海上保険と貿易保険について説明します。
海上保険とは
海上保険とは、貨物が海上輸送中に発生する事故や損害に対する保険です。商品が万が一損傷したり、海に沈んでしまったりした場合、保険に加入していれば、経済的な負担を軽減することができます。国際貿易においては、商品は海路で輸送することが多いため、海上保険は非常に重要な役割を果たしています。
海上保険には、さまざまな契約形態があります。代表的なものには「一般平均保険」と「全損保険」があります。一般平均保険は、部分的な損害にも対応し、全損保険は全ての貨物が失われた場合に適用されます。
貿易保険とは
貿易保険とは、政府系金融機関のNEXI(日本貿易保険)が提供するサービスで、海外取引における企業のリスクを補償する保険です。具体的には、輸出先の取引先が破綻した場合や、政治的リスクによって代金回収が困難になった際の損失をカバーします。
貿易保険には、輸出手形保険や貿易信用保険などがあり、企業の安全な国際取引を支援する重要な役割を果たしています。貿易保険を利用することで、万が一の損失を最小限に抑えることが可能です。
海上保険と貿易保険の違い
海上保険と貿易保険の違いについて詳しく解説します。
まず、海上保険とは、貨物が海上輸送中に発生する損害を補償する保険です。具体的には、船舶の沈没、火災、盗難などがカバーされます。このため、国際輸送において非常に重要な役割を果たします。
一方、貿易保険は、より広範な保険を指します。貿易保険には海上保険の他にも、信用リスクをカバーする取引先信用保険や、国内外の法規によるリスクを保証する保険などが含まれます。このように、貿易保険は様々なリスクを包括的にカバーします。
つまり、海上保険は貿易保険の一部として位置づけられ、主に物品損害を対象としていますが、貿易保険は多様なリスクに対応するため、選択肢が豊富です。この違いを理解した上で、適切な保険を選ぶことが重要です。
また、貿易保険については、全ての海外の取引先に貿易保険を付保できるわけではないため、自社の取引内容やリスクに応じた保険を選ぶことが重要です。
様々な保険の知識を持つことで、貿易実務における安全性を高めることができるでしょう。
なぜ貨物保険はすべて海上保険と呼ぶのか?(番外コラム)
国際貿易においては、不思議なことに、航空輸送でも陸上輸送でも全ての貨物保険が「海上保険」と呼ばれています。以下にその理由を詳しく説明します。
海上保険の歴史的な背景
国際貿易は古くから海上輸送を中心に行われてきました。特に大航海時代(15世紀~17世紀)以降、世界各国との貿易は船を使って行われることが一般的でした。
この時代に、海上輸送に伴うリスク(沈没、海賊、天候など)に対応するため、海上貨物に保険をかける「海上保険」が発展しました。
この「海上保険」が現在の貨物保険の起源であり、保険業界における標準的な名称として定着しました。
貨物保険の伝統と慣習
海上保険は保険市場において、他の保険(陸上保険や航空保険)よりも早く確立されました。そのため、国際貨物保険全体を指す場合でも、歴史的な慣習として「海上保険」という用語が使われ続けています。
海上保険の包括的な意味合い
現在では、海上保険は海上輸送に限らず、陸上輸送や航空輸送を含む包括的な貨物保険を指すことが一般的です。これは、国際貿易の中で複数の輸送手段を使うことが増えたため、単一の呼び方でカバーするための便宜上のものです。保険契約の中で「海上保険」という用語が使われる場合でも、陸上・航空輸送も含めてカバーされることが多いくなっています。
以上をまとめますと、海上保険という名称は、歴史的な背景と伝統に基づくものであり、現在の国際貿易におけるすべての輸送手段をカバーする包括的な用語として今も日々使用されています。
貿易取引の法規と規制
貿易取引の法規と規制について解説します。
貿易活動には、各国の法律や規制が密接に関わっています。これらを理解し遵守することは、海外ビジネスを成功させるために非常に重要です。
まず、輸出入に関する法律があります。
日本へ輸入する際の法律
1. 食品衛生法
2. 植物防疫法
3. 動物検疫法
4. 薬機法(旧薬事法)
5. ワシントン条約(CITES)に基づく種の保存法
6. 家畜伝染病予防法
7. 火薬類取締法
8. 著作権法
9. 化学物質審査規制法(化審法)
10. 電波法
日本から輸出する際の法律
日本から輸出の法律には下記があります。
1. 外国為替及び外国貿易法(外為法)
2. 文化財保護法
3. 不正競争防止法
4. 毒物及び劇物取締法
5. 武器等製造法
6. 大気汚染防止法(輸出関連規制部分)
7. 特定化学物質の環境汚染防止に関する法律(化学物質規制法)
8. 外貨準備制度に基づく金輸出規制
9. サイバーセキュリティ基本法(技術輸出規制部分)
10. 麻薬及び向精神薬取締法
外国為替及び外国貿易法(外為法)、関税法、輸出管理法の違い
日本から輸出する際の法律には「外国為替及び外国貿易法」(外為法、がいためほう)、が含められていますが、合わせて関税法、輸出管理法、という法律についてもよくお聞きになるこのではないでしょうか。
