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海外進出ロードマップの進め方
1 海外展開できるか判断したい方へ
自社の海外展開の可能性を確認したい
海外展開に向けて必要な知識やスキルを身につけたい方向けです。
まずは「 海外進出に必要な能力を身につけよう 」をご覧ください。
貿易実務、英語によるコミュニケーション、異文化理解など、海外ビジネスの基礎を学ぶことができます。
また、販売戦略やマーケティングについて学びたい方は
「
海外進出の戦略を構築しよう
」もあわせてご覧ください。
海外展開の準備から販売戦略まで、体系的に理解したい方におすすめです。
2 海外顧客を開拓したい方へ
海外展示会や営業活動に取り組みたい
海外展示会や営業活動を通じて、新規顧客や販売パートナーを開拓したい方向けです。
まずは「 はじめての海外展示会・海外営業を成功させよう 」をご覧ください。
海外展示会で成果を出すための具体的な準備や進め方については
「
海外展示会の出展のコツを知っていますか
」もおすすめです。
海外での販路開拓を具体的に進めたい方におすすめです。
海外展示会で成果を出すための具体的な準備や進め方を知りたい方は、海外展示会 出展サポートの成功法則も参考にしてください。
オンライン商談や海外営業の進め方については、海外営業の新規開拓はできますかもあわせてご覧ください。
3 海外投資を検討したい方へ
海外拠点や現地法人の設立を検討したい
海外拠点や現地法人の設立、海外投資を検討している方向けです。
まずは「 海外進出は実現可能ですか 」をご覧ください。
その後、「 海外拠点を立ち上げる理由はありますか 」で投資の目的や必要性を整理し、「 海外現地でF/S調査はしましたか 」で事業性や市場性を確認していきます。
将来的な海外拠点設立や現地投資を検討している方におすすめです。
4 海外展開の全体像を把握したい方へ
海外展開の流れを体系的に理解したい
海外展開について最初から体系的に学びたい方向けです。
まずは下記の順番で読み進めてください。
実現可能性の確認、必要な能力の習得、戦略構築、販路開拓、投資判断まで、一連の流れを理解することができます。
新規事業として海外展開を検討している方にもおすすめです。
5 気になるテーマから読みたい方へ
興味のあるテーマから情報収集したい
特定の課題やテーマについて情報収集したい方は、「 海外進出BLOG 」をご利用ください。
「 海外進出BLOG 」では、海外展開に関する様々な情報を発信しています。
「 海外進出で迷ったら 」
「 海外進出の事例 」
「 海外進出の資料・チェックリスト 」など、興味のあるテーマから自由に情報収集を進めることができます。
空き時間に海外展開に関する知識を増やしたい方にもおすすめです。
6 どこから始めればよいか分からない方へ
まずは自社に合った進め方を知りたい
海外展開に関心はあるものの、自社がどの段階にいるのか分からない方におすすめです。
初めての方へ では、お困りごと別に情報を整理しています。
自社に合ったスタート地点を見つけることで、無理なく海外展開の準備を進めることができます。
海外進出は、企業ごとに取り組む順番や優先順位が異なります。
迷った場合は、まず 初めての方はこちらをご覧ください。
海外進出の前に日本企業に必要なこと
海外進出にはやり方がある
海外進出を決めたとき、多くの企業は新たな市場への期待に胸を膨らませます。
しかし実際には、進出先の商習慣や制度、顧客との考え方など、日本国内とは異なるビジネス環境への対応が求められます。
海外に商品を販売したい、現地で店舗や工場を立ち上げたい――その目標を実現するためには、気合いや勢いだけではなく、進め方を理解しておくことが重要です。
このページでは、日本企業が海外進出を始める前に知っておきたい「海外のビジネス常識」について解説します。
海外進出は「手段」から始めない
「まずは海外市場調査から」は失敗のもと
海外と日本では、ビジネスにおける常識や前提が大きく異なります。
そのため、海外進出を検討する際には、まず海外のビジネス常識を理解することが重要です。
よくある誤解として、
・まず海外市場調査をする
・とりあえず展示会に出展する
・先に海外向けWebサイトを制作する
といった「手段」から考えてしまうケースがあります。
しかし本来は、
なぜ海外進出をするのか
どの国で何を実現したいのか
を整理したうえで、必要な手段を選ぶべきです。
目的が曖昧なまま市場調査や展示会出展を行っても、
「結局何が分かったのか」
「次に何をすればよいのか」
が見えず、時間や費用だけがかかってしまうことがあります。
海外進出を成功させるためには、まず手段ではなく目的を明確にすること。
そのうえで市場調査や展示会、Webサイト制作などを組み合わせていくことが大切です。
そして何より重要なのは、日本の常識だけで考えず、海外のビジネス常識を理解することです。
海外と日本のビジネス常識の違い
英語、文化、宗教だけではない、ビジネス常識の違い

海外進出を考えるうえで、言語や文化、宗教といった“目に見える違い”以上に重要なのが、「ビジネスの常識」の違いです。
たとえば上記の図表にもあるように、海外では結果や効率を重視し、スピード感ある意思決定と行動が求められます。
担当者に裁量があることも多く、「まずはやってみる」という考え方が一般的です。
前例がなくても、まず行動しながら改善を重ねていく――そんな姿勢が自然に受け入れられています。
一方、日本では品質や合意形成を重視し、十分な検討を行ったうえで進める傾向があります。
そのため、「どうすれば失敗を小さくできるか」が、「どうすれば大きく成功できるか」よりも重視される傾向があります。
もちろん、どちらが正しい・間違っているという話ではありません。
しかし、海外進出では日本国内とは異なるビジネス常識の中で判断や行動を求められます。
海外顧客を起点に考えず、自社都合や国内市場の感覚を優先してしまうと、
「返事が遅い」
「なぜ決断できないのか分からない」
「顧客の要望に応えようとしていない」
と受け取られることもあります。
こうしたビジネス常識のギャップは、商談やパートナー選定、信頼関係の構築など、海外事業のあらゆる場面に影響します。
だからこそ海外進出では、まず日本と海外のビジネス常識の違いを理解することが重要なのです。
海外進出で最初に変えるべきこと
問題の見え方が変わると、打ち手も変わる
私たちはこれまで1,900社以上の海外展開を支援してきました。
その中で感じるのは、多くの企業が能力不足や努力不足で失敗するのではなく、その手前の「問題の見え方」を間違えて停滞や撤退をしているということです。
海外顧客の視点で見るべき場面でも、自社の常識や国内市場の感覚で判断してしまう。
その結果、本来であれば見えたはずの選択肢や機会を逃してしまうケースを数多く見てきました。
重要なのは、
・相手に与えるフラストレーションを想像する力
・自分たちが無意識に持っている前提を自覚する姿勢
です。
海外と日本では、ビジネスの常識が大きく異なります。
この常識の切り替えがうまくできないままでは、海外展開のスピードは鈍化し、いざ打開策を打とうとしても、それはどこか既視感のある“力の弱いパンチ”になりがちです。
たとえば、海外事業が停滞した際、多くの企業は次のような施策を検討します。
・価格を下げる
・技術力を高める
・富裕層をターゲットにする
・リスクヘッジのために間にもう一社入れる
・ホームページ以外にもSNS発信を増やす
もちろん、これらは一見すると合理的な対策に見えます。
しかし私たちが見てきた限り、それらは原因への対策ではなく、症状への対策になっていることが少なくありません。
たとえば「価格が高い」と言われた場合でも、本当に価格が問題とは限りません。
その市場にニーズがない商品なのかもしれませんし、競合との差別化が伝わっていないだけかもしれません。
値下げをしなくても、用途や流通チャネルを変えることで競争優位を築けるケースもあります。
また、今ある既存の情報をそのままSNSに転記発信しただけでは、海外顧客に価値が伝わらないことも珍しくありません。
日本企業が伝えたいことと、海外顧客が知りたいことはそもそも違うからです。
つまり、問題そのものが間違って見えている状態では、どれだけ一生懸命対策をしても成果にはつながりません。
ところが、海外顧客の視点で状況を見直してみると、それまでとは全く違う景色が見えてきます。
「価格が高い」のではなく「市場が違う」
「問い合わせが来ない」のではなく「伝える内容が違う」
「競争が激しい」のではなく「戦う場所が違う」
そんなことが実際によく起こります。
海外進出を成功させるためには、まず海外のビジネス常識を知り、学ぶこと。
そして、自社の常識を問い直し続けることです。
見えている世界が変わると、打つべき施策も変わります。
海外とはビジネス常識がちがう・・・
分かっていたつもりですが、見えている世界はいつも同じだったかも知れません。
たくさんの企業の失敗と成功を見てきたからこそ、最初にお伝えしたかったのです。
でも大丈夫です。
このロードマップには、多くの企業がつまずいたポイントと、それを乗り越えるためのヒントをまとめています。
なるほど・・・。
でも何から始めれば良いのでしょうか?
シンプルです。
海外進出にはやり方があるんです。
まずは、自社の海外進出が本当に実現可能なのかを確認することから始めましょう。
その判断が、その後の展示会、海外営業、海外投資など、すべての方向性につながります。
海外進出は実現可能ですか
海外進出を検討するとき、多くの企業は「この商品は海外で売れるだろうか?」と考えます。
しかし、海外進出の成否はそれだけでは決まりません。
海外進出では、進出前に確認しておくべきポイントがあります。
この章では、海外進出の実現可能性をどのように考えるべきかを整理します。
海外で2~3回売れた=事業成功とは限らない
海外企業から問い合わせが来た。
展示会で予想以上の反応があった。
ECサイトで海外から注文が入った。
このような出来事があると、「海外でも売れる」と考え、そのまま事業を進めたくなるかもしれません。
しかし、それは海外進出の実現可能性を検証した結果ではなく、目の前の出来事に反応しただけの状態です。
海外事業は、一度売れたかどうかではなく、継続して利益を生み出せるかどうかが重要です。
たまたま売れた商品と、継続的に売れる事業は別物です。
そのため海外進出では、実際に動き出す前に「本当にこの事業は成立するのか」を確認する必要があります。
海外進出の実現可能性は何で決まるのか
海外進出の実現可能性とは、「海外で売れそうかどうか」を判断することではありません。
本当に確認すべきなのは、自社の事業が海外市場でも継続的に利益を生み出せるかどうかです。
たとえば、展示会で反応が良かったとしても、価格競争に巻き込まれて利益が出なければ事業として継続できません。
海外企業から引き合いがあったとしても、不利な契約によって販路が制限されれば、将来の成長機会を失うこともあります。
商品が売れていたとしても、知的財産が守られていなければ模倣品によって市場を失う可能性があります。
また、そもそも輸出入規制や認証制度の問題で、その国では販売できないケースもあります。
海外進出では、このような問題が進出後に発覚すると、大きな時間や費用の損失につながります。
だからこそ、実際に動き出す前に事業全体を検証することが重要です。
このロードマップでは、実現可能性を確認するために、次の4つの視点から整理していきます。
・海外向けのビジネスモデルは成立するか
・海外進出のリスク管理はできているか
・知的財産は守られているか
・輸出入規制に問題はないか
海外向けのビジネスモデルは成立するか
海外企業から問い合わせが来た。
展示会で予想以上の反応があった。
現地パートナー候補が見つかった。
こうした出来事は、海外進出を考えるきっかけになります。
しかし、それだけで事業が成立するとは限りません。
重要なのは、その取引が一度きりではなく、継続的に利益を生み出す仕組みになっているかどうかです。
価格設定は適切か。
競合との差別化はできているか。
販売チャネルは確保できるか。
利益を確保しながら継続できるのか。
海外進出では、「売れた」ことよりも、「売れ続ける仕組み」があるかどうかが重要です。
まずは、自社のビジネスモデルが海外市場でも同様に成立するのかを確認してみましょう。
海外進出のリスク管理はできているか
海外進出では、商品やサービスそのものに問題がなくても、思わぬところで事業が停滞することがあります。
たとえば、
・現地企業との契約内容が自社に不利だった
・代金回収ができなかった
・製品事故やクレームへの対応が想定されていなかった
・現地パートナーとの役割分担が曖昧だった
といったケースです。
これらは進出後に発覚すると、修正に大きな時間やコストがかかります。
しかし、進出前の段階で想定されるリスクを整理し、対策を検討しておけば、多くの問題は回避または影響を小さくすることができます。
海外進出では、「リスクがあるからやらない」のではなく、「リスクを理解したうえで進める」ことが重要です。
まずは、自社の海外進出にどのようなリスクがあるのかを確認してみましょう。
知的財産は守られているか
海外進出では、商品や技術を守るために知的財産への対応が欠かせません。
知的財産というと、「模倣品対策」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には、自社が被害者になるだけでなく、知らないうちに他社の権利を侵害してしまうケースもあります。
たとえば、
・日本では問題なく販売していた商品が、進出先では他社の権利に抵触していた
・展示会で公開した技術やアイデアを先に権利化された
・現地企業との契約で知的財産の取り扱いが曖昧だった
といった事例は珍しくありません。
知的財産の問題は、発生してから対応しようとすると時間も費用も大きくなります。
そのため海外進出では、事業を始める前の段階で、自社の知的財産をどう守るか、また他社の権利を侵害するリスクがないかを確認しておくことが重要です。
まずは、自社の知的財産が適切に管理されているか確認してみましょう。
輸出入規制に問題はないか
海外で需要がありそうだ。
現地企業からも引き合いが来ている。
価格や条件も問題なさそう。
しかし、それでも海外展開できないケースがあります。
それは、輸出入規制や認証制度などの法規制に対応できていない場合です。
たとえば、
・その国では輸入が制限されている商品だった
・販売に第三者認証や許可が必要だった
・輸出管理規制の対象だった
・表示や成分に関する現地規制を満たしていなかった
といった理由で、販売そのものができないことがあります。
こうした問題は、商談や展示会が進んでから発覚すると、大きな手戻りにつながります。
