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GDPR対応ロードマップ:中小企業が最短で合格ラインに到達する方法

公開 2025年9月18日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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GDPR compliance concept with padlock and EU stars, symbolizing data protection for businesses entering the European market

EUへの輸出や越境EC、あるいは海外展示会で得た名刺──

日本の中小企業が海外展開を始めると、必ず直面するのが「GDPR対応」です。

「うちは日本企業だから関係ない」と思っていませんか。

GDPRはEU居住者のデータを扱うだけで対象となり、違反すれば最大で全世界売上の4%または2,000万ユーロの制裁金という厳しいリスクがあります。

でも安心してください。
すべてを一度に完璧に整える必要はありません。

本記事では、中小企業が“最短で合格ラインに到達するための90日ロードマップ”をご紹介します。

  • 自社がGDPRの適用対象かどうかを3分で診断
  • 必須対応を90日で形にするステップ
  • プライバシーポリシー整備、DPOの判断基準、SCCによるデータ移転、Cookie同意管理など実務ポイント
  • かかるコストとROIの考え方

この記事を読むことで、「GDPR対応の全体像」と「最初の一歩」が明確になり、社内だけで進めるべきか、外部支援を組み合わせるべきかを判断できるようになります。

まず結論:本記事でできること

GDPR対応は、専門用語や法的要件が多く「どこから手を付ければいいのか分からない」と悩む中小企業は少なくありません。

本記事では、知識を並べるだけではなく「行動に移すための手順」を明確にお示しします。

ここで得られる成果は次の3つです。

  1. 自社がGDPRの適用対象かどうかを“3分で診断”できる
    → EU在住者との取引やデータ取り扱いの有無を簡単に確認
  2. 90日ロードマップで“合格ライン”をクリアできる
    → 12週間で最低限の体制を整え、商談や越境ビジネスを止めずに進められる
  3. 中小企業向けの実務ポイントを押さえられる
    → プライバシーポリシー整備、DPOの判断基準、SCCやCookie同意管理まで、「どこまでやれば良いか」の目安が分かる

さらに、費用対効果(ROI)の考え方や、自動化ツールを使った効率的な対応方法についても触れます。

「まず何から始めるか」を明確にし、GDPR対応を前に進めるための地図(ロードマップ)を提供するのがこの記事の目的です。

自社はGDPRの適用対象か?【3分セルフ診断】

GDPRはEUの法律ですが、日本企業でも対象になるケースがあります。

ポイントは

「誰の個人データを扱っているか」
「その目的」

です。

チェックリスト(Yesが1つでもあれば対象の可能性大)

  1. EU居住者に商品やサービスを提供している
    (例:越境EC、オンラインセミナー、展示会での商談)
  2. EU居住者の行動をモニタリングしている
    (例:アクセス解析でEUからの訪問者を特定している、Cookieで広告リターゲティングしている)
  3. EU企業との取引で、現地スタッフや顧客の個人データを受け取っている(例:名刺情報、メールアドレス、住所)

よくある誤解

  • 「日本企業だから関係ない」
    → 関係あります
  • 「取引が少しだけだから対象外」
    →件数の多少に関わらず対象になり得ます
  • 「代理店を通しているから関係ない」
    →データ処理責任の分担が必要です

ここでのゴール

  • Yesがあれば、GDPR対応を進める必要があると認識する
  • グレーな場合でも、リスク回避のために最低限の準備をするのが現実的

このセルフ診断で「対象かもしれない」と思ったら、次の「90日ロードマップ」に進んで具体的な対応を始めましょう。

90日GDPR対応ロードマップ(週単位での進め方)

GDPR対応は一度にすべて完璧に整える必要はありません。

重要なのは、優先順位をつけて段階的に「合格ライン」に到達することです。

ここでは、12週間(約90日)で必須対応を形にするロードマップを提示します。

Week 1–2:現状の棚卸し

GDPR対応の第一歩は、「自社がどんな個人データを扱っているか」を正確に把握することです。

ここが曖昧なままでは、後のステップ(法的根拠の整理や契約書対応)に進めません。

【実務ステップ】

  1. データの洗い出し
    • 顧客情報(氏名・メール・住所など)
    • 従業員情報(給与・健康関連データ)
    • サービス利用ログ(IPアドレス、Cookieなど)
  2. データフローの可視化
    • 社内システム、クラウドサービス、外部委託先を含めて「データがどこからどこへ流れるか」を図示
    • 特にクラウド(Google Drive、Salesforce等)や外注業務(コールセンター、物流)は要チェック
  3. 処理活動記録(RoPA)の草案作成
    • EUの監督機関から求められた際に提示する文書のたたき台を用意
    • 取扱データ、処理目的、保管期間、共有先を整理

