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日本企業が海外進出するメリットとデメリット徹底解説

公開日時 2024年2月1日 更新日時 2024年3月22日
海外進出 中小企業

はじめに:なぜ海外進出が注目されるのか

今日は、日本企業が海外進出する際のメリットとデメリットについて、具体的に知りたいと思っています。

出来ればポイントを絞って、結論から知りたいです!
タイパ重視なのでウフ。
ずばり、日本企業が海外進出するメリットはデメリットを上回りますか。

はい、上回ります。

(海外への投資でも輸出でも)売上は拡大します。

中小企業白書2014年度版

海外進出していない企業と比較し、海外進出している企業では従業員が増加し続けています。

中小企業白書2014年度版

労働生産性については、輸出実施企業は非実施企業と比較し従業員一人当たり216.9万円も高くなっています。

中小企業白書2023年度版

コロナ前コロナ後変わらず、海外進出している日本企業(輸出企業)の方が労働生産性が高いんですね。
M&Aや廃業、開業、人件費高騰、色々あっても、海外進出している企業はより安定しているんですね。

そうなんです。

ただ、海外進出未経験企業が海外進出前に、海外進出のデメリットがメリットを上回ると確信するのは中々難しいかもしれません。

次の図を見て頂きたいのですが、日本の中小企業12,950社への海外展開と国内回帰に関する調査結果です。

海外展開を行っている中小企業は2割に満たず、海外展開を行っていない中小企業が8割、そのうち海外展開に関心があるのは1割のみで、ほとんどの中小企業は海外展開には関心が無いと回答しています。

その下の円グラフは、中小企業の成長と投資行動に関するアンケート調査で、同じく8割の中小企業が海外展開投資は重要ではないと回答しています。

「中小企業の海外展開と国内回帰に関する調査」株式会社日本政策金融公庫総合研究所2023年6月
「中小企業の成長と投資行動に関する調査」株式会社帝国データバンク2016年3月

そんなに多くの日本の中小企業が、海外進出に無関心で、重要視していないんですね、ガーン・・・

いわゆる我々は、少数派デスカ・・・

でもなぜだろう。

色々とよく分からないから、ではないかな、きっと。

海外進出なんて、ちょっと経験してみたくても、どう始めれば良いか分からないし、
業種によっては海外進出できるイメージが全く持てないものも、あるから。

情報が無いというか、リスクが見積もれないというか、国内事業で手一杯というか。

そうですよね。

一方でこちらはどうでしょう。

下記は日系企業の海外拠点数推移を紹介したものです。
過去30年間増え続けています。

中小企業の海外進出についてはバブルの頃より近年の方が輸出をはじめる企業数が増えています。

日本の中小企業数は人口減少と共に年々減り続けている現状にもかかわらずです。

我が国企業の海外進出の状況 経済産業省2007年10月 
数字で見る海外ビジネス日系企業の海外拠点は10年で倍増 月刊事業構想編集部2016年6月 
海外進出日系企業拠点数調査 外務省2022年10月 から(株)パコロア編
「中小企業の海外展開の実態把握にかかるアンケート調査」損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント(株)2013年12月
中小企業・小規模事業者の新陳代謝 中小企業庁 2019年

「なぜ海外進出が注目され続けているのか?」

その答えは、このギャップにある、と言えそうです。

海外進出に積極的な企業は少数派にもかかわらず、現実的には30年近く海外進出する日本企業数は増え続けている、というギャップ。

たとえば海外進出にメリットを感じない主な理由は下記の2つです。

本当に海外進出できない業種、商品、サービスであり、事実として海外進出するメリットがない
「海外進出」そのものが良く分からないため、分からないことに具体的なイメージは持てず選択肢にも入らない

下記に「海外展開に関心がない理由」と「これまで海外展開して来なかった理由」が確認できます。

「中小企業の海外展開と国内回帰に関する調査」(再掲)

それぞれの理由を再掲します。

海外展開に関心がない理由:

・海外展開に向かない事業だから
・国内だけでも十分経営できるから
海外展開にはリスクがあるから
・情報やきっかけがないから

・以前海外展開に失敗したから

これまで海外展開して来なかった理由:

人材がいない
・販路を確保できない
・ 海外にどんな需要があるかわからない
・ 海外は商慣習や法規制がわからない
・ 現地の人とのコミュニケーションに不安がある
・どの国・地域に展開すべきかわからない

・ 資金がない
コロナ禍で行動制限がある
・紛争や政情不安のリスクがある
・為替変動リスクがある
・原材料や部品の調達先を確保できない
・ 知的財産や技術・ノウハウが流出する