海外進出では、「売れるかどうか」だけでなく、「その国で販売できるかどうか」を事前に確認することが重要です。
まずは、自社の商品やサービスに関係する輸出入規制について確認してみましょう。
まずはビジネスモデルから確認しよう
海外進出の実現可能性を検証するためには、
・海外向けのビジネスモデルは成立するか
・海外進出のリスク管理はできているか
・知的財産は守られているか
・輸出入規制に問題はないか
という4つの視点から事業を整理することが重要です。
どれも欠かせない要素ですが、最初に確認したいのはビジネスモデルです。
なぜなら、海外で継続的に利益を生み出せる仕組みがなければ、その後のリスク対策や知財対策を行っても事業として成立しないからです。
海外進出の実現可能性を判断する第一歩は、海外事業用のビジネスモデルを整理することです。
まずは、自社のビジネスモデルから確認していきましょう。
海外事業用のビジネスモデルはありますか
海外進出は自社のビジネスモデルを見直す絶好の機会
海外進出を考え始めると、多くの企業は海外市場や競合企業に目を向けます。
もちろんそれも重要です。
しかし本当に見直すべきなのは、自社の事業そのものかもしれません。
なぜ顧客は自社を選んでいるのか。
どのように利益を生み出しているのか。
自社の強みはどこにあるのか。
日本国内では当たり前になっていて意識していなかった仕組みも、海外進出を検討することで初めて見えてくることがあります。
海外進出は、新しい市場へ挑戦するだけでなく、自社のビジネスモデルを見直す機会でもあるのです。
海外事業のビジネスモデルを考える
海外進出では、日本国内で成功しているビジネスモデルをそのまま持ち込める場合もあれば、大きく見直さなければならない場合もあります。
重要なのは、「海外で売れるかどうか」ではなく、「海外でも継続して利益を生み出せる仕組みになっているか」を考えることです。
そのためには、顧客、販売方法、利益構造という3つの視点から、自社のビジネスモデルを見直してみる必要があります。
特に海外進出では、日本国内では気づかなかった前提条件が大きく変わることがあります。
まずは、どのような部分が変わり得るのかを確認してみましょう。
海外でも同じ顧客に売れるとは限らない
海外進出を考えるとき、多くの企業は「日本で売れているのだから海外でも売れるはずだ」と考えます。
しかし、海外では顧客の課題や価値観が異なることがあります。
日本では高く評価されている品質やサービスが、海外ではそれほど重視されないこともあります。
逆に、日本では当たり前すぎて強みだと認識していなかった特徴が、海外では大きな競争力になることもあります。
重要なのは、「今の顧客と同じように自社の価値を評価する顧客が海外にもいるはずだ」と考えることではありません。
今の自社の価値そのままを必要とする顧客はいるのか。
もしいないのであれば、どのような価値を提供すれば顧客になってもらえるのか。
そこまで考えることが重要です。
海外進出では、顧客が変わればビジネスモデルも変わる可能性があります。
まずは、自社の商品やサービスの価値が海外でも普遍なのか?、そうでなければ何をどうすれば顧客になってもらえるのか?を考えてみましょう。
日本と同じ販売方法が通用するとは限らない
日本国内で成功している販売方法が、海外でも機能するとは限りません。
国内では営業担当者による直接販売が中心でも、海外では代理店やパートナー企業を活用した方が効率的な場合があります。
逆に、日本では小売店経由で販売していた商品でも、海外ではメーカー直販のD2C販売の方が成果につながることもあります。
重要なのは、日本国内の成功パターンにこだわることではなく、現地市場で成果が出る方法に合わせて販売方法そのものを見直すことです。
海外進出では、「何を売るか」だけでなく、「どう届けるか」もビジネスモデルの重要な要素になります。
海外展開を進めると日本国内にはないコストが発生する
輸出を始めると、国際輸送費、梱包費、通関費用、関税、銀行手数料など、日本国内にはないコストが発生します。
現地生産を始める場合も、現地から他国への輸送費や物流費、管理費用など、別のコストが発生することになります。
加えて、販売代理店や小売店経由で販売する場合は、それぞれのマージンも考慮しなければなりません。
さらに、ブランドを維持するためには、現地スタッフ教育やアフターサービス、メンテナンス体制の整備なども必要になってきます。
こうしたコストを負担しながら事業を継続していくためには、価格以外の価値を顧客に提供できなければなりません。
もし海外市場で「安いから買う」という理由しか見いだされなければ、厳しい価格競争に巻き込まれる可能性があります。
その結果、売上は増えても利益が残らないという状況に陥ることも少なくありません。
つまり海外進出では、「売れるかどうか」だけでなく、「利益が残る仕組みになっているか」も再確認する必要があります。
そのためには、海外事業のビジネスモデルを十分に検討し、どのような条件であれば利益を生み出せるのかを考え抜くことが重要です。
また、海外進出によってビジネスモデルをどの程度変更する必要があるのか、という視点も欠かせません。
国内事業とほぼ同じ仕組みで展開できる場合は、一部の調整で済むこともあります。
しかし、新しい顧客層、新しい販売方法、新しい収益モデルに挑戦する場合は、事実上の新規事業に近い検証が必要になります。
そのため、ビジネスモデルの変更幅によっては、海外進出におけるF/S(フィージビリティスタディ)の規模や負荷も大きく変わってきます。
特に、机上の分析だけでは判断できない場合は、実際に現地へ足を運び、
・本当にニーズがあるのか
・想定している販売方法は機能するのか
・利益が出る価格帯はどこなのか
までを確認する必要があります。
F/Sとは単なる市場調査ではありません。
「そのビジネスモデルは本当に成立するのか」を検証するための活動でもあるのです。
まずは自社のビジネスモデルを整理しよう
海外進出を考えると、多くの企業は海外市場や競合企業に目を向けます。
しかし、自社が海外で成功できるかどうかは、現在のビジネスモデルをどれだけ理解しているかにも大きく左右されます。
誰に価値を提供しているのか。
どのような方法で顧客へ届けているのか。
どのように利益を生み出しているのか。
まずは現在の事業を整理したうえで、海外でも同じ仕組みが通用するのかを考えてみましょう。
ただし、ビジネスモデルが成立しそうに見えても、それだけで海外事業が成功するとは限りません。
契約、代金回収、製品事故、為替変動、パートナーとのトラブルなど、実際に事業を進めて初めて見えてくるリスクも数多く存在します。
海外事業用のビジネスモデルを整理したら、次は海外進出で想定されるリスクと、その管理方法を確認していきましょう。
海外進出のリスク管理は考えていますか
海外進出はリスクを管理しながら進めるもの
海外進出を成功させるためには、リスクとの向き合い方が重要になります。
重要なのは、リスクをゼロにすることではなく、どのようなリスクが存在するのかを理解し、事前に対策を考えながら進めることです。
日本企業が海外進出中にリスクマネジメントを怠ると、小さなミスが事業全体を揺るがすこともあります。
実際に、2016年の独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査では、海外進出済みの中小企業の82.4%が、その必要性を強く感じながらも、明確なリスクマネジメント方針を持っていないとされています。海外リスクマネジメント実態調査 2016年2月 独立行政法人中小企業基盤整備機構
一方で、17.6%の企業は何らかの形でリスクマネジメントの方針や仕組みを整備していました。
また、同じリスクであっても、進出先の国や事業形態によって影響の大きさは変わります。
そのため海外進出では、「リスクがあるからやらない」のではなく、「どこまでを許容し、どこからを回避するのか」を判断することが重要になります。
まずは、海外進出でどのようなリスクが発生するのかを確認してみましょう。
海外進出に潜むさまざまなリスク
海外進出のリスクと聞くと、政治情勢や為替変動などのカントリーリスクを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし実際には、それだけではありません。
輸出や海外営業の日常業務の中にも、現地法人や工場運営の中にも、多くのリスクが存在します。
まずは、海外進出で発生しやすい代表的なリスクを見てみましょう。
輸出・海外取引で発生するリスク
海外進出のリスクというと、政治情勢や為替変動などの大きな問題を想像しがちです。
しかし実際には、多くの中小企業が最初に直面するのは、日々の業務の中で発生するオペレーション上のトラブルです。
メールでの商談、見積書の作成、受注、生産、出荷、代金回収。
輸出ビジネスでは、こうした一連の流れの中に数多くのリスクが潜んでいます。
例えば、以下のようなケースです:
- 技術情報を提供したはずが、そのまま模倣されて自社よりも先に販売された。
- 支払い条件を合意していたのに、輸出後に突然音信不通になり、代金が未回収のまま。
- 見積内容の翻訳ミスで、数量や仕様を誤認されたまま発注され、返品対応に追われる。
- 梱包ミスにより商品が破損。保険申請を行ったが「不適切な梱包」として補償されなかった。
- 輸入通関で必要な現地書類の不備により、倉庫で荷物が止まり、結果的に商品劣化で廃棄処分に。
- 商品画像や納入実績を提出したところ、それが現地企業のサイトで無断転載されていた。
- 商品出荷前は頻繁に連絡があったが、出荷後は音信不通になり、代金が未回収に。
- 海外の商標登録制度に不慣れだったため、現地企業に商標を先に取られ、正規品であるにもかかわらず販売できなかった。
これらのリスクは、業務を「いつも通りに」進めただけでは回避できないタイプの問題です。
日本国内では問題にならなかった手順や判断が、海外では大きな損失につながることもあります。
そのため海外取引では、現地任せにする部分と自社で管理すべき部分を整理し、事前にトラブルを想定しながら進めることが重要です。
海外展開では、進め方そのものの客観的な確認を、第三者と一緒に整理しておくと安心です。
→ 海外進出の相談前にやるべき準備7選|支援機関・コンサルを動かすチェックリスト
海外投資で発生するリスク
海外に工場や販売会社を設立する場合、輸出とは異なるリスクが発生します。
特に投資型の海外進出では、政治、法律、行政手続き、雇用、文化など、自社ではコントロールできない要因の影響を大きく受けます。
また、日本では当たり前に機能している制度や慣習が存在しないこともあり、想定外の問題が事業そのものを揺るがすこともあります。
例えば、次のようなケースです:
- 現地行政の手続き遅延で開業が半年遅れた。にも関わらず、賃料は契約通り発生していた。
- 土地契約の権利関係が不明瞭で、進出後に別の所有者から訴訟を起こされた。
- 現地で採用した従業員が早期に退職。採用・教育に掛けたコストが回収できなかった。
- 精霊信仰を軽視した社内通達が文化的反感を招き、祝祭後に社員が誰も戻らなかった。
- 当局の環境規制の強化により、使用していた素材が突然輸入禁止となり、全製品の見直しが必要になった。
- 軽視していた治安の問題で、幹部社員が強盗被害に遭い、現地業務の継続が困難になった。
- 海外コンサルタントの言葉をうのみにして準備を進めたが、撤退時にようやく多くの不備に気づいた。
- 日本語の微妙なニュアンスが通じず、現地スタッフとの認識ズレが大きな問題を引き起こした。
これらの問題は、担当者の能力不足や準備不足だけで発生するものではありません。
進出先の政治制度、法制度、経済環境、文化的背景など、その国特有の事情が大きく影響しています。
このような国そのものに起因するリスクは、一般的に「カントリーリスク」と呼ばれます。
クーデターや政変、急激なインフレ、為替下落、法改正などは分かりやすい例ですが、行政手続きの遅延や契約慣行の違い、採用・人材定着の難しさなども、実際には事業へ大きな影響を与えます。
海外投資では、「日本では普通だったことが普通ではない」という前提で準備を進めることが重要です。
また、こうした個別のトラブルだけでなく、その背景にある国特有の制度や政治・経済環境にも注意が必要です。
特に以下のようなカントリーリスクは、業種や国を問わず検討しておきたい項目です。
- 外資規制
- 司法制度の不公正
- 政権による企業経営への介入
- 保護主義による法改正
- 事業接収
- 現地通貨建による減価
- 模倣品の氾濫
- 所得格差の増大
- 為替の下落
- インフレ進行
海外投資では、これらのリスクを完全に排除することはできません。
重要なのは、どのリスクが自社にとって致命的なのかを見極め、日本本社と現地拠点が連携して対応策を準備しておくことです。
また、進出前には現地の規制や取引条件を十分に調査し、事業計画へ反映しておく必要があります。
国ごとの税制や取引条件によっては、事業が進んだ段階で想定していなかった税務対応が必要になることもあります。
海外進出では、税金がどのタイミングから複雑になるのかも、事前に把握しておきましょう。
人的・サイバーセキュリティリスク
海外進出では、政治や法律のリスクだけでなく、人や情報に関するリスクにも注意が必要です。
現地従業員による横領や不正、パートナー企業による情報漏えい、担当者の突然の退職などは、海外企業との取引や海外拠点の運営において実際によく発生しています。
また近年は、サイバーセキュリティ対策の重要性も高まっています。
海外とのやり取りが増えるほど、メール、クラウドサービス、オンライン会議システムなどを利用する機会も増えます。その結果、不正アクセスやランサムウェア、情報漏えいなどのリスクにも直面するようになります。
例えば、次のようなケースです:
- 海外拠点での管理体制が甘く、従業員による備品の横領や水増し請求が常態化していた。
- パートナー企業のスタッフにより、営業機密が他社へ流出。
- 社内システムに不正アクセスがあり、輸出先や価格条件などのデータが抜き取られた。
- 無意識に使用したフリーWi-Fiがハッキングの原因となり、社内ネットワークにウイルスが侵入した。
こうした問題は、制度や契約だけで防げるものではありません。
管理体制の不備や教育不足、コミュニケーション不足など、人の行動が原因となって発生することも少なくありません。
海外進出では、仕組みを整えるだけでなく、それを運用する人に目を向けることも重要です。
海外進出のリスクは、進出前の調査段階でどこまで確認できているかによって、その後の判断精度が大きく変わります。
→ 海外進出前にF/S現地調査はしましたか
リスクの多くは「人」から生まれる
海外進出のリスクというと、為替変動や法規制、政情不安などを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし実際には、多くのリスクの背景に「人」が存在しています。
