
海外進出が注目される背景

最近、「中小企業の海外進出」という言葉をよく聞くようになりました。
メリットやリスクについて、もう少し具体的に知っておきたいですね。

できればタイパ重視で、ざっくり結論から教えてほしいです〜!

ズバリ言えば、海外進出のメリットの方が大きいです。
ただし、“壁が多い”というのも事実。
そのギャップこそ、いま中小企業が海外展開に注目すべき理由です。

ギャップ……?

ええ、詳しくご説明します。
その前に、なぜ今海外進出が注目されるのか、その背景から見ていきましょう。

なぜ今注目されるのか
1. 日本国内の構造変化が進んでいる
国内市場は、人口減少や高齢化により縮小傾向にあります。
中小企業の数も年々減っており、国内だけに依存した経営は限界が見え始めています。


2. 実は海外進出企業の数は年々増加している
一方、海外進出を行っている中小企業の割合は約18%。
また、進出していない企業のうち約11%が今後の進出に関心を持っているという調査もあります。


このように、実際には海外展開を進めている企業は少なくなく、その数はコロナ禍を経ても増加傾向にあります。

数字で見る海外ビジネス日系企業の海外拠点は10年で倍増 月刊事業構想編集部2016年6月
海外進出日系企業拠点数調査 外務省2022年10月 から(株)パコロア編

3. 多くの企業が「重要でない」と考えている意識ギャップ
ところが、帝国データバンクの調査では8割以上の企業が「海外展開投資は重要でない」と回答しています。
このような認識と現実とのギャップが、いまのビジネス環境における課題でもあります。



4. チャンスを掴むのは、外に目を向けた少数派
こうした中でも、実際に海外進出を成功させている企業は確実に存在しています。
彼らは自社の課題を乗り越え、変化する世界市場に適応することで売上や生産性を高めています。
つまり、「やらない理由」ではなく「やる理由」を見出した企業が成果を上げているということです。

海外進出で得られる主な効果
海外進出に成功している中小企業が得ている、主な5つの効果について整理します。
1. 売上と商機の拡大
海外市場に参入することで、日本国内では得られなかった売上や販路を得られる可能性が高まります。
特に製造業などでは、現地企業との提携や直接輸出により、商機が一気に広がるケースもあります。
また、製品やサービスの魅力を海外向けに再定義することで、新たなマーケットを開拓することも可能です。
例えば、東南アジアでは購買力の上昇とともに、日本品質への信頼が根強く、安定的な需要が期待できます。


2. 雇用・人材育成の促進
中小企業白書でも示されているように、海外展開企業は非展開企業と比べて従業員数が増加傾向にあります。
現地雇用だけでなく、国内での海外部門の設置やグローバル人材の登用など、人材戦略に広がりが生まれます。
外国人スタッフとの連携や言語・文化の違いを乗り越えたチーム構築は、企業文化にも良い影響を与えるでしょう。


3. 労働生産性の向上
輸出実施企業の労働生産性は、非輸出企業と比較して216.9万円も高いというデータもあります。
これは、グローバル競争に適応する中で、業務の効率化やITツールの活用が進んでいる結果です。


4. コスト削減
拠点を海外に置くことで、法人税や最低賃金の低さ、土地や設備費の安さなど、運営コストを抑えることができます。
また、現地調達によって物流コストの削減も可能です。
税率や為替の影響などを事前にシミュレーションし、安価に抑えるための戦略を立てることが求められます。
5. 世界的な需要への即応
世界各国で求められる製品やサービスは常に変化しています。
海外市場に接点を持つことで、その変化にいち早く対応できるようになります。
特に新興国では、スマートフォン経由の購買行動やSNSを活用したマーケティングなど、消費の流れが日本とは異なる場合が多く、
新たな事業モデルのヒントを得ることにもつながります。
海外進出の主なメリット
1 競争力強化(ブランド価値向上)

