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日本企業が海外市場に挑戦する機会は増え続けています。

しかし、意気揚々と進出したものの、計画が途中で止まってしまう――そんな現実に直面する企業も少なくありません。

ここでは、「海外進出 失敗」というキーワードで検索する方のために、よくあるつまずきの原因と事例、失敗を回避するための戦略、そして成功に導く視点について、実践的に解説します。

あわせて、そうした“見えにくい停滞”の正体を3つの視点から深掘りしたホワイトペーパー「海外進出、なぜ途中で進まなくなるのか?」も無料でご提供しています。

海外進出における失敗の背景

失敗の定義とその影響

海外進出における「失敗」とは単に撤退や赤字のことだけではありません。

実際には、海外進出を計画し、社内でプロジェクトチームも立ち上げたが、意思決定の遅れや戦略の曖昧さ、社内調整の煩雑さにより「検討のまま数年が経過している」というケースも「適切な改善行動が起こせない」失敗のひとつの形かもしれません。

また、せっかく海外進出したものの、成果が出ずに長期的な停滞に陥る状態も含まれます。

例えば、ベトナムに進出したある製造会社は、現地法人設立から2年経っても収益化に至らず、担当者の異動を機に自然消滅してしまいました。

また、タイに進出したK社は、最初の半年で市場の反応が乏しく、社内での評価が下がり、追加投資が凍結されて事実上プロジェクトが停止する事態に陥りました。

海外進出中の企業の中においても、現地法人の成長が止まり、社員が消耗し、社内の関心も薄れていく「自然消滅型」の停滞は、現代の失敗の典型ともいえるでしょう。

こうした“静かな失敗”は表面化しにくく、いつの間にか組織の関心も失われ、次の挑戦の芽が摘まれてしまいます。

その影響は、財務面だけでなく、将来の挑戦に対する慎重化、社員の士気の低下、経営陣の視野の狭まりなど、全社的に及びます。

日本企業が直面する特有の課題

多くの日本企業は、海外進出に対して「慎重」「丁寧」「計画重視」という強みを持っています。

しかしその反面、意思決定の遅さや、現地任せにしすぎる組織構造が足を引っ張ることもあります。

中小企業は、限られたリソースの中で意思決定と実行を両立させなければならないにもかかわらず、「現場の肌感」と「本社の経営判断」のズレが進出初期から存在しているケースは多く見られます。

たとえば、IT機器メーカーのA社では、輸出担当者が「地元向け低価格路線」を提案したものの、経営陣は「日本品質の高価格路線」に固執し、結果として現地市場に受け入れられず販売が伸び悩みました。

また、食品加工業のL社では、日本本社が「高級志向」を掲げた一方、現地の販売代理店担当者は「量販型の普及モデル」を優先しました。

両者の溝が埋まらず、混乱したままプロモーション施策が空転し、期待していた売上は上がらず、現地チームのモチベーションが低下しました。

さらには、「社長の号令だけで進出が決まり、担当者が準備不足のまま、まずは工業団地巡り、あるいは海外展示会に出展する」といったケースもあります。

この場合、現地の状況に適切に対応できずにプロジェクトが頓挫するリスクが高くなります。

海外進出失敗の主な要因

市場調査不足による誤判断

進出先の市場規模や競合状況を甘く見積もった結果、想定通りの売上が上がらないケースは後を絶ちません。

たとえば、健康食品を展開するB社は「健康ブーム」を理由に中国市場へ進出しましたが、実際には同等レベルの製品がすでに多数存在していました。

中でも、ある競合企業にいつのまにか内容成分やパッケージを模倣され、上手く差別化できずに撤退を余儀なくされました。

別の事例として、化粧品ブランドN社は「東南アジアの若年層向けに通用するはず」と判断し、現地展開を行いましたが、莫大なSNSプロモ-ション費用をかける強固なブランドが存在しており、現地ユーザーに見つけてもらうことすら出来ず短期間で撤退しました。

また、家具メーカーO社は現地でのライフスタイル調査を省略し、日本と同じ、都市向けコンパクトな家具を展開。しかし、収入に余裕のあるターゲット層の「都市部の狭小住宅」は決して狭くなく、部屋全体のサイズ感がマッチせず、受注にいたらず在庫の山となってしまいました。

文化的な違いを無視した戦略

顧客の価値観や購買動機の違いを読み違えると、たとえ製品が優れていても中々売れません。

たとえば、関西で人気のあったC社のスイーツブランドが東南アジアに進出した際、日本と同じ広告コピーやパッケージを採用しました。

日本市場では「高品質・老舗」の印象を与える毛筆体や漢字のキャッチコピーが好評でしたが、現地の若年層には難解で古臭く感じられ、「食べてみたいと思わない」「文字が仰々しい強すぎる」と受け取られたというフィードバックが寄せられました。