契約を守るのも、情報を漏えいするのも、行政手続きを進めるのも、顧客や従業員、取引先との信頼関係を築くのも「人」です。
そのため海外進出では、制度や契約だけでなく、その国で働く人々の価値観や行動原理を理解することも重要になります。
海外で発生するトラブルの多くは、必ずしも悪意によるものとは限りません。
日本では当たり前だと思っていた考え方や行動が、相手にとっては当たり前ではないこともあります。
リスク管理とは、危険を排除することではなく、「なぜそのリスクが起きるのか」を理解することから始まるのです。
海外では日本の常識が通用しないことがある
海外では、日本企業の「当たり前」が通用しないことがあります。
例えば、日本では合理的で正しいと考えられる判断であっても、現地では文化や宗教、歴史的背景から全く異なる受け止め方をされることがあります。
実際に海外では、宗教行事や地域の慣習を軽視したことで従業員の反発を招いたり、現地スタッフとの信頼関係が崩れたことで事業運営に支障をきたしたりする事例も少なくありません。
また、日本人から見ると非合理的に思える行動であっても、相手には相手なりの理由や価値観があります。
そのため海外進出では、自分たちの常識だけで判断するのではなく、「なぜ相手はそう考えるのか」という視点を持つことが重要です。
例えば、日本とは異なり海外の国々では、
・国のセーフティネットが十分ではない
・所得格差が大きい
・社会全体の競争が激しい
・宗教や家族との結びつきが強い
・人を簡単には信用しない文化がある
といった環境の中で生活している人も少なくありません。
そのため、
・会社より家族や宗教を優先する
・自分の権利や利益を積極的に主張する
・口約束より契約や証拠を重視する
・理由が分からない指示には従わない
・リスクを感じたらまず自分を守ろうとする
といった行動も、ごく自然なものとして受け入れられています。
また、
・社会のルールを守ることで得られる自分自身のメリットが少ない、あるいは存在しない
・落とし物を届ける仕組みがなく、届けたとしても逆に盗みを疑われるリスクがある
・二重三重に防御し、自分の持ち分を守る自助努力は当たり前である
・理由もなく人を信用しない。自分が簡単に信用されなくても驚かない
・共同体の内側の人には尽くすが、外側の人に同じ義理や責任を期待しない
といった価値観が根付いている地域もあります。
さらに、
・残業や休日出勤をしてまで仕事を優先するのは理解できない
・会社と家族や宗教を同列に考えることはあり得ない
・意見があれば主張する。会議で黙って頷くだけでは賛成なのか反対なのか分からない
・背景説明のない依頼や指示は、説明責任を果たしていないと受け取られることがある
・今日の正解が明日も正解とは限らない、物事は常に変わる
といった考え方も珍しくありません。
日本人から見ると驚くような考え方かもしれません。しかし、その国の歴史、宗教、社会制度、教育環境、経済状況を踏まえると、必ずしも不合理な考え方とは言い切れません。
海外進出で発生するリスクの多くは、こうした価値観や行動原理の違いから生まれています。
そのため海外進出では、「日本の常識では理解できない」と切り捨てるのではなく、「なぜ相手はそう考えるのか」を理解しようとする姿勢が重要です。
リスク管理とは、制度や契約を整えることだけではありません。相手の立場や価値観を理解しようとすることも、海外進出における重要なリスク対策の一つなのです。
リスクに備える仕組みを作ろう
海外進出では、すべてのリスクを事前に予測し、回避することはできません。
しかし、どのようなリスクが存在するのかを理解し、発生した場合の対応方針をあらかじめ決めておくことで、被害を最小限に抑えることは可能です。
重要なのは、リスクを恐れて行動しないことではなく、想定できるリスクに備えながら事業を進めることです。
また、進出先の国や事業内容によって、優先的に管理すべきリスクも変わります。
まずは、自社にとって重要なリスクを把握し、必要な準備を進めていきましょう。
海外進出リスクを知るための情報源
海外進出のリスクは、事前の情報収集によってある程度把握することができます。
特に初めて進出する国や地域では、自社の経験だけで判断せず、第三者が公開している情報も積極的に活用しましょう。
例えば、以下のような情報源があります。
・JETROや中小企業基盤整備機構などの公的支援機関が公開するレポートや事例集
・外務省が公開する海外安全情報
・現地商工会議所や業界団体の情報
・先行企業の成功事例や失敗事例
・進出国の法規制や輸出入規制に関する一次情報
また、実際に現地で事業を行っている企業や専門家から話を聞くことで、公開情報だけでは分からないリスクが見えてくることもあります。
重要なのは、情報を集めること自体ではなく、「自社にとって何がリスクになるのか」という視点で情報を整理することです。
海外進出リスク対応準備のあり方
海外進出のリスク対応で重要なのは、問題が発生してから考えるのではなく、発生する前に対応方針を決めておくことです。
特に海外では、日本国内よりも問題の発見や初動対応に時間がかかることがあります。そのため、事前準備の有無が被害の大きさを左右します。
例えば、
・自社として許容できるリスクの範囲を明確にする
・有事の際の連絡体制と責任者を決めておく
・契約や支払条件の確認ルールを整備する
・情報管理やサイバーセキュリティのルールを整備する
・現地パートナーや従業員との情報共有方法を決めておく
・宗教や文化に関する最低限の知識を社内で共有する
といった準備が考えられます。
また、海外進出では現地の状況が変化することも珍しくありません。
そのため、一度決めたルールを固定化するのではなく、定期的に見直しながら運用していくことも重要です。
リスク管理とは、トラブルを完全になくすことではなく、問題が発生しても事業を継続できる状態を作ることなのです。
海外進出にはリスクもありますが、メリットと注意点を整理したうえで段階的に進めれば、中小企業でも現実的に取り組むことができます。
→ なぜ今、中小企業は海外進出すべき?メリット・リスクと失敗しない進め方
知らないというのは怖いものですね。
しっかりと海外進出のリスクに備え、準備しようと思います。
いい心掛けです。
特に、サイバーセキュリティや人的リスクは見落とされがちですが、今後ますます重要になります。
でも…、完璧に備えるなんて無理じゃないですか?
リスクを100%防ぐことはできませんが、想定しておくだけで被害を小さくできることはたくさんあります。
備えあれば憂いなし、です。
ほかにも大切なリスク管理として、「知的財産の管理」があります。
海外での模倣品多いですよね。
でも、どうせ止められないんじゃないですかね?
そんな弱腰でどうするんですか!!
海外進出では、守るべきものはしっかり守らなければなりません。
特に知的財産は、一度失うと取り返すのが難しい資産です。
売られた喧嘩のかたはきっちりつけないと・・・・
海外進出で知的財産は管理されていますか
知的財産は海外事業を守る武器になる
海外進出では、販路開拓や営業活動に意識が向きがちです。
しかし、海外で事業を継続するためには、「売る仕組み」と同じくらい「守る仕組み」も重要になります。
なぜなら、海外市場で評価される商品やサービスほど、競合他社による模倣や類似サービスの出現リスクも高くなるからです。
また、知的財産は単なる法務手続きではありません。
自社のブランド、技術、ノウハウ、信用を守るための経営資産でもあります。
海外進出では、事業計画、販路開拓、マーケティング、契約管理など様々な準備が必要になります。しかし、その土台となるブランドや技術が守られていなければ、長期的な事業展開は難しくなります。
知的財産とは、権利を取得すること自体が目的ではありません。
自社の強みを守りながら、安心して海外事業を拡大していくための仕組みなのです。
海外で事業を進める場合、知的財産は「あとで対応するもの」ではなく、進出前に確認しておくべき重要な準備項目です。
失敗事例も含めて、より実務的に整理しておきましょう。
→ 海外進出の知的財産対策|失敗事例と実践ガイド【中小企業向け】
誰に相談するかで結果は大きく変わる
海外進出における知的財産対策は、単なる出願手続きではありません。
どの国で権利を取得するのか、どの権利を優先し、どのように事業へ活用するのかによって、海外事業の成否にも大きく影響します。
そのため、知財対策では「何を出願するか」だけでなく、「誰に相談するか」も非常に重要です。
理想は、海外案件に強い弁理士や弁護士です。
海外企業との契約やライセンス交渉に慣れていて、「どう権利を押さえれば海外で有利に事業展開できるか」という視点を持つ専門家が理想的なパートナーになります。
また、「まずは無料で少し相談したい」という場合は、行政が設けている海外展開知財支援窓口などを活用する方法もあります。
一方で注意したいのは、出願手続きの説明だけで終わってしまうケースです。
見分け方は意外と簡単です。
相談の際に、
「この権利を取得することで、どのような事業リスクが発生しますか?」
と質問してみてください。
例えば、
・「この申請は通ると思いますが、その後の活用は難しいかもしれません。理由はこうです」
・「この出願範囲には弱点があります。補強する方法もありますが、逆に権利が弱くなる可能性もあります」
・「その国で商標は取れても、販売戦略との整合性を考える必要があります」
といったように、出願後まで含めた話が返ってくるかどうかが一つの判断材料になります。
知的財産は登録すること自体が目的ではありません。
事業を守り、競争優位性を維持し、将来の海外展開を有利に進めるための経営資産です。
「出願はできます。その後の活用については分かりません」
という姿勢の専門家に任せてしまうと、せっかく取得した権利が事業に活かされないこともあります。
また、海外の法律事務所や知財事務所へ直接依頼するという選択肢もあります。
ただし、自社で論点整理ができていない状態で相談すると、時間チャージ制によって費用が高額になりやすく、慣れていない企業にはハードルが高い場合もあります。
まずは日本国内の国際案件に強い専門家へ相談し、自社の課題や論点を整理したうえで海外事務所と連携していく方が、結果として効率的です。
専門家に相談する前に、自社の商品、進出国、販売方法、契約関係を整理しておくと、知財相談の精度も高まりやすくなります。
→ 海外進出の相談前にやるべき準備7選|支援機関・コンサルを動かすチェックリスト
海外知財トラブルの実例
海外進出における知的財産のトラブルは、決して他人事ではありません。
例えば商標の場合です。
輸出や海外展開を広げようとした矢先に、商標登録申請が遅れ、すでに同区分に類似する名称が登録されていた――。
その結果、日本国内では長年使用してきたブランド名であっても、現地では使用できず、ブランド名の変更を余儀なくされるケースがあります。
また、事前調査では「問題なし」と説明されていたにもかかわらず、実際に出願すると拒絶通知が連発することもあります。
取得までに長い月日とコストがかかることが途中で分かり、弁理士の説明にも釈然とせず、
「他にもっと良い相談先があったのではないか」
と後悔する声も少なくありません。
さらに厄介なのが、似ていない商標にもかかわらず、現地企業から権利侵害を主張されるケースです。
商標自体は登録できたものの、弁護士費用に150万円、その間の事業は足止めとなり、数年後には撤退を余儀なくされたケースもあります。
特許についても悩ましいことが多くあります。
特許は「権利の取得=安心」ではありません。
技術を公開する代わりに一定期間保護を受ける制度であるため、見方を変えれば、自社技術を競合へ公開する側面も持っています。
将来の技術革新や事業展開の見通しが十分でない場合、結果として競合を育てる“教科書”を差し出してしまうこともあるのです。
また、
「その国にはまだ類似特許がないから安心」
と思っても、その特許に本当に事業価値があるかどうかは別問題です。
技術的な特許調査であれば数十万円程度で実施できることもあります。
しかし、その技術が現地市場で戦えるのか、競合に勝てるのか、顧客がお金を払う価値があるのかまで調べようとすると話は別です。
海外市場で戦えるかどうかを見極めるための競争力調査や事業性調査は、費用も難易度も一桁上がることがあります。
その費用の重さゆえ、多くの中小企業は十分な検証ができないまま意思決定を迫られます。
だからこそ、知財戦略は単独で考えるのではなく、事業計画や市場戦略と一体で検討する必要があります。
さらに複数国へ出願する場合は、出願、登録、維持、更新といった費用が国ごとに発生します。
また、審査請求のタイミングや優先順位の判断も必要となるため、情報収集力と戦略構築力が求められます。
特に海外知財に慣れていない企業にとっては、専門家との連携が欠かせない領域と言えるでしょう。
知的財産の確認だけでなく、現地で売れるか、流通できるか、競合や取引条件に問題がないかを事前に調べることも重要です。
→ 海外進出前にF/S現地調査はしましたか
出願費用と期間の目安
気になる費用と期間ですが、ざっくり目安を示すと──
商標:50万円〜、期間は最短でも1年半
特許:220万円〜、期間は3年以上
しかもこれは一国あたりの話です。
出願国が増えればそのぶん費用も跳ね上がり、拒絶通知対応、翻訳費、登録後の維持年金なども加われば、最終的には数百万円規模になることも珍しくありません。
「売れるか分からない段階ではそこまで出せない…」
「海外展示会に出して反応見てからでもいいのでは?」
そう考える日本企業も多いですが、一度展示会で製品を見せた時点で、模倣リスクは大きく跳ね上がります。
知財対策は、売上が立ってから考えるものではありません。
とはいえ、最初から全ての国で権利化する必要もありません。
今販売している国、今後販売する可能性が高い国から優先順位を付け、事業計画と合わせて段階的に進めていくことが現実的です。
ただし、取得には時間も費用もかかるので、専門家と中長期的な戦略を事前に描くことが肝心です。
*毎年4月~6月のうちの2-3週間、中小企業等外国出願支援事業(補助金)の公募があります。
最大で費用の1/2が助成されることもあるので、特許庁の公式サイトはチェックしておくとお得です。
知財対策にかかる費用や期間は、海外進出計画全体の中に組み込んでおく必要があります。
事業計画に必要な書類もあわせて確認しておきましょう。
→ 海外進出の事業計画書テンプレート【輸出編・Word】|中小企業の海外展開に必要な書類
事業計画書の策定から知りたい方はこちらの記事も参考になります。
→【実例つき】海外進出で成功する事業計画書の作り方|輸出・投資に対応したテンプレ解説
これで知的財産保護はばっちりですね。
しっかり外国出願対策をして売りまくるぞー!