【中小企業に関する注意点】

  • 従業員250名未満でも、リスクの高い処理や要配慮データ(健康、金融、思想など)を扱う場合は記録義務あり(GDPR第30条)
  • つまり「中小だから免除」とは限らず、対象になる可能性は十分にある

この段階は「やるべきことを完璧に仕上げる」のではなく、棚卸しを始めること自体が大きな前進です。

後のステップ(Week 3–4以降)で精度を高めればよいため、まずは大まかな棚卸しからスタートしましょう。

Week 3–4:方針と書面の整備

  • 各データの処理目的を洗い出し、GDPR第6条に定められた法的根拠に当てはめる
    • 代表的な法的根拠は
      「同意(Consent)」
      「契約(Contract)」
      「法的義務(Legal Obligation)」
      「正当な利益(Legitimate Interests)」 の4つ
    • 例:
      ニュースレター配信=「同意」
      商品配送=「契約」
      請求書保存=「法的義務」
      既存顧客へのサービス案内=「正当な利益」
  • プライバシーポリシーをGDPR準拠に改訂し、これらの根拠を明記する
  • 英語雛形を活用したい場合は、関連記事「プライバシーポリシー(GDPR対応・和訳付き)」を参照してください。

Week 5–6:データ移転とベンダー管理

EU域外への個人データ移転には特別なルールがあります。

GDPR第44条以降に基づき、適切な保護措置を取らなければなりません。

主な対応方法

  • 標準契約条項(SCC)
    欧州委員会が承認した契約ひな形を取引先と締結し、移転先でのデータ保護を担保する
  • EU–USデータプライバシーフレームワーク(DPF)
    米国企業が認定を受けている場合に利用可能
    未認定の企業との取引ではSCCが必要
  • 十分性認定(Adequacy Decision)
    欧州委員会が「十分な保護水準あり」と認めた国への移転
    日本は対象のため、EUから日本への移転は追加契約なしで可能

    ただし、実務では以下の対応が必要:
    • 移転先が「日本国内」にとどまるかを確認
      (米国などへ再移転がある場合はSCC等が必要)
    • プライバシーポリシーや契約書で「日本は十分性認定国である」ことを明記し、取引先に説明
    • 日本の個人情報保護法(APPI)のルールに基づいて整合性を確保

外部委託先との契約

  • データ処理契約(DPA)を締結し、責任範囲を明確化する
  • どのベンダーがどのデータを扱っているかをリスト化し、適切な保護措置があるかを確認する

Week 7–8:Cookieとトラッキングの同意管理

GDPRのもとでは、利用者の端末にCookieやトラッキング技術を保存する場合、事前の明確な同意が必要です。

ここで重要なのは「同意の質」と「操作のしやすさ」です。

必須の考え方

  • 同意は自由であること:
    利用者が「拒否」する権利を、承諾と同じくらい容易に行使できるようにする
  • 同意は具体的であること:
    単なる「OK」ではなく、解析・広告など用途ごとに分けて選択できるようにする
  • 同意は明確に記録されること:
    後から「いつ、誰が、どの範囲で同意したか」を提示できる状態を保つ

実務ステップ

  1. 同意管理プラットフォーム(CMP)の導入
    • Cookie利用の透明性を確保するツールを導入することで、複雑なログ保存を自動化
    • UI設計において「拒否」ボタンを小さくしたり隠したりするダークパターンは禁止
  2. Cookieバナーの設計
    • 「解析用」「広告用」「必須」などのカテゴリーを明示
    • 必須Cookie以外は、ユーザーの明確な同意がなければ動作しない設計にする
  3. 利用者への説明文の明文化
    • プライバシーポリシーに「どのCookieを、何の目的で使っているか」を明記
    • EUの規制当局は「説明不足」を繰り返し問題視しているため、曖昧表現は避ける