まず海外進出で得られるメリットの1つ目は、競争力強化、ブランド価値向上です。
海外市場での挑戦は、新しいマーケットで勝ち抜くために、既存の製品やサービスを再評価し、競争力ある形に磨き直すプロセスそのものです。
海外顧客の視点に立ち、文化や習慣の違いを理解しながら、ブランド価値を育てていく。
この経験自体が、国内事業では得られない企業資産となります
2 リスク分散

2つ目のメリットはリスク分散です。
海外子会社が存在することで、国内の経済情勢や自然災害、パンデミックなどに左右されずに売上を維持できる体制が整います。
ところが、実際には多くの企業が“海外展開の重要性”を過小評価している傾向があります。

特にコロナ禍では、現地子会社が稼働を維持し、企業全体を支えた中小企業の声も多数ありました。
平時からの多国展開が、非常時に効いてくるのです。
3 売上増加

3つ目のメリットは売上増加です。
もちろんすぐに成果が出るわけではありませんが、海外市場に参入することで、日本国内では得られなかった売上や販路を得られる可能性が高まります。
特に製造業などでは、現地企業との提携や直接輸出により、商機が一気に広がるケースもあります。
また、製品やサービスの魅力を海外向けに再定義することで、新たなマーケットを開拓することも可能です。
例えば、インド、インドネシア、アフリカ諸国のように人口が増加している地域では、今後の購買力上昇も期待され、日本企業にとって魅力的な成長市場です。
こうした地域では生活習慣や文化が異なるため、それに合わせた製品戦略が必要ですが、だからこそ新たなニーズに応えられる余地があります。
国内市場の人口減少が避けられない中で、こうした新興国の市場は、長期的な売上増加の重要な柱となります。

海外進出のリスクと課題
1 カルチャーギャップ(顧客理解、教育の難しさ)
海外進出でまず直面するのは「文化の違い」です。
顧客の価値観、代理店の商習慣、従業員の働き方など、あらゆる場面で日本とは異なる前提が存在します。
とくに、海外現地の顧客ニーズや購買動機を読み解くのは簡単ではありません。
現地代理店や従業員の教育にも時間とコストがかかり、「どうしてそうなるのか」が理解できずに戸惑う場面も多くあります。
ポイントは、「人は損をしない選択をする」という普遍原理。
相手の主張や行動の裏にある利益構造や価値観を見抜き、どのように代替案を提示できるかが重要です。
たとえWeb会議でやり取りができても、相手の文化背景や感情に共感しながら信頼関係を築くのは一朝一夕ではできません。
異文化に適応する力が、海外ビジネスにおける大きなハードルになります。
2 現地法・規制の壁
海外に進出する際に企業が必ず直面するのが、国ごとの法律や規制です。
たとえば製品の輸出入には、輸入規制・通関手続・安全基準のクリアが求められ、現地で販売するには流通ライセンスや品質表示義務などのルールも適用されます。
投資や生産を行う場合には、外資規制や労務・環境・税制に関する法律にも対応が必要です。
これらは国ごとに異なるだけでなく、定期的に改正されることもあるため、常に最新情報を収集する体制が不可欠です。
また、実務上の難しさは「法律に書かれていない慣例や非公式ルール」が存在する点です。たとえば、
- ローカル業者との提携が実質的に必須
- “顔の見える関係”が優先される許認可手続
- 特定の弁護士や会計士でないと通らない暗黙の運用
など、日本とはまったく違う実務感覚が求められる場面もあります。
こうした課題は、その国に投資するすべての外国企業が直面するものですが、中小企業にとっては専門人材や予算の面でより大きな負担となるのが実情です。
3 政治・自然災害リスク
海外進出において見落とされがちですが、政治的な不安定性や自然災害リスクは進出国によって大きく異なります。
たとえば、
- 政治体制の変動
- 現地選挙の影響
- 外資企業への法改正や規制強化
- 治安悪化や暴動
- 隣国との外交摩擦
などは、事業の継続性に直接的な影響を及ぼします。
また、自然災害も進出先によってリスクの種類と頻度が異なり、たとえばインドネシアでは火山噴火・洪水、フィリピンでは台風、アフリカ諸国では干ばつなどが代表的です。
さらに、
- 医療インフラの脆弱さ
- 衛生環境や感染症リスク
- 宗教や文化的な制約(ラマダン期間中の対応など)
といった生活環境そのもののリスクも考慮しなければなりません。
こうしたリスクに対しては、事業継続計画(BCP)や、現地従業員とその家族を守る安全対策、万一の際の連絡網や避難手段の整備が不可欠です。
特に中小企業の場合、限られたリソースでこれらに対応するのは困難な場面も多く、事前の備えと現地パートナーとの協力体制が成否を分ける要素になります。
海外進出に必要なステップと準備

