海外企業との商談が決まり、「何を英語で話せばよいのだろう」と不安になる担当者は少なくありません。
しかし実際のBtoB商談では、英語力だけで商談の成否が決まるわけではありません。商談の目的を共有し、相手を理解し、自社の提案を伝え、次のアクションにつなげるまでの流れを組み立てることが重要です。
本記事では、海外企業とのBtoB商談を5つのステップに沿って解説し、各場面で使える英語フレーズと、商談を前へ進めるための実務ポイントを紹介します。
英語でのBtoB商談は、商談中に方向性が決まることが多い
海外企業とのBtoB商談では、商談後に提案資料を送ってから評価が始まるわけではありません。
実際には、商談中の受け答えや質問への対応、提案の進め方などを通して、「この会社と仕事を進めたいかどうか」を少しずつ判断しているケースが多くあります。
もちろん、お礼メールや追加資料は大切です。しかし、それだけで商談が逆転することはあまり多くありません。
そのため、商談では英語フレーズを覚えるだけでなく、各場面で何を伝え、何を確認し、どのように次のアクションへつなげるかを意識することが重要です。
次の章では、海外企業とのBtoB商談を5つのステップに分け、それぞれの場面で海外企業がどのような視点で商談を進めているのかを紹介します。
英語でのBtoB商談は5つのステップで進める
海外企業とのBtoB商談では、商談の流れに沿って、お互いが少しずつ情報を共有しながら信頼関係を築いていきます。
そのため、各ステップで「何を伝えるか」だけでなく、「海外企業はその場面で何を判断しているのか」を理解しておくことが重要です。
ステップ1 海外企業は最初の数分で商談の進め方を判断している
商談が始まり、画面に海外企業の担当者が映りました。
まず何をしますか。
音声や映像が問題なく届いているかを確認し、笑顔で挨拶をする。簡単な自己紹介を行う。ここまでは問題ありません。
しかし、その後、次のような進め方をしていないでしょうか。
- 「今日はどのように進めますか?」と確認しないまま、参加者全員の長い自己紹介が始まる
- 「まず当社から会社概要をご説明します」と海外企業が20分近く説明を続け、そのまま活発な質疑応答となり、自社を紹介する時間がなくなる
- 「では御社からお願いします」と言われ、用意した資料を1ページ目から順番に説明し続ける。相手は質問も挟まず、黙って聞いている
このような商談になると、「予定どおり説明できた」「相手も最後まで聞いてくれた」と安心してしまう日本企業は少なくありません。
しかし、海外企業側では全く違うことが起きています。
商談の冒頭で確認したかったことが確認できれば、その時点で次の質問へ進みます。反対に、興味の薄い内容は途中で質問に切り替えたり、聞き流したりすることもあります。
つまり、「最後まで説明できたか」ではなく、「相手が知りたいことに答えられたか」が重要なのです。
そのため、商談の冒頭では、会社説明を始める前に、まず「商談の目的と進め方」をお互いに確認することをおすすめします。
確認しようとしたのに相手が話し始めてしまった場合、あえてそれを止めるのも失礼にあたると思いがちですが、むしろ、限られた時間を有効に使おうとしている姿勢として、確認は前向きに受け取られます。
例えば、
- 今日の商談では何を確認したいのか
- 最後に何を決められれば成功なのか
- お互いに優先して聞きたいことは何か
これらを最初に共有するだけで、その後の商談は一方的な会社説明ではなく、対話を中心とした商談へ変わります。
海外企業は、最初の数分で英語力を評価しているわけではありません。
「この会社とは効率よく商談を進められそうか」「限られた時間の中で、お互いに必要な情報を共有できそうか」
その進め方を見ながら、商談全体の印象をつくっています。
ステップ2 海外企業は事前情報の理解度を確認している
商談が本題に入ると、海外企業から次のような質問を受けることがあります。
- 「御社のホームページを拝見しましたが、食品・化粧品業界での実績はありますか。」
- 「弊社と同規模の企業との実績はありますか。」
- 「御社は△が得意ですよね。今回は○を検討していますが、当社へお問い合わせいただいた背景を教えていただけますか。」
こうした質問は、単なる情報収集が目的ではありません。
海外企業は、自社についてどこまで調べてきたのか、自社の強みを今回の案件に結び付けて考えられているかを確認しながら商談を進めています。
では、このような質問に対して、どのように回答しているでしょうか。
よくある回答
- 「食品・化粧品業界での実績はありません。」
- 「これまでの実績はこちらです。」と、社名やロゴを並べて説明するだけで終わる。
- 「その分野は経験がないため、社内で検討してから回答します。」
どれも事実としては間違っていません。
しかし、このような回答では、海外企業からは「現在の会社の説明」しか聞くことができません。
その結果、「まだ情報収集の段階なのだな」「今回の案件を具体的にイメージできていないのだな」という印象を持たれ、商談がそれ以上深まらないことがあります。
商談が進む回答
- 「食品・化粧品業界での実績はありませんが、高い品質管理が求められる医療機器や半導体分野での実績があります。その経験は今回の案件にも活かせると考えています。」
- 「実績は業界別・企業規模別・国別に整理しています。今回の案件に近い事例をご紹介します。」