いいですね!
でも、急がば回れですよ。
知的財産を守る準備ができたら、次は「商品を合法的に届けられるか」を確認する必要があります。
ところで、輸出入規制についてはご存知ですか?
ゆしゅつにゅうきせい・・・????
日本から輸出する際の輸出規制と、現地で販売するための輸入規制、
どちらもクリアしていないと、どんなに売れたとしても、現地に商品を届けられないんです。
ゆしゅつデキナイ・・・??
海外進出では、知的財産だけでなく、輸出入規制への対応も事前準備の重要な要素です。
次は、日本から商品を輸出し、現地で販売するために知っておきたい「輸出入規制」について確認していきましょう。まずは一歩ずつ進めてみましょう。
01-4 輸出入規制について知っていますか?
海外の輸出入の規制について知っていますか
規制を知らないと商品は売れない
海外向けのWebサイトを作り、展示会で大きな反響を得て、商談も成立した。
しかし、輸出入規制を確認していなかったため、商品を出荷できなかった――。
そんな話は決して珍しくありません。
多くの国では、安全保障、製品安全、環境規制、化学物質管理などについて、それぞれ独自の制度や規制を設けています。
これらを事前に確認していないと、商品の輸出や輸入ができなくなることがあります。
特に問題となるのは、規制への非対応が商品の完成後や出荷直前に発覚するケースです。
その場合、追加試験や書類作成、認証取得が必要となり、数か月単位で販売計画が遅れることもあります。
さらに、商品が現地へ到着した後に問題が発覚すると、返品や廃棄、信用失墜、契約解除につながる可能性もあります。
「知らなかった」では済まされない。ーーそれが海外の輸出入規制です。
ただし、ここで一つ理解しておきたいことがあります。
海外の規制には、大きく分けて二つあります。
一つは、日本から輸出できるかどうかという「輸出規制」です。
もう一つは、相手国で輸入・流通・販売できるかどうかという「輸入規制・流通規制」です。
例えば、日本側の輸出規制をクリアしていても、相手国の安全基準や環境規制を満たしていなければ、その国では販売できません。
つまり、
「輸出できること」
と
「現地で売れること」
は別問題なのです。
海外進出では、
「売れるかどうか」
だけでなく、
「その国で販売できるのか」
という視点も重要になります。
どれほど優れた商品でも、現地の規制や制度に適合していなければ市場に出すことはできません。
海外展開では、そもそも「自社の事業がその国で成立するのか」という前提から確認しておかないと、規制以前の段階で進めなくなるケースもあります。
→ 海外進出は実現可能ですか
輸出入の規制準拠の実務
日本から製品を輸出する場合、まず確認すべきなのは日本側の輸出規制です。
代表的なものとして、
などがあります。
日本からの輸出規制の詳細はこちらも参考になります。
→ わかりやすい!安全保障貿易管理
これらは日本から輸出できるかどうかを判断するための制度です。
一方で、相手国へ輸出する場合は、その国で流通・販売するための規制や規格への対応も必要になります。
こちらは国や地域、製品によって求められる内容が大きく異なります。
代表的なものとして、以下のような制度があります。
CEマーキング(安全基準制度)
CEマーキングは、製品がEUの安全・健康・環境保護に関する基準へ適合していることを示す制度です。
EU加盟国をはじめ、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、トルコなどで流通する製品に関係します。
主に機械、電気電子機器、医療機器、おもちゃなど、多くの工業製品が対象となります。
CEマーキングが必要な製品をEU市場で販売する場合、適用される指令や規則を特定し、必要な試験や技術文書の作成を行わなければなりません。
また、製品によっては第三者認証機関による評価が必要になる場合もあります。
CEマーキングは単なるラベルではなく、
「この製品はEU市場で販売するための条件を満たしています」
という製造者の宣言でもあります。
そのため、販売開始直前ではなく、製品開発や海外展開の計画段階から確認しておくことが重要です。
WEEE、RoHS、REACH、他(環境規制)
欧州では、製品の安全性だけでなく、環境や化学物質に関する規制も重視されています。
代表的なものとして、WEEE(ウィー)、RoHS(ローズ)、REACH(リーチ)などがあります。
主にEU加盟国を中心に適用されますが、中国や米国などでも類似制度が存在します。
それぞれの概要は次の通りです。
- WEEE(廃電気電子機器指令)
電気電子機器の回収・リサイクルを求める制度 - RoHS(特定有害物質使用制限指令)
鉛、水銀、カドミウムなどの有害物質の使用を制限する制度 - REACH(化学物質規則)
製品に含まれる化学物質の管理や情報提供を求める制度
これらの規制は、完成品メーカーだけでなく、部品メーカーや材料メーカーにも影響します。
そのため、
「自社は部品しか作っていないから関係ない」
と思っていた企業が、取引先から突然証明書類の提出を求められることも少なくありません。
また、規制への対応にはサプライヤーからの情報収集や試験データの確認が必要になる場合もあります。
製品開発後に対応しようとすると大きな手戻りが発生するため、海外展開を検討する段階から確認しておくことが重要です。
EAC認証(ユーラシア経済連合技術規則『TR EAEU』)
EAC認証は、ユーラシア経済連合(EAEU)で流通する製品に求められる認証制度です。
対象国は、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスの5か国です。
機械設備、電気製品、産業機器など、多くの工業製品が対象となります。
以前は各国ごとに認証制度が存在していましたが、現在は共通の技術規則(TR EAEU)に基づいて審査が行われています。
製品によっては試験や技術文書の提出が必要となり、現地代理人の選定が求められる場合もあります。
そのため、
「ロシア向けだからロシアの規制だけ確認すればよい」
というわけではなく、EAEU全体の制度として確認する必要があります。
対象国への輸出を検討する際は、早い段階で適用規則の有無を確認しておきましょう。
Gマーク
Gマーク(Gulf Conformity Mark)は、中東のGCC加盟国で求められる製品適合制度です。
対象国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、オマーン、カタールの6か国です。
主に玩具や一部の電気製品などが対象となり、製品によっては試験や認証手続きが必要になります。
欧州のCEマーキングと似た役割を持ちますが、適用される制度や要求事項は異なります。
そのため、
「CEマーキングを取得しているから中東でもそのまま販売できる」
とは限りません。
また、近年は中東各国で製品安全や消費者保護に関する制度整備が進んでおり、以前よりも規制対応の重要性が高まっています。
中東市場への輸出を検討する場合は、対象製品にGマークが必要かどうかを事前に確認しておきましょう。
国家規格例
海外では、国際規格だけでなく、各国独自の国家規格が存在する場合があります。
代表的なものとして、
- ANSI(アンシ:アメリカ)
- BS(ビーエス:イギリス)
- DIN(ディン:ドイツ)
- NF(エヌエフ:フランス)
- CSA(シーエスエー:カナダ)
- GB(ジービー:中国)
- TCVN(ティーシーブイエヌ:ベトナム)
- TIS(ティーアイエス:タイ)
- PSB(ピーエスビー:シンガポール)
- JIS(ジス:日本)
などがあります。
これらは製品によって法的な義務となる場合もあれば、市場での信頼性や取引条件として求められる場合もあります。
例えば、
「法規制ではないので販売はできる」
ものの、
「その国の顧客や取引先が規格適合を求めるため、事実上対応が必要」
というケースも少なくありません。
また、同じ製品であっても国によって求められる試験項目や評価方法が異なることがあります。
そのため、
「日本や欧州で販売できているから他国でも問題ない」
とは限りません。
対象国への輸出を検討する際は、その国独自の規格や業界慣行についても事前に確認しておくことが重要です。
FDA関連
米国へ医療機器、化粧品、食品などを輸出する場合は、FDA(エフディーエー:米国食品医薬品局)への対応が必要になることがあります。
対象製品や販売方法によって求められる内容は異なりますが、代表的なものとして、
- 施設登録
- 事前通告
- 代理人の選任
- 届出や承認申請
- 必要書類の提出
- 製品基準への適合確認
- 事前通告
などがあります。
また、FDA対応は単なる書類提出ではなく、製品カテゴリーの判定や必要手続きの確認が重要です。
「日本で問題なく販売できているから米国でも販売できる」
とは限りません。
実際には、想定していたよりも時間や費用がかかることも多く、準備不足のまま進めると販売計画そのものに影響する場合があります。
なお、各国にはFDAに相当する制度や監督機関があります。
例えばタイであればThai FDA(タイFDA)、韓国であればMFDS(韓国食品医薬品安全処)などがあり、それぞれ独自の規制や申請手続きが存在します。
対象国への輸出を検討する際は、その国の監督機関や必要手続きを早めに確認しておくことが重要です。
規格と規制は似ているようで異なる
海外展開では、「規格」と「規制」が混同されることがあります。
しかし実際には、求められる対応が異なります。
規格とは、
「その製品が一定の技術基準や性能基準を満たしているか」
を確認する仕組みです。
例えばCEマーキングや各国の国家規格では、
- 試験の実施
- 試験データの取得
- 技術文書の作成
- 適合証明書の作成
などが求められます。
一方で規制とは、
「その国で流通・販売するための行政上の手続きや制度」
です。
例えばFDA関連では、
- 施設登録
- 事前通告
- 届出
- 申請
- 現地代理人の選定
などが必要になります。
イメージとしては、
規格が「製品そのものの合格証」であるのに対し、
規制は「その国で販売するための入場許可証」のようなものです。
どちらか一方だけでは足りません。
製品が規格へ適合していても、必要な登録や届出が終わっていなければ販売できません。
逆に、行政手続きを終えていても、製品が技術基準を満たしていなければ市場へ流通させることはできません。
規制対応は個別対応になりがちですが、進出前に全体像を整理しておくことで、どこに時間とコストがかかるのかを見極めやすくなります。
→ 海外進出の相談前にやるべき準備7選|支援機関・コンサルを動かすチェックリスト
ええっと、今お話し頂いているのは、
関税や貿易統計品目の話でしょうか。
輸出入には関税がかかってきますよ、という・・・。
おしいですが、関税の話ではありません。
(関税の話はこちらをどうぞ 関税とは?その基本を理解する)
輸出する場合(その国にとっては輸入する場合)、その商品が現地の流通規制や制度に適合していなければ、その国で販売できません、という話です。
ちなみに、輸出の際、「輸出税」のような関税はかかりません、我が国の場合・・
関税は、あくまで「相手国に荷物が到着して、輸入されるとき」に、「輸入関税」としてその国のルールでかかるものになります。
。。。
輸出入規制は机上で確認するだけでなく、現地で実際に流通できるかどうかまで検証しておかないと、想定外のトラブルにつながります。
→ 海外進出前にF/S現地調査はしましたか
規制を知らないと何が起きるのか
規制対応で最も多いトラブルは、
「規制の存在を知らなかった」
または
「確認したつもりだったが正しく理解できていなかった」
というケースです。
例えば、
- 商談成立後に必要な認証が未取得と判明した
- 出荷直前になって追加試験が必要と分かった
- 日本からは輸出できたが、現地で輸入許可が下りなかった
- 現地代理人の選定や登録手続きに数か月かかった
- 製品が税関で止まり、納期に間に合わなかった
といったトラブルは珍しくありません。
特に海外では、
「出荷できる」
ことと
「販売できる」
ことが別問題です。
そのため、日本側では問題なく進んでいた案件でも、現地到着後に規制対応の不足が発覚し、大きな損失につながることがあります。
場合によっては、
- 返品
- 廃棄
- 契約解除
- 販売停止
などに発展することもあります。
また、規制に準拠していなくても、同じ製品を長年輸出し続けており、表面上は問題なく取引が続いているケースもあります。
しかし、それは「規制に適合している」ことを意味するわけではありません。
例えば欧州では、安全基準を満たしていない製品が市場で発見された場合、欧州委員会の安全情報システム(RAPEX)で警告が公表されることがあります。
一度警告対象となると、その製品は欧州域内での流通が難しくなるだけでなく、取引先や顧客からの信頼にも大きな影響を与えます。
問題が表面化してから対応するのではなく、事前に規制への適合を確認し、必要な準備を進めておくことが重要です。
CEマーキングについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
規制対応にはどのくらいの費用がかかるのか
規制対応にかかる費用は、対象国や製品、求められる制度によって大きく異なります。
また、日本側の輸出規制への対応と、海外側の輸入規制への対応では必要な作業も異なります。
そのため、自社の商品がどの制度の対象になるのかを早い段階で確認することが重要です。
日本側の輸出規制への対応
日本側の輸出規制に関する確認や書類作成は、経済産業省や各種支援機関の公開情報を参考に、自社で対応できる場合もあります。
特に安全保障貿易管理に関する該非判定やSDS(安全データシート)の準備は、多くの企業が最初に確認する項目です。
ただし、製品や技術によっては正確な専門家の知識が必要になる場合もあります。
海外側の輸入規制への対応
海外側の規制へ対応する場合は、試験、認証、技術文書作成などの費用が発生することがあります。
例えば、
- 製品試験費用:10万〜50万円
- 技術文書作成(英語):10万〜30万円
- 認証機関への申請費用:10万〜100万円超(国や品目により変動)
などが目安となります。
また、
- 現地代理人の選定
- 登録手続き
- 翻訳
- 追加試験
などが必要になる場合は、さらに費用や期間が増えることもあります。
特に初心者にとっては、
「どの制度に該当するのか」
「どの試験が必要なのか」
「どの認証機関へ相談すれば良いのか」
の判断が難しいため、第三者認証機関や専門家へ早めに相談する方が結果的に効率的なことも少なくありません。
規制対応はコストではありますが、販売停止や回収、契約解除といったリスクを避けるための投資でもあります。
海外進出の事業計画を立てる際は、規制対応費用もあらかじめ見込んでおくことが重要です。
第三者認証機関について詳しく知りたい方は、以下もあわせてご確認ください。(パコロア代表による中小機構への寄稿記事です。)
・どの機関に依頼できるのかを確認する
→ 第三者認証機関のリスト
・そもそも何を依頼できるのかを理解する
→ 第三者認証機関が何ができるかのリスト
規制対応は、海外進出の準備の中でも見落とされやすい項目です。
しかし、実際には「売れるかどうか」と同じくらい、「売れる状態にできるかどうか」が重要になります。
規制対応はリスクの一部であり、契約・文化・運用体制なども含めて全体で管理していく必要があります。
→ 海外進出のリスク管理は考えていますか
あぶなかった・・・輸入規制に準拠しないと、現地では売ることもできないなんて・・・
そうなんです。
中小企業にとってここは高い障壁となっています。
じっくり検討が必要です。
次のステップとしては、海外進出に向けて必要な能力を身につける、というものがあります。
必要な能力を身につける??(うぅ・・まだ続くんですか・・・)
海外進出に必要な能力は、一朝一夕には身につきません。
努力あるのみです。
トホホ・・・
海外進出に向けて必要な能力を身につけていきましょう!
