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なぜ日本企業は海外進出で失敗するのか?よくある誤解と成功への視点

更新 2025年7月24日 公開 2025年6月4日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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Two young men fist bumping while working on a laptop, symbolizing teamwork and global business success.

日本企業の海外進出、なぜ計画通りに進まないのか。

最近では特に飲食店や製造業など、海外展開に積極的な業種の割合が増加しています。

しかしその一方で、進出企業の約4割が
「思ったように利益が出ない」
「想定外の課題が続出する」
といった問題に直面しているのが実情です。

この記事では、「海外進出 失敗」というキーワードで情報を探す方のために、
代表的な失敗の要因と事例、事前に確認すべきポイント、成功に導く戦略をわかりやすく整理。

特に現地の法律・人材・文化的な違いを把握しきれずに起こる停滞パターンについて、具体的に紹介します。

さらに、海外展開の現場で「なぜ途中で止まるのか?」を3つの視点で深掘りしたホワイトペーパー「海外進出、なぜ途中で進まなくなるのか?」も無料公開中です。

あなたの事業が、止まらない海外展開を実現する一歩になれば幸いです。

海外進出における失敗の背景

失敗の定義とその影響

日本企業が海外市場に挑戦する数は年々増えています。

しかし、そのすべてが順調に進んでいるわけではありません。

実は、
「計画したけれど数年は動けない」
「進出したけど成果が出ず自然消滅」
といった“目立たない失敗”も少なくありません。

これが今、静かに広がる「自然消滅型の海外進出ストップ」です。

【たとえば、こんな声が】

  • 「現地法人はあるけど、担当者が疲れきってる」
  • 「そろそろ結果を出せと言われているが、手応えがない」
  • 「上層部の熱意が冷めて、打ち手もない」

こんな状態に陥っている企業、実はとても多いのです。

【なぜ起こるのか?】

このような“静かな失敗”の裏には、明確な理由があります。

  • 判断が遅い
  • ゴールが曖昧
  • リスク排除が強すぎる

それらは気づかないうちに進出の足を引っ張り、「気がつけば止まっていた」という状態を招くのです。

【でも、希望もある】

実は、同じ状況に陥りかけた企業でも、「ある視点」を持つことで再び動き出すことができた例もあります。

日本企業が直面する特有の課題

多くの日本企業は、海外進出において「慎重」「丁寧」「計画重視」といった特性を強みとしています。

しかし一方で、それが意思決定の遅れや、現地任せにしすぎる組織構造を生み、かえって足かせになる場面も少なくありません。

特に中小企業では、限られた人材・資金リソースの中で、「現場の肌感」と「本社の経営判断」のズレが進出初期から表面化するケースが多くあります。

たとえば――

  • 【IT機器メーカーA社】
    現地向けの低価格路線を担当者が提案するも、経営陣は「日本品質=高価格」を堅持。
    そのギャップにより、現地市場では思うように販売が伸びませんでした。
  • 【食品加工業L社】
    日本本社が高級ブランド戦略を展開。
    一方、現地代理店は「量販モデル」を主張し、方針がかみ合わないままプロモーションが空転し、結果的に売上が振るわず、現地チームの士気も低下してしまいました。

また、「社長のひと声で海外進出が決まり、準備不足のまま工業団地視察や展示会出展が始まってしまった」というケースもあります。

このように、現地の状況と向き合わないまま動き出すと、最終的にプロジェクトが頓挫するリスクが高まってしまいます。

海外進出失敗の主な要因

市場調査不足による誤判断

海外進出でのつまずきの原因として最も多いのが、「市場調査が不十分なまま進出を決めてしまう」ケースです。

ターゲット市場の規模や競合の存在、顧客ニーズを正しく把握できていないと、戦略が的外れになり、思うような成果が出ません。

具体的には──

  • 【健康食品のB社】
    「中国の健康志向ブーム」を根拠に進出。
    しかし実際は同等製品がすでに多数出回っており、競合他社に成分やパッケージを模倣され、差別化できずに撤退する結果となりました。
  • 【化粧品ブランドN社】
    「東南アジアの若年層ならうちのブランドが刺さるはず」と判断。
    ところが、現地にはすでに莫大なプロモーション費用を投じた大手ブランドが存在しており、自社商品を見つけてもらうことすら困難で、短期間での撤退に追い込まれました。
  • 【家具メーカーO社】
    「都市型コンパクト家具は海外でも需要があるはず」と、日本仕様のまま展開。
    ところが、現地の富裕層向け住宅は想像以上に広く、商品のサイズ感がかみ合わず、販売にはつながらず在庫だけが残りました。