日本語パッケージ自体は人気がある場合もありますが、デザイン全体が“理解できて当然”との印象を与えてしまう場合、かえってブランドとの距離感が生まれてしまうのです。

また、同社がテレビCMで採用したナレーションも、日本の関西弁をそのまま翻訳せずに字幕で表示したため、意味が正確に伝わらず、現地消費者から「意味不明」「誰に向けたメッセージかわからない」と混乱を招きました。

さらに、P社のアパレル商品は日本人向けの体型・デザインをそのまま持ち込み、欧米市場で「小さすぎる」「サイズ展開が3つしかない」「スタイルが選べない」と不評を買いました。

Q社の教育コンテンツも、「思考を深め」「個性を伸ばすもの」ではなく、日本流の「詰込み型カリキュラム」であったため、東南アジアの子どもたちに馴染まず、学校現場での導入が進みませんでした。

別の事例として、E社(日本の文房具メーカー)は、韓国市場に進出した際、既存の日本語パッケージをそのまま使用しましたが、学校教育で使われる漢字の違いや字体の印象が異なったため、「学童向け」と捉えられ、社会人層には魅力が伝わりませんでした。

後にデザインを韓国市場向けに刷新することで、ようやく売上が回復しました。

海外進出の失敗を回避するには、文化の違いに配慮した設計が求められているのです。

法規制の理解不足

各国の法制度や通関手続きの違いを軽視すると、トラブルに直面しやすくなります。

例えば、D社は中東での展開において、現地販売代理店との契約解消の進め方を誤り、度重なる和解交渉に1年を要しました。

この間に、自社での現地法人設立による販売の機会損失が重なり、当初の計画が大幅に後退しました。

また、インドに進出したR社は、製品ラベルの記載基準を誤り、大量の商品が通関で差し戻され、予定外の倉庫保管料が発生する事態となりました。

現地の制度改定を追いきれていなかったことが原因のひとつでした。

さらに、北米に展開したS社では、税制に関する理解不足から輸入税の支払いに想定外のコストが発生し、利益が出る見込みが立たず、輸出の中段を決断しました。

失敗事例から学ぶ教訓

海外進出に挑戦した企業の中には、大手であっても想定外の壁に直面し、成果が得られずに方向転換や撤退を迫られたケースがあります。

ここでは、実際に起きた日本企業の事例を通じて、どのような落とし穴があったのか、そしてそこから何が学べるのかを見ていきましょう。

ユニクロの海外進出失敗事例

ユニクロは初期のアメリカ市場進出で、現地の気候やサイズ感、ファッション性を考慮した品ぞろえで展開せずに、現地のニーズに応えきれず失敗しました。

その後、撤退と再進出を繰り返しながら、現地調査と商品開発に注力することで軌道修正を果たしています。

加えて、中国市場では価格帯が高すぎるという指摘が相次ぎ、ファストファッションという立ち位置に違和感が生じていました。

これを受けて、中国市場向けにはラインナップと価格政策を見直す形で再設計が行われました。

欧州市場でも同様に、ブランドメッセージが現地消費者に響かず、店舗運営のオペレーションが日本基準のままだったために、従業員の理解が得られず定着率が悪化。

文化的な配慮の不足も課題として露呈しました。

ソニーの国際戦略の失敗

ソニーは一時期、グローバルでの標準化戦略を優先しすぎた結果、各地域のニーズとの乖離が生まれ、販売不振を招きました。

特に欧州市場では、競合がより現地に根差した製品展開を行っていたため、「SONY」というブランド力だけでは対抗できなかったのです。

アフリカ市場ではスマートフォン市場に進出したものの、現地のニーズに応じた圧倒的な低価格・高耐久モデルの開発が遅れ、シェアを取ることができませんでした。

販売チャネルも整備されず、流通面でも遅れが目立ちました。

中南米市場では、既存製品の輸出にとどまり、サービス体制が整備されていなかったため、アフターサポートの不満が噴出し、ブランドイメージが損なわれました。

キリンの海外市場での苦戦

キリンはオーストラリアのビールメーカーを買収するも、ブランド浸透やシナジー創出が思うように進まず、のちに撤退しました。

現地消費者の嗜好や流通チャネルを深く理解していなかったことが一因です。

また、米国市場でも買収した飲料会社との統合が進まず、組織文化の違いによりマネジメントが混乱。

結果として収益が悪化し、ブランド統合にも失敗しました。