・海外は各種インフラが整備されていない
・自然災害のリスクがある

海外進出には本当に多くの障壁がある、
と考えられていると思いませんか。

思います。
(こんなに大変だったら、海外進出なんてもう無理カモ・・)

でもこれは、そもそも海外進出だけの障壁ですかね。

どんな新規プロジェクトでも、最初は多くの分からないことがあって、それは調べないと前には進められない、というのは普通だと思います。

ただ、「きっかけがない」というのは分かる気もします。

ずっと国内市場でビジネスをしていると、あえて海外に目を向ける必要も余裕もないですし、海外進出し本当に成功している企業がいるのかどうかも知ること自体が難しい。

それに直近の課題は、何と言っても人手不足です。
景気が戻ってきても今以上の仕事を受けられない中小企業も多く、機会損失は計り知れません。

人材のミスマッチもあります。
新しいことをしたくてもそれができる人材がいないため、人材育成が必要になります。

今いる社員がリスキリング(業務上で必要とされる新しい知識やスキルを学ぶこと)をして、新しいことが出来るようになってくれたら良いですが、

今までしなくて良かったことを一から学び、わずかな手当てがつくものの同じ様な給与でやってくれる社員なんてめったにいないですから。

(それ、ワタクシのこと??)

この様な状況で海外進出を積極的に検討する理由は、

・その企業の外部環境が急変してしまったか(海外にも目を向けなければいけなくなったか)

当社のように実は、
・以前から海外進出を考えていたか

のどちらかだと思います。

(・・・ワタクシのことか、ウフフ)

そうですよね。。

ところで。

先ほどの続きなのですが、こちら中小企業の海外展開状況のグラフを再度見て頂ければと思うのですが、

・海外展開を行っている中小企業が全体の18%もいる(撤退組を差し引いても増加している、前述データ参照)
・「海外展開を行っていない中小企業」の10.7%が、今後海外展開を行う予定がある、あるいは海外展開に関心がある、と回答している

とあります。

同じアンケート内で、挙げられるだけの障壁をあげておられた企業さま達が、それでも海外進出に関心がある、あるいはこれから実際に海外進出予定(起業や会社設立予定)だ、というのです。

海外進出は障壁が多く手続きも大変そうなのに、なぜ海外進出する企業が増え続けているのか?

海外進出を実現させた中小企業がいるのなら、なぜ成功事例がもっと周りにないのか?

海外進出が本当にできるなら、なぜ中小企業の海外進出がもっと一般的な取り組みにならないのか?

そういう疑問が次々出てくるのが、中小企業の海外進出なんです。

この疑問を解消したい中小企業が海外進出に注目し続けています。

とっても気になるところですね。

タイパ重視の方のために、今の問いの答えもサクッとお伝えします。

まず、海外進出は障壁が多く難易度は高いですが、成功するとメリットが大きいです。
 
次に、海外進出に成功している企業と非海外進出企業との接点は少ないため、求めない限り正しい情報は入ってきません。

そして、海外進出には国内事業での常識が通用しないため、全中小企業が国内事業と並走して、海外進出ノウハウも習得しようと決めない限り、今後も海外進出が中小企業にとって一般的な取り組みになることはないでしょう。

そ、そうなんだぁ。。

海外進出のメリットを詳しく知る

1 競争力強化(ブランド価値向上)

ということで、まずは海外進出のメリットからご説明します。

まず海外進出で得られるメリットの1つ目は、競争力強化、ブランド価値向上です。

海外市場で海外競合企業と戦って生き残る、ということは海外競合企業からパイを奪う、ということであり(あるいは新しい市場を作るということであるため)、海外進出イコール、国内市場時にはなかった競争力、ブランド価値を新たに獲得が必須、ということになります。

海外市場でも勝てる競争力とは何か?
海外でも通用するブランド価値とは何か?