進出前の「思い込み」や「予測」が、実際の市場とズレていないか。

その確認を怠ると、たとえ商品やサービスが優れていても、その良さが伝わらず失敗につながります。

文化的な違いを無視した戦略

顧客の価値観や購買動機の違いを読み違えると、製品自体が優れていても売上にはつながりません。

「これは日本で人気だから海外でも通用するはず」と思い込んだまま展開すると、現地での反応はまったく異なることもあります。

たとえば──

  • 【スイーツブランドのC社】
    日本市場で好評だった「毛筆体のコピー」「漢字ロゴ」「老舗感のあるパッケージ」を東南アジアにそのまま持ち込んだが、
    現地の若年層には「読みにくい」「古臭い」「意味がわからない」と受け取られてしまった。
  • 【アパレルメーカーのP社】
    日本人向けの小さめサイズを欧米市場へ展開したが、
    「サイズ展開が少ない」「デザインが合わない」と不満が多く、購入にはつながらなかった。
  • 【教育コンテンツのQ社】
    東南アジアに「詰込み型」の日本式教材を導入しようとしたが、
    「考える力」「個性重視」が浸透している現地教育文化と合わず、学校導入には至らなかった。
  • 【文房具メーカーのE社】
    日本語パッケージをそのまま韓国で販売した結果、
    「漢字の字体が子ども向けに見える」と捉えられ、社会人層に売れなかった。
    → 現地向けデザインにリニューアルしたことで売上が回復。

文化の“ズレ”は想像以上に繊細です。

現地の価値観や表現の受け取られ方に合わせた調整がなければ、商品の魅力は正しく伝わりません。

法規制の理解不足

各国の法制度や通関手続きの違いを軽視すると、輸出後や現地販売の段階で思わぬトラブルに直面します。

「なんとなく同じだろう」
「代理店に任せておけば大丈夫」
と思っていると、意外な足元をすくわれることも。

たとえば──

  • 【D社:中東展開】
    現地販売代理店との契約解消を拙速に進めた結果、和解交渉に1年を費やすことに。
    その間、自社直営の現地法人設立も進められず、販売機会を大きく失いました。
  • 【R社:インド市場】
    製品ラベルの表示内容がインドの基準と異なっていたため、通関時に商品が差し戻される事態に。
    結果、保管料や再配送などで想定外のコストが発生しました。
  • 【S社:北米展開】
    輸入税や関税制度に関する調査が不十分で、実際に販売を開始した後に高額なコストが発覚。
    採算が取れず、輸出を中断する決断を迫られました。

国によって、法改正や規制変更の頻度も異なります。

法的なチェック体制と専門家との連携を怠ると、小さな確認ミスが致命的な結果につながることもあります。

失敗事例から学ぶ教訓

海外進出に挑戦した企業の中には、大手であっても想定外の壁に直面し、方向転換や撤退を迫られたケースがあります。

ここでは実際の日本企業の事例を通じて、どのような落とし穴があったのか、そして何を学ぶべきかを見ていきましょう。

【ユニクロ】再挑戦を重ねて見えた現地適応の重要性

たとえば──

  • アメリカ市場進出の初期には、現地の気候やサイズ、ファッションの嗜好を十分に反映できず、失敗。
  • 中国市場では「価格が高すぎる」という印象が強く、“ファストファッション”というポジションが受け入れられず。
  • 欧州市場ではブランドメッセージが響かず、日本式の店舗運営が従業員に合わず離職率も高止まり。