ここまでで、海外進出のメリットとリスクについてご紹介してきました。
ここからは、実際に海外展開を進めるうえで必要な「3つのステップ」をご紹介します。
1 市場調査:成功の鍵を握る調査設計の重要性

海外進出といえば、まずは市場調査ですよね?F/S調査ですよね、
つまり…フィージビリティ・スタディ!

お、よくご存知ですね。
F/S調査(事業可能性調査)は、進出先での事業成立の可能性を現地で見極めるための基礎的な工程です。
市場ニーズ、競合状況、流通インフラ、現地パートナーの有無など、参入判断の最重要材料となります。
調査設計の甘さは、後々の撤退リスクを招きかねません。
詳しくはこちらをどうぞ:海外進出前にF/S現地調査はしましたか
2 人材育成:グローバルチームの構築

海外展開の成否を分けるのは、誰が現地を任されるかにかかっています。
特に中小企業では、経営者の右腕となるような担当者が、熱意をもって現地と向き合えるかが鍵になります。
新規採用で外部から登用することもあれば、既存社員を海外担当に育てる選択肢もあります。
必要とされる「4つの能力」は以下です:
- 新規事業立ち上げ力
- リスク管理力
- 異文化適応力
- ビジネス英語力
これらを段階的に育成する仕組みづくりが求められます。
詳しくは、 海外進出の能力を開発するも是非お読みください。
3 現地法人設立や代理店契約:コネクションの活用

最後のステップは、現地拠点の構築です。
法人設立か代理店契約かは、企業の体力や進出ステージによって異なります。
いずれにしても、信頼できる現地パートナーの有無や、税制・規制の違いを踏まえた慎重な意思決定が重要です。
判断のヒントはこちら:海外進出の前に日本企業に必要なこと
海外進出で成功するために

今日の話を聞いて、海外進出のメリットとデメリットが整理できました!

ありがとうございます。
ここまでのまとめです:
【海外進出のメリット】
- 競争力強化(ブランド価値向上)
- リスク分散
- 売上増加
【海外進出のリスク・課題】
- カルチャーギャップ
- 現地法・規制の壁
- 政治・自然災害リスク
海外進出を成功に導くには、こうしたメリット・リスクを正しく理解し、現実的な計画と人材戦略を整えることが欠かせません。

(それって…私のこと!?)

(もちろん。)
もし社内だけでは判断に迷ったり、壁打ちしたいと感じる場面があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

ぜひ相談させてください。

喜んでお手伝いします!

(ヤッター…!)
海外進出は「誰と進めるか」で成果が変わる
海外進出は決して一人では進められません。
現地の複雑な事情、日本社内の温度差、わからないことだらけのスタートライン。
でもだからこそ、信頼できる壁打ち相手や並走できる伴走者がいるかどうかで、道のりは大きく変わります。
もし今、「少しでも不安がある」「何から始めればいいか見えない」と感じているなら、まずはお気軽にご相談ください。
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