関税法、輸出管理法は、外為法とは異なる法律ですが、貿易に関連する規制を含んでいます。以下、それぞれの法の概要と違いを説明します。
外国為替及び外国貿易法(外為法)
外国為替及び外国貿易法は、日本の国家安全保障や経済的安定を目的として、外国為替取引や外国との貿易(輸出・輸入)を規制する法律です。この法律は主に以下の内容を含んでいます。
- 外国為替取引(外貨の購入や海外送金など)の管理
- 輸出入の規制:特に、軍事転用可能な技術や製品の輸出を管理(これが輸出管理法に該当します)
- 投資規制:外国企業による日本企業への投資やM&Aに関する規制
外為法の中には輸出管理に関する規定も含まれており、軍事関連品やデュアルユース(軍事・民間両用)の製品・技術が不正に輸出されないように管理しています。
関税法
関税法は、主に輸出入される貨物にかかる税金(関税)の課税や、税関手続きに関する法律です。この法律では、以下のような事項が定められています。
- 関税の徴収:輸入品に対して課される税金の規定
- 通関手続き:輸出入品が適切に税関を通過するための手続き
- 輸出入の制限:禁制品の規制や密輸対策
輸出管理法(Export Control Law)
日本では、輸出管理法という独立した法律はありませんが、外国為替及び外国貿易法の一部が輸出管理の役割を果たしています。外為法の下で、輸出貿易管理令などが定められており、特定の製品や技術が外国に渡らないように規制しています。
以上をまとめますと、
- 外国為替及び外国貿易法(外為法)は、外国為替取引や貿易全般を管理する法律であり、特に輸出管理に関する規定も含んでいます。
- 関税法は、輸出入に関する税金の課税や通関手続きを定めた法律です。
- 輸出管理法は、外為法の一部で輸出管理に関する規制がなされていますが、単独の法律ではありません。
従い、外為法は関税法でも輸出管理法でもありませんが、特に輸出管理法に近い内容を含んでいると言えるでしょう。
貿易協定 EPAとFTA
国際的な貿易協定も忘れてはなりません。
例えば、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)は、特定の国々間での関税の引き下げや貿易障壁の撤廃を目的としています。
これらの協定を利用することで、コストを削減し、ビジネスを有利に進めることが可能です。
EPAとFTAの基本
EPA(経済連携協定)とFTA(自由貿易協定)の基本について解説します。
これらは、国際貿易を推進するための重要な枠組みとなっています。
まず、FTAは、参加国間での貿易障壁を排除し、互いに関税を引き下げる協定です。これにより、商品が自由に流通しやすくなり、貿易が活発になります。特に、関税の引き下げは、輸入品の価格下落をもたらし、消費者にとってもメリットがあります。
一方、EPAはFTAよりも広範な内容を含む協定です。EPAでは、貿易だけでなく、投資やサービス、労働者の移動、環境問題など、さまざまな分野における連携を強化します。
EPAとFTAの違い
EPA(Economic Partnership Agreement)とFTA(Free Trade Agreement)は、貿易を促進するための協定ですが、それぞれの目的や内容には違いがあります。
まず、FTAは、加盟国間で商品やサービスの自由な移動を目的とした協定です。特定の国との経済関係を強化する手段として利用されます。簡潔に言えば、FTAは自由貿易の拡大を意図したものです。
一方、EPAは、単なる貿易の自由化にとどまらず、投資や経済協力、環境保護など、より幅広い分野に関するルールを取りまとめた協定です。そのため、EPAは経済的なパートナーシップの強化に寄与します。
このように、FTAは商品の自由取引を中心とした協定で、EPAはより多角的な経済協力を目指す内容を含んでいるため、それぞれの特性を理解することが重要です。
まとめ
貿易は単なる商品やサービスの売買にとどまらず、国際的なネットワークを形成し、経済をより活性化させる役割を果たしています。
基本的な用語や流れを理解することで、貿易実務におけるトラブルを未然に防ぎ、効率的な貿易部門の運営が可能になります。
日々変化する国際情勢に対応しながら、貿易実務の基礎も身につけ、国際市場での競争力を高めていきましょう。
(株)パコロアでは、中小企業がはじめて貿易実務に取り組む際の、社内体制作り、各部門への海外進出に必要な教育、社内ビジネス書類の英語フォーマット化支援、貿易実務に必要な各種書類整備、貿易実務担当者育成まで、実際の海外企業との取引を伴走しながら、クライアント企業様が3年以内に直接貿易体制を自走できるよう毎日OJT支援を行っています。
自社の商品やサービスを海外へ輸出してみたい、海外展示会にてバイヤーと商談がしたい、多言語ECサイトを構築しインターネット販売もしてみたい、海外事業をこれからの新規事業の柱として育てていきたい、とお考えの中小企業さまは、いつでもお気軽に(株)パコロアにご相談ください。