日本企業の海外進出方法は大別すると、
1 海外投資
2 海外輸出
の2種類があります。
更に海外投資は、海外拠点設立などを含めて3種類、
海外輸出は海外販売代理店への販売などを含めて7種類あります。
海外進出形態 海外投資の場合
海外投資の形態には、海外投資額の低い順に以下の3つがあります。
(海外投資についての詳細はこちらもどうぞ4B 海外投資をする)
1 販売拠点(事務所)設立
2 店舗設立
3 生産拠点設立
それぞれの海外進出形態に合った業種や企業と、その理由を下記に説明します。
文末に「海外進出形態 投資」一覧表を掲載しています。
海外投資 1 販売拠点(事務所)設立
販売拠点設立(事務所)設立は、B2B企業やサポートが重視される業種に向いています。
海外投資 1 販売拠点(事務所)設立を選ぶべき業種/企業
B2B企業:産業用機器メーカー、精密機器メーカー、電子部品メーカー
IT/ソフトウェア企業:クラウドサービス、システムインテグレーター、ソフトウェア開発企業
素材メーカー:化学製品メーカー、繊維・不織布メーカー、電子材料メーカー
海外投資 1 販売拠点(事務所)設立が適している理由:
販売拠点(営業所や事務所)の設立は、販売網の拡大や顧客サポートを強化するために有効です。
特に、B2B取引の企業(機械メーカー、素材メーカーなど)は、現地法人の設立によりクライアントとの関係構築がしやすくなります。
アフターサービスが重視される機械・精密機器メーカーにも重要な形態です。
IT企業の場合は、現地での技術サポートやシステム導入支援が必要なため、現地事務所の設立が求められます。
海外投資 2 店舗設立
店舗設立は、現地の消費者に商品やサービスを提供する業種(飲食、ファッション、サービス業)に向いています。
海外投資 2 店舗設立を選ぶべき業種/企業
飲食業:日本食レストラン、ラーメン店、寿司店、カフェ、ファーストフードチェーン
小売業:アパレルブランド、ファッション雑貨店、インテリア/雑貨店、百貨店の海外支店
サービス業:美容室、理容室、フィットネスクラブ、マッサージ/リラクゼーションサロン
海外投資 2 店舗設立が適している理由
現地の消費者を直接ターゲットにする業種(B2Cビジネス)では、店舗の設立が必須です。
特に、飲食業界はブランドイメージが重要なため、海外店舗を出すことで現地のマーケティングを行いやすくなります。
アパレルや小売業では、現地消費者の購買体験を提供するためのリアル店舗が必要とされます。
美容室やフィットネスクラブといったサービス業では、現地に物理的な場所(店舗)がないと営業ができないため、海外店舗の設立が必須となります。
海外投資 3 生産拠点設立
生産拠点設立は、現地生産によるコスト削減や規制回避が求められる業種(製造業、化学業界、食品業界)に向いています。
海外投資 3 生産拠点設立を選ぶべき業種/企業
製造業:自動車メーカー、電機メーカー、機械メーカー、半導体メーカー、家電メーカー
化学/医薬品メーカー:化学品メーカー、医薬品メーカー、化粧品メーカー、バイオ系製造メーカー
素材/部材メーカー:繊維メーカー(衣料品や不織布)、鉄鋼メーカー、ゴムメーカー、プラスチックメーカー
海外投資 3 生産拠点設立が適している理由
生産拠点の設立は、コスト削減や現地での即時供給が必要な業種にとって重要です。
例えば、自動車メーカーは、現地の調達コスト削減や納期短縮を目的として海外の生産拠点を設けます。
半導体、電気機器、家電メーカーは、アジア(中国、ベトナム、タイ)などの安価な労働力を活用するため、海外工場を設立するケースが多いでしょう。
化学メーカーや化粧品メーカーの場合、現地の輸入規制を回避するため、現地で生産を行う必要があります。
特に、医薬品は現地の製造基準(GMP基準)を満たす必要があるため、現地工場が必要になることが多いでしょう。
海外進出形態 海外輸出の場合
海外輸出の形態は、下記の7つがあります。
1 インバウンド
2 フランチャイズ販売
3 ライセンス販売
4 販売代理店へ販売(卸へ販売)
5 小売へ販売
6 顧客企業へ直接販売
7 消費者へ直接販売
それぞれの海外進出形態に合った業種や企業と、その理由を下記に説明します。
