「海外進出したいけど、ウチみたいな中小製造業が成功するのは無理じゃないか…?」
そんな不安を抱える経営者や担当者にこそ知ってほしいのが、空調メーカー・ダイキン工業のグローバル戦略です。
ダイキンは、今や世界150カ国以上に展開し、業界世界No.1の売上を誇るグローバル企業。
でも、最初からそんなスケールだったわけではありません。
本記事では、ダイキンがどのように海外進出を進めてきたのかを歴史からひも解きつつ、
– 現地に根付く方法
– 技術をどう差別化に活かしたか
– 各国の規制や環境基準にどう対応してきたか
– 中小企業にも応用可能な「真似できる戦術」
を解説していきます。
「自社に当てはめるなら、何ができる?」という“Doの視点”で学べる実践型の読み物として、中小企業がこれからの海外展開を考える上でのヒントをたっぷりお届けします。
ダイキンの海外進出はどこから始まったのか?
空調業界で世界トップクラスのシェアを誇るダイキン工業。
現在では150カ国以上に事業を展開していますが、その海外進出の歩みは、段階を踏みながら築き上げられてきたものです。
ダイキンがどのように最初の一歩を踏み出し、どのような拠点戦略と拡大路線を採ってきたのかを紐解くことで、中小製造業にとっても応用可能な戦略の本質が見えてきます。
創業から海外展開まで ― 国内の成功とグローバル転換の決断
ダイキン工業の創業は1924年。
戦後は空調機器の開発・製造に注力し、1950年代には「ポリフロン」の製造や、国産初のパッケージエアコンなどの製品開発によって国内市場でのポジションを確立していきました。
しかし、国内需要の伸びが鈍化し始めた1960年代末から、ダイキンは海外市場への展開を視野に入れはじめます。
1969年にオーストラリアで販売会社を設立し、1972年には欧州市場に本格参入するべく、ベルギーに「ダイキンヨーロッパ」を設立しました。
この段階で、ダイキンは単なる製品輸出に留まらず、現地に法人を設け、販売とサービスの基盤を整える戦略をとっていた点が注目されます。
出典:ダイキン工業 – Wikipedia、関西産業大学 紀要論文PDF
M&Aを活用した拠点拡大 ― 世界市場への本格進出
1990年代以降、ダイキンはさらなるグローバル展開を進める中で、M&Aを積極的に活用していきます。
特に2006年には、マレーシアを拠点とする大手空調メーカー「OYL Industries」を買収。
これにより、アジア・中東・アフリカ市場における販売ネットワークを獲得し、新興国市場の攻略に向けた足場を整えました。
さらに2012年、北米最大の住宅用空調メーカー「Goodman Manufacturing」を買収。
この買収によって、北米市場における生産・販売体制を一気に強化し、グローバル空調業界における地位を確固たるものとしました。
同時に、テキサス州ヒューストン近郊に新たな大規模生産拠点「Daikin Texas Technology Park」を建設し、現地供給力とサービスレベルの向上を実現しています。
出典:ダイキン工業 プレスリリース 2012年、Daikin Comfort – Company History
現地拠点戦略が成功の鍵に ― 中小企業が学べること
ダイキンの海外展開初期における重要な特徴は、以下の3点に集約されます。
- 拠点設置による販売・サービスの現地化
- 戦略的M&Aによる市場ネットワークの獲得
- 自社工場を含む一貫体制の構築
これらの取り組みによって、ダイキンは「製品を売る」企業から、「現地の課題を解決する」存在へと約40年かけて進化を遂げました。
現地で信頼されるメーカーとなったことが、世界規模でのブランド浸透を支える原動力となっています。
中小企業においても、初期段階で輸出や代理店任せの販売にとどまらず、たとえば、
- 現地の販売代理店に対して自社製品の使い方や強みを伝える定期的なトレーニングを実施したり、
- ユーザーからの声を迅速に共有する体制を構築することで、
ブランド理解と販売力の強化が可能になります。
こうした連携の積み重ねが、長期的に現地市場で選ばれ続ける礎となるのです。
主要市場と拠点戦略 — ダイキンはどこでどう勝負してきたか
世界的な空調メーカーとして、ダイキン工業 はアジア、北米、ヨーロッパ、中東など、地域ごとに異なる戦略をとりながら、その販売網と生産網を広げてきました。
ここでは、代表的な主要市場と拠点戦略を概観します。
アジア・新興国市場:拡大を見込む“地の利”活用
ダイキンは、アジアや中東、アフリカ、南米など「空調ニーズの高まりが見込まれる地域」に対して、早くから現地拠点を整備、常に事業計画のアップデートも行っています。
これにより、気候要件・現地の建築事情・経済水準に応じた製品とサービス提供を実現しています。