ここをきちんと対応していない日本企業はまだまだ多く、EUユーザーとの接点で最も発覚しやすい違反ポイントです。

Cookie管理を「見た目だけ」で終わらせず、ログ保存まで踏み込むのが合格ラインになります。

Week 9–10:インシデント対応体制の構築

GDPRのもとでは、個人データの漏えいなどインシデントが発生した場合、72時間以内に監督機関へ報告しなければなりません(第33条)。

違反が重大と判断されれば、対象者本人への通知も必要になります。

ここでは、その体制を事前に整えておくことが重要です。

必須の考え方

  • 対応のスピード:
    72時間以内に事実確認と初期報告ができるよう、社内フローを明確化しておく
  • 責任の所在:
    誰がインシデントを検知し、誰が報告文を作り、誰が承認するのかを決めておく
  • 記録の保持:
    発生から対応完了までの経緯をログとして残し、再発防止や当局対応に備える

実務ステップ

  1. インシデント対応フローの文書化
    • 発生→検知→初期対応→報告→再発防止、という流れをマニュアル化
    • 社内連絡網(IT、法務、経営層)が即時に機能するように準備
  2. 72時間ルールのシミュレーション
    • 年1回以上、模擬訓練を行い「72時間以内に報告書を作れるか」をテスト
    • 報告内容は「発生の概要」「影響範囲」「対応状況」の3点を必須にする
  3. 通知文書のひな形を準備
    • 監督機関への報告用ひな形、顧客への通知文書(日本語・英語)の両方を事前に用意
    • 緊急時にゼロから書くのでは間に合わないため、テンプレートを整備しておく

この体制づくりは「違反時の罰金回避」だけでなく、顧客や取引先からの信頼を守る砦になります。

インシデント対応を「後で考える」にせず、平時から準備しておくことが合格ラインです。

Week 11–12:教育と運用の定着

GDPR対応は一度仕組みを作って終わりではなく、継続的な運用と改善が求められます。

その中心になるのが「従業員教育」と「定期レビュー」です。

ここを怠ると、せっかく整備した体制が形骸化し、インシデントや違反につながります。

必須の考え方

  • 教育は一回きりでは不十分:
    毎年の更新教育や、新入社員向けの導入研修を通じて習慣化させる
  • レビューはチェックリストで形式知化:
    属人的な判断にせず、チェックシートやKPIで客観的に確認する
  • 改善のサイクルを作る:
    監査やフィードバックをもとに、小さな改善を継続して重ねていく

実務ステップ

  1. 従業員研修の実施
    • GDPRの基本、個人データの扱い方、インシデント発生時の初動を学ぶ短時間研修を年1回以上実施
    • 外部ツールやeラーニングを活用すれば低コストで全社員に浸透させられる
  2. 定期レビューの仕組み
    • 四半期ごとに「プライバシーポリシー」「処理活動記録(RoPA)」「Cookie同意ログ」を更新チェック
    • 改訂や修正が必要な箇所を早期に発見できる体制を整える
  3. 模擬インシデント訓練の併用
    • 既存のフローを使って、データ漏えいを想定したシナリオ演習を実施
    • 訓練後は必ず改善点を洗い出し、次の手順書に反映させる

このステップを習慣化することで、GDPR対応は「一度のプロジェクト」から「日常業務に溶け込んだ仕組み」へと進化します。

中小企業にとっては大きな負担に思えるかもしれませんが、小さく始めて継続することこそが合格ラインです。

このロードマップをベースにすれば、中小企業でも限られたリソースで効率的にGDPR対応を進めることが可能です。

GDPR対応は「本当に必要なのか?」「必要になるとすればいつの段階か?」が分かりにくく、つい対応が後回しになりがちです。

パコロアでは弁護士業務は行いませんが、

海外進出のどのフェーズでGDPRが関わってくるのか、また
事前にどんな準備をしておけば安心か

といった観点でご相談に乗っています。

まずはお気軽に、無料相談をご活用ください。

中小企業の“合格ライン”ミニマムセット

GDPR対応はすべてを完璧に整えるのが理想ですが、中小企業にとってはリソース面で現実的ではありません。

そこで、まず押さえるべき「合格ライン」となる最低限の要素を整理します。

1. 処理活動記録(RoPA)

