
今日は、海外進出に必要な費用をざっくり知っておきたいんだ。

予算立ての第一歩ですね。
事前に把握しておくことで、資金繰りやスケジュールがかなり変わってきます。

以前、ある勉強会で「3年間で500万円くらいかかる」と聞いたことがありまして…
それを社長に伝えたんですが、

その数字、あながち間違いじゃないです。
でも、「何に」「どのタイミングで」「いくら」かかるかは、進出の形によって大きく異なるんです。
特に、市場調査・法人設立・現地営業・人件費などの費用は、どの国や方法を選ぶかで変わってきます。
ここでは、海外進出にかかる費用の内訳を、段階別・目的別にわかりやすく整理しています。
「はじめての海外展開」ならどのくらいかかる?「本格的に進出する」なら何を準備すべき?
――そんな疑問にお応えします。
海外進出にかかる費用は「販路開拓方法」で大きく異なる

EC型と営業型で必要な費用の構造はどう変わる?
海外進出と一口に言っても、実行方法によってかかる費用は大きく異なります。
特に、
- 越境ECを使ったオンライン展開
- 海外展示会や海外営業による対面型の販路開拓
は、それぞれ必要となる費用の性質も金額も変わってきます。
【越境EC型】
- 費用目安:10万〜50万円程度
- 主な内容:モール出店費用、自社ECサイト構築費用、SNS・動画などの情報発信ツール整備
- 特徴:オンライン完結のため、渡航費や通訳費などが不要
【海外展示会・海外営業型】
- 費用目安:50万〜100万円/回
- 主な内容:展示会出展費、渡航費、宿泊費、通訳費、資料制作など
- 特徴:商談の確度が上がるが、物理的コストが高くなりやすい
オンライン対応のみで進める場合、現地出張費や代理店訪問のコストは抑えられます。
ただし、越境ECにも、ホームページやYouTube動画制作、SNS整備などの「見えにくい初期投資」が必要になります。
パコロア.png)

「試しにやってみる段階」と「本格進出」では何が違う?
以下の2つの進出レベルで、費用感は大きく変わります。
初めての海外展開(試験的導入)
- 補助金を活用しながら、越境EC出店やスポット商談を試す
- 年間50万円前後で可能なケースもあり
本格的な海外展開(販路拡大期)
- 現地展示会への継続出展や、海外代理店開拓を進める
- 法人設立、社員配置、現地オフィス維持などで3年間で500万円規模になることも
B2CとB2Bで違う?海外販路の作り方と費用感
B2C商材(消費財)の場合、越境ECと展示会の組み合わせが王道です。
- まずは越境EC立ち上げ、直販・テストマーケティング
- 販売反応を見ながら、海外代理店・小売店を開拓
越境ECは、単なる販路というより「世界にブランドを伝えるショーケース」として機能します。
一方、B2B商材(生産財)では、次の2パターンが主流です。
- 海外向けホームページ、(SEO設計が重要)
- 業界展示会 → 海外代理店の発掘
産業機器や部品などのB2B商材は、ニーズの調査や仕様調整が必要なため、展示会出展や業界特化の取引先探索が不可欠です。
そのために、多言語対応のコーポレートサイトを整備し、検索エンジンでの可視性を高め、引き合いが生まれやすい環境をつくることが重要です。
ニッチな商材であれば、海外向けの検索結果上位に出るだけで、問い合わせが入ることもあります。
ただし競合が多い業界では、それだけで販路を開拓するのは難しく、リアルな営業活動や海外展示会出展が必要になります。
越境ECは「低コストの選択肢」だけではない
近年の流通構造の変化により、「越境ECを選ばないと販売が成り立たない」B2C商材も増えています。
日本製品は品質が高い分、価格も高くなりがちです。
そこに代理店や小売店のマージンが加わると、エンドユーザー価格が高くなってしまい、現地での販売に苦戦するケースが少なくありません。
そのため、「卸売をせず、越境ECで直接販売する」戦略を選ぶ企業も増加しています。
一方で、すでに代理店との契約がある企業では、越境EC展開を検討する際に既存の販売網との“交通整理”が必要になることもあります。
現在は「直販と卸売が併存する流通の過渡期」。
商品や価格、販売戦略に応じて、最適な販路構築方法を選択する必要があります。

海外代理店の発掘や海外出展については、下記もご一読ください。
海外営業で新規開拓はできますか
海外出展会の出展のコツを知っていますか
海外進出が軌道に乗るまでには、通常1~3年かかる