>02 海外進出に必要な能力を身につけよう
海外進出に必要な能力を身につけよう
海外進出には3つの能力が必要
海外進出というと、まず商品や市場、展示会や営業活動に目が向きがちです。
しかし実際には、それらを支える土台となる能力がなければ、海外事業を継続することはできません。
たとえば、商談が成立しても貿易実務が分からなければ商品を適切に届けることができません。
英語でやり取りできても、相手の意図やビジネス上の前提を理解できなければ商談は前に進みません。
また、日本では当たり前の進め方が海外では通用せず、思わぬ誤解やトラブルにつながることもあります。
海外進出を進めるうえで重要なのは、「貿易実務」「ビジネス英語」「異文化適応力」の3つです。
どれか一つだけでは十分ではありません。
それぞれを理解しながら身につけていくことで、海外企業との取引や海外市場への展開をよりスムーズに進めることができます。
貿易実務が身についていますか?
海外進出を始めると、必ず発生するのが「商品を海外へ届け、お金を受け取る」という取引です。
しかし、海外取引は国内取引とはルールが大きく異なります。
たとえば、
・見積書やインボイスの作成方法
・輸送費や関税を誰が負担するのか
・代金をいつ、どのように回収するのか
・輸送中の破損や紛失に誰が責任を負うのか
といった点を事前に決めておかなければなりません。
海外企業との商談がまとまっても、こうした実務が整理されていなければ、利益が出ない取引になったり、思わぬトラブルにつながったりすることがあります。
もちろん、すべてを自社だけで対応する必要はありません。
しかし、貿易実務の全体像を理解していなければ、どこにリスクがあり、何を専門家へ相談すべきかも判断できません。
海外進出を進めるなら、まずは貿易実務の基本を理解しておくことが重要です。
海外進出で伝わる英語が話せますか?
海外進出というと、「英語が話せるかどうか」を心配する企業は少なくありません。
しかし実際には、英語力そのものよりも、「相手に伝わる形でコミュニケーションできるか」の方が重要です。
海外企業とのやり取りでは、見積依頼、契約交渉、納期調整、クレーム対応など、さまざまな場面で英語を使います。
その際に必要なのは、難しい単語や流暢な会話ではありません。
・相手が何を求めているのかを理解する力
・自社の考えや条件を誤解なく伝える力
・文化や商習慣の違いを踏まえて説明する力
です。
実際には、英語そのものは正しくても、相手との認識がずれているために商談が進まなくなるケースもあります。
海外進出では、英語を話すことよりも、英語でビジネスを進めることが求められます。
まずは、自社が海外企業と適切なコミュニケーションを取れる状態かどうか確認してみましょう。
→ 海外進出で伝わる英語が話せますか?
異文化適応力は十分に備わっていますか?
海外進出では、英語が通じても商談がうまく進まないことがあります。
その原因は、言葉ではなく、ビジネスに対する考え方や価値観の違いにあるケースが少なくありません。
たとえば、日本では担当者同士で細かく調整しながら進めることが一般的ですが、国によっては意思決定者と直接話すことを重視する場合があります。
また、日本では「察する」「空気を読む」ことが期待される場面でも、海外では言葉にして伝えなければ理解されないことがほとんどです。
こうした違いを知らないまま進めると、「きちんと説明したつもりだった」「当然伝わっていると思っていた」という場面で誤解が生じます。
異文化適応力とは、海外のやり方に無理に合わせることではありません。
相手との違いを理解し、自社の考えを適切に伝えながら、お互いに納得できる着地点を見つける力です。
海外企業との取引では、この能力が信頼関係の構築や長期的なビジネスの継続につながります。
まずは、自社が異文化によるすれ違いに気づける状態かどうか確認してみましょう。
まずは貿易実務から始めよう
海外進出に必要な能力には、「貿易実務」「ビジネス英語」「異文化適応力」の3つがあります。
どれも重要な能力ですが、最初に身につけたいのは貿易実務です。
なぜなら、海外企業との商談が成立しても、商品を届けて代金を回収する仕組みが理解できていなければ、取引そのものが成立しないからです。
また、貿易実務の全体像を理解しておくことで、その後に学ぶビジネス英語や異文化適応力も、実際の取引の流れの中で理解しやすくなります。
海外進出に必要な能力は、一つひとつ積み重ねて身につけていくことが大切です。
まずは、海外取引の基本となる貿易実務から確認していきましょう。
貿易実務が身についていますか
貿易実務とは利益を守る仕事である
貿易実務というと、
「輸送手配をする仕事」
「インボイスやパッキングリストを作る仕事」
というイメージを持たれることがあります。
もちろん、それも大切な業務です。
しかし実際には、貿易実務の本質は「会社の利益を守ること」にあります。
例えば、海外企業から引き合いが来たとします。
見積書を作成し、契約し、商品を出荷し、代金を回収する。
一見すると単純な流れですが、その途中にはさまざまなリスクが潜んでいます。
- 輸送費の上昇
- 為替変動
- 梱包費や保険料の見落とし
- 途中で判明した仕様変更や追加要求への対応
- 書類不備による出荷遅延
- 代金未回収
- クレームや返品対応
こうした要素を見積段階で十分に考慮できていなければ、受注はできても利益が残らないことがあります。
理想は、最初に提出した見積書の内容と、最終的な請求書の内容が大きく変わらないことです。
それは、販売価格だけでなく、輸送方法、貿易条件、支払い条件、想定リスクまで含めて、最初の段階で事業全体が見えていたことを意味します。
そのため貿易実務では、書類作成や物流手配の知識だけでなく、
「どこで利益が生まれ、どこで利益が失われるのか」
を理解する視点が欠かせません。
貿易実務を学ぶ目的は、書類を正しく作ることだけではありません。
海外取引を継続しながら利益を守り、会社の成長につなげることにあるのです。
まずは全体像を理解した上で、どの業務から押さえるべきかを整理しておくことも重要です。
→ 貿易実務の基本とは?初心者が最初に知るべき流れと知識まとめ
輸出業務の流れ
輸出業務は、「見積を出して商品を送る仕事」ではありません。
実際には、最初の見積段階から利益やリスクの大部分が決まっています。
そのため、各工程で何を確認するべきかを理解しておくことが重要です。
コレポン(海外との最初のやり取り)
海外企業から引き合いがあったら、まずは必要な情報を確認します。
数量、仕様、納期、輸送先だけでなく、最終用途や現地での使用方法まで確認できると理想です。
この段階で認識のずれがあると、後の見積や契約で大きな問題になることがあります。
見積書作成(利益を左右する最重要工程)
輸出業務の中で、最も重要な工程のひとつです。
輸送費や輸出梱包費の見積もりを、国際輸送会社や国際宅配便会社、梱包会社などから取得します。
その際、ざっくりとしたスケジュールも一緒に確認しておきます。
そして、
- 海外向け価格
- 輸送方法
- 通貨
- 支払い条件
- 納期
などを決定し、見積書を作成・提出します。
見積書は単なる価格表ではありません。
どのような条件で取引するのか、誰がどこまで費用やリスクを負担するのかを決める、取引全体の設計図でもあります。
この段階で条件設定を誤ると、受注できても利益が残らなかったり、想定外の費用負担が発生したりすることがあります。
そのため、貿易実務では見積書作成が最も重要な業務のひとつと考えられています。
輸出業務の中でも、特に最初につまずきやすいのが見積書の作成です。
具体的な作り方はこちらで整理しています。
→ 英語の見積書の作り方|そのまま使える書き方・送付メール例つき
契約(ある場合とない場合の対応)
前金100%であれば契約書を省略する取引もありますが、そうでない場合は契約書を取り交わすことによって、責任範囲やトラブル時の対応を明確にしておくことが重要です。
また、相手企業から契約書が提示されるとは限りません。
こちらから提示できるよう、自社契約書のひながたをあらかじめ準備しておくと安心です。
注文請書作成(オーダー確認)
発注内容を確認し、注文請書(Order Confirmation)を発行します。
ここで数量や納期、支払い条件などを海外企業へ再確認しておくことで、後々の認識違いやトラブルを防ぐことができます。
輸出手配(段取りと予約)
国際輸送会社に出荷予定を連絡し、航空便や船のスペースを予約します。
スケジュールは頻度が限られているので、早め早めの確認が重要です。
輸出梱包や保険付保も並行して手配しておきます。
輸出書類作成(通関・L/C対応)
インボイスやパッキングリストを作成しておき、出荷時にフォワーダーへ渡します。
L/C取引の場合は、銀行提出用の各種英文書類(Application Form、Bill of Exchange、Certificationなど)も準備します。
輸出通関に必要なインボイス、パッキングリストを作成しておき、出荷時に国際輸送会社に渡します。
海外顧客へも輸出書類を送ります。
オリジナルを送る必要がある場合は国際宅急便で、コピーで良い場合はメール送付します。
代金回収(利益を確定させる工程)
前払いであればこの工程はスキップします。
後払いの場合は着金確認をします、もし未入金であれば督促が必要です。
商品を出荷しても、代金が回収できなければ利益にはなりません。
特に初回取引では、100%前払いまたはリスクを抑えた決済条件で進めることが重要です。
フォロー対応(次の受注につなげる)
荷物が届かない、書類が不足している、破損している…など、トラブルはつきもの。
海外営業では、新規顧客を獲得するよりも、既存顧客との取引を継続する方が効率的な場合も少なくありません。
きちんと対応できるかどうかで、次の受注にも影響します。
“輸出して終わり”ではない、ここからが信頼の構築です。
輸入業務の流れ
輸入業務では、
商品を仕入れて日本国内へ届けるだけでなく、
品質・納期・代金・在庫といったリスクを管理することが求められます。
特に海外からの仕入れでは、
「思っていた商品と違う」
「数量が不足している」
「輸送中に破損した」
といったトラブルも珍しくありません。
そのため、発注から検品、支払いまでの流れを理解し、どの段階で何を確認するべきかを把握しておくことが重要です。
コレポン(海外仕入れ先との確認)
日本のお客様からの注文を受け、海外仕入れ先に価格・在庫・納期を確認します。
自社で在庫を持たずに輸入販売する場合、この確認は必須です。
見積書作成(再確認と案内)
海外メーカーの価格改定や為替変動が発生することもあるため、古い価格のまま受注しないよう注意が必要です。
もし価格が変わっている場合は、日本のお客様向けに改めて見積書を作成し、更新価格で再度発注していただきます。
契約(トラブルの予防)
輸入取引では、品質トラブルや納期遅延をめぐる認識違いが発生しやすいため、契約書による事前の取り決めが重要です。
ただし、契約書があるだけで問題が解決するわけではありません。
例えば「良品を納品すること」と記載しても、何をもって良品とするのかは企業によって解釈が異なります。
そのため、
- 不良率の許容範囲
- 寸法や色の許容差
- 検品方法
- 納期遅延時の対応
などについて、できるだけ具体的に定めておくことが重要です。
海外企業との取引では、一般的な契約書のひながただけでは十分とは限りません。
過去のトラブル事例も踏まえながら、自社に合った条件を少しずつ盛り込んでいくことが現実的な対策になります。
発注書作成(注文内容の確定)
発注書(Purchase Order) を海外仕入れ先へ送付。
発注内容に誤りがないか、数量・価格・納期・支払い条件などを最終確認したうえで送付することが重要です。
