日本は貿易大国として、世界中の市場と活発に取引を行っています。
日本の2023年度貿易総額(輸出額と輸入額の合計)は、国家予算の114兆3,812億円をはるかに上回る規模で、COVID-19後も順調に回復の兆しを見せており、新興市場への更なる進出が期待されています。
具体的には、輸出総額は102兆8983億円と過去最高を記録し、輸入額は昨年度比10.3%減の108兆7901億円で、貿易赤字も大幅に縮小されています。
中でも、アジア太平洋地域との関係が強化されており、日本企業はこれら地域への輸出入の拡大を目指しています。
今後の貿易においては、デジタル化やサステナビリティ、クリーンエネルギー、脱炭素等が、重要なキーワードとなり、特に環境に配慮した製品への需要が増加する中、日本企業にはその対応が迫られています。
これらの変化に地域別に適応することが、今後の貿易の成功につながると考えられ、中小企業の経営者や管理職には積極的な情報収集と戦略の見直しが求められます。
日本の貿易の基本情報
日本の貿易額は年々増加しています。
特に、自動車、電子機器、半導体等製造装置、精密機械、産業用ロボット、医療機器、化学製品、素材などの分野に強みがあり、日本国内での生産が行われ、海外市場への輸出が促進されています。
同様に輸入においても食品やエネルギー資源、原材料等について多くの国と取引を行っています。特に、天然資源が限られている日本にとって、安定的な輸入の確保は経済の安定に不可欠となっています。
近年では、地域間経済連携協定や自由貿易協定が進展し、日本の貿易環境はより一層円滑になっており、中小企業でもグローバルな市場での競争に参加しやすくなっています。
一方で、貿易未経験の企業にとっては、人材の確保、海外市場情報の不足、海外リスク評価のし辛さから、貿易を新規事業として推進するタイミングを計りかねている現状があります。
日本の貿易の歴史
日本の貿易の歴史は、江戸時代から始まります。
当時、平和な時代が続く中で、オランダや中国との貿易が盛んに行われ、明治維新を迎えると、急速な西洋化が進み、西欧諸国との貿易が拡大しました。
第二次世界大戦後、日本は復興に力を入れ、経済成長が加速しました。
この時期、アメリカを中心とした先進国との貿易が重要視され、製造業が成長を遂げることにより、輸出も急増し、日本は瞬く間に世界的な経済大国へと成長しました。
現在に至るまで、日本の貿易は多様化が進んでいますが、今後もますます、欧米アジア以外にも新しい市場の開拓が注目されています。
歴史を振り返ることで、今後の発展の可能性を探ることができます。
現在の輸出状況
現在の日本の輸出状況は、世界的な経済回復とともに改善の兆しが見られます。
特に、アジア地域や北米への輸出が堅調に推移しています。
自動車や電子機器といった主要産業は、年々需要が増加しており、特にEV(電気自動車)などの新技術に対する関心が高まっています。
また、最近では環境に配慮した製品やサービスの需要も高まっています。
持続可能性を重視する消費者の意識の変化により、海外現地に工場や販売会社を持つ日本企業などはこのトレンドに応じた商品開発を進めています。
このような世界動向に準じた動きは、新たな市場を開拓するチャンスとなるでしょう。
一方で、グローバルな供給チェーンの混乱や、国際市場での競争も厳しさを増しており、特に、急激な為替レートの変動は輸出業者にとってもリスク要因になりえます。
現在の輸入状況
現在の日本の輸入状況は、円安要因によって大きな影響を受けています。
日本は資源が限られているため、エネルギー資源や食料品の輸入依存度は非常に高く、特に、中東諸国などからの石油や天然ガスの輸入は国のエネルギー供給の重要な部分を占めています。
ただし、最近の国際情勢の変化により、輸入先の多様化も進んでいます。
例えば、エネルギーについては、米国のシェール開発や、中南米やアフリカの油ガス田開発への参画、石油メジャーとの開発協力など、海外の中小企業とのM&Aを進めるなど、新しい選択肢を切り開こうとしています。
食料品については、アメリカ、オーストラリア、南米などからの輸入が増加しています。環境や安全性への関心が高まる中、よりサステナブルな商品を選ぶ動きが見られます。
さらに、COVID-19の影響からサプライチェーンに新たな課題(価格上昇や、取引先の廃業など)が浮上しています。
仕入れ調達先の再構築など、今後も有事に備えるために、今までにない戦略的なパートナーシップを築くことが求められています。