を海外顧客と向き合い、社内外の高度人材やパートナーを巻き込み、海外現地で追及し続けることで、今ある強みを海外でも通用するアドバンテージに磨き直し、海外市場で有利に戦える武器に1つずつ変貌させていきます。

この海外進出するプロセスで獲得していく力強い事業競争力、ブランド価値こそが、日本本社の事業展開だけでは成しえなかった、全社的経営基盤強化につながる、他では得られない無形財産、海外進出の大きなメリットになります。

競争力の強化。。

2 リスク分散

海外進出で得られるメリットの2つ目は、リスク分散です。

海外市場でも通用する競争力やブランド価値を獲得した結果、国内市場だけに通じる商品・サービス展開以外に、他国市場に合わせた横展開ノウハウが手に入れられます。

これこそが不透明な未来に対するリスクヘッジであり、経営基盤盤石化への一歩です。
ゼロから自社で新市場を開拓し現地化できるノウハウがあれば、売上ダメージに打つ手なし、は避けられます。

実際にコロナ禍でも、海外に販売先が複数あることや、海外子会社が常時稼働したことで、競合会社より優位なビジネス展開ができた日本の中小企業は数多くあります。

海外進出していて良かったと今回ほど実感したことは無い、との声は、日本企業だけはなく海外の中小企業の経営者からも漏れ聞こえていました。

パンデミック中に過去最高益をたたき出した企業の多くは、普段からリスク分散の種まきをしていたことは間違いないでしょう。

Don’t put all your cakes in one basket
(ケーキは一つのカゴに盛るな)ですね。

・・・タマゴですけどね。

Don’t put all your eggs in one basket
(タマゴは一つのカゴに盛るな)

リスク分散せよ、という意味ですね。

 eggs ・・

3 売上増加

海外進出で得られるメリットの3つ目は、売上増加です。

ただ、残念ながら海外進出していきなり売上増加とはなりません。
海外進出上の競争力強化やリスク分散は進出企業にとって新しい挑戦となるため、最初の数年間は赤字が続くことも多いためです。

しかし、縮小する日本国内市場と比較し、日本の人口の10倍以上ある国や、今後も人口が増え続ける国で販路開拓することは、方法さえ間違えなれば、確実に売上拡大につながります。

現在人口が多い国にはインド、中国、アメリカ、インドネシアなどがありますが、人口増加率、つまり今後爆発的に人口が増える国には、日本企業にとってなじみの薄いパキスタン、ナイジェリア、エチオピア、コンゴなどが上位を占めています。

これら今後人口が増える国については、アジアの果て、あるいはアフリカ諸国ということで、文化風習、宗教、歴史背景を理解した戦略づくりが必要となるでしょう。

なお、先進諸国の人口増加率は、軒並みマイナスとなっています。
自国内でのビジネス展開だけでは事業の先細りは避けられません。

2008年をピークに人口減少に転じた我が国日本も例外ではなく、新しい挑戦をすることなく、どのくらい”現状”を”維持”できるかについては、あと10年から15年くらいではないかと言われています。

(今はAI化、機械化にコストメリットがない工程や仕事も、10年~15年後には概ね代替されていき、これにあったビジネスモデルに置き換えられていくと言われています)

前進以外は後退、の厳しい現実がどの国の中小企業にも迫りつつあります。

2023年 国・地域別の世界人口ランキング(国連)セカイハブ編集部 

海外進出のデメリットを深掘りする

一方で海外進出にはデメリットもあります。
ここからはデメリット3つを挙げていきます。

1 カルチャーギャップ(容易ではない顧客理解、代理店・従業員教育)

海外進出するデメリットの1つ目は、乗り越えるべきカルチャーギャップがあることです。

具体的には、海外現地の顧客理解は容易ではありませんし、海外代理店や、海外現地で雇用する従業員への教育は、多くの手間と時間がかかります。相手の立場になって考えてみても理解できない、納得できないことは頻出します。

ヒントになるのは、誰も自分が損することは選択しない、これは世界共通、ということです。

目の前で主張していることは、その人や会社にとって外せない拠り所であったり、利益を確保するための布石です。

その行動や主張が本当に意図することは何か、何に代替することができるか、その際の落としどころは何か、文化的に避けるべきアクションは何かを理解するために、その人やその会社とのコミュニケーション時間を増やし観察することは必須です。

どれほどDX化が進んでも、時短で合理的な方法だけでの異文化理解は不可能です。

Web会議のみで海外人材や海外企業とのコミュニケーションを充足させるのはかなりの上級者テクニックを要します。

海外進出にはカルチャーギャップの克服は欠かせませんが、日本企業にとって不慣れな異文化理解、日本人に不足する異文化に適応できる能力が、海外ビジネスには必須であることは海外進出のデメリットと言えます。

2 現地法・規制の壁

海外進出するデメリットの2つ目は、海外現地特有の法律や規制があることです。

具体的には、輸出に関しては、現地に輸入する際に必要になる輸入規制、その後商品やサービスを流通させる時に必要な流通規制、そもそもビジネス展開上必要になる事業者登録やライセンス取得などがあります。