  • どのデータを、どの目的で、どのように扱っているかを一覧化
  • 250名未満の企業でも、リスクの高い処理や要配慮データを扱う場合は記録義務あり
  • 将来の監査や取引先からの要請に備える基本資料

2. プライバシーポリシーの整備

  • 公開文書として、利用者に「何を、なぜ、どう扱うか」を明示
  • 日本語版だけでなく、EU顧客向けには英語版も必須
  • 英文テンプレートを活用して初期対応をスピード化し、必要に応じて弁護士レビューを追加

3. ベンダー管理(DPA/SCC/DPF)

  • 委託先とデータ処理契約(DPA)を結ぶ
  • EU外にデータを移転する場合はSCCの締結、またはDPF認定済み企業を利用
  • 「誰がどのデータを扱っているか」を明確にし、責任分担を可視化

4. Cookieと同意管理

  • 利用者に選択肢を提示し、拒否も同意と同じくらい簡単にできる設計
  • ログを保存し、同意撤回に対応できる仕組みを用意
  • 無意識に「強制同意」に誘導するUI(ダークパターン)は避ける

5. 漏えい時の報告フロー

  • インシデント発生から72時間以内に監督機関へ報告できる体制
  • 役割分担(誰が通知を作成し、誰が承認するか)を決めておく
  • 顧客通知が必要なケースもあるため、連絡網を整備

これらを揃えることで、最低限「GDPRに取り組んでいる」と胸を張れるラインに到達できます。

ここを起点に、必要に応じて高度な対応へと拡張していくのが現実的です。

よくある質問

GDPR対応に取り組む中で、日本企業からよく寄せられる疑問を整理しました。

Q1. データ保護責任者(DPO)は必ず置かなければならないのですか?

  • 回答:
    常に必須ではありません。大規模かつ定期的な監視や、要配慮データを大量に扱う場合に義務となります。
    中小企業の場合は、条件に当てはまらなければ「担当者を任命し、外部専門家を相談先として用意する」形でも十分です。

Q2. 従業員が250人未満なら処理活動記録(RoPA)は不要ですか?

  • 回答:
    部分的に例外規定がありますが、実際には多くのケースで記録義務が残ります。
    特に「リスクが高い処理」「要配慮データの扱い」「継続的な処理」を行う場合は義務が発生するため、最初からRoPAを作っておくのが安全です。

Q3. データ漏えいの報告は土日を含めて72時間以内ですか?

  • 回答:
    はい。土日や祝日も含めてカウントされます。
    監督機関への連絡が必要な場合、休業日でも通知体制を整備しておく必要があります。

Q4. データ移転ではSCCとDPFのどちらを使えばよいですか?

  • 回答:
    米国企業への移転ではDPF認定企業を利用するのが最も簡単ですが、認定を受けていない取引先の場合はSCCが必要です。
    EU外の他地域への移転は、基本的にSCCの利用が前提です。

Q5. Cookie同意のUIはどこまで厳密に作る必要がありますか?

  • 回答:
    同意も拒否も同じくらい簡単に選べるUIが必要です。
    拒否ボタンを小さくする、同意しないとページを見られない、といった手法は「ダークパターン」として問題視されます。

費用とROI:意思決定の指標づくり

GDPR対応では「どの程度の投資が必要か」「それがどれだけ効果を生むのか」が意思決定の大きな悩みとなります。

ここでは中小企業が判断するための費用目安とROIの考え方を整理します。

初期費用の目安

  • 現状棚卸しとリスク評価:
    社内工数+外部専門家のスポット費用。30万円前後〜
  • プライバシーポリシー改訂:
    翻訳や法務レビューを含めて 数十万円規模(50万円前後〜)
  • Cookie同意管理ツールやログ管理:
    月額数千円〜数万円程度(年間で10万円前後〜を想定)
  • ベンダー契約(SCCやDPA)整備:
    契約書修正に弁護士コストが発生する場合あり。50万円前後〜