たとえば、2022年にはサウジアラビアに新たな組み立て工場を設立。
中東・北アフリカ地域における供給体制の強化を図っています。
中小企業にとっての示唆としては、「自社の強み×対象国の気候/ニーズ」を掛け合わせて、小規模でも“刺さる市場”を最新状況をベースに狙う拠点戦略が学べます。
北米市場:M&Aと現地生産で“土俵”を入手
ダイキンの北米進出の大きなターニングポイントとなったのが、2012年のGoodman Manufacturing の買収。
これにより、北米での住宅用空調市場への参入が一気に現実的となりました。
加えて、買収後に設立された大規模生産拠点 Daikin Texas Technology Park により、現地生産〜現地販売体制が整備され、北米市場での展開基盤が強固になりました。
これは「単なる輸出先確保」ではなく、「現地に根ざした事業基盤の確立」という、グローバル展開で理想的なモデルといえます。
買収と聞くと、中小製造業にはハードルが高いと感じられるかもしれません。
しかし、ダイキンのように、
ーまずは現地企業に生産を委託し、
ー信頼関係を築いた上で主要株主となり、
ー最終的に完全子会社化へと移行する段階的アプローチは、
すでに多くの日本の製造企業が実践してきた現実的な方法です。
つまり、小さく始めて、着実に育てる拠点戦略こそが、中小企業にとっても十分に再現可能な成功モデルなのです。
欧州市場:普及型空調+冷蔵/冷凍設備で多角展開
ヨーロッパでは、空調製品のみならず、商業用冷蔵・冷凍設備の分野にも進出。
2019年にはオーストリアの冷蔵機器メーカーAHT Cooling Systems GmbH を買収し、食品流通向けの冷チェーンソリューション市場へ参入しました。
また、ヨーロッパ各国に生産拠点を持ち、現地での製造・供給体制を整備することで、各国の環境規制やエネルギー効率、顧客要求に応える体制を構築しています。
欧州では「空調+冷蔵/冷凍設備」という包括的ソリューション提供が、ダイキンの差別化ポイントとなっており、これは中小企業が“複数用途でのニーズ”を見据える際に参考になる戦略です。
拠点網の広がりとグローバル統合
ダイキンは、グループ全体で世界170か国以上に展開し、120以上の生産拠点を持つグローバルメーカーとなっています。
海外売上比率は7割超、さらにグループ従業員の約8割が海外で働いているという点からも、もはや「日本企業」ではなく「グローバル企業」としての実態が明確です。
この広域拠点網と現地化戦略が、気候・規制・文化の異なる各地域での安定供給とビジネスのスケーラビリティを支えています。
中小企業が学ぶべき「拠点戦略」の視点
- 小規模でもよいので、現地で生産または販売・サポートが行える体制を整えることで、競争優位性が高まる。
- M&Aに限らず、現地の信頼できる企業と提携することで、販路や人材、ローカル知見を効率よく獲得できる。
- 空調だけでなく冷蔵設備のように、「関連分野」にサービス領域を拡張することで、新しい市場に対応できる可能性がある。
出典元:
ダイキンが継続的に勝ち続ける“成功要因”
空調という製造業でありながら、ダイキン工業は単に製品を作って売るだけではなく、技術革新・グローバル適応力・企業文化の融合によって、グローバル市場で圧倒的な強みを確立してきました。
以下は、その“成功の根幹”となっている要因です。
技術力 × 統合ソリューション — 空調+冷媒まで手がける一貫体制
ダイキンは、空調機器だけでなく、冷媒(フッ素化学)まで自社で手がける「総合空調メーカー」です。
これにより、外部依存せずに温度管理、冷媒性能、製造効率を統合して提供できる強みがあります。
また、同社は変化する環境規制やエネルギー効率への要求に応えられるよう、自社の技術開発力を活かして、新冷媒や高効率の空調システムなど、時代の先端を行く製品を継続的に投入しています。
こうした「製品+冷媒+設計・生産」の統合は、単なる部品メーカーではなく、“ソリューションプロバイダー”としての価値を生み出す源泉です。
コラム:垂直統合は時代遅れ?ダイキンの戦略は“脱・家電の失敗”
ところで、日本の家電メーカーが衰退した要因のひとつに、「垂直統合の罠」があります。
部品から組み立て、物流、販路に至るまで何でも自前で抱え込み、結果としてコスト高・変化対応の遅さ・イノベーション不足に陥ったと指摘されているものです。
一方、GAFAなどの成功企業は「スマイルカーブ」で言われるように、価値の高い“上流(企画・開発)”と“下流(ブランディング・顧客接点)”だけを押さえ、中間の製造は外部委託という戦略で急成長しました。
では、ダイキンの「冷媒まで自社でやる」戦略は時代遅れの垂直統合なのでしょうか?