主要な貿易相手国
日本の主要な貿易主要国には、中国、アメリカ、韓国、オーストラリア、そしてEU諸国が含まれます。
特に中国は、日本の最大の貿易相手国であり、輸出入ともに重要な位置を占めています。
アメリカは、日本にとって特に高付加価値の製品を必要とする市場です。
韓国は日韓の密接な経済関係を反映し、相互に補完し合う品目が多いのが特徴です。
オーストラリアやEU諸国も、農産物や工業製品の主要な供給源としての役割を果たしています。
これらの国々との貿易関係は、将来の新たなビジネスチャンスを探る上で重要と言えます。
アジア地域の貿易相手
アジア地域は、日本にとって非常に重要な貿易相手国群を形成しており、主要なパートナーには、中国、韓国、台湾、タイ、インドネシアなどがあります。
中国は、日本の最大の輸出先であり、電子機器や自動車部品の輸出が盛んです。また、日本は中国製品の重要な輸入先でもあり、多様な商品が流入しています。
このような双方向の貿易関係は、両国の経済にとって相互に利益をもたらしています。
韓国や台湾との貿易も活性化しています。特に、半導体やIT関連産業は、双方の国にとって欠かせない分野です。
さらに、タイやインドネシアなどのASEAN諸国は、日本からの投資を受けて急成長しており、今後も貿易パートナーとしての可能性が大いに期待されます。
アジア地域との貿易関係は、年々深化しています。経済のグローバル化が進む中で、これらの国々との協力を強化することが、日本の貿易戦略において重要なポイントとなるでしょう。
欧米地域の貿易相手
日本の貿易において欧米地域は重要な市場として位置付けられています。
特にアメリカ合衆国は、日本にとって最大の貿易相手国の一つです。
自動車や半導体等電子部品、さらには農産物など、多様な品目が取引されており、高付加価値の製品が求められています。
また、ヨーロッパ連合(EU)諸国も日本にとって欠かせない貿易先です。
特にドイツやフランス、イタリアは、日本からの輸出品に対する需要が高く、機械類や化学製品、食品などが中心となっています。EUとの関係強化は経済の安定化に寄与し、相互利益をもたらします。
アジア地域の台頭が目立ちますが、欧米地域との貿易の重要性は変わらず、特にデジタル分野や医療機器、環境関連商品に対する関心が高まっています。
日本の貿易政策
日本の貿易政策は、海外市場へのアクセスをスムーズにし、国際競争力の向上を目指してさまざまな施策が展開されているところです。
これには、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の締結が含まれます。
さらに、日本政府は中小企業の海外進出を支援するため、情報提供や相談窓口の設置を行っています。これにより、貿易に関心を持つ中小企業もビジネスチャンスを最大限に活用できるようになります。
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また、グリーン貿易政策の推進にも注力しており、環境に優しい製品やサービスの輸出を促進しています。これにより、国際社会からの信用を高め、日本のブランド価値を向上させることが期待されています。
貿易自由化の進展
貿易自由化の進展は、日本経済に大きな影響を与えています。
先述の、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)の締結は、日本企業に関税削減や貿易障壁の緩和をもたらし新たな市場へのアクセスを容易にしています。
これにより日本の製品が世界各国でより競争力を持てるようなりました。
例えば、多国間FTAの一例である、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やRCEP(地域的な包括的経済連携)を活用し、積極的に日本の農産物や工業製品の輸出を促進しており、特にアジア市場への進出が目立っています。
また、貿易自由化は価格競争を生む一方で、日本製品の品質や技術力が評価される環境も作り出します。
世界中の消費者に、より多くの選択肢が提供されることとなり、価格と品質のバランスが取れた信頼の日本製品の人気はこれまで以上に高まっていくことでしょう。
これこそが貿易自由化による日本企業が受けられる恩恵の一環と言えます。
保護主義の影響
一方で、最近の国際情勢において、極端な保護主義の台頭が貿易関係に大きな影響を与えています。
特に、米国や中国などの大国が自国の産業を守るために、関税を引き上げたり、貿易制限を導入したりするケースが増加しています。