合計すると、初期費用はおおむね130〜150万円前後 が目安となります。

一度にすべてを整えるのではなく、優先順位をつけて段階的に投資するのが現実的です。

運用費用の目安

  • 社内教育と定期レビュー:
    四半期ごとに1日程度の工数。人件費換算で 年間20〜30万円前後
  • インシデント訓練と監査:
    年1〜2回の演習や簡易監査で 年間30〜50万円前後
  • ログ・記録の更新:
    システムやExcelでの継続管理。年間10万円前後〜

合計すると、運用費用は年間60〜90万円前後 が目安です。

【トータルの目安】

初期費用と運用費用を合わせると、初年度はおおむね200〜240万円前後 が全体感の目安になります。

投資対効果(ROI)の考え方

  • 罰金回避効果:
    違反時には最大2,000万ユーロまたは全世界売上の4%の制裁金が科される可能性があるため、最小限の投資で高額リスクを回避できる
  • 取引機会の確保:
    GDPR対応はEU企業との契約条件として必須になるケースが多く、未対応だと商談自体が成立しない
  • ブランド信頼の向上:
    顧客やパートナーに「個人情報をきちんと扱っている企業」と認識され、問い合わせ率や成約率の改善につながる

資金面での工夫

  • 社内で可能な範囲を進め、契約や翻訳など専門性が必要な部分だけ外注
  • 複数ツールを導入するよりも、まずはCookie同意管理やRoPA作成など「必須領域」に限定して投資
  • 自動化ツールを段階的に導入し、長期的な運用コストを抑える

費用対効果を数字でイメージできると、経営層や現場が納得しやすくなります。

GDPR対応は「コスト」ではなく、リスク回避と信頼獲得のための投資と捉えるのが重要です。

よくある課題と自動化ツールによる解決策

中小企業がGDPR対応を進めるうえで、最初からすべてを手作業で管理するのは現実的ではありません。

特にデータ量や取引先が増えると、Excelや紙のチェックリストだけでは限界があります。

ここでは、よくある課題と、自動化による解決策を整理します。

課題1:社内にどんな個人データがあるか分からない

  • リスク:
    RoPA(処理活動記録)が作れず、監査対応が進まない
  • 解決策:
    データ発見・分類ツールを使えば、自動的にファイルやシステムをスキャンし、個人データを抽出して整理できる
  • 検索キーワード:
    「Data Discovery Tool」「PII Scanner」
  • 価格帯:
    月額3〜10万円前後(利用範囲・データ量により変動)

課題2:Cookie同意の取得と記録が煩雑

  • リスク:
    バナーを出しても「拒否」が難しいUIだと違反扱いになる
  • 解決策:
    同意管理プラットフォーム(CMP)を導入すれば、取得・ログ保存まで自動化可能
  • 検索キーワード:
    「Consent Management Platform」「GDPR Cookie Banner」
  • 価格帯:
    月額5千円〜3万円前後(トラフィック数に比例する)

課題3:新サービス導入時にリスク評価ができない

  • リスク:
    高リスク処理にDPIA(データ保護影響評価)が必要なのに放置すると違反
  • 解決策:
    DPIA支援ツールで、質問に答える形式でレポートを自動生成
  • 検索キーワード:
    「DPIA Tool」「Privacy Impact Assessment Software」
  • 価格帯:
    月額2〜5万円前後(中小企業向けのクラウド型が多い)

課題4:漏えい時の対応が72時間以内にできない

  • リスク:
    監督機関報告が間に合わず制裁金リスク
  • 解決策:
    インシデント検知・通知フローの自動化で、初期報告文書を即生成
  • 検索キーワード:
    「Incident Response Automation」「Breach Notification Tool」
  • 価格帯:
    月額5〜15万円前後(大企業向けはもっと高額だが、中小は簡易版が多い)

まとめ

自動化ツールは「全部を一気に導入する」必要はありません。

まずは Cookie同意管理やRoPA作成など必須領域から部分的に取り入れ、段階的に拡張するのが現実的です。

自社の規模や取引先との関係に応じて、必要な領域を見極めて導入を検討しましょう。

よくある失敗と回避策

GDPR対応を進める中で、多くの中小企業が共通して陥りやすい落とし穴があります。

ここでは代表的な失敗例と、その回避策を整理します。

失敗1:プライバシーポリシーを貼っただけで終わりにする

  • 問題点:
    公開文書を整備しても、実際の運用が伴わなければ意味がありません。
    監督機関や取引先からの確認で不備がすぐに発覚します。
  • 回避策:
    ポリシー内容を社内ルールや業務フローに落とし込みむ。
    従業員が実際にルールを守れる状態にする。