アジア市場においても、現地飲料会社との提携で期待された成果が出ず、原材料調達や販路構築に手間取り、予定よりも早期に撤退を余儀なくされた事例もあります。

海外進出のリスク管理

海外ビジネスでは、文化や制度の違いだけでなく、予測できない社会情勢や政治的変化もリスクとなります。

しかし、事前に備えることで、それらのリスクを「管理可能な要素」に変えることができます。

リスク評価の重要性

進出前の段階で「何が失敗となるのか」「どの段階で撤退すべきか」を明確にしておくことで、柔軟な対応が可能になります。

たとえば、E社では市場ごとに「収支黒字化3年ルール」を設定し、進出可否を定量的に判断しています。

F社では、為替変動リスクを想定し、現地通貨建てでの契約を採用しています。
為替リスクを回避したことで、安定的なキャッシュフローを維持する目的です。

G社は、事業失敗時に備えた撤退コストをあらかじめ予算化し、出口戦略を含んだ事業計画として社内承認を取得しました。

結果として進出に対する社内の理解と覚悟を更に高めることができました。

「何が失敗となるのか」は海外進出して初めて分かることもあるため、事前にすべてを予見することは難しいのですが、経営陣で海外進出について頻度多く話し合うことや、経営陣自らが現地に足を運ぶことは、リスク評価の精度を高めることにつながります。

撤退戦略の策定

事業が期待通りに進まなかった場合の「撤退の基準」をあらかじめ定めておくことも重要です。

たとえば、ある中堅の自動車部品メーカーは東南アジアでの進出時に、撤退条件(為替変動、現地パートナーとの関係悪化など)を契約書に盛り込み、損失の最小化を図りました。

H社では、進出前から撤退までを5年間のスパンで設計し、定期的にKPIの達成度をチェックする「撤退判断会議」を実施し、損切りのタイミングを見極める文化を構築しました。

I社は、撤退時のオペレーション手順(在庫処分・従業員退職手続き・パートナー契約の終了など)を進出時に弁護士に依頼していました。

マニュアル化し、担当者が変わって万一の際にも混乱なく対応できる体制を整えています。

また、撤退戦略は、現地進出だけに限りません。

輸出事業においても、「売れている=続けるべき」とは限りません。

たとえある程度の出荷が継続していても、以下のような観点から撤退の判断が必要になることがあります。

たとえば、
1)利益率が著しく低下している
2)受注の変動が激しく、需要予測が立たない
3)為替や物流コストの変動で採算が悪化している
といったケースです。

特に小規模な輸出の場合、管理コストや関係性維持のためのリソースが割に合わなくなることがあります。

このため、輸出事業にも
「◯年連続で粗利率が◯%を下回った場合」や
「売上高が一定規模を下回る場合」など、
撤退の定量基準を設けておくと判断がブレにくくなります。

撤退は決して失敗ではなく、より集中すべき市場への経営資源の再配分ととらえることが重要です。

成功するための戦略

成功するための海外戦略には、単なる「進出」ではなく、「定着」や「共感」を生む視点が欠かせません。

進出先の市場ごとに消費者の価値観やライフスタイルは大きく異なり、それに応じた柔軟な対応が求められます。

ここでは、成果につながった企業の取り組みから、成功への具体的なアプローチを紐解いていきましょう。

現地市場に合った製品開発

たとえば、日清食品はアジア各国で「現地の味覚」に合わせたインスタントラーメンを開発しています。

インドではベジタリアン向け、タイでは辛味の強い商品と、徹底的な現地ローカライズを行い、売上を大きく伸ばしました。

また、無印良品はヨーロッパ市場で「日本的な簡素美」よりも、北欧風のカラーパレットや大きめのサイズ展開を強化しました。

消費者ニーズに寄り添った設計変更が高く評価されました。

さらに、カメラメーカーのR社は東南アジア市場向けに防水・耐衝撃に特化したアウトドアモデルを展開し、気候と使用シーンに合った製品設計で好評を得ました。

パートナーシップの構築

某大手商社は東南アジア市場で、現地の有力小売企業と提携し、販売チャネルと消費者インサイトを早期に獲得、進出初期からスムーズな展開に成功しました。

この提携の裏には、海外現地の消費者のインサイトを、短期間で理解しローカライズさせる難しさを知り抜いた商社側が、この部分に強みをもつ現地小売企業を選択したことが成功の鍵となっています。