文末に「海外進出形態 輸出」一覧表を掲載しています。
海外輸出 1 インバウンド
インバウンドとは、海外から日本に来た観光客に対して、商品やサービスを直接販売する形態で、主に観光地や免税店での販売が該当します。
インバウンドは国内輸出というカテゴリーに位置し、はじめての海外進出=インバウンド、ということも昨今、一般的になりつつあります。
通常の国内取引より、外国語対応、異文化適応など、様々な工夫が必要ですが、本格的な直接輸出と比較し、輸出規制準拠や貿易実務が不要で手間が省けることもあります。
しかし、見落とされがちなのは知的財産の管理です。インバウンドで来日するのは善意の海外のお客さまばかりとは限りません。
本国に商品を持ち帰ったあと、商品のデザインやロゴなどを模倣し海外で販売されるリスクは常にあります。
海外市場での模倣品を完全に防止することはできませんが、少なくとも日本国内において自社商品の意匠や商標の権利は押さえておきましょう。
模倣品で泣かないために日本の中小企業がすべき6つのこと(パコロア寄稿)はこちらから
海外輸出 1 インバウンドを選ぶべき企業/業種
観光業関連企業:宿泊施設、観光施設、テーマパーク、免税店、空港の店舗など
土産品メーカー:和菓子、伝統工芸品、健康食品、コスメ、酒類メーカー(日本酒、焼酎、ウイスキーなど)
地域特産品事業者:地方自治体や地域の中小企業、農産物・水産物の生産者
海外輸出 1 インバウンド形態が適している理由:
観光客が直接購入する機会が多いため、訪日外国人向けの商品を展開する企業が適しています。
インバウンド需要の高い商品にはコスメ、食品、伝統工芸品などが多いでしょう。
海外輸出 2 フランチャイズ販売
フランチャイズ販売とは、海外の事業者(加盟店)に自社ブランドやビジネスモデルを提供し、加盟店が海外現地で商品を販売する形態です。
フランチャイズ販売で海外進出するためには、日本国内で展開している店舗やサービスに、しっかりしたフランチャイズパッケージや本部機能を設ける必要があります。
フランチャイズ販売は、海外企業とフランチャイズ契約を結びロイヤリティ収入を見込むビジネスモデルとなります。自己資本での現地投資以外の選択肢として有用です。
海外輸出 2 フランチャイズ販売を選ぶべき企業/業種の属性
飲食チェーン:ラーメン、寿司、カフェ、居酒屋、ファストフードチェーン
サービス業:美容サロン、フィットネスクラブ、学習塾、クリーニング業、ホテルチェーン
小売チェーン:コンビニエンスストア、ドラッグストア、雑貨店
海外輸出 2 フランチャイズ販売が適している理由:
現地法人を立ち上げるリスクを抑えつつ、現地パートナーの資本と労力を活用できます。ブランド力がある飲食店や小売店が、世界的に多店舗展開する際に採用される形態です。
海外輸出 3 ライセンス販売
ライセンス販売とは、特許技術のノウハウなどについて技術ライセンス契約を結び、海外企業へ販売することを言います。
ライセンス販売は、通常の輸出も可能なものの、商品が大きい、重いなどで輸送コストがかかり過ぎる、メンテナンスの頻度が高い、メンテナンスのために再輸入が必要、あるいは輸出する優位性が見いだせない、輸出のみで利益を出すことが難しいビジネスの場合に、採用されることもあります。
現地パートナーによる生産販売の技術ライセンス契約ならば、前述の条件下でも新たな輸出の一形態として道が開けることがあるためです。
フランチャイズ販売やライセンス販売は、ノウハウや技術、サービスブランドの輸出の際に選択されます。
海外輸出 3 ライセンス販売を選ぶべき企業/業種
アパレル/ファッションブランド:服飾ブランド、アパレルメーカー、バッグ・アクセサリー
キャラクターIP事業者:アニメ、ゲーム、漫画、キャラクタービジネス
テクノロジー企業:特許技術を持つ製造メーカー、ソフトウェア開発企業(例:半導体、AIソリューション)
海外輸出 3 ライセンス販売が適している理由:
商標や技術、キャラクターIP(知的財産)を活用して現地企業が商品を製造・販売するため、低リスクで海外展開が可能です。
特許技術、キャラクター使用権、ブランド名のライセンスが有効です。
海外輸出 4 販売代理店販売(卸販売)