その後、各市場に合わせた商品設計と価格政策を徹底し、少しずつ軌道修正してきました。

再挑戦の裏には、徹底した市場リサーチと柔軟なローカライズの積み重ねがあります。

【ソニー】グローバル標準の落とし穴

たとえば──

  • 世界共通モデル戦略にこだわりすぎて、欧州では現地ニーズにマッチせず、競合にシェアを奪われる。
  • アフリカでは、現地で求められる低価格・高耐久スマホへの対応が遅れ、販売不振。
  • 中南米ではアフターサービス体制が整わず、顧客満足度が低下。ブランドへの信頼にも影響が。

地域ごとの生活様式や購買力に応じた製品戦略・流通体制の不備が、グローバルブランドでも命取りになるという教訓です。

【キリン】買収による拡大戦略が生んだギャップ

たとえば──

  • オーストラリアのビールメーカー買収後、想定していたブランド浸透やシナジー創出が進まず、撤退。
  • 米国では買収先との文化統合に失敗し、マネジメントに混乱が生じ、収益悪化。
  • アジアでは原材料調達や販路整備が思うように進まず、期待されていた成果を得る前に事業から撤退。

M&Aはスピード感のある市場拡大策である一方、現地理解や組織文化の融合が不十分だと、戦略が瓦解するリスクをはらんでいます。

このように、大手企業でも海外進出には細心の準備と柔軟な現地適応が不可欠。

「知名度」や「過去の成功体験」だけでは乗り切れない壁があることが、これらの事例からは明らかです。

海外進出のリスク管理

海外ビジネスでは、文化や制度の違いだけでなく、予測できない社会情勢や政治的変化もリスクとなります。

しかし、事前に備えることで、それらのリスクを「管理可能な要素」に変えることができます。

リスク評価の重要性

進出前の段階で「何が失敗となるのか」「どの段階で撤退すべきか」を明確にしておくことで、柔軟な対応が可能になります。

たとえば:

  • 【E社】
    市場ごとに「収支黒字化3年ルール」を設定し、進出可否を定量的に判断。
  • 【F社】
    為替変動リスクを考慮し、現地通貨建てでの契約を採用。
    安定的なキャッシュフローを確保。
  • 【G社】
    事業失敗時の撤退コストをあらかじめ予算化。
    出口戦略込みの事業計画で社内承認を獲得。

「何が失敗か」は進出して初めて分かることも多いため、すべてを予見するのは難しいですが、経営陣による頻繁な議論や現地視察が、リスク評価の精度を高めます。

撤退戦略の策定

事業が期待通りに進まなかった場合の「撤退の基準」をあらかじめ定めておくことも重要です。

たとえば:

  • 【中堅自動車部品メーカー】
    東南アジア進出時、為替変動・パートナー関係の悪化を撤退条件に契約書へ明記。
  • 【H社】
    進出から撤退までを5年スパンで設計。
    KPI評価を通じた「撤退判断会議」を定期開催。
  • 【I社】
    撤退時の在庫・人員・契約整理の手順を、進出時に弁護士とともにマニュアル化。

さらに、以下のような輸出ビジネスの撤退判断例もあります:

  • 1. 利益率が著しく低下している
  • 2. 受注の変動が激しく、予測不能
  • 3. 為替や物流コストの上昇で採算が悪化

たとえ出荷が継続していても、「粗利率が◯%を下回った場合」「売上が一定規模を下回る場合」など定量的な基準を設定することで、判断のブレを防げます。

撤退は決して失敗ではなく、集中すべき市場へのリソース再配分と捉えることが大切です。

成功するための戦略

海外戦略で成果を上げるには、単なる「進出」にとどまらず、「定着」や「共感」を生む視点が欠かせません。

市場ごとに異なる価値観やライフスタイルに対応するためには、柔軟な対応が必要です。

ここでは、実際に成果を上げた企業の取り組みから、成功に向けたヒントを探ります。

現地市場に合った製品開発

成功する企業は、製品を“そのまま持ち込む”のではなく、進出先のニーズに応じて大胆にカスタマイズしています。

たとえば:

  • 【日清食品】
    インドではベジタリアン向け、タイでは辛味を強化した即席麺を展開。
    現地の味覚に徹底対応。
  • 【無印良品】
    ヨーロッパ市場では日本的ミニマルより北欧調を強化。
    大きめサイズやカラー展開が好評に。
  • 【R社(カメラメーカー)】
    東南アジア向けに防水・耐衝撃モデルを展開。
    気候や使用シーンに即した設計で支持を獲得