投資に関しては上記に加え、外資規制、環境規制、税務法律、労務法律などがあります。

これらはもちろん国ごとにすべて異なります。
また注意点として、関連する現地当局の権限や許可申請方法は不定期に変更されることがあり、情報のアップデートは欠かせません。

もし、現地語に堪能な担当者が国内部署にいる場合、日本企業でも当局のWebサイトから情報収集することは可能ですが、漏れなく誤解なく適切な情報にたどり着けるかどうかは、ある程度の予備知識がなければ難しいでしょう。

そして難易度を上げる最大の理由は下記です。

・国によっては言語化されていないルールがあり
・現地専門家の質によって解決できたり出来なかったりする

海外現地法・規制については現在、日本の中小企業だけが被る障壁ではなくその国へ投資するすべての外国企業の障壁となっています。

3 政治・自然災害リスク 

海外進出するデメリットの3つ目は、政治・自然災害リスクがあることです。

政治体制、自然災害リスクは多くの場合日本の比ではありません。

その国の、政治勢力の動向、近隣国との外交関係、治安や犯罪の発生状況や、また、
地域別に想定される自然災害の種類と被害想定、現地の衛生状態、医療事情、かかりやすい病気、宗教上の慣習やタブーなどにも、

組織として常に対応を講じられるようにしておかなければ、従業員や顧客を適切に守ることは難しいでしょう。

そもそもの大前提として、インフラ全般、電力、ガス、水道の供給状況、交通網(道路・鉄道・航空等)・輸送経路・物流の整備状況、通信インフラの安定性が低いことが進出国で想定されている場合、現地に合った生産性の確保をしつつ、「有事には更にどうするのか?」について日頃から備えてことが重要となります。

海外進出に必要なステップと準備

以上、海外進出するメリットとデメリットをお伝えしました。

ここからは海外進出に必要なステップと準備についてご説明します。

1 市場調査:成功の鍵を握る調査設計の重要性

海外進出に必要なステップ1は市場調査ですよね。

海外進出の際に行う現地調査のことをF/S調査と言いまして、事業可能性調査という意味です。
ワタクシ、少し勉強しましたのでこれくらいのことなら知っています。

いいですね、仰る通りです。

その事業が当該国で本当に事業化できるかどうかを海外現地で調査してくることをF/S調査と言います。

F/S調査の詳細についてはこちらを是非お読みください。

海外現地で市場調査(F/S調査)はしましたか

2 人材育成:グローバルチームの構築

海外進出に必要なステップ2は人材育成です。

中小企業の海外進出にグローバルチームの構築は欠かせません。特に経営者と同じ熱量で海外市場を開拓できる優秀な担当者の配置は必須です。

海外事業担当者の育成方法としては、海外事業要員を新しく採用する方法もあれば、社内の人材を海外要員に育てる方法もあります。

いずれにせよ、日本国内の事業で必要とされてこなかった、4つの能力開発が新たに必要になります。

4つの能力
1 新規事業立ち上げ力  
2 リスク管理力
3 異文化適応力
4 ビジネス英語力

詳しくは、海外進出コンサルティング会社おススメ 26選 の後半部分 と 海外進出の能力を開発する を是非お読みください。

3 現地法人設立や代理店契約:現地コネクションのメリットとステップ

海外進出に必要なステップ3は現地法人設立や代理店契約です。

海外現地のコネクションがあれば海外進出を加速させられるメリットはありますが、その企業の体力と海外進出のどの段階(どのステップ)にいるのか、により現地法人を設立するのか、海外代理店契約にて進めるのか、取るべき策は変わってきます。

海外進出の前に日本企業に必要なこと を是非お読みいただき、各ビジネス形態の難易度を理解したうえで計画を前に進めて頂ければと思います。

まとめ:海外進出で成功するために

今日は、海外進出のメリット、デメリットが詳しく理解できて良かったです。

海外進出のメリット
1 競争力強化(ブランド価値向上)
2 リスク分散
3 売上増加

海外進出のデメリット
1 カルチャーギャップ(容易ではない顧客理解、代理店・従業員教育)
2 現地法・規制の壁
3 政治・自然災害リスク

海外進出で成功するために欠かせないことは、

海外進出するメリットデメリットを把握した上で、その企業だけの海外進出を実現できる人材を確保することです。

(ここにいます)

もし、担当者の方だけでは海外事業が前に進みづらい時や、経営者として相談先が欲しいという時は、遠慮なくお声がけ頂ければと思います。

ぜひ相談させてください。

はい。

・・・

担当者も一緒にね。

はい。

(ヤッタ・・・)

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