- 「現時点では実績はありません。ただ、◇や△の案件では類似した課題を解決した経験があります。御社向けに整理した内容を3日以内に改めてご提案します。」
この違いは、英語力ではありません。
事前に海外企業を理解し、自社の強みを今回の案件に合わせて整理してきたかどうかです。
海外企業が知りたいのは、「何ができますか」という一般的な会社紹介ではありません。
「なぜ、その強みが今回の案件に役立つのか」という考え方です。
そのため、海外企業とのBtoB商談では、正解を知っていることよりも、事前情報を整理し、自社なりの仮説を持って商談へ臨むことが、その後の商談の深さを大きく左右します。
ステップ3 どこまで情報を出してよい相手かを判断している
商談が進み、お互いの理解が深まってくると、海外企業から市場や販売方法、価格帯などについて、より具体的な話題が出始めます。
このとき、「商談が盛り上がってきた」と感じる日本企業は少なくありません。
しかし、海外企業は単に話が弾んでいるのではなく、「どこまで情報を共有してもよい相手か」を見極めながら商談を進めています。
例えば、次のような違いがあります。
商談が進みにくい例
- 相手からの質問に答えるだけで、自社からはほとんど質問をしない
- 相手の話をそのまま受け入れ、自社の考えや意見を伝えない
- 「検討します」「持ち帰ります」という回答が続き、商談が前へ進まない
このような商談では、海外企業も「まだ具体的な話をする段階ではない」と判断し、市場情報や販売戦略、社内事情など、一歩踏み込んだ情報は出しにくくなります。
商談が進みやすい例
一方で、
- 相手の話を踏まえ、不安や不明点を一つずつ確認しながら、お互いの認識を合わせていく
- 「もし○○市場で販売するとすれば」という具体的な前提を置き、自社の考えも交えながら意見交換を行う
- 海外企業がまだ気づいていない、その案件特有のリスクや課題を指摘し、自社だからこそ提案できる改善案を示す
このようなやり取りができると、海外企業も「この会社とは具体的な話を進められそうだ」と感じ、より実務的な情報を共有してくれるようになります。
海外企業も、最初からすべての情報を開示しているわけではありません。
市場戦略や販売条件、社内の検討状況などは、商談の進み具合や相手との信頼関係を見ながら、少しずつ共有するケースが一般的です。
そのため、「もっと情報を教えてもらうこと」を目的にするのではなく、「この会社なら安心して情報共有できる」と「初対面の時から」 感じてもらうことが、商談を前へ進める近道になります。
ステップ4 海外企業は商談中に今後の方向性をほぼ判断している
商談も終盤に差しかかると、日本企業は「最後に提案資料を送り、社内で検討してもらおう」と考えがちです。
しかし、海外企業では、この時点で商談の方向性がほぼ決まっているケースが少なくありません。
例えば、次のような違いがあります。
商談が止まりやすい例
- 「詳しい資料を後日送ります」で商談を終える
- 「社内で検討します」と伝えるだけで、次回の予定を決めない
- 相手の反応が分からないまま、「ご質問はありませんか」とだけ聞いて商談を締めくくる
このような商談では、お互いの温度感を確認できないまま終了してしまいます。
一方で、商談が進む企業は、相手の反応を見ながら、商談中に方向性を確認しています。
商談が進みやすい例
- 商談中に不明点をその場で確認し、商談後に解決案を提示するための材料をそろえておく
- 相手の話しぶりに違和感があれば、クロージングを急がず、角度を変えた質問で追加ヒアリングを行う。最終的に「必要なことをすべて話せた」と感じてもらう
- 相手側に残る宿題をできるだけ減らし、「この会社と取引すればスムーズに進みそうだ」とイメージしてもらう
海外企業は、商談後に届く提案資料だけで判断するわけではありません。
商談中のやり取りを通じて、
- この会社は一緒に仕事を進められそうか
- 課題があれば一緒に解決してくれそうか
- 次の打ち合わせへ進める価値があるか
を総合的に判断しています。
そのため、商談後の追加資料やお礼メールだけで商談が逆転するケースは、ほとんどありません。
方向性が決まった後の資料は、判断材料というよりも、商談内容を整理・補足する役割になることが多いからです。
だからこそ、商談中に相手の反応を確認しながら、お互いの認識をすり合わせ、次のステップまで合意しておくことが何より重要です。
海外企業は商談中に方向性を決めています。
だからこそ、クロージングとは最後の5分間ではありません。
商談全体を通じて不明点を整理し、相手が「この会社なら進められる」と判断できる状態を作ることが、本当のクロージングです。
場面別|そのまま使える英語フレーズ
ここからは、海外企業とのBtoB商談で使いやすい基本的な英語フレーズを、4つの場面に分けて紹介します。
すべてを完璧に覚える必要はありません。自社の商談で伝えたい内容に合わせて、各場面で使う表現を2~3個ずつ準備しておくだけでも、英語でのやり取りに対応しやすくなります。
大切なのは、フレーズをそのまま暗記することではなく、相手の話や商談の流れに合わせて使うことです。
商談開始・目的共有
商談の冒頭では、挨拶や自己紹介をした後、どのように商談を進めるかを確認します。
一方的に会社説明を始めるのではなく、お互いに確認したい内容を最初に共有しておくと、その後の商談を進めやすくなります。
- Thank you for your time today.