パートナーシップの構築

現地企業との連携は、信頼や販売網を築くうえで欠かせない戦略です。

たとえば:

  • 【某大手商社】
    東南アジアで有力小売と提携し、チャネルとインサイトを同時に獲得。
    展開初期から順調に。
  • 【T社(建設機械メーカー)】
    ブラジルで全国展開ディーラーと戦略提携。
    即時派遣・部品在庫・修理保証を実現しブランド再評価へ。
  • 【U社(美容機器メーカー)】
    中国のインフルエンサーとタイアップし、越境ECを通じた販売を拡大。
    現地文化×SNS戦略が成功の鍵。

現地の文化を尊重したマーケティング

文化理解を欠くと、良い製品も伝わりません。

逆に、価値観への共感はブランドの信頼につながります。

たとえば:

  • 【資生堂】
    肌色・季節・文化ごとに広告表現をローカライズ。
    アジア・欧米・中東それぞれに最適化し、信頼性向上。
  • 【ローソン】
    中国市場では「日本食の再現」よりも「生活密着の利便性」を前面に。
    日常使いの存在へ定着。
  • 【V社(家電メーカー)】
    中東市場向けに宗教的事情を踏まえた冷蔵庫機能を開発。
    文化理解が競争力に直結。

海外進出における成功事例

成功した日本企業の事例

失敗事例が目立ちますが、海外進出で成果を出している企業も多数存在します。

成功の背景には「現地に寄り添う姿勢」と「丁寧な調査・準備」が共通しています。

  • 【ヤクルト】
    インドネシアで現地従業員による宅配モデルを導入。
    「地域密着型戦略」がリピート率の向上に貢献。
  • 【パナソニック】
    ベトナムでCSR活動(教育・医療・環境支援)と並行して家電を展開。
    地域社会との信頼構築に成功。
  • 【スシロー】
    シンガポールでの展開において、宗教・衛生基準を尊重した店舗運営を徹底し、高評価を獲得。

成功要因の分析

成功企業の多くは、現地に“適応”する柔軟性と、“小さく始めて育てる”というステップ型戦略を実践しています。

  • 【ユニチャーム】
    アジア各国で所得・文化に合わせた価格設計を実施。
    「段階的スケールアップ」の好事例。
  • 【ソフトバンク】
    米国投資先との摩擦を回避するため、専任チームを設置。
    スムーズな意思決定を支える体制を構築。

海外進出を支援するサービス

専門家によるコンサルティング

何から始めればいいかわからない」という方は、まず専門機関のサポートを受けることが近道です。

  • 【JETRO/中小機構】
    無料相談を活用し、法制度・税制・販路のリスクを低減。
  • 【民間コンサル】
    フィージビリティ調査、現地法人設立、販路開拓までフルサポートが可能。

現地パートナーの紹介

現地での信頼関係構築には、パートナー選びがカギとなります。

既存のネットワークを活用しましょう。

  • 【T社】
    地方自治体主催のマッチングイベントで現地代理店と契約。
    進出初期からの収益化に成功。

まとめと今後の展望

失敗から学ぶ重要性

海外進出は一発勝負ではなく、「試行錯誤の連続」です。

成功企業であっても、最初は想定外の壁に何度もぶつかっています。

大切なのは、失敗を恐れず、そこから学びを得て次に活かす姿勢。

失敗の要因を正確に言語化し、チームで共有しておくことが、次の挑戦の地盤になります。

“失敗できる企業”こそが、最終的に海外市場で生き残るのです。

未来の海外進出に向けた準備

海外進出を検討するうえで、まず見つめ直したいのは「自社にとっての成功の定義」です。

売上か、ブランド浸透か、パートナー獲得か──目的によって戦略はまったく異なります。

そして、任せきりではなく、経営陣自らが現地の声を聴きに行き、小さく試して育てる。この柔軟性が、成功企業に共通する特徴です。

今からできる“正しい準備”が、将来のチャンスを引き寄せます。

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小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・B2B・B2C・D2Cなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

著者プロフィールを見る

PaccloaQ

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