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無印良品は本当に世界で成功しているのか?MUJIの海外進出から学ぶブランド戦略

更新 2026年10月3日 公開 2025年9月8日
小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

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World map with red location pins and Japanese text reading 'MUJI's Overseas Expansion

海外でも「MUJI」として知られる無印良品。

1991年にイギリスへ進出して以来、海外展開を続け、現在では海外だけで700店舗を超えています。

これだけを見ると、「日本で生まれたブランドを世界へ広げた成功企業」に見えます。

しかし店舗数を見ると、その姿は少し違います。

海外店舗の半数以上が中国大陸に集中する一方、欧米の店舗数はそれほど多くありません。

初期の欧州事業では苦戦し、中国では商標をめぐって20年以上争うことにもなりました。

それでもMUJIは海外展開を続けています。

しかも、その過程で商品開発、価格、調達、店舗、販売方法など、多くのものを変えてきました。

それだけ変えても、なぜ「MUJI」はMUJIであり続けられるのでしょうか。

無印良品の海外進出から、世界でブランドを育てるとはどういうことなのかを考えます。

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無印良品は、本当に世界で成功しているのか?

無印良品は現在、日本を含む28の国・地域に展開しています。

海外だけでも729店舗。十分に「世界で展開するブランド」といえる規模です。

ところが、店舗数の内訳を見ると印象が変わります。

  • 中国大陸 422店舗
  • 台湾 70店舗
  • 韓国 42店舗
  • イギリス 6店舗
  • フランス 6店舗
  • アメリカ 10店舗
  • カナダ 6店舗

海外729店舗のうち、半数以上が中国大陸に、9割以上がアジアにあります。

つまりMUJIは、世界各地で同じように店舗を増やしてきたブランドではありません。

海外事業の中心は東アジア、とりわけ中国大陸です。

一方、海外進出の出発点だった欧州や、巨大な消費市場である北米では、中国ほどの店舗網にはなっていません。

「MUJIは世界で成功した」

それ自体は間違いではありません。

ただ、その中身を見ると、国や地域によって成功の規模は大きく違います。

では、なぜこれほど差が生まれたのでしょうか。

まずは、MUJIの海外進出が決して順調なスタートではなかったところから見ていきます。

海外進出の始まりは、決して順調ではなかった

無印良品の海外進出は、1991年のイギリス・ロンドンから始まりました。

しかし、日本で支持されていた「無印良品」を海外へ持っていけば、そのまま事業として成功するわけではありませんでした。

初期の欧州事業では、現地の嗜好に合った商品開発、現地生産、物流体制、店舗の収益性など、さまざまな課題に直面します。

当時のロンドンでは、家賃が売上高の約19%に達する店舗もあり、売上が伸びても利益が残りにくいという問題もありました。

それでも無印良品は欧州から撤退せず、店舗の統廃合や運営方法の見直しを続けました。

ここで重要なのは、海外で苦戦した理由を「MUJIというブランドが受け入れられなかった」と単純化できないことです。

ブランドに魅力があっても、商品、価格、物流、店舗運営などがその市場で事業として成立しなければ、海外進出は続きません。

「ブランドが世界で知られること」と「海外事業として利益を出せること」は別の話なのです。

なぜMUJIは中国でこれほど大きくなったのか?

無印良品が中国大陸に1号店を開いたのは2005年、上海でした。

それから20年。2025年8月末には422店舗まで拡大し、中国大陸は良品計画が「海外事業の中で最大規模」と位置づける市場になっています。

では、なぜ中国ではこれほど大きくなったのでしょうか。

興味深いのは、中国で店舗を増やしただけではなく、事業のつくり方そのものを変えていることです。

2019年以降、商品開発の現地化を進め、現在では商品企画から設計、製造、販売、マーケティングまで、中国大陸の中で完結できる体制を構築しています。

2024年時点では、中国大陸で販売する生活雑貨の70%が現地開発商品になっていました。

サイズだけを中国仕様に変えるのではなく、ペット用品やデジタル機器関連の小物など、中国のニーズから生まれたカテゴリーも増えています。

つまり中国でのMUJIは、

「日本でつくった無印良品を、中国で売る」

だけではなくなっています。

中国で商品を考え、中国でつくり、中国で売る。

それでも店に並べば「MUJI」に見える。

ここに、無印良品の海外展開を考えるうえで重要なヒントがあります。

海外でMUJIブランドを守るために、日本と同じ商品を売り続ける必要はなかったのです。

むしろ日本とは異なる商品を展開しても、海外で「これがMUJI」と認識される。

その状態をつくれることこそが、ブランド戦略なのです。

なぜ欧米ではアジアほど大きくなっていないのか?

中国大陸422店舗に対して、イギリス6店舗、フランス6店舗、アメリカ10店舗、カナダ6店舗。

MUJIは欧米にも30年以上進出していますが、店舗数だけを見れば、その規模はアジアとは大きく異なります。

欧米事業では、店舗運営コストの高さや収益性が長年の課題となってきました。

特にアメリカでは、2020年に新型コロナウイルスの影響で全18店舗を一時閉鎖し、米国法人が連邦破産法11条(Chapter 11)の適用を申請しました。

これは会社を清算するためではなく、事業を継続しながら不採算店舗や契約、債務などを整理して再建するための手続きです。

MUJI USAはその後も事業を継続しています。

つまりMUJIほど世界各地に展開する企業でも、

「ブランドが知られている」
「商品が支持される」
「店舗事業として利益が出る」

は別の問題です。

実際、良品計画は現在も欧米事業について、収益構造の改善を進めながら成長を目指しています。

中国では400店舗を超える一方、欧米では数店舗から十数店舗。

この差を見ると、海外進出は「ブランド力があれば、どの国でも同じように拡大できる」ものではないことが分かります。

市場が変われば、同じブランドでも事業として成立する条件は変わるのです。

成功・失敗の裏には、「初期の判断」があります。

無印良品の事例からも分かるように、海外進出は最初の判断だけでなく、進出後も市場に合わせて事業を見直していく必要があります。

まずは、自社の現在地を整理してみませんか?