本日はお時間をいただきありがとうございます。 - Before we begin, may I ask what you would particularly like to discuss today?
始める前に、本日特にお話しされたい内容を伺ってもよろしいでしょうか。 - We would also like to briefly introduce our company and discuss potential collaboration.
当社についても簡単にご紹介し、協業の可能性についてお話しできればと思います。 - Does this agenda work for you?
この進め方で問題ありませんか。
情報共有・認識確認
相手の説明を聞いた後は、自社の理解が合っているかを確認します。
単に質問を重ねるのではなく、事前に調べた内容や、その場で理解した内容を示したうえで確認すると、認識のずれを早い段階で解消できます。
- Based on the information on your website, we understand that your main customers are in the food and cosmetics industries. Is that correct?
ウェブサイトの情報から、御社の主な顧客は食品・化粧品業界であると理解していますが、合っていますか。 - If I understand correctly, your main priority is to expand into the ○○ market.
私の理解が正しければ、御社が最も重視しているのは○○市場への展開ですね。 - Could you clarify what you mean by “○○”?
「○○」が何を意味するのか、もう少し詳しく教えていただけますか。 - Does this align with your current needs?
この理解は、御社の現在のニーズと合っていますか。
提案・質疑応答
相手の状況や考えが見えてきたら、自社の仮説や提案を伝えながら意見交換を進めます。
一つの方法だけを押し出すのではなく、具体的な前提や選択肢を示すことで、相手も意見を返しやすくなります。
- Based on your current product line, we believe our solution could complement your offering.
御社の現在の製品ラインを見ると、当社の製品が補完できる可能性があると考えています。 - If you were to launch this product in the ○○ market, one possible challenge would be ○○.
この製品を○○市場で販売するとすれば、想定される課題の一つは○○です。 - One possible solution would be to start with a small test order.
解決策の一つとして、小ロットのテスト注文から始める方法があります。 - What differentiates us from local competitors is ○○.
It took us three years to develop this technology, and it enables us to solve ○○.
現地競合にはない当社独自の強みは○○です。
この技術の開発には3年を要しており、○○という課題を解決できます。 - How do you see this approach?
この進め方について、どのようにお考えですか。
方向性確認
商談の終盤では、相手の反応や残っている不明点を確認し、商談後にどのような提案や対応を行うかを整理します。
クロージングを急ぐのではなく、まだ話し切れていないことや懸念が残っていないかを確認することが重要です。
- Is there anything we have not fully addressed today?
本日、まだ十分にお答えできていない点はありますか。 - Do you have any remaining concerns about this approach?
この進め方について、まだ懸念されている点はありますか。 - What information would be most helpful for your internal discussion?
御社内で検討を進めるために、どのような情報が最も役立ちますか。 - Based on today’s discussion, we will prepare a revised proposal focusing on ○○.
本日の内容を踏まえ、○○を中心とした修正提案を準備します。 - We will share the additional materials by Friday.
金曜日までに追加資料をお送りします。
これらのフレーズをすべて覚える必要はありません。
自社の商談で実際に起こりそうな場面を想定し、必要な表現をあらかじめ選んでおくと、英語を話すことだけに意識を取られず、相手の反応を見ながら商談を進めやすくなります。
海外企業との英語商談でよくある悩み
ここまで、海外企業とのBtoB商談の進め方や、場面ごとの考え方、英語フレーズを紹介してきました。
しかし実際の商談では、予定どおりに進まないことも少なくありません。
ここでは、特に相談の多い3つのケースについて、実務での考え方を紹介します。
Q1 参加者が多く、誰が意思決定者か分からない場合は?