実はまったく逆です。
ダイキンは「空調」という本業の中で、“価値の本質”を深く見極めたうえで、その価値を握るために冷媒(技術+規制対応)を自社で開発・保有しているのです。
つまり、「何でもやる」垂直統合ではなく、「勝ち筋に直結する分野だけを握る」選択的な一貫体制がポイントです。
しかも冷媒事業は、環境規制という外的変化に柔軟に対応できる強みであり、同時に「技術的参入障壁」としての差別化にもつながっています。
中小製造業にとっても重要なのは、「全部自社でやるか」ではなく、競争力と顧客価値のコアとなる工程だけを、確実に自社でコントロールすること。
その選択と集中こそが、グローバル市場で生き残る鍵なのです。
グローバル適応力と多様な人材・文化の尊重
ダイキンは「人」「環境」「進取の精神」を基盤とする経営理念を掲げ、海外展開を進めてきました。
異なる国・地域で働く多様な人材を尊重し、グローバル企業としての柔軟性を保つ企業文化を築いています。
世界170カ国以上で事業を展開している点からも、各地域の気候・規制・文化に適応できる体制があることがわかります
こうした多様性と現地適応力こそが、グローバルな信頼獲得と長期的な拡大に結びついています。
技術革新と環境対応 — 市場の変化に先手を取る経営
近年では、空調機器の単なる販売から、設置後の運用データを活かした“環境・エネルギー課題の解決”にもビジネスモデルを拡大中です。
空調データを使って省エネ提案や快適性向上、IoT/DX活用のサービスを展開しています。
また、冷媒の環境負荷や各国の規制を見据えた自社開発を行うことで、将来の規制強化や市場変化にも柔軟に対応できるポジションを確保しています。
これにより、単なる「モノ売りメーカー」ではなく、「環境ソリューション企業」としての競争優位も築いています。
長期視点の投資と、段階的な成長 — 安定かつ持続性のある拡大
ダイキンは、創業以来100年を超える歴史の中で、短期利益ではなく「長期的な価値創造」を見据えた経営を継続してきました。
また、海外展開においては単発や輸出に留まらず、現地生産・現地販売・地域特化製品という“本格的な地の利活用”を段階的に実行してきたことで、安定性とスケールを両立させています。
この「長期×段階的」戦略は、短期で結果を求めがちな中小企業でも応用できる考え方です。
条件反射的に目の前の案件獲得に走るのではなく、“競合の弱み”と“自社の強み”が交わる谷間に、着実に拠点と能力を育てていく──、という視点が重要です。
中小企業が真似できる“ダイキン流 成功要因”の展開イメージ
- 空調であれ他の製造業であれ、「自社製品+自社で管理できる資材 or 部材」を持つことで、差別化と安定供給力を高める
- 多様な人材や文化を受け入れ、海外進出先での適応力と現地理解を深める
- 単なる「モノ売り」ではなく、「課題解決型ソリューション+継続サービス」で価値提供を拡大
- 短期成果よりも、長期視点で段階的に拠点と体制を育てるための「今」を組み立てる
なぜダイキンは“失敗”から立て直せたのか?
