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インバウンド成功事例5選|海外顧客を引き寄せる日本の価値

更新 2026年9月2日 公開 2026年3月5日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Welcome to Japan illustration with cultural icons representing inbound business case studies

インバウンドというと、ホテルや観光地向けのビジネスを思い浮かべるかもしれません。

しかし実際には、インバウンドは観光業だけの話ではありません。

日本の食品、地域文化、専門商品、工場見学、伝統技術など、海外の人が価値を感じる接点は、中小企業にも数多く存在しています。

実際に、

・訪日中に商品を知り、その後ECで購入を続ける
・旅行をきっかけに海外取引につながる
・SNSや口コミから海外認知が広がる

といった形で、訪日をきっかけに海外との接点が生まれることがあります。

つまりインバウンドは、単なる観光対策ではなく、「海外市場との最初の接点」をつくる入口でもあります。

本記事では、インバウンド成功事例をもとに、

・なぜ海外顧客に選ばれているのか
・どんな“日本の価値”が評価されているのか
・中小企業でも応用できる考え方は何か

を整理しながら、インバウンドを海外ビジネスにつなげるヒントを解説します。

インバウンド成功事例が増えている理由

日本を訪れる外国人旅行者が増える中、インバウンド需要はホテルや観光地だけでなく、飲食、小売、地域文化、ものづくりなど、さまざまな分野へ広がっています。

特に注目したいのは、訪日外国人が「有名な観光地」だけを求めているわけではないことです。

日本の食文化、専門的な道具、地域の伝統文化、職人の技術、工場見学など、日本人にとっては日常的な商品や場所でも、海外の人から見ると訪れる理由や購入する理由になることがあります。

さらに、訪日中に知った商品を帰国後にECで購入したり、日本での体験をSNSで紹介したりすることで、インバウンドで生まれた接点が帰国後も続く場合があります。

つまり、インバウンドの成功事例を見るときに重要なのは、単に「外国人観光客を何人集めたか」ではありません。

自社の商品・技術・文化の何が海外の人に評価され、どのような接点をつくっているのか。

この視点で見ると、中小企業にも応用できるヒントが見つかります。

インバウンドビジネス 5つのタイプ

インバウンド成功事例を見ると、業種はさまざまでも、外国人との接点のつくり方にはいくつかのパターンがあります。

ここでは、「宿泊」「食」「商品」「体験」「ものづくり」の5つに分けて整理します。

自社に近いタイプを考えながら、この後の成功事例を見てみましょう。

宿泊サービス型(ホテル・宿泊施設)

ホテルや旅館などの宿泊施設では、多言語対応や海外予約サイトへの掲載、外国人旅行者が利用しやすいサービス設計などがインバウンド対応につながります。

都市部だけでなく、地域ならではの滞在体験を提供する旅館や小規模宿泊施設にも可能性があります。

飲食サービス型(レストラン・食文化)

日本食そのものが、訪日目的の一つになることがあります。

料理だけでなく、多言語メニューや注文方法、店舗での過ごし方など、言葉が十分に通じなくても利用できる仕組みを整えることも重要です。

商品購入型(専門商品・小売)

包丁や料理道具、化粧品、文具、伝統工芸品など、日本ならではの商品を求めて訪れる外国人旅行者もいます。

観光地でなくても、専門性の高い商品そのものが「そこへ行く理由」になることがあります。

体験観光型(地域体験・アクティビティ)

地域の自然や文化そのものを体験してもらうタイプです。

サイクリング、工芸体験、農業体験など、地域では日常的な資源でも、海外旅行者にとってはその土地でしかできない体験になることがあります。

製造業体験型(工場見学・文化体験)