販売代理店販売とは 現地の販売代理店に商品を一括で販売し、代理店が消費者や小売業者に販売する形態、販売の仲介役としての代理店が関与する形態を示します。
この先の海外輸出4~7がいわゆる「一般的な輸出」にあたります。
海外輸出4 海外販売代理店への販売(や、卸販売)
海外輸出5 海外小売店への販売
海外輸出6 海外顧客企業への直接販売
海外輸出7 海外消費者への直接販売
この4つのうち、海外輸出4~6に関わってくるのが、
海外販売代理店(ディストリビューター)
海外販売代理人(エージェント)
製造業者や卸業者の代理人=外部契約営業代理人(セールスレップ、レップ)
と呼ばれる会社や人々です。
【読み方とスペリング】
*ディストリビューター Distributor
*エージェント Agent
*セールス・レプレゼンタティブ(セールスレップ)
Sales Representative
*マニュファクチャラーズ・レプレゼンタティブ (レップ)
Manufacturer’s Representative
*ホールセラー Wholesaler
まずは、海外販売代理店への販売(や、卸販売)について説明します。
輸出者=日本のメーカーは、海外顧客企業へ販売する際、海外販売代理店経由、もしくはセールスレップ経由で販売することがあります。
日本のメーカー → 海外販売代理店 → 顧客企業
日本のメーカー → セールスレップ → 顧客企業
海外の販売代理店(ディストリビューター)はメーカーから商品を買い取り、在庫を持ち、海外市場向けに値付けをし、メーカーに代わって一時的なクレーム対応もこなします。
セールスレップは「製造業者の代理」「卸の代理」として販売を専門に行います。
在庫は持たず、値付けはメーカーや卸に任せ、代金回収やクレーム対応はしないが、海外顧客へ営業し注文を取る役割を担います。
セールスレップは米国では一般的な販売形態ですが、個人レップから企業体としてのレップ専門会社まで様々で、社外の営業パーソンとしてコミッションベースでメーカーや卸と契約しています。
まれに、海外の販売代理店(ディストリビューター)だと聞いていたのに、自らをディストリビューターではなくエージェントと呼ぶ独立自営業者もいたりします。
エージェントは、取引先の紹介や販売の仲介を行うだけの立場が多く、商談や交渉には関与しないことが多いでしょう。取引が成立した場合のみ、成功報酬(コミッション)を受け取ります。
一般的にエージェントとセールスレップはメーカーの商品をPRしたり販売する、という意味では近い役割を果たしますが、この2つは同義ではないため注意が必要です。
例えば「単に紹介リストを渡すのみでメーカー努力で成約すればコミッションバックをお願いします」などと言ってくるのは、エージェントの可能性が高いでしょう。
理由は、エージェントは単なる「紹介者」の立場にとどまり、具体的な営業活動や交渉は行わないのが一般的だからです。
一方、セールスレップは営業活動を行い、自ら販売に貢献するため、より積極的な関与を求めます。
このように、日本のメーカーと海外現地の顧客企業をつなぐ役割の企業や個人にもさまざまな呼び方や役割があります。
卸(Wholesaler)が販売代理店(Distributor)を兼ねていることがあったり、Distributorではあるが輸入業は行っていないなどもあるため、(つまり別にImporterが必要になる)
実際の海外取引の際は、呼び名にとらわれず彼らが担う役割と、その先にいる顧客が誰なのか、適宜、日本企業の方から確認することが重要です。
海外輸出 4 販売代理店販売(卸販売)を選ぶべき企業/業種の属性
製造メーカー(B2B製品):機械、電子部品、化学製品、産業用機器、工具メーカー
食品メーカー:加工食品、調味料、飲料
日用品メーカー:化粧品、家庭用洗剤、ペット用品、日用品
海外輸出 4 販売代理店販売(卸販売)が適している理由:
現地の代理店は取引先のネットワークをすでに保有しているため、短期間で現地市場に参入可能です。取引が多いのは食品メーカーや工業製品の製造メーカーです。
海外輸出 5 小売店販売
小売店販売とは、海外の小売店(スーパーマーケット、百貨店など)に直接商品を販売し、小売店が消費者に販売する形態です。