ダイキンは、空調機器と冷媒の両方を手がける「総合空調メーカー」として強みを築いてきました。
しかしその強みゆえに、国際的な環境規制や市場の変化、グローバル経営の複雑化といった“壁”に直面する局面もありました。
ここでは、ダイキンが乗り越えた主な課題と、その対応から学べるポイントを整理します。
冷媒規制と環境対応の変化 — 事業の根幹に対するプレッシャー
【直面した壁】
- 1987年のモントリオール議定書採択により、オゾン層破壊の原因となる冷媒(CFC/HCFC)は規制対象に。
空調・冷媒メーカーとして、使用冷媒の切り替えや将来性の不透明性という事業リスクに直面。
- さらに、地球温暖化対策を進める国際的な流れや規制強化により、従来冷媒のままでは販売や市場展開に支障が出る可能性が高まった。
特に海外市場においては、各国の法規制や排出ガス規制への対応が急務に。
【ダイキンの対応】
- ダイキンはかねてより冷媒の研究・製造から行ってきた技術力を活かし、オゾン層破壊の少ない冷媒へといち早く切り替えを進めた。
たとえば、従来冷媒と比較して温暖化係数が低いR32冷媒を開発・普及させ、地球環境への配慮とビジネス継続性の両立を図ったのです。 - また、冷媒の製造・供給から機器設計・販売までの一貫体制を持つことで、規制の変化に対して迅速かつ柔軟に対応できる“垂直統合モデル”を維持。
この構造が、冷媒規制という逆風下でも安定したグローバル展開を支える基盤となりました。
【教訓(中小企業に応用できる視点)】
冷媒のようなコア技術・コア部材を持つことで、規制リスクを “弱み” ではなく “競争力” に変える――。
市場変化に柔軟に対応できる体制を、初期段階から整える価値がある。
グローバル展開の拡大による管理・組織の複雑化 — ガバナンスと統合経営の必要性
【直面した壁】
- 1990年代以降、ダイキンは日本国内中心のビジネスから、世界各地での事業展開へと大きく舵を切った。
これに伴い、多数の国・地域にまたがる子会社や拠点、複雑な組織構造が形成され、会計・コンプライアンス・グループ管理体制の維持が困難に。 - また、環境規制や国際標準(品質/環境/安全)への対応、さらに冷媒規制など、国や地域ごとに異なる法制度への順応も負荷となった。
【ダイキンの対応】
- 1995年にグループ主要子会社を集めた会議を設け、「自主経営のための行動規範(Code of Behavior for Autonomous Management)」を制定。
1996年以降、海外拠点も含めてグループ統治体制の強化を図った。
これにより、グローバル経営の透明性と統合管理体制を構築。 - 環境マネジメント体制として、国際規格への準拠や、環境・品質・安全に関するガバナンスを全社レベルで徹底。
冷媒開発・機器生産・販売まで一貫して管理することで、各国規制への適応力を維持した。
【教訓(中小企業に応用できる視点)】
拠点や販売網を広げる際は、まず管理体制とガバナンスの設計を整えること。
いきなり規模を追う前に、透明性と統制を確保する体制を作ることが、後の混乱を防ぐ鍵になる。
市場変化と価値提供の多様化 — 「つくって売る」から「ソリューション提供」への転換
【直面した壁】
- 欧州を中心に、省エネ・環境配慮・冷暖房だけでなく「冷凍・冷蔵」「冷媒の再生」「エネルギー管理」「建物全体の空調ソリューション」など、多様なニーズと厳しい規制が求められるようになった。
単純な空調機器販売だけでは、顧客の変化に応えることが困難になっていた。 - 加えて、冷媒漏洩や廃棄時の環境負荷、エネルギー効率への社会的要求が高まり、「安価な製品」で勝負するだけでは持続的な成長は難しくなっていた。
【ダイキンの対応】
- ダイキンは単なる「空調機器メーカー」から、「環境・空気・エネルギーソリューション企業」へとビジネスモデルを転換。
冷媒の開発・供給、機器設計、再生可能冷媒への対応、冷媒回収再生技術の導入など、サプライチェーン全体を見直すことで、環境配慮と高付加価値の両立を実現している。
- さらに、世界的な脱炭素の流れを見据え、2025年には同社の「ネットゼロ(GHG排出ゼロ)目標」が国際的な認証機関であるSBTiに承認された。
これにより、環境先進企業としての信頼性を強化し、将来の市場変化をチャンスに変える土台を築いた。
【教訓(中小企業に応用できる視点)】
製品売り切りだけでなく、「環境価値」「品質価値」「アフターサービス」を含めたソリューション設計を初期から検討することで、単なる価格競争から脱却できる。
中小でも、付加価値モデルを意識することで市場での持続可能性は高まる。
まとめ:失敗も糧にする体制設計 — 中小企業へのメッセージ