製造業や伝統産業でも、自社の技術や製造工程を体験として見せることで、インバウンドとの接点をつくることができます。

工場見学や職人による実演などを通じて、製品だけでは伝わりにくい技術や文化、その背景まで知ってもらえることが特徴です。

この5つのタイプを踏まえて、次に実際のインバウンド成功事例を見ていきましょう。

自社でもインバウンド事業ができるだろうか?と検討している方は、始める前に確認したい5つの判断軸も参考にしてください。

→ インバウンド事業は中小企業でも成立する?始める前に確認すべき5つの判断軸

インバウンド成功事例5選

インバウンドの成功事例は、宿泊、飲食、小売、観光、製造など、さまざまな分野にあります。

ここでは、前章で整理した5つのタイプに沿って、具体的な事例を見ていきます。

注目したいのは、単に外国人観光客が多いかどうかではなく、

「何が海外の人を惹きつけ、どのような仕組みで利用や体験につなげているのか」です。

アパホテル|訪日客対応を徹底した宿泊サービス

アパホテルは、日本国内に多数のホテルを展開する宿泊チェーンとして知られています。

都市部を中心にビジネスホテルを展開していますが、近年は訪日外国人の利用も増えています。

同社は早い段階から海外予約サイトへの掲載や多言語対応を進め、外国人旅行者でも利用しやすい環境を整えてきました。

チェックイン機の導入や館内案内の多言語化など、外国人利用を前提としたサービス設計が特徴です。

特別な外国人向けサービスを増やすのではなく、予約からチェックイン、館内利用まで「外国人でも迷わず使える」ようにすることも、インバウンド対応の一つです。

出典 https://japan.wipgroup.com/media/inbound-success-stories

一蘭ラーメン|外国人でも利用しやすい店舗設計

一蘭は、とんこつラーメン専門店として国内外に店舗を展開しています。

訪日外国人にも人気の高いラーメン店として知られています。

同店の特徴は、独自の注文システムと店舗設計です。

味の濃さや麺の硬さを記入する注文用紙など、言葉が通じなくても注文できる仕組みが整えられています。

また「味集中カウンター」と呼ばれる個別席のスタイルも、外国人旅行者にとって利用しやすい設計です。

外国人客のためにすべてを英語対応するのではなく、言葉に頼らなくても利用できる仕組みをつくるという発想は、中小企業にも参考になります。

出典 https://honichi.com/news/2018/06/04/ichiran/

かっぱ橋道具街|専門商品が訪日客を呼び込む街

東京・台東区にあるかっぱ橋道具街は、飲食店向けの厨房用品を扱う専門店街です。

包丁や調理道具、食品サンプルなど、料理に関するさまざまな専門商品が集まっています。

近年では、日本の料理文化に関心を持つ外国人観光客も多く訪れる場所となっています。

特に日本製の包丁や調理道具は海外でも人気が高く、料理人や料理愛好家が訪れることもあります。

観光地ではなくても、専門性の高い商品や文化的背景を持つ商品は海外の顧客を惹きつける可能性があります。

出典 https://www.kappabashi.or.jp/

しまなみ海道|世界的に人気のサイクリングルート

広島県と愛媛県を結ぶしまなみ海道は、瀬戸内海の島々をつなぐサイクリングルートとして知られています。

美しい景観と走りやすい道路環境から、海外のサイクリストにも人気の高いルートとなっています。

しまなみ海道では、レンタサイクルやサイクリスト向けの施設整備などが進められ、海外からのサイクリング旅行者も多く訪れるようになりました。

新しい観光施設をつくるのではなく、瀬戸内海の景観や島々をつなぐ道路といった既存の地域資源を、「走る体験」として価値に変えている点が参考になります。

出典 https://www.japan.travel/

光洋製瓦(薫銀別邸)|製造業がつくる文化体験型インバウンド

兵庫県姫路市でいぶし瓦製造(姫路城にも採用)を手がける光洋製瓦では、伝統的な日本家屋を改装した滞在型工場見学施設「薫銀別邸」を運営しています。

この施設では、いぶし瓦づくりの工場見学や日本の建築文化に触れる体験を通じて、地域のものづくり文化を紹介しています。

宿泊は1日1組限定で、訪問者がゆっくりと日本の伝統素材や職人技術を体験できる環境が整えられています。

こうした取り組みは、製品そのものだけでなく、その背景にある文化や技術まで体験として伝える、製造業ならではのインバウンドの形と言えるでしょう。

出典 https://koyoseiga.co.jp/ https://www.kunginbettei.com/

インバウンド成功事例に共通する「日本の価値の見せ方」

ここまで紹介した事例は、ホテル、飲食、小売、観光、製造と業種はさまざまです。

しかし共通しているのは、日本人にとっては日常にある商品や文化、技術を、海外の人にも価値が伝わる形で見せていることです。

インバウンド成功事例から見える「日本の価値の見せ方」を、3つの視点で考えてみましょう。

日常を「特別な体験」に変えている

海外旅行者にとって魅力になるのは、必ずしも豪華な施設や派手な観光地だけではありません。

むしろ、日本人にとって当たり前の文化や生活が、外国人にとっては特別な体験になることがあります。

例えば、日本のラーメン店の注文方法や店舗の仕組み、日本のビジネスホテルの効率的なサービス、日本の料理道具専門店に並ぶ職人向けの道具などは、日本人にとっては日常の風景です。