なぜ1年では足りないのか?
海外進出は、数か月〜1年で成果が出るような短期プロジェクトではありません。
特に中小企業の場合、次のような「整備」と「適応」に時間がかかるため、1年以内に事業を軌道に乗せられるケースはまれです。
- 海外向けのWebサイトや営業資料の整備
- 経営層・担当者の異文化理解と現地対応力の強化
- 海外向けマーケティング、海外向けブランディング、法務・リスク管理の仕組みづくり
- 商品仕様や流通価格の最適化
これらがすでに社内に整っていれば、1年での立ち上げも可能ですが、実際には多くの日本企業が準備・適応・修正に数年かけています。
3年間で費用はどう変化していくか?
海外事業は、スタートしてから軌道に乗るまでにおよそ1〜3年を要することが一般的です。
その間、費用の使い方やかかる金額も、年次ごとに大きく変化していきます。
以下は、中小企業が
「はじめて海外進出に取り組み、3年後に安定稼働を目指す」場合の、
費用の推移イメージです。
【1年目:市場調査と試行の年】
- 主な費用項目:市場調査費、越境EC出店費、補助金を活用した展示会出展費、スポット渡航費
- 費用規模の目安:30〜50万円(補助金ありの場合)
- この年の目的:現地の反応を知り、社内体制を整え始める
→ リスクを抑えながら「やってみる」フェーズ。
補助金が活用できると費用は抑えられる。
【2年目:販路構築と仕組みづくりの年】
- 主な費用項目:代理店候補との商談・渡航費、契約支援、翻訳・通訳費、Webサイト強化、物流確認
- 費用規模の目安:100〜200万円
- この年の目的:販路の「芽」を見つけ、長期関係に向けた仕組みづくりを進める
→ 現地対応の解像度が高まり、支出も徐々に本格化。
【3年目:事業運営の定着と強化の年】
- 主な費用項目:販促活動(広告・SNS・動画)、現地法人設立費、人材採用費、運営費、契約管理
- 費用規模の目安:200〜300万円
- この年の目的:売上の安定化、持続可能な運営体制の確立
→ 一時的な成果ではなく、「事業」としての形を固めるフェーズ。
このように、海外進出用の費用は一律に増えるわけではなく、「段階に応じて中身が変化していく」のが特徴です。
そのため、単年でのコスト判断ではなく、中長期を見据えた投資と回収の設計が求められます。
補助金だけに頼る海外展開は続けられるか?
補助金を活用して、毎年海外の展示会に出展する
――こうした“補助金頼み”の海外展開を繰り返す企業は、決して少なくありません。
たしかに、補助金は有効なスタートダッシュの手段です。
しかし、そのやり方にはいくつかの限界も存在します。
メリット
- 費用負担を抑えて海外活動を開始できる
→ 特に「初めての海外展開」では心強い存在。 - 行政による支援を受けながら活動できる
→ 海外展示会出展や渡航に対して、1/2~2/3の助成が得られる場合も。
限界・リスク
- 補助金は「非連続性のある予算」
→ 継続性が求められる海外進出とは、本質的に相性が悪い。 - 戦略やスケジュールが補助金に縛られる
→ 公募時期や審査スケジュールに合わせて活動する必要があり、自社の意思決定が制限される。 - 同じ目的での連続採択は難しい
→ 年度ごとに制度内容が変わることが多く、「今年も通る」とは限らない。 - 社内の予算化・体制整備が後回しになる
→ 自前で走れる力をつけられず、「準備段階」から抜け出せない。 - 「やりたい時にやれない」「やめたい時にやめられない」
→ スピード感や戦略性が損なわれ継続的なビジネスが厳しい。
結論:補助金は“追い風”として活かす
- 頼りきりになると、本来の目的だった“自走できる海外展開”が遠のいてしまう危険もある。
- 海外展開を継続し、自走するためには、「自社予算」で動ける状態を早期に築く必要がある。
初めての海外展開では「試す」ことが最優先