注文請書作成(確認連絡)
日本のお客様に、価格・納期を記載した注文請書を返送します。
輸入手配(通関と受入準備)
国際輸送業者もしくは乙仲業者(フォワーダー)に連絡して通関手続きへ。
特に大型貨物の場合は、自社内での荷受け準備も忘れずに進めます。
輸入検品(写真記録が命)
到着後速やかに検品し、梱包の破損、商品自体のダメージ、中抜きや欠損がないかを確認します。
不備があった場合は、原因が海外の仕入れ先の梱包品質か、国際輸送会社の取扱いか、責任範囲を明確にするために、下記の写真を撮影しておくとスムースです。
- 輸出梱包前の商品写真、梱包後の写真(相手国にて)
- 到着開梱前の梱包写真(日本にて)
- 到着開梱後の梱包写真、開梱後の商品写真(日本にて)
- 貨物到着後2週間以内の検品は必須です。
数週間たったあとに貨物ダメージが分かったとしても、貨物保険の対象外となる場合があるため、検品は速やかに行うことが重要です。
支払い(送金と通知)
後払いの場合は、期限までに送金し、相手方に送金完了の報告も忘れずに行います。
フォロー(後日の問い合わせ対応)
日本側のお客様側の理由で、商品がすぐに使われず、時間が経ってから品質トラブルが発覚することもあります。
ロット番号や製造履歴の確認など、継続的なフォロー体制が信頼につながります。
輸入取引では、支払い条件や信用リスクの管理も重要になります。
基本的な仕組みはこちらで確認しておきましょう。
→ はじめての信用状とは|図と事例でわかる貿易決済ガイド
貿易実務に必要な書類
貿易実務では、輸出入の各場面でさまざまな書類を扱います。
ただし、すべてを暗記する必要はありません。
重要なのは、
「誰が作成するのか」
「誰に提出するのか」
「何のための書類なのか」
を理解することです。
実際の現場では、必要になったときに過去のひながたやサンプルを参考に作成することも少なくありません。
一方で、書類の内容や提出先を理解していないと、出荷遅延や代金回収の遅れにつながることがあります。
ここでは、代表的な書類と発行者を整理しておきましょう。
輸出者が作成する書類:
Sales Contract(売買契約書)
Quotation(見積書)
Invoice(送り状・請求書)
Packing List(梱包明細)
Application Form(L/C開設依頼書・L/C買取依頼書)
Bill of Exchange(為替手形)
Certification(各種証明書)
船会社・航空会社が発行する書類:
Bill of Lading (B/L)(船荷証券)
Air Waybill (AWB)(航空運送状)
銀行が発行する書類:
Letter of Credit (L/C)(信用状)
保険会社が発行する書類:
Insurance Policy(貨物保険証券)
どの書類もミスが許されないため、内容の正確性と提出タイミングが重要です。
特にL/C取引では、商品に問題がなくても書類不備だけで代金を受け取れないことがあります。
書類は単なる事務作業ではなく、海外取引を成立させるための重要なツールなのです。
協力会社の役割
貿易実務は、自社だけで完結できる仕事ではありません。
海外営業、物流、通関、保険、決済など、それぞれの分野に専門家が存在します。
実際の現場では、
「どの輸送方法が最適か」
「この貨物に保険は必要か」
「この国へ輸出できるのか」
「この書類で通関できるのか」
といった判断が求められる場面が数多くあります。
そんなときに頼りになるのが、各分野の協力会社です。
国際輸送会社(フォワーダー):
海外輸送の手配や通関サポートを行います。
商船三井ロジスティクス
郵船ロジスティクス
セイノーロジスティクス
阪急阪神エクスプレス
近鉄エクスプレス
日本通運
他にも、一般社団法人 国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)の正会員リストから探すことが可能です。
国際宅急便会社(小口貨物の海外配送):
サンプル品や少量貨物の輸送で活躍します。
UPS
DHL
FEDEX
EMS(日本郵便)
海上保険・貿易保険会社:
輸送中の事故や代金未回収リスクに備えます。
東京海上日動火災保険
三井住友海上火災保険
日本貿易保険
海外PL保険会社:
海外で発生した製品事故への備えとして利用します。
東京海上日動火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
損害保険ジャパン株式会社
その他の協力先:
輸出梱包会社
第三者認証機関
取引銀行 など
これらの会社と日頃から関係を築いておくと、トラブル発生時にも相談しやすくなります。
貿易実務では、すべてを自分ひとりで解決する必要はありません。
「誰に聞けばいいか」が分かっていることも、大切な実務能力のひとつです。
海外へ商品を届ける方法によって、費用や納期、対応できる貨物サイズは大きく異なります。
まずは、小口貨物やEC発送なども含めた配送方法全体を知りたい方はこちらをご覧ください。
→ 海外配送の方法と選び方|BtoC商品を扱う中小企業のための実務ガイド
一方で、コンテナ輸送やフォワーダーの役割、通関など、BtoB輸出に必要な国際物流の全体像を理解したい方はこちらがおすすめです。
→ 国際輸送とは?B2B戦略に効く成功事例とコスト・通関・リスクの実践知識
貿易実務で本当に難しいこと
貿易実務の難しさは、インボイスの作成や通関手続きではありません。
それらは時間をかければ調べることができます。
本当に難しいのは、
「正解がない状況で判断しなければならないこと」
です。
現場では、教科書やセミナーでは学べない問題が次々に発生します。
そして、その多くは誰かが決断しなければ前に進みません。
例1:現地が“ないはずの書類”を求めてくる
必要書類を揃えていたはずが、現地当局から「他機関が発行した別の書類を出せ」と要求される。
実績がない書類でも、交渉しつつ現地と妥協点を探り、指定機関に可能性を打診する――そんな対応が求められます。
例2:L/C取引なのに、銀行からリスクの同意書を求められる
L/C取引=支払い保証付き、のはずが、
相手国の信用不安を理由に「万一買取できない可能性」への同意書提出を求められる。
手数料を払ってL/Cを選んだのに……という矛盾に、現場としては従わざるを得ない場面もあります。
例3:書類未着・通関ストップなど、“待ったなし”の実務
貨物は届いているのに通関書類に不備がある、現地で通関が止まる、書類が間に合わない――
こうした「止まるとダメージの大きい」実務シーンでは、誰がどこまで責任を負えるかを考えたうえで、瞬時の判断が必要です。
こうした状況こそが、実務経験者の経験値がものを言う場面です。
正解のない選択肢の中から、
どれが最も被害が少ないか。
どれが顧客との関係を守れるか。
どれがこれからも会社の利益を守れるか。
を考えながら一手を打つ。
それこそが、貿易実務の難しさであり、同時に面白さでもあります。
貿易実務のクレームの予防法
海外企業との取引で最も避けたいのは、クレームや想定外の損失です。
そして、その多くは出荷後ではなく、出荷前の準備不足から発生します。
たとえば、
- 見積条件の認識違い
- 納期の認識違い
- 仕様の認識違い
- 梱包や表示のミス
などです。
これらは大きなトラブルに見えますが、実際には見積書やコレポン(商業通信)の段階で防げることも少なくありません。
そして、実は、
- 正しい見積書の提示
- 丁寧で明確なコレポン(商業通信)
この2つがしっかりしていれば、
- 注文ミス
- 梱包不備
- 倉庫費用の増加
- 関税問題や返品クレーム
といったトラブルの多くは未然に防ぐことができます。
一方で、たった一文字のミスが大きな損失につながることもあります。
例えば shipping mark の段ボール番号をひとつ打ち間違えただけでも、
- 書類との不一致で貨物が積めない
- 出荷キャンセル
- 新たなスケジュール調整や再手配費用発生
- 納期遅延による減額要求…
「輸出ってこんなに儲からなかったっけ?」
そう感じるときは、大きな失敗ではなく、このような小さなミスが積み重なっているのかもしれません。
安定して利益を出し続けるためには、
- 貿易の流れを理解すること
- 起こり得るトラブルを想定しておくこと
が重要です。
「うまくやる」よりも、「準備を怠らない」。
それがクレーム予防への最も堅実な道と言えるでしょう。
貿易実務の醍醐味とは
それは、
トラブルを乗り越えたとき、
そして無事に利益を残せたときです。
確かにそれも大きな達成感です。
しかし、貿易実務にはもっと静かな喜びがあります。
海外企業から引き合いが来る。
見積書を作る。
注文書が届く。
代金を回収する。
商品を届ける。
現地で使われる。
そして、
「期待通りだった」
「また注文したい」
という言葉をいただく。
こうした一連の流れを、大きなトラブルなく完了できたとき。
思わず「よし!」と小さくガッツポーズをしたくなる瞬間があります。
貿易実務担当者は、一度も会ったことがない海外企業と、メールや書類だけで何年も取引を続けることも珍しくありません。
それでも、
丁寧なやりとり
正確な書類作成
誠実な対応
を積み重ねることで、会社の信頼は少しずつ築かれていきます。
決して目立つ仕事ではありません。
しかし、
海外営業が受注した案件を利益に変え、
顧客との関係を継続させ、
会社の信用を支えているのは、
ほかならぬ貿易実務担当者の仕事の成果です。
海外企業からリピート注文が届き、「今回もお願いします」と連絡が入る。
安定して海外取引が続く。
これらの事実こそが、貿易実務担当者の誇りであり喜びなのです。
貿易実務、ガゼンやる気が出てきました!
自分が作った見積書に対して、英文の注文書が届く…
あの瞬間は、ほんとに格別です。
でも、私、英語が苦手なんですよねー。
いいですね!
苦手ということは、伸びしろが大きいということです。
海外企業とやり取りを重ねるうちに、少しずつ伝わる表現も増えていきます。
ということで早速、ビジネス英語についても学んでいきましょう。
>02-2 海外進出で伝わる英語が話せますか
海外進出で伝わる英語が話せますか
英語ができないと海外進出はできないのか
結論から言えば、できません。
ただし、それは英語が話せないからではありません。
海外企業と意思疎通ができないからです。
実際には、英語が流暢でなくても海外展開に成功している中小企業は数多く存在します。
一方で、TOEIC高得点者や留学経験者がいても、海外企業との取引がうまく進まないケースもあります。
その違いは何でしょうか。
それは、自社のことを英語で説明できるかどうかではありません。
相手が知りたいタイミングで、相手が知りたい情報として「自社のことを」伝えられるかどうかです。
たとえ商品が優れていても、
「どんな会社なのか」
「なぜこの商品を作ったのか」
「競合との違いは何か」
が相手が理解できる文脈で伝えられなければ、相手は安心して取引できません。
海外企業が知りたいのは、英語力そのものではなく、結局その会社が信頼できるかどうかです。
だからこそ最初に目指すべきなのは、ネイティブのような英語ではありません。
自社のことを、自分の言葉で、相手に負担をかけずに、理解してもらえる英語です。
英語学習というと単語や文法から始めたくなりますが、海外進出の現場では、その前に整理しておくべきことがあります。
まずは、「会社」「商品」「自分自身」について話せるようになることです。
英語力だけでなく、海外の相手に自社の事業内容をどう伝えるかも整理しておくと、商談の準備が進めやすくなります。
→ グローバル展開は英語でどう説明する?海外企業に伝わる事業戦略の伝え方【例文付き】
ビジネス英語を話せるようになるには?