輸出者=日本のメーカーは、海外顧客企業や、海外小売店=Retail、海外消費者=Consumerそれぞれと直接取引することもあれば、下記のようにもう一社、二社を間に入れて取引することもあります。
日本のメーカー → 海外卸 → 海外小売店 → 海外消費者
日本のメーカー → 海外販売代理店 → 海外小売店 → 海外消費者
日本のメーカー → セールスレップ → 海外小売店 → 海外消費者
海外輸出 5 小売店販売 選ぶべき企業/業種の属性
日用消費財メーカー:化粧品、日用品、食品メーカー
衣料品/ファッションブランド:アパレル、靴、アクセサリーのブランド
工芸品/雑貨メーカー:生活雑貨、インテリア小物、陶器メーカー
海外輸出 5 小売店販売が適している理由:
海外の百貨店やスーパー、ドラッグストア、小売店に直接商品を置くことで、販売チャネルを拡大できます。特に、大量生産可能な日用消費財を扱う企業が多いです
海外輸出 6 顧客企業直接販売
顧客企業への直接販売とは、海外の企業(BtoB取引)に自社の商品やサービスを直接販売する形態です。工場、メーカー、法人顧客向けの製品が多いでしょう。
輸出者=日本のメーカーが、海外顧客企業へ 海外販売代理店やセールスレップを経由せず直接販売することもままあります。
日本のメーカー → 顧客企業
海外輸出 6 顧客企業直接販売 を選ぶべき企業/業種の属性
産業用機器メーカー:工場設備、工作機械、精密機器
IT/ソフトウェア開発企業:企業向けソフトウェア開発、クラウドサービス提供企業
原材料/素材メーカー:化学品、素材、部材
海外輸出 6 顧客企業直接販売 が適している理由:
B2Bビジネスでは、顧客企業と直接取引を行う方が効率的な場合が多く、取引額が大きくなりやすいです。
製造設備や産業機械の分野では、顧客の要望に合わせたカスタマイズが求められるため、直接販売が必要になります。
海外輸出 7 消費者直接販売
自社の越境ECサイトや越境ECプラットフォームを通じて、海外の消費者に直接商品を販売する形態です。中間業者がいないため利益率は高いでしょう。
但し、越境ECサイトを立ち上げただけで自動的に海外から注文が入るわけではないため、多くの集客費用とサイト運営費用がかかることもあるでしょう。
海外輸出 7 消費者直接販売 を選ぶべき企業/業種の属性
D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業:独自ブランドで消費者に直接販売するメーカー(例:化粧品ブランド、健康食品メーカー)
越境EC事業者:食品、化粧品、衣料品を越境ECサイト(Amazon、Shopify)を通じて販売する中小企業
アーティスト/クリエイター:ハンドメイド商品、デジタルコンテンツ(例:Etsyで販売する個人アーティスト)
海外輸出 7 消費者直接販売 が適している理由:
自社ECサイト、Amazon、Etsyなどのプラットフォームを使うことで、中間業者を排除して直接利益を得ることが可能です。
特にD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)モデルは、ブランド認知を高め、利益率を上げる効果があります。
まとめ
日本企業の海外進出には投資と輸出の2種類があり、更に海外投資は3種類、海外輸出も7種類あり、それぞれの形態に適した企業や業種、また最適な進出フェーズがあります。
「海外進出形態 投資」、「海外進出形態 輸出」のそれぞれの表をもとに、自社のビジネスモデルに最適な投資や輸出の形態を選択することで、効果的な海外展開が可能になっていくでしょう。
(株)パコロアでは、自社に合った海外進出形態を適切に選ぶサポートを10年以上行っています。
具体的には海外事業計画書の策定支援を行い、その企業の海外での事業可能性を見極めながら、輸出、投資、インバウンド、Webマーケティング等のあらゆる可能性を検証する海外進出支援をしています。
自社にあう海外進出形態を選びたい企業様、海外進出を検討している企業さまは、ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。