なぜ「試す」フェーズが重要なのか
海外市場では、日本国内と異なる商習慣・嗜好・競合環境に対応する必要があります。
この段階で重要なのは「いきなり成果を求める」ことではなく、以下のような“試行と検証”を通じた学びです。
- 海外でのニーズや反応を検証する
- 商品やブランドの見せ方、伝え方を最適化する
- 初めての顧客・パートナーとの接点を持つ
- 現地の文化や言語、ビジネス習慣に慣れる
このように「まず試してみる」ことが、次のステップ=本格展開に進むための土台となります。
実際、海外企業も同じように時間をかけています。
たとえば、以前ドイツの家族経営ワイナリーを訪問した際、4年後に日本の食品展示会「FOODEX JAPAN」で偶然再会。
「何度も出展しているが、そう簡単には売れない。でもまた出展するよ」とオーナー自らブースに立って語っていました。
海外企業といえども、継続的な挑戦を通じて市場を切り拓いているのです。
初めての海外展開でよくある活動例
実際の活動は、予算や商材特性により異なりますが、代表的な初期ステップは以下の通りです。
- ShopifyやAmazonなどで越境ECを立ち上げる
- SNSやYouTubeなどで情報発信を始める
- 行政主催の海外展示会に出展する
- 現地候補企業との初回商談に臨む(補助金活用あり)
こうした一連の取り組みを通じて、少額の費用で“仮説検証”ができることが、初期フェーズの魅力です。
補助金は“きっかけ”としては非常に有効
この初期フェーズでは、補助金などの行政支援を上手に活用することで、挑戦へのハードルを下げられます。
- 費用の1/2〜2/3を補助してもらえる支援制度が多い
- 特定の展示会や渡航目的に限定されるが、初心者向き
- 採択には審査があるため、確実ではない点には注意
あくまでも“追い風”として補助金を使い、主体的な展開姿勢を持つことが成功のカギです。
「試す」だけでは終われない──本格展開との違い
初めての海外展開では、“障壁を見つける”ことが主目的です。
一方、本格展開では、それを“乗り越える”段階に進みます。
初めての海外展開と、本格的な海外展開の違いは下記の通りです。
【初めての海外展開】
- 目的: 仮説検証・市場の理解
- 姿勢: 小さく始めて、まずは学ぶ
- 予算: 少額(補助金を活用することが多い)
- 成功の定義: 海外の反応が得られたか、学びがあったか
【本格的な海外展開】
- 目的: 収益性のある事業の構築
- 姿勢: 継続・拡大が前提
- 予算: 自社負担が増え、長期的な投資が必要
- 成功の定義: 安定的な売上や利益、持続可能な事業体制の構築
本格的な海外展開で、商品と会社は“次のステージ”へ

初めての海外展開から、いよいよ本格展開へ。
この段階では、年間で50万〜300万円ほどの追加投資が必要になることが多く、少なからず経営判断を伴います。
でも、こう思われるかもしれません。
- 「本当にそこまでの費用が必要なのか?」
- 「うちの会社にとって、そこまでやる意味があるのか?」
その疑問に、正面から答えたいと思います。
なぜ本格展開にコストがかかるのか?
日本市場と海外市場とでは、「前提」がまったく違います。
国内なら通用する商品・価格・商習慣が、海外ではそのまま通用しない
――という現実が、すべての企業に立ちはだかります。
そして、それに向き合わなければ、進出はできても、定着はできません。
本格展開では、以下のような取り組みが求められます:
これらは“あれば良い”ではなく、“なければ通用しない”対応です。
海外展開の初期では、補助金を活用しながら試行錯誤する段階です。
しかし本格展開に進むなら、
「やれることをやる」から「やるべきことを選んで実行する」へと、
スタンスも変える必要があります。
本格展開で、会社も商品も進化する
本格展開の最大の価値は、売上だけではありません。
海外で売れる商品づくり、海外でも通用する社内体制、現地の顧客に伝わる言語化・ビジュアル表現
――それらを通じて、会社と商品が「強く」なっていくのです。
できなかったことが、できるようになる。
海外展開は、そのチャンスでもあります。
だからこそ、「最短3年で軌道に乗せる」ためには、戦略と意志、そして必要な費用の準備が鍵になります。
未来への切符は、目の前にあります。
あとは、どのタイミングで乗るかを、決めるだけです。

海外進出で本当に得られるのは、
売上だけではなく、「会社と商品がひと回り強くなる」ことなんです。

強くなる、か…。
最初は「費用が高いな」と思ってたけど、
それが“未来の成長への投資”だとしたら、考え方が変わってきましたよ。

(社長、前向きモード…!今のうちに言っておこう)
じゃあ、そろそろ本気で、私たちも動き出してみませんか?
【パコロアからのご案内】
海外進出は、やることも、悩むことも、ひとつではありません。
だからこそ、経験ある伴走者の存在が、結果を大きく左右します。
パコロアは、中小企業の海外展開を“自走できる形”で支援する専門チームです。
戦略立案、現地市場とのギャップ整理、社内体制の整備まで、
「初めての海外展開」から「本格的な海外進出」への道のりを、実践的に支えます。
まずは小さく“試す”ところからでも大丈夫です。
あなたの会社に合った“次の一歩”、一緒に考えてみませんか?
ご相談・お問い合わせはこちらから