これにより、日本の輸出企業や商社も調達ルートの変更や見込んだ利益の減少などの影響を受け、競争環境が厳しくなっています。
保護主義は、特に中小企業にとって厳しい試練です。
関税が上がれば最終価格が上昇し、契約更新を困難にします。
原油価格および航空船舶の減便に伴う国際輸送費高騰も、いっきに取引条件を悪化させ、代替手段がない場合は、契約破棄にも直結します。
海外市場へのアクセス制限は、ビジネスの成長を鈍化させるため、国が率先して企業と協力し、オープンな貿易環境を維持することがますます求められています。
日本の貿易の課題と展望
日本の貿易は多くのチャンスを持ちながらも、いくつかの課題に直面しています。
現在の課題
まず、国内市場の縮小が影響しており、輸出先の確保と多様化が急務です。
アジア市場への進出が重要視されていますが、周辺他国からも同様の競合進出があるため、日本企業の商品の高品質は当然ながら、価格はローカル同様、サービスレベルはローカル以上であること、が生き残りに必須の条件となっています。
競争は激しく、各社独自の戦略的なアプローチが必要です。
次に、貿易における非関税障壁や複雑な規制についてです。
貿易を継続するため日本企業は国際基準に適応し、必要な認証を取得するために多大なコストと時間を要しています。リソースの限られた中小企業にとっては経営の効率性を損なう大きな要因となっており、支援策の充実が求められています。
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海外の輸出入の規制について知っていますか
さらに、サプライチェーンの脆弱性も課題です。
自然災害や国際的な情勢の変化により、供給網が途絶えるリスクが高まっており、企業はリスクマネジメントの強化が求められています。
これらの解決は一朝一夕に図れるものではなく、中長期的な予算と視点で取り組む必要があるでしょう。
未来への展望
しかし、ポジティブな展望も存在します。
デジタル化の進展により、効率的な海外取引や海外情報管理が可能となり、国際貿易への参入障壁は各段に下がっています。
具体的には実店舗無しで、オンラインプラットフォームを通じて商品やサービスを販売できる越境ECの活用や、海外企業とのオンライン商談会やバーチャル展示会への出展など、コストを押さえつつ、今まで以上に多くの国や地域へのアクセスが可能となっています。
海外出張に行く度に、数十万円の費用を要していた海外での新規顧客開拓も、海外企業とアポイントが取れた場合は、ZoomなどのTV会議システムを通じ、実質ゼロ円で商談が実現できる環境が整ってもいます。
(但し、海外進出や貿易経験のない日本の中小企業が海外企業とアポイントを取得することは容易ではないため、アポイントが取得できる環境整備のために、費用は様々発生するでしょう。)
および、グローバルなサプライチェーンの変化も、新たなビジネスモデルの出現を促しています。
例えばCOVID-19ではアジア地域の多くの現地企業が廃業に追い込まれ、企業数だけで見ると完全に回復したとは言い切れない状況ですが、
その後の事業再建や、新サービスによる新会社の立ち上げ等、力強いビジネスモデルに生まれ変わった現地企業と共に、新規顧客開拓を行う日本企業も増えています。
長年の貿易実績で培った現地ニーズの把握、育んできた現地企業とのネットワークなど、多くの海外企業との貿易経験という強みを活かした戦略は、今後も日本企業各社の海外市場での競争力の源泉となり続けるでしょう。
まとめ
日本の貿易は、グローバルな経済環境の変化に対応しながら成長を続けています。
最近の動向としては、アジア市場との連携強化や新興国への進出が顕著です。
商品の貿易のみならず、技術やノウハウ等のライセンス販売、サービス業の海外進出などその海外展開は多岐に渡ります。
また、今後、日本の企業はサステナビリティを重視するビジネスモデルの導入も急務となるでしょう。環境に優しい製品やサービスの提供は、国際的な競争力を高める要因となるためです。
このように、日本の貿易は多様な機会を創出していますが、何より変化に柔軟に対応することが成功への鍵です。
今こそ中小企業の経営者や管理職は、最新の情報を研鑽し、ビジネス戦略を見直すことで、未来に向けた持続可能な成長を目指すべきではないでしょうか。
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