訪日外国人の増加を背景に、インバウンド対策に取り組む企業は年々増えています。
しかし一方で、
「インバウンド対応を始めたものの売上につながらない」
「観光客は来ても事業として広がらない」
と感じている企業も少なくありません。
こうした状況の中で、「インバウンドコンサル」という言葉を目にする機会も増えてきました。
しかし経営者の立場から見ると、本当にコンサルを導入する必要があるのか、判断に迷うケースも多いのではないでしょうか。
インバウンド対策は、単に訪日客を増やす取り組みではありません。
企業の事業構造や海外ビジネスの可能性に関わるテーマでもあります。
本記事では、インバウンドコンサルが本当に必要なのかを、
売上ではなく「利益率」「採用力」「事業の相乗効果」という視点から整理します。
そのうえで、中小企業がインバウンドを一時的な観光対応で終わらせず、海外ビジネスへと発展させていくための判断基準と実践の考え方を整理します。
インバウンド対策をしても儲からない会社が多い理由
訪日外国人の増加を背景に、多くの企業がインバウンド対応に取り組むようになりました。
店舗での英語対応、多言語メニュー、海外向けSNSの発信など、さまざまな施策が行われています。
しかし実際には、インバウンド対策を始めた企業のすべてが成果を出しているわけではありません。
来店数や利用者数は増えても、企業の利益につながっていないケースも多く見られます。
インバウンド対策は単に売上を増やす施策ではありません。
企業のビジネスモデルそのものを見直すきっかけになる施策でもあります。
その理由の一つは、インバウンド対策が「観光客への対応」で終わってしまうことです。
たとえば訪日客が店舗を訪れ、商品を購入して帰国する。
これは一度きりの売上にはなりますが、企業の事業構造を変えるほどの効果にはなりにくい場合があります。
一方で、インバウンドをきっかけに海外顧客との継続的な取引を生み出し、海外販路へと発展させている企業も存在します。
同じ訪日客を相手にしていても、そこから海外ビジネスにつながる企業と、単発の売上で終わる企業があるのです。
この違いは、施策の多さではなく、インバウンドをどのような位置づけで事業に組み込んでいるかという点にあります。
インバウンドを「観光対応」として考えるのか、それとも「海外ビジネスの入口」として設計するのかによって、その後の成果は大きく変わります。
だからこそ、インバウンド対策を進める前に、経営としてどのような目的で取り組むのかを整理しておくことが重要になります。
インバウンドコンサル導入を判断する3つの視点
インバウンドコンサルを検討する際、多くの企業が「売上が増えるのか」という点に注目します。
しかし実際には、コンサル導入の価値は単純な売上増加だけでは判断できません。
むしろ重要なのは、インバウンドの取り組みが企業の経営全体にどのような変化をもたらすかです。
たとえば次のような視点で考えてみると、自社にとってコンサル導入の意味が見えてきます。
利益率が上がるか
インバウンド施策は、来店客数を増やすことだけが目的ではありません。
海外顧客に適した商品設計や価格設定、販売方法を整えることで、利益率の高いビジネスモデルを構築できる可能性があります。
もし現在のインバウンド対応が「忙しくなるだけで利益が残らない」と感じているのであれば、事業設計そのものを見直す余地があります。
採用力が上がるか
海外との接点を持つ企業は、採用市場でも魅力を持ちやすくなります。
特に若い世代にとっては、海外ビジネスに関わる機会がある企業は大きな魅力になります。
インバウンドをきっかけに海外との関係が生まれ、社内に新しい仕事の可能性が生まれることは、人材確保という面でも大きな意味があります。
既存事業との相乗効果が生まれるか
インバウンドの価値は、訪日客への販売だけではありません。
インバウンド施策を進める過程では、顧客層や販売方法、価格設定、情報発信の方法など、自社のビジネスモデルを改めて整理することになります。
その過程で、
「現在の営業方法でよいのか」
「既存顧客への対応はこのままでよいのか」
「事業としてどこに強みがあるのか」
といった点を見直す機会が生まれます。
その結果、インバウンド向けの施策が既存事業にも応用できたり、逆にインバウンドと既存事業を明確に分けた方が効率的であることが分かったりすることもあります。
このように、インバウンドをきっかけに事業全体を見直すことで、既存事業の強みがより明確になり、企業全体のビジネスモデルが整理されることがあります。
インバウンドの取り組みは、海外顧客の獲得だけでなく、既存事業の方向性を再確認する機会にもなるのです。
インバウンドコンサルが会社にもたらす変化
インバウンドコンサルの価値は、訪日客売上を増やすことだけではありません。
むしろ重要なのは、インバウンドを通じて企業の事業の見方や戦略がより強く変わることです。
ここでは、インバウンドをきっかけに企業の経営判断が変わった例を、仮想事例として紹介します。
仮想事例A:インバウンド客の購買行動から新しい販売戦略を発見
ある小売企業では、訪日客向け商品を販売していましたが、当初は国内客とインバウンド客で売れる商品が大きく異なっていました。
インバウンド客は日本人があまり購入しない商品を選ぶ場合もあり、売上の波も大きく安定しませんでした。
そこで購買データを分析すると、インバウンド客の行動には特徴があることが分かりました。
最初は訪日客向けの定番商品を購入しますが、日本に慣れた顧客は次第に日本人が日常的に購入している商品にも関心を持ち始めるのです。