しかし海外の人にとっては、日本の食文化や職人文化を体験できる場所として興味深い存在になります。

成功しているインバウンド事例では、日本の「普通の文化」をそのまま提供するのではなく、外国人にも理解できる形で体験として提示しています。

つまり、日本では当たり前になっているものでも、海外から見た価値に気づき、伝わる形にすることで、インバウンドの魅力になることがあります。

観光ではなく「文化への参加」をつくっている

もう一つの特徴は、訪問者を単なる観光客として扱っていない点です。

体験型のインバウンドでは、訪問者がその土地の文化や仕事、暮らしに少し参加できるような設計が魅力になることがあります。

例えば、サイクリングで人気のしまなみ海道では、単に景色を眺める観光ではなく、サイクリストの文化に参加する体験が生まれています。

また料理道具の専門店街では、観光客が料理人の世界を少しだけ体験することができます。

このように、成功事例では訪問者が外から眺める観光客ではなく、その文化に触れる参加者として位置づけられています。

こうした体験は、単なる観光よりも強い印象を残し、海外の人々に日本の文化や商品への興味を生み出すきっかけになります。

効率より「そこでしかできない体験」をつくっている

一般的なサービスでは、効率や利便性が重視されます。

しかしインバウンドでは、必ずしも多くの人を効率よく受け入れることだけが正解ではありません。

例えば、1日1組限定の宿泊施設や、職人の仕事を間近で見る工場見学などは、大量の旅行者を受け入れるサービスではありません。

その一方で、人数が限られていることや、通常は入れない場所に入れること自体が、特別な体験になります。

中小企業の場合、大規模な観光施設と同じことをする必要はありません。

自社だから見せられる場所、会える人、体験できる工程など、「ここでしかできないこと」の方が、海外の人にとって価値になる場合があります。

インバウンドのために、まったく新しい観光施設やサービスをつくる必要があるとは限りません。

まずは自社の商品、技術、場所、人、文化の中に、海外の人から見ると面白いものがないかを探してみることです。

次の章では、中小企業が自社の中にあるインバウンドの可能性を見つける方法を、3つのステップで考えます。

中小企業がインバウンドの可能性を見つける3つのステップ

自社の商品や技術、文化の中にインバウンドの可能性があっても、日本では当たり前すぎて、自社ではその価値に気づきにくいことがあります。

そこで、海外の人から見た自社の魅力を、次の3つのステップで考えてみましょう。

STEP1 「自社では当たり前」の価値を書き出す

最初のステップは、自社の中にある日本らしい要素を書き出すことです。

例えば次のような視点で整理すると見つけやすくなります。例えば、

・長く続いている技術や製法
・地域に根ざした素材や文化
・職人の手仕事や工程
・日本独特のサービスや接客
・日本人にとっては当たり前の生活文化

などです。

日本では珍しくなくても、海外の人から見ると興味深いものが含まれていることがあります。

STEP2 海外の人から見た「体験」に変える

次に、見つけた要素を「売る商品」としてだけでなく、海外の人が見たり、触れたり、参加したりできる体験として考えてみます。

例えば、

・製造工程の一部を見学できるようにする
・職人の作業を実演する
・商品が生まれる背景をストーリーとして伝える
・地域文化と結びつけた体験をつくる

といった方法があります。

商品そのものだけでは伝わりにくい価値も、実際に見る、聞く、体験することで伝わりやすくなります。

STEP3 小さな接点をつくる

最初から大規模なインバウンド事業にする必要はありません。

例えば、

・工場見学やワークショップを試験的に実施する
・海外観光客が多い地域で商品を紹介する
・英語で自社の商品や体験について情報発信する

など、自社で実行できる範囲から試し、海外の人が何に反応するのかを見る方法もあります。

実際の反応を見ることで、自社が想定していた魅力とは違うところに海外の人が価値を感じていることに気づく場合もあります。

インバウンドを“海外市場との接点”に変えるには

ここまで見てきたように、インバウンドの可能性は観光業だけにあるわけではありません。

日本の商品、技術、仕事の現場、地域文化など、自社では当たり前だと思っているものが、海外の人との最初の接点になることがあります。

ただし、外国人旅行者に来てもらうことと、その接点を海外ビジネスにつなげることは別です。

例えば、訪日中に商品を購入してもらえても、帰国後に購入できる方法がなければ、その関係はそこで終わります。

工場見学で技術に興味を持ってもらえても、英語で問い合わせできる窓口や、その後の営業対応がなければ、海外取引にはつながりません。

インバウンドを一時的な集客で終わらせないためには、

・帰国後も商品を購入できる方法があるか
・海外から自社の情報を見つけられるか
・問い合わせを受け取る窓口があるか
・問い合わせ後に海外営業を続けられるか

まで考えておく必要があります。

ーーインバウンドで生まれた「最初の接点」の先に何を用意するか。

ここまで設計できて初めて、インバウンドを海外市場への入口として活かせるようになります。

インバウンドをきっかけに、その先の海外展開まで考えたい場合は、海外進出全体の進め方も確認しておきましょう。
→ 海外進出ロードマップの進め方

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小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・BtoB・BtoC・DtoCなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

著者プロフィールを見る

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