また、建設機械メーカーT社はブラジル市場において、地場のディーラーと独占契約を締結することで、信頼獲得に成功しました。

ブラジルの建機市場は、アメリカやドイツと比べて“アフターサービスへの依存度”が非常に高いのが特徴です。

地理的に広大で交通インフラも一様でないため、故障時の迅速な対応や部品供給体制が信頼のカギとなります。

T社は進出当初、日本と同じ輸出モデルを採用していたものの、現地のユーザーから「故障後の部品到着が遅い」「修理対応に時間がかかる」と不満の声が相次ぎました。

そこで、ブラジル全土に展開する大手ディーラーと戦略的パートナーシップを結び、「技術者の即時派遣」「部品の現地在庫化」「修理保証制度の導入」といった施策を共同で実施し、結果として、信頼性の高いブランドとして再評価され、売上が回復しました。

アジア諸国では「安さと性能」、欧米では「規格と品質」が重視されるのに対し、ブラジルでは「稼働率の確保」=“止まらないこと”が評価されるという独特の価値基準があるのです。

また、美容機器メーカーU社は中国のインフルエンサーとタイアップし、越境ECを通じて販売を拡大。現地文化とオンラインチャネルを理解するパートナーとの連携が鍵となりました。

現地の文化を尊重したマーケティング

資生堂は「肌色・季節・文化ごとの美しさ」の多様性を尊重し、アジア・欧米・中東それぞれで広告表現をローカライズしました。

結果としてブランド信頼性が向上しました。

また、ローソンは中国進出時に「日本食の再現」ではなく、「現地生活に密着した利便性」に焦点を当てたことで、日常利用のコンビニとして浸透しました。

さらに、家電メーカーV社は、宗教上の理由で特定の曜日に使用できない機能をカスタマイズした冷蔵庫を中東向けに展開。

深い文化理解が市場に受け入れられる決定打となりました。

海外進出における成功事例

成功した日本企業の事例

例えば、ヤクルトはインドネシアで現地従業員による宅配モデルを確立し、「地域に根ざした販売戦略」が成功の鍵となりました。

地元の信頼を得ることで継続的なリピート購入につながっています。

また、パナソニックはベトナム市場において、教育・医療・環境支援を行うCSR活動と並行して家電販売を強化し、地域社会との信頼関係を築いたことでブランド認知を加速させました。

スシローもシンガポールでの展開において、現地の衛生基準や宗教的制約(豚肉・アルコール不使用)を踏まえた店舗運営を徹底したことで、高い評価を得ました。

成功要因の分析

成功した企業の多くに共通するのは、「現地適応」と「段階的拡大」です。

いきなり大規模投資を行わず、小規模に検証しながらフィードバックを受けて軌道修正している点が特徴的です。

たとえば、ユニチャームはアジア各国でのベビー用品展開において、各国の出産年齢・所得水準に合わせた価格設計を行い、「段階的スケールアップ」のモデルを確立しました。

また、ソフトバンクは米国の投資先との文化・価値観の違いを調整するため、専門のチームを設置。

これにより、現地との衝突を回避しつつ意思決定を迅速に進める体制を整えました。

海外進出を支援するサービス

専門家によるコンサルティング

JETROや中小機構など、政府系支援機関による無料相談サービスを活用することで、初期段階での法制度調査や販路開拓のリスクを減らすことができます。

また、民間コンサルティング会社では、進出前のフィージビリティ調査から、実際の現地法人立ち上げ、採用・教育・販路開拓に至るまで、包括的にサポート可能です。

現地パートナーの紹介

商工会議所や日系商社、銀行の海外拠点を通じて、現地のパートナー企業を紹介してもらえるケースがあります。

例えば地方自治体主導でのビジネスマッチングイベントに参加したT社は、現地販売代理店との独占契約を獲得し、早期の収益化につなげることができました。

まとめと今後の展望

失敗から学ぶ重要性

海外進出は一発勝負ではなく、「試行錯誤の連続」です。

成功企業も初期段階ではさまざまな壁にぶつかっていますが、重要なのは失敗から学び、次に活かす姿勢を持ち続けることです。

また、「なぜ失敗したのか」を正確に言語化し、社内で共有することで、再チャレンジへの土壌が整います。

過去の失敗事例を糧にできる企業こそが、海外市場での成功に近づくのです。

未来の海外進出に向けた準備

今後の海外展開を検討するうえで、まず必要なのは「自社にとっての成功の定義」を明確にすることです。

売上規模なのか、ブランド浸透度なのか、それともパートナー獲得数なのか、目的によってアプローチも異なります。

さらに、現地任せにしすぎず、経営層自身が現地の声を聞く姿勢、自ら仮説検証を繰り返す柔軟性が求められます。

そして、成功している企業の多くが実践しているように、「小さく始めて、学びながら広げる」姿勢こそが、海外進出成功の王道と言えるでしょう。

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