ダイキンが直面したのは、「冷媒規制」「国際展開の複雑性」「市場・社会の価値観の変化」といった、どれも簡単ではない挑戦でした。
しかし、同社は技術だけでなく、ガバナンス体制の整備+環境・社会に配慮したビジネスモデルへの転換を進めることで、逆風をチャンスに変えました。
これはつまり、海外進出とは、常に外部要因が密接に事業を左右する環境への挑戦であり、企業の規模を問わず、プランB・プランCを常に想定した事業設計ができる経営力が問われるということなのです。
その力とはすなわち、構造的な設計──体制、戦略、価値提供のあり方を、柔軟かつ機動的に整える力に他なりません。
今後の章では、こうした“変革のステップ”を、中小製造業の読者にも応用しやすい形で「Doリスト」として整理する予定です。
中小製造業が真似できる“ダイキン流”海外進出とは
グローバル展開において、ダイキンが採用している海外戦略は、大企業特有の資本力や人材力だけでなく、「設計思想」と「展開手法」の巧みさにその真髄があります。
中小製造業にとっても、戦略の本質を抽出することで、十分に応用可能な示唆を得ることができるのです。
マザー工場+現地展開という設計思想
ダイキンは、各国に製造拠点を展開しつつも、日本国内に「マザー工場」としての中核生産・開発機能を持ち続けています。
この設計思想が、同社のグローバル戦略を支える重要な基盤となっています。
- マザー工場では、グループ全体の技術開発・品質基準・生産技術を統一・標準化し、それを各国の現地工場に展開する。
- 各地の工場は、マザー工場が築いた基準をもとに、現地市場のニーズに柔軟に対応したアレンジ生産を行う。
- 特にアジアでは、タイや中国を“第二の中核”と位置づけ、生産・開発・調達・販売が一体となった“地域完結型の体制”を構築しているのです。
この設計思想があるからこそ、現地適応とグローバル標準を両立させ、どの市場でも一定の品質・競争力を確保できる体制が築かれているのです。
中小企業においても、たとえば「国内で中核の技術検証・開発を継続しながら」「海外で部品の現地調達や一部組立・カスタマイズ」を行う体制は十分に実現可能です。
全拠点を一律で構えるのではなく、「国内での強み」と「現地での柔軟性」の役割を明確に分担することが、海外展開の安定運用につながります。
1ヶ国で学び→他国展開に活かす“横展開”型モデル
ダイキンは、新興市場における展開において「1カ国で成功モデルを作り、そこで得た知見を他国展開に活かす」という“横展開型”のアプローチをとっています。
- たとえば、ベトナムでの施工品質向上の取り組みが、他のASEAN諸国での施工体制整備に波及したように、
- 一度構築した現地教育体制・販売網・サプライチェーンを“モデル化”し、横展開することでスピーディかつ効率的な市場進出を実現しているのです。
これは「最初の1国にどれだけ真剣に向き合えるか」が鍵になるモデルであり、逆にいえば、最初の1か国さえ本気で仕上げれば、そこから複数国展開への道が開けるということを意味します。
中小企業にとっても、一発勝負の全方位展開ではなく、“1国集中”での深耕と学びからスタートする戦略は、再現性が高く、失敗リスクも抑えられる方法です。
出典:ダイキン公式 中期経営計画 FUSION25、およびグローバル展開戦略に関する企業情報資料
中小企業は「最初の1国」をどう選ぶ?
中小企業にとって、最初の1か国は「売れそうな国」ではなく、「成功しやすい国」から始めるのがセオリーです。
具体的には、すでに日系企業が進出している/言語・文化の障壁が低い/ニッチ市場に需要がある──といった観点から、“勝てる余地のある土俵”を選ぶ視点がカギになります。
逆に「売れそうな国」とは、たとえば日系企業がまだ進出していない/人口が多い/競合が少ない市場 を指すことが多いですが、
これらは現地に情報・人脈・制度理解がほとんどない中、単独で開拓しなければならない高難度の挑戦であり、リソースが限られる中小製造業にとっては、成功確率が著しく下がる傾向があります。
海外進出、貴社にとっての「最初の1か国」はどこですか?
ダイキンのような事例に触れると、「うちには無理」と感じる方も少なくありません。
しかし、成功の分かれ道は、最初の一歩を“自社に合ったかたち”で踏み出せるかどうかです。
パコロアは、中小製造業のための海外進出支援に特化したコンサルティング会社として、海外事業モデルの設計から、現地パートナー戦略、展示会・輸出準備・販路開拓まで、貴社の挑戦を並走支援しています。
まずは、30分の無料オンライン相談で、現状と課題を一緒に整理してみませんか?
未来の一歩目は、静かに・しかし確実に始められます。