海外企業との商談では、営業、技術、購買、現地法人など、複数の担当者が参加することは珍しくありません。
そのため、「誰が意思決定者なのだろう」と考えながら商談を進める日本企業も少なくありません。
しかし、初回商談だけで役割を正確に判断することは難しいものです。
例えば、自己紹介ではAさんが窓口のように見えても、実際の商談ではBさんが質問を主導し、重要な場面ではCさんの発言を待って話が進むこともあります。
そのため、肩書きや発言回数だけで判断するのではなく、商談全体の流れを観察することが重要です。
例えば、
- 誰の質問をきっかけに商談が深まるのか
- 誰の発言後に他の参加者が判断や確認を始めるのか
- 誰が次のアクションやスケジュールの話をまとめているのか
こうした点を見ていくと、意思決定の流れが少しずつ見えてきます。
また、商談終了後のフォローメールでは、その日の内容を整理したうえで、
- 本日の認識事項
- 次回までのアクション
- 主な連絡窓口
を確認しておくと、その後のやり取りも進めやすくなります。
初回商談ですべてを見極めようとする必要はありません。
商談中のやり取りと商談後のフォローを通じて、相手企業の意思決定の流れを少しずつ理解していくことが重要です。
Q2 予算や今後の進め方が曖昧な場合は?
初回商談では、予算や導入時期、社内の意思決定プロセスについて質問しても、明確な回答が返ってこないことがあります。
そのため、「見込みが低い案件なのではないか」と不安になる担当者も少なくありません。
しかし、海外企業側も、初回商談の段階ではまだ社内で方向性が固まっていないケースが多くあります。
そのような場合は、無理に予算やスケジュールを聞き出そうとするよりも、相手が社内で次の検討へ進むために何が必要なのかを確認することが重要です。
例えば、
- 社内で検討するために追加で必要な情報はありますか。
- 技術資料や導入事例があれば判断しやすくなりますか。
- 次回の打ち合わせまでに、当社で準備しておくべきものはありますか。
このように確認することで、商談後に準備すべき内容も明確になります。
一方で、
- 新たな資料作成に多くの時間やコストがかかる
- 相見積もりのためだけに詳細な提案を求められている
- 商談を重ねても具体的な前進が見られない
このような場合は、無理に案件を追い続ける必要はありません。
海外営業では、すべての商談を受注につなげることよりも、進める案件と見送る案件を見極めることも重要な判断の一つです。
Q3 英語が聞き取れないときは?
海外企業との商談では、ネイティブだけでなく、さまざまな国の担当者と英語で話すことがあります。
そのため、発音や話すスピードに戸惑い、「自分の英語力が足りない」と感じてしまうことも少なくありません。
しかし、聞き取れない原因は英語力だけとは限りません。専門用語や業界特有の表現が多く使われるため、海外企業側も一度で正確に伝わるとは考えていないケースがほとんどです。
また、最近ではZoomやMicrosoft Teamsなどの字幕・翻訳機能を活用する方法もあります。あらかじめ字幕や翻訳表示をオンにしておくと、聞き取りにくい単語や固有名詞を確認しやすくなります。
それでも聞き取れなかった場合は、次のような表現が役立ちます。
- Did you say “○○”?
今おっしゃったのは「○○」ですか。 - Could you type that in the chat?
チャットに入力していただけますか。 - I caught the part about ○○, but I missed what came after that. Could you say that part again?
○○までは理解できましたが、その後が聞き取れませんでした。その部分をもう一度お願いできますか。
商談では、「もう一度最初からお願いします」と会話を止めるよりも、聞き取れた部分を伝えたうえで確認する方が、お互いに負担なく会話を続けられることが多くあります。
海外企業との商談で重要なのは、英語を完璧に話すことではありません。
分からないことをそのままにせず、その場で認識を合わせることです。
それが、後の提案内容やプロジェクトの進め方にもつながり、結果として商談全体をスムーズに進めることにつながります。
英語力よりも、商談設計が成果を左右する
海外企業とのBtoB商談では、英語力が高い企業が必ず成果を上げているわけではありません。
実際には、
- 海外企業をどこまで理解しているか
- 商談をどのような流れで進めるか
- 海外担当者が判断しやすい提案になっているか
- 次のアクションまで整理できているか
こうした商談設計の積み重ねが、その後の海外展開を大きく左右します。
英語は、その考えを相手へ伝えるための手段の一つです。
そのため、英語表現だけを増やすよりも、「どのような商談を組み立てるべきか」という視点を持つことで、海外企業との商談は進めやすくなります。
パコロアでは、海外企業とのオンライン商談や展示会商談、海外営業支援などを通じて、中小企業の海外販路開拓をサポートしています。
また、30年以上にわたる海外ビジネスの実務経験とAIを活用した多角的な分析をもとに、自社の強み・ターゲット市場・販売方法・社内体制を整理し、貴社に合った海外展開の進め方を30ページ超の個別判定レポート『海外進出チェック』としてご提供しています。
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