この傾向をもとに、店舗では商品をシリーズとしてディスプレイし、最初に購入されやすい商品と、その次に選ばれる商品を組み合わせて提案するようにしました。
さらに、国内顧客の人気商品や利用方法を積極的に紹介することで、訪日客との関係を深めていきました。
結果として、インバウンド客の購買単価が上がり、売上のばらつきも小さくなりました。
単なる観光客向け販売から、継続的な顧客関係へと変化したのです。
仮想事例B:インバウンドをきっかけに採用戦略を変更
ある企業では、長年「売上を上げたいが予算はかけられない」という考えでインバウンド施策を進めていました。
しかし結果として、十分なマーケティングも担当者採用もできず、事業の広がりは見えませんでした。
そこで経営判断として、最初に一定規模の投資を行う方針に切り替えました。
インバウンドマーケティングを本格的に進めるため、Webマーケティングに関わる人材を社員採用し、採用ページでも「海外向けマーケティングを自由に実践できる企業」であることを打ち出しました。
その結果、自分のスキルを試したい人材が集まり、社内に新しいアイデアや取り組みが生まれるようになりました。
マーケティングへの投資は、売上だけでなく人材確保や社内の事業連携にも影響を与えることになりました。
仮想事例C:売上より利益率を重視する戦略に転換
別の企業では、インバウンド市場に参入する際、売上規模を追うのではなく、高単価のサービスに集中する戦略を選びました。
SNSは単なる情報発信ではなく、予約や問い合わせにつながるコンテンツや導線を意識して運用しました。
経営者自身がSNS管理を行い、自社にしか提供できない商品や体験を中心に発信しました。
初期の段階では顧客の声を集めるために無料サービスも実施しましたが、その経験をもとにサービス内容を改善し、次第に高付加価値のサービスへと整理していきました。
その結果、売上規模は大きくありませんが、利益率の高い事業として安定するようになりました。
少人数でも継続できるビジネスモデルを構築できたのです。
このように、インバウンドは単なる集客施策ではなく、企業の事業戦略そのものを見直すきっかけになることがあります。
その視点を新しく整理し、企業の状況に合わせて方向性を設計することが、インバウンドコンサルの重要な役割になります。
インバウンドコンサル導入のステップ
インバウンドコンサルを導入する場合、いきなり施策を始めるのではなく、まず事業の目的と現状を整理することが重要になります。
特に中小企業の場合、限られた人材と予算の中で進めることになるため、最初の設計がその後の成果に大きく影響します。
一般的には、次のような流れで進めていきます。
現状のインバウンド状況を整理する
まず、自社がどのような形で海外顧客と接点を持っているのかを整理します。
訪日客の来店や購入があるのか、海外から問い合わせが来ているのか、あるいはまだ接点がないのかによって、取るべき戦略は大きく変わります。
この段階では、売上データや顧客属性、問い合わせ内容などを確認し、どの国の顧客がどのような形で関わっているのかを把握します。
海外市場との接点を設計する
次に、どの市場を対象にするのかを決めます。
インバウンドは世界中の顧客を対象にするわけではなく、実際には特定の国や地域との関係が強くなることが多いからです。
対象市場が見えてきたら、その顧客にどのような価値を提供できるのかを整理します。
商品やサービスの魅力、価格帯、販売方法などを含めて設計していきます。
訪日体験をビジネスにつなげる
訪日客の来店や利用は、単なる一度きりの取引で終わらせないことが重要です。
購入後のフォロー、オンラインでの接点づくり、海外販売への展開など、継続的な関係につながる仕組みを考えます。
インバウンドを海外ビジネスの入口として設計することで、訪日体験が新しい市場との接点になります。
効果測定と改善を続ける
インバウンド施策は、一度実施して終わるものではありません。
どの施策が成果につながっているのかを確認しながら、継続的に改善していく必要があります。
売上だけでなく、利益率や顧客のリピート、海外からの問い合わせなど、複数の指標を見ながら事業としての成果を評価していきます。
インバウンドは海外ビジネスの入口になる
インバウンドという言葉は、訪日観光客向けのビジネスとして語られることが多くあります。
しかし実際には、インバウンドはそれだけにとどまるものではありません。
日本を訪れた海外の顧客が商品を購入し、その後もオンラインで購入を続ける。
訪日体験をきっかけに企業や技術に関心を持ち、海外での取引につながる。
あるいは、日本で出会った企業と新しいビジネスが始まることもあります。
このように、インバウンドは海外市場との接点を生み出す入口にもなります。
重要なのは、その接点を一度きりの取引で終わらせず、企業の事業戦略の中に位置づけることです。
その視点を整理し、企業の状況に合わせて進めていくことが、インバウンド戦略の大きなポイントになります。
インバウンド戦略の整理に迷ったときは
インバウンド対策を進める中で、
・何から始めればよいのか
・海外ビジネスにつながる可能性があるのか
・自社に合った進め方は何か
といった点で迷う企業も少なくありません。
パコロアでは、中小企業の海外展開支援の経験をもとに、インバウンドを海外ビジネスにつなげるための整理や戦略設計をサポートしています。
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