ビジネス英語を話せるようになる近道は、実はとてもシンプルです。
まずは3つのこと――
「会社」
「商品」
「自分自身」
について英語で話せるようになることです。
国内でもこの3つは商談や営業の鉄板ネタです。
つまり、英語力そのものよりも、「何を伝えるか」の方が最初は重要なのです。
また、海外企業との初期の商談で深く聞かれる内容も、ほぼこの3つの範囲に収まります。
それぞれ、次のようなテーマを整理してみましょう。
会社のこと:
- 社長のユニークさ
- 独特の企業理念
- 工場や社員の魅力
- 入社して驚いたこと
- 業界動向
- 競合との違い
- 日本独自の市場状況と海外との比較(予想)
- 海外展開の進捗
- メディアや第三者からの評判
商品のこと:
- 売れ始めたきっかけと成功の理由
- リピーダーの特徴とその理由
- トラブルと解決エピソード(話せる範囲で)
- 新商品新サービスの開発秘話(話せる範囲で)
自分のこと:
- この仕事を選んだきっかけ
- 楽しかったこと、つらかったこと
- パンデミックの時に考えたこと
- 日本で誇りに思うこと
- 将来の夢、ライフワーク、家族構成、休日の過ごし方
- ボランティアや社会貢献など
これらを、まずは日本語でA4用紙1枚(両面程度)に書き出してみましょう。
そのあと、プロの翻訳者に依頼して英訳し、何度も音読しながら自分の言葉として身につけていくことをおすすめします。
ポイントは、無料翻訳(だけ)で済ませないこと。
翻訳ミスやニュアンスのズレは、時に信頼を損なう原因になります。
せっかく時間をかけて覚えた英語が「残念英語」にならないよう、この部分だけはプロ品質を選んでほしいところです。
また、オリジナルの英作文帳や「自分用辞書」を作っておくと、海外営業の場でのお守りになります。
伝えたい内容を可視化するだけでも、不思議と自信が生まれるものです。
仮に想定外の話題を振られたとしても大丈夫です。
常に、
「会社」「商品」「自分」
のどれかに話を戻す意識を持ちましょう。
これだけで、相手に飲まれない商談の軸が自然とできあがります。
交渉、プレゼンテーション、Q&A――
あらゆるシーンで活かせる、実戦型の話術です。
実際の商談で何を準備し、どのように話を進めるかを確認したい方は、こちらも参考になります。
→ 英語でのBtoB商談の進め方|準備から交渉・フォローまで解説
英語力より「会話をつなぐ力」
リアクションは2〜3倍大きく返す
海外顧客と良い関係を築くには、ただ英語を話すだけでは不十分です。
“会話をつなげる力”=反応力が、実は最も重要なスキルの一つです。
相手の話には、リアクションを2〜3倍豊かに返しましょう。
うなずく・驚く・笑う・共感する…。
その表情と声の反応があるだけで、相手は安心し、会話が滑らかに進みます。
ただし、わかっていないのに分かっているフリをするのは絶対にNGです、理由は後述します。
丸暗記は初心者の最強の武器
初心者こそ、先述の丸暗記トーク”を活用して、自分から話題をリードするのが効果的です。
背景知識のないまま外国語で応対するのは、経験者でも難しいものです。
だからこそ、話せる内容は自分から提示し、話の主導権を渡さないのが賢い戦略です。
相手が話を逸らしても、うまく“暗記ネタ”に球を戻して、会話をコントロールしていきましょう。
英語が聞き取れるようになる瞬間
丸暗記に慣れてきたら、「相手の話を予想する」力を鍛えるステップへ進みます。
英語で成果を上げている中小企業の方々も、多くは留学や駐在経験などなく、必要に迫られて独学でやってきたという、ビジネスパーソンたちです。
そういった方の多くも英語環境に慣れてくると、不思議と”ある壁”を超える瞬間が訪れます。
相手が話し始めた数語だけで、着地点の予想ができるようになり、自分の返答も話の途中から準備できるようになってくるのです。
ビジネスの会話で使われるテーマは、実際かなり限られていて、結局は「会社」「商品」「自分」の3つに集約されるからです。
この3つを軸に会話の“型”をつかんでいけば、思ったより早く慣れる実感が得られるはずです。
話の流れが読めるようになると、集中すべき部分の選別も上手くなります。
たとえば相手の話すスピードが早くても、知っている話は流して、知らない新しい話題だけは集中して聞き取る。
気を張る時間が短くなれば、余裕が生まれ、結果的に聞き取れる内容が増えていきます。
分からなくなったら即フリーズ
とはいえ、最初は何度も“迷子”になります。
そんな時は、勇気を持ってフリーズしてください。
分からないまま相槌だけ続けるのは、かえって話をややこしくします。
こちらのリアクションがピタッと止まれば、相手も「どうした?」と気づいてくれます。
そのタイミングで、聞き取れた単語と関連しそうな単語を、やや困った顔でゆっくり発音してみましょう。
たとえば「ターキー」と聞こえたなら…。
「Turkey(トルコ)? Ankara(首都のアンカラ)?」
「Turkey(七面鳥)? Bird(鳥)?」
そんなふうに聞き返せば、相手は「No, no, Turn-key Contract(一括請負契約/フルターンキー契約)」と補足してくれるかもしれません。
自分からヒントを出すこと、がポイントです。
これが「すみません、分かりません」だけで済ませない、ピンチ回避の最重要点なのです。
希望的観測で「そのうち分かるかも」はまず通用しません。
分からないと思ったら即・フリーズ、即・軌道修正が鉄則です。
「もう一度お願いします」が危険な理由
聞き取りができずについやってしまうことに、
「すみません、もう1回言って下さい」
を英語で言ってしまうことがあります。
即座に相手は、少し前に話を戻しつつも、
「同じスピード」で
「同じ聞き取れない単語」を
「親切心から長めに説明」しなおそうとします。しかし、
”同じ単語が出てくる限り”、
その説明を聞いてもたぶんまた聞き取れないのです。
このピンチを切り抜けるためにはこちらから、
『何が聞き取れて、何がわからないか』
のヒントを出す必要があります。
分からなくなっても聞き流せばそのうち分かるようになるかも、、、と、希望的観測は一切持たず
(途中から分かるようには残念ですが、なりません・・・)、
すぐに白旗宣言、すぐに軌道修正が、初心者の一番大切な心得となります。
会話がつながると世界が変わる
少しずつでも会話がつながりはじめると、発音やイントネーション、ボキャブラリーを増やすことへの地道な努力も最初の頃より苦ではなくなります。
もしかすると自分は英語が話せるようになるのかも・・?
すごいかも?
できるかも!?
とひそかな期待と自信が芽生えていきます。
そうなるともちろんですが、海外進出自体も、やり取りがスムーズにスマートになるため、良い方向に回り始めます。
ですので、初心者であれば、
まず丸暗記戦術を用いて、
分からなくなる寸でのところで聞き返し、
軌道修正をし、
会話を何とかつなげること、
に全意識を集中させることがビジネス英語上達への近道なのです。
海外向けのプレゼンに不安がある場合は、話し方だけでなく構成や準備の考え方もあわせて確認しておきましょう。
→ 英語プレゼンが怖くなくなる!中小企業のためのビジネス攻略法
海外企業に信頼される話し方とは
どんなに拙い英語でも、その商品やサービスに対する自分の言葉、自分の想いで語れば、多くの海外顧客はしっかりと耳を傾けてくれます。
なぜなら、海外企業が本当に知りたいのは、あなたの英語力ではなく、「この会社は信頼できるか」だからです。
ただし、それもある程度関係ができた相手に限られます。
新規開拓の場面では、相手がブロークンイングリッシュに我慢してくれることはほとんどありません。
伝わらないことが、そのまま「この人とはビジネスできないかもしれない」につながることもあります。
ですから、海外進出を始めて1〜2年以内には、英検2級・TOEIC700点程度をひとつの目安として、義務教育レベルの英語でもきちんと話せる状態を目指しましょう。
よく見かけるのが、ネイティブらしく聞こえたい一心で、
「Well, um, I mean, actually, you know…」
と filler words(つなぎ言葉)を多用してしまうケースです。
これは日本語で言えば、
「えーと」
「ていうか」
「あのー」
のようなものです。
スピーチコンテストでは減点対象になることもあり、ビジネスの場では不要かつ不自然に聞こえる場合があります。
もうひとつ注意したいのが、海外留学経験者が学生時代の英語のまま商談に臨んでしまうケースです。
たとえば、見た目は立派なビジネスパーソンなのに、話し始めると「ヤバい」「イケてる」「マジで」といった学生ノリが混じる人がいます。
英語でも同じです。
カジュアルすぎる表現や学生っぽい言葉づかいは、「この人に任せて大丈夫だろうか」という不安につながることがあります。
ビジネス英語とは、正しい英語を話すことではありません。
海外企業に安心してもらえる話し方を身につけることです。
英語圏でも、「学生の会話」と「プロ同士の会話」では使う言葉も空気感も異なります。
語彙や文法だけでなく、相手に与える印象にも意識を向けてみましょう。
英語表現そのものより、日本語の感覚で伝えてしまうことが誤解につながる場合もあります。
→ 海外メールで誤解される日本語10選|ヒアリング・すり合わせが通じない理由
まずは、会社のこと・商品のこと・自分のことですね、早速まとめてみます!
I can do this!
Great!
Sounds great!
Once you can explain your company in English, you’ll be surprised how much your confidence grows.
そして、英語で意思疎通ができれば異文化適応の半分以上の力がすでに身についていると言ってもよいでしょう。
異文化適応力?
まだ半分強なんですか?
(その気になってきたのに、まだあるんだ。。)
ええ、まだ半分強なのです。
なぜなら――日本の常識は、世界の非常識。
そう言われるほど、国や地域によってビジネス習慣や価値観は大きく異なるからです。
英語が通じても、考え方や仕事の進め方が違えば、商談やプロジェクトは思うように進みません。
次は異文化への適応について詳しく見ていきましょう。
異文化適応力は十分に備わっていますか
異文化理解は「自分の常識」を疑うところから
ビジネスのグローバル化が進む今、異文化適応力は単なる語学力ではなく、海外進出や海外営業を進めるうえで欠かせない実務スキルになっています。
しかし、多くの日本企業が最初につまずくのは英語ではありません。
「当然こうなるはずだ」
「普通はこう考えるだろう」
「誠意を見せれば伝わるはずだ」
という、日本で身につけた常識です。
たとえば、
- 約束した納期が守られない
- 納得できない追加請求が発生する
- 誠実に対応したのに突然連絡が途絶える
- 現場担当者との会議なのに、その場で重要事項が決定されていく
- 時間をかけて内容を詰めた契約が、トップダウンで突然キャンセルになる
- 一度合意した内容が、担当者変更によって最初からやり直しになる
- 「できる」と言われたので準備したら、実はまだ社内承認前だった
- 日本では失礼に感じるほど率直な指摘や否定的な意見を受ける
- 価格交渉が終わったと思ったら、契約直前に再び値下げ交渉が始まる
こうした出来事に直面すると、日本人は「なぜ?」と考えます。
しかし、その多くは悪意ではなく、文化的な前提の違いから生まれています。
日本では常識でも、海外では非常識。
逆に海外では当然でも、日本人には理解しづらい。
その両方が存在するのです。
異文化理解とは、相手の文化を好きになることでも、無理に受け入れることでもありません。
まずは、
「自分が当たり前だと思っていることは、本当に世界共通なのだろうか」
と考えてみること。
そこが異文化適応のスタート地点です。
異文化適応力とは何か
異文化適応力とは、国や地域ごとに異なる価値観や行動様式を理解し、その違いを前提として行動できる力のことです。
重要なのは、「海外のやり方に合わせること」ではありません。
なぜ相手はそう考えるのか。
なぜその行動を取るのか。
その背景を理解したうえで、自社にとって最善の対応を選択できることです。
海外進出では、
「自分たちが正しい」
「相手が間違っている」
という発想では問題は解決しません。
相手には相手の合理性があり、自分たちにも自分たちの合理性があります。
その違いを理解したうえで、共通のゴールを探していくことが求められます。
そのため異文化適応力は、単なる語学力ではなく、
- 相手を観察する力
- 背景を推測する力
- 自分の考えを伝える力
- 違いを受け入れる柔軟性
を含む、総合的なビジネススキルと言えるでしょう。
では実際に、どのような価値観の違いが存在するのでしょうか。
まずは仕事やお金、自己実現に関する考え方の違いから見ていきましょう。
異文化による価値観の違い【仕事・お金・自己実現】
- 上司に対し反対意見を率直に伝える/指示は絶対で意見しにくい
- 自分の業務が終われば帰る/周囲の空気に合わせて帰れない
- 体調不良なら休むのが当然/病気でも出社しがち
- 自分と他人は別物/周囲に迷惑をかけたくないという思いが強い
- 幹部研修を受けても転職に迷いなし/恩義から短期離職はしづらい
- 給与はオープンに議論/待遇の不満は転職で解決
- 勤務中の盗難は発生しうる/職場での盗難はほぼ皆無
- 仕事はお金と自己成長の手段/実際は自己実現より会社都合が優先される
- 過労死など理解不能/それでも現実として向き合っている
異文化による価値観の違い【宗教・愛・家族】
- 宗教や家族は最優先事項/宗教への理解が浅く、家族との交流は少なめ
- 愛がなければ離婚も当然/子ども優先で継続するケースも
- 親族には無期限で支援/親族に断られると後が無いため最初から頼らない
- 子どもの誕生日で休む/休むとしても理由は伏せる傾向
- 家族写真やペットを職場に/職場とプライベートは明確に分ける
どちらが正しい、という話ではありません。
それぞれの社会や文化の中で合理的に発達してきた結果、価値観や行動が異なっているだけです。
異文化適応とは、その違いを理解したうえで、共通のゴールに向けて協力できること。
問題や摩擦が起こったとしても、「なぜそう考えるのか」を理解しようとする姿勢が、信頼関係の構築につながります。
英語力と適応力の違い
「英語が話せる=異文化に適応できる」
そう考えがちですが、実際はそう単純ではありません。
一方で、英語力があるということは、異文化適応のプロセスの半分以上をすでに経験しているとも言えます。
なぜなら、日本独自の言葉や表現を英語に置き換える過程で、日本と海外の価値観や文化の違いに何度も直面するからです。
たとえば、
「いつもお世話になっております」
「今後ともよろしくお願いいたします」
といった日本語の定型挨拶は、英語圏ではそのまま使われません。
強いて言えば、
“I hope things are going well.”