・海外販路の選び方
・失敗しやすいポイント
・最初の1年の進め方

実務ベースで整理できる内容になっています。

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中国でできて、欧米ではできなかったことは何か?

中国大陸では422店舗まで拡大した一方、欧州は32店舗、北米は16店舗にとどまっています。

この差は、単に「中国ではMUJIが人気で、欧米では人気がない」という話ではありません。

中国では店舗網を拡大しながら、商品開発、調達、製造、販売まで現地で行う体制をつくってきました。

現地の暮らしに合わせた商品を開発し、それを多くの店舗で販売する。

店舗が増えることで事業規模が大きくなり、さらに現地で事業をつくりやすくなる。

この循環が生まれました。

一方、欧米では店舗数を十分に増やせないまま、高い店舗運営コストや収益性が課題となり、不採算店舗の閉鎖や事業再編を繰り返してきました。

同じMUJIでも、中国では「現地で事業を回せる規模と仕組み」をつくることができ、欧米ではそれが十分にできなかったのです。

ただし、MUJIは欧米を諦めたわけではありません。

良品計画は現在、欧米の収益構造を改善したうえで再び成長させる方針を掲げています。

欧州では2026年秋から冬にパリへ欧州初の旗艦店を出店し、欧州での出店を再開する予定です。

つまり、うまくいかなければ同じ方法を続けるのではなく、店舗を閉じ、事業を組み直し、条件が整えば再び出店する。

海外事業を続けることと、同じやり方を続けることは別なのです。

そしてこの違いこそ、無印良品の海外進出から中小企業が学べる重要なポイントです。

中小企業が無印良品の海外進出から学べること

無印良品の海外進出は、中小企業には規模が違いすぎて、そのまま真似できるものではありません。

しかし、MUJIが実際に海外で直面した問題を見ると、中小企業にも共通する問いが見えてきます。

たとえば中国大陸では、現地法人を100%出資で設立し、店舗もフランチャイズではなく直営です。

さらに商品開発や生産まで現地化してきました。

海外へ進出すると、代理店や現地パートナーに任せた方が早い場面はあります。

しかし、どこまでを相手に任せ、どこからを自社で握るのか。

これは中小企業でも最初に考えておく必要があります。

またMUJIは、欧米で店舗数を増やすことだけを追わず、不採算店舗を閉鎖し、事業そのものを組み直してきました。

「海外で売れているか」だけではなく、「この売り方で利益が残るのか」を見なければ、売上が増えても海外事業は続きません。

そして、もう一つ見逃せないのがブランドを守る準備です。

MUJIほどの企業でも、中国では「無印良品」の商標をめぐる問題に長期間直面しました。

海外へ出てから商標を守ろうとしても、すでに第三者に登録されていることがあります。

現地パートナーにどこまで任せるのか。
どの市場なら利益が残るのか。
ブランドや商標をどう守るのか。

MUJIは、こうした問題に実際に時間とコストをかけながら海外事業をつくってきました。

中小企業なら、同じ失敗に何十億円、何百億円とかけることはできません。

だからこそ、大企業の海外進出事例を見る意味があります。

先に失敗した企業が何に困り、何を変えたのかを知り、自社なら進出前に何を決めておくべきかを考える。

それが、大企業の海外進出事例から中小企業が学べる一番大きなことではないでしょうか。

海外進出、自社の場合はどう進める?

無印良品の海外進出を見ても、海外で事業を続けるためには、商品や販売方法だけでなく、現地パートナーとの関係、収益構造、ブランドの守り方まで考える必要があります。

大企業であれば、失敗しながら事業を組み直すこともできます。

しかし、資金も人材も限られる中小企業では、同じ方法は取れません。

だからこそ、海外進出を始める前に、

  • どの市場を狙うのか
  • どの販売方法を選ぶのか
  • どこまで自社で行い、どこから外部に任せるのか
  • どのくらいの費用と期間を見込むのか
  • どんなリスクを先に確認しておくのか

を、自社の状況に合わせて整理しておくことが重要です。

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本記事は、大企業の海外進出事例を分析するシリーズの一つです。

小川 陽子

著者紹介 :小川 陽子 (代表取締役)

英語英文学科を卒業後、中小メーカーの国際部で海外営業に従事後独立。27年以上にわたり、1,900社以上の中小企業の海外展開を支援。国際化支援アドバイザー、海外販路開拓アドバイザー、中小企業アドバイザー(経済産業省系組織)としても活動。

これまでに35カ国での商談・出展・調査を経験。支援対象は製造・小売・サービス・BtoB・BtoC・DtoCなど多岐にわたり、海外投資・輸出・輸入・展示会・海外SEOなど幅広く対応。

「海外進出は"急がば回れ"。場当たりではなく、"自走できるチカラ"を社内で育て、未来の世界市場で誇れる一社を目指して——今日も中小企業の現場で伴走支援を続けています。」

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