失敗2:Cookie同意を形だけで済ませる

  • 問題点:
    「同意する」ボタンだけが目立ち、「拒否」や「設定変更」が不十分だと、ダークパターンとみなされる可能性があります。
  • 回避策:
    拒否・承諾を同等に容易に選べるUIにする。
    同意ログを記録・保存できる仕組みを導入する。

失敗3:ベンダー管理を怠る

  • 問題点:
    外部委託先がGDPRに非対応だと、自社も連帯責任を問われるリスクがあります。
  • 回避策:
    データ処理契約(DPA)を締結し、SCCやDPFの利用有無を確認。
    外部ベンダーをリスト化し、責任範囲を明確化する。

失敗4:インシデント対応を訓練していない

  • 問題点:
    漏えい発生時に72時間以内に報告できず、罰則の対象となるケースがある。
  • 回避策:
    年1回は模擬演習を実施し、誰が通知を作成し、誰が承認するのかを明確化しておく。

失敗5:すべてを自社で完結しようとする

  • 問題点:
    法務・IT・翻訳など幅広い知識が必要で、リソース不足に陥りやすい。
  • 回避策:
    専門家に任せる部分を見極め、社内では「最低限の整備」と「日常運用」に集中する。

これらの失敗を避けることで、効率的かつ実効性のあるGDPR対応が可能になります。

ここから始めるGDPR対応

ここまでで、GDPR対応の基本的な流れと中小企業が押さえるべき合格ラインを整理しました。

最後に、今すぐ取り組める具体的なアクションをまとめます。

ステップ1:セルフ診断を実施する

  • 本記事のチェックリストを使い、自社がGDPRの適用対象かどうかを確認する
  • 「グレーかもしれない」と思った段階で早めに対策を始める

ステップ2:90日ロードマップを計画に落とし込む

  • 週ごとの優先順位を社内タスクに変換する
  • 可能であれば、担当者を1人明確に任命し、進捗を管理する

ステップ3:チェックリストとテンプレートを活用する

  • 処理活動記録(RoPA)、プライバシーポリシー、インシデントフローなどをひな形から作成
  • 英文プライバシーポリシーが必要な場合は、関連記事のテンプレートを参照

ステップ4:専門家や外部支援の活用を検討する

  • 契約やデータ移転など専門性が高い部分は外部に任せる
  • パコロアのような海外進出支援サービスを併用することで、GDPR対応と販路開拓を同時に進められる

無料相談のご案内:パコロアの支援について

GDPR対応は、単にテンプレートを整えるだけでは終わりません。

データの扱いを整理し、プライバシーポリシーを改訂し、CookieやSCCまで正しく実装する…。

その一つひとつの判断が、EUとの商談や国際ビジネスの信頼性を大きく左右します。

実際に現場でよく耳にするのは、

「そもそも自社がGDPRの対象になるのか分からない」
「最低限どこまで対応すれば安心できるのか見極めが難しい」

といった“最初の一歩”で立ち止まってしまう声です。

パコロアは、これまで中小企業の海外進出を専門に支援してきたコンサルティング会社です。

また、2018年には中小機構に寄稿したGDPR解説記事を通じて、日本の中小企業に向けてGDPR対応の重要性を発信してきました。

▶︎ 中小機構への寄稿記事 初めてのGDPR(外部リンク)

私たちは法律事務所ではないため、GDPR条文解釈や個別契約の法的レビューは行いません。

しかし、海外進出の支援経験と中小機構への寄稿実績をもとに、

  • GDPRをどのフェーズで考えるべきか
  • どこまで社内で対応できるか
  • 優先順位をどうつけるか

といった整理を一緒に行うことができます。

必要に応じて、信頼できる専門家におつなぎすることも可能です。

まずはお気軽に、パコロアの無料相談をご活用ください。

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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