や
“Thank you for your continued cooperation.”
が近い表現ですが、完全に同じ意味ではありません。
そもそも英語圏には、日本のように「継続的なお世話への感謝」を毎回メールの冒頭で伝える文化がないからです。
英語を学んでいると、このような「訳せそうで訳せない日本語」に何度も何度も出会います。
そしてそのたびに、
「日本では当たり前だったけれど、海外では当たり前ではないのか」
と気づくことになります。
つまり英語学習とは、単なる語学習得ではなく、日本文化を客観的に見直す異文化適応のトレーニングでもあるのです。
英語が話せても異文化適応できない理由
英語はグローバル社会における重要なツールです。
しかし、それはあくまでコミュニケーションの手段であり、異文化適応そのものではありません。
たとえば、英語が堪能で相手の話している内容がすべて理解できたとしても、その発言の背景や本音、交渉の落としどころまで見えているとは限りません。
海外企業とのビジネスでは、
「なぜその質問をしたのか」
「なぜ今その話題を出したのか」
「本当に知りたいことは何なのか」
を理解する必要があります。
これは語学力だけでは身につきません。
実際に異文化の中で仕事をし、
失敗し、
誤解し、
修正し、
相手の反応を観察する。
そうした経験の積み重ねによって少しずつ身についていくものです。
ビジネスとは、相手の意図を読み取り、互いの着地点を探していく知的なプロセスです。
そのためには、英語力だけでなく、異文化環境の中で「脳みそに汗をかいた場数」が不可欠です。
異文化の職場や取引先との交渉では、文化的な常識の違いから誤解が生まれることも少なくありません。
適応力とは、その違いを理解しながら前に進む力なのです。
英語が話せても商談がうまく進まないケースは少なくありません。
実際の商談の流れの中でどこにズレが生まれるのかは、こちらで具体的に整理しています。
→ 英語でのBtoB商談の進め方|準備から交渉・フォローまで解説
異文化適応力を高める方法とは
異文化適応力は、本を1冊読んだから身につくものではありません。
また、海外旅行に何度か行っただけで身につくものでもありません。
なぜなら異文化適応とは、知識ではなく「相手の行動や考え方を理解する力」だからです。
実際には、
「なぜそう考えるのか」
「なぜそう行動するのか」
を何度も考え、答え合わせを繰り返しながら身につけていきます。
海外進出や海外営業の現場では、特に次の2つが大きな柱になります。
方法① 相手の行動背景を理解する
異文化の行動背景を知ることは、相手の意思決定や態度の“意味”を正しく理解するための第一歩です。
費用や実現の難易度によって、以下のようなステップがあります。
- 現地で学ぶ・働く・生活する(留学や海外赴任など)
- 現地の人と業務で協業する
- 現地に足を運ぶ
- 現地の友人をつくる
- 本・TV番組・ネット検索などで現地文化を学ぶ
どの方法も、表面的な知識ではなく、“文化の中に身を置く”という体験が重要です。
費用や難易度は異なりますが、実際に現地の人と接する機会が増えるほど、異文化理解は深まります。
方法② 行動を予測したコミュニケーションをとる
異文化の行動パターンを予測しながら対話できるようになるには、以下のような段階的な経験が効果的です。
- 【初級編】現地パートナーとざっくばらんにミスコミュニケーションを語る(相手選びは重要)
- 【中級編】異文化適応に長けた日本人と共に現場を体験し、先回りせず“解説だけ”を頼む(下記に解説2例あり)
- 【上級編】実際に海外で、同じ環境・視点を共有しながら現地メンバーと成果を出す
【中級編】解説例1.
あそこで彼がこう言ったのは○○を知りたかったからですが、あなたはxxと誤解し、結局質問には答えていませんでした。
【中級編】解説例2.
本日の進行は?と聞かれたとき、主張しなかったせいで、2時間ほど終始先方のペースとなりましたが、最後に5分でもこちらからWrap up(要約)させてほしいと言えれば、形勢は逆転したかもしれません。
以上のように、異文化適応で最も成長が早いのは、失敗や誤解が起きた瞬間に、
「今、何が起きていたのか」
を解説してもらうことです。
自分では気づかなかった文化的な前提や思い込みが見えてくるからです。
異文化コミュニケーションとは、単に言葉を翻訳することではありません。
相手の行動や発言の背景を理解しながら、次の一手を考えることです。
つまり、背景の異なる価値観に対し、「言語外の文脈」まで考慮して向き合うスキルと言えるでしょう。
これは単なる翻訳技術ではなく、「異文化的 intelligence(知性)」とも呼べる高度な対応力なのです。
異文化適応が比較的スムーズな人の特徴 (10個)
- 1 自分に対して健全な自信を持っている
- 2 評価されなくても努力できる
- 3 学ぶことを楽しめる
- 4 公平さを大切にしている
- 5 好奇心と探求心が強い
- 6 変化を受け入れる柔軟さがある
- 7 執着が少ない
- 8 他人と自分を無意味に比較しない
- 9 スペックで人を判断しない
- 10 プライドにこだわらない
異文化適応に時間がかかりやすい人の特徴 (10個)
- 1 他人の評価に左右される
- 2 努力が報われないと落ち込む
- 3 学んでも変化が乏しい
- 4 公平さに損得を感じやすい
- 5 リスクを避け現状維持を選びがち
- 6 未確定な状況に強い不安を感じる
- 7 頑固さを指摘された経験がある
- 8 他人の幸せに劣等感を持ちやすい
- 9 表面情報で人物評価を下す
- 10 否定的な意見に感情的になる
もちろん、どちらかに完全に当てはまる人はいません。
誰もが両方の特徴を持っており、経験を重ねる中で少しずつ変化していきます。
異文化に対してオープンなマインドセットを持つ人は、フェアな対話や柔軟な解釈が得意です。
先入観を脇に置き、異なる意見や価値観も「それってどういうこと?」といった関心と共に受け止める姿勢があります。
否定せず、相手の視点と自分の視点の間に“第3の選択肢”を探ろうとすることが、異文化適応力の核心です。
一方、評価や正しさを外部に求める傾向が強い人は、「理解できないこと」や「異見」に直面すると、無意識のうちに防衛的な態度をとってしまいがちです。
相手の文化やロジックに触れる余地を持たず、「自分の解釈で話を押し切る」ような形になってしまえば、せっかくの対話は成立しません。
さらにやっかいなのは、表面上はニコニコと合わせているように見えても、実際には日本式の進め方を100%押し通してしまうケース。
こうした“形だけの協調”は、プロジェクトが込み入るほど綻びを生み、最終的には「やっぱり海外は難しい」「文化が違いすぎた」といった誤った印象だけを残して終わってしまうこともあります。
異文化適応とは、単なる知識でも礼儀でもなく、実践と内省を伴う“学習のプロセス”なのです。
異文化への対応は考え方だけでなく、実際の営業活動の中でどう行動するかが重要になります。
海外での新規開拓の進め方もあわせて確認しておきましょう。
→ 海外営業で新規開拓はできますか
日本本社と海外拠点の認識のズレはなぜ起きるのか
海外拠点を持つ企業では、日本本社と現地の間で、状況の捉え方や判断にズレが生じることがあります。
日本本社から見れば、「本社の方針に沿って進めてほしい」と考えるのは自然なことです。一方、海外拠点では、日本では想定しにくい出来事や、現地社員・顧客との調整が日常的に発生します。
同じ会社の中でも、見えている景色そのものが違うのです。
海外駐在員の「OKY」とは
海外駐在員や現地責任者の間で、「OKY」という言葉が使われることがあります。
- O:おまえが
- K:ここにきて
- Y:やってみろ
日本本社からさまざまな指示を受ける一方、現地ではその通りに進められない事情がある。そうした状況に置かれた現地側の、「そんなに言うなら、実際にここへ来てやってみてほしい」という気持ちを表した言葉です。
もちろん、本社と現地のどちらかが正しく、どちらかが間違っているという単純な話ではありません。
問題は、双方が異なる環境で仕事をしているにもかかわらず、その違いが十分に共有されないまま判断が行われることです。
本社に相談しなくなることが、さらにズレを大きくする
海外拠点で問題が起きても、現地側がすぐに本社へ相談するとは限りません。
現地の状況を説明しても理解してもらえない、日本の常識を前提とした指示が増える、場合によっては「担当者の能力不足ではないか」と受け取られる――。
こうした経験が重なると、現地側は「相談すると、かえって仕事が増える」と感じるようになります。
その結果、本社への相談や報告が減り、本社からは現地の状況がますます見えなくなります。
本社は「なぜ報告しないのか」と考え、現地は「説明しても分かってもらえない」と考える。この悪循環が、日本本社と海外拠点の認識のズレをさらに大きくしていきます。
個人ではなく、組織の問題として考える
こうした問題を、駐在員や現地責任者個人の能力だけで解決しようとするのは困難です。
必要なのは、本社と海外拠点のどちらか一方を日本式・現地式に合わせることではありません。
現地で何が起きているのかを本社が理解し、本社が何を判断する必要があるのかを現地側も理解する。そのうえで、情報共有や意思決定、役割分担の方法を整えていく必要があります。
異文化適応は、海外の文化や商習慣を理解することだけではありません。
海外事業に関わる人たちが、それぞれ異なる環境や前提の中で仕事をしていることを理解し、その違いを踏まえて組織として判断できるようになることも、重要な異文化適応の一つです。
異文化適応とは「違い」を強みに変える力
異文化 ー それはただの「違い」です。
世界中の人たちが、それぞれの社会や文化で“正しい”とされる行動をしているだけ。
それがときに日本の常識と真逆であっても、対立すべきものではありません。
「違うこと」そのものが前提なのです。
大切なのは、“違い”を受け入れたうえで、共通のゴールを見つけ出そうとする意識です。
自分の主張を押し通すのではなく、「互いに理解し合う」ための行動を自然に選ぶ。
これは異文化コミュニケーションにおいて非常に価値のあるスキルであり、組織においても個人においても、大きな強みとなります。
実際に、異文化に適応できる人は、驚くほど「人の話」をよく聞いています。
そして、言わなくてはいけないことは、タイミングを見計らって明確に伝えます。
その最中も、相手のことをしっかり見ています。
それは、自分のやり方を押し付けるということではありません。
より良いゴールのために、そして更なる理解のために、「聞き」「話し」ているのです。
この力は、私たち日本人にとって、決して簡単ではありません。
なぜなら日本社会は、“共通の常識”を共有することを前提に育ってきた文化だからです。
でも、だからこそ。
いったんその壁を越えると、まるで高台から地平線を一望したような、視界の変化が訪れる瞬間があります。
「あっ、分かり合えた!」というあの感覚 ── それこそが、グローバルな現場で実感できる、最大の醍醐味なのです。
突然クリアに分かり合える瞬間か…それはワクワクしますね。
なんとしても、その景色を見てみたいです!
必ず見られます。
海外進出用の能力開発を続けていけば、その景色は必ず見えてきます。
そして、その瞬間から海外企業との関係は「外国人との仕事」ではなく、「同じゴールを目指す仲間との仕事」へと変わり始めます。
とはいえ、理解し合えただけでは事業は前に進みません。
次はいよいよ、その信頼関係を成果につなげるための「戦略の構築と実行」に進んで参りましょう。
売るための仕組みづくりですね!
海外進出の戦略を構築しよう
海外戦略とは「選ばれる理由」を設計すること
海外進出というと、事業計画や売上目標、行動計画を作ることをイメージするかもしれません。
もちろんそれらも重要ですが、海外戦略の本質はそこではありません。
海外戦略とは、「なぜ海外のお客様が自社を選ぶのか」を明確にすることです。
海外市場には、すでに多くの競合企業や代替品が存在します。
その中で選ばれるためには、自社の強みや特徴を整理し、海外顧客にとっての価値として伝えなければなりません。
また、自社が考える強みと、海外顧客が評価する強みは一致しないこともあります。
そのため海外戦略では、
・海外顧客は何を求めているのか
・競合企業はどのように選ばれているのか
・自社はどのような価値を提供できるのか
を整理しながら、自社だけの立ち位置を明確にしていく必要があります。
つまり海外戦略とは、単に海外で販売する方法を考えることではなく、「海外市場で選ばれる理由」を設計することなのです。
海外戦略を構成する3つの要素
海外市場で選ばれる理由を設計するためには、自社の強みを整理するだけでは十分ではありません。
その強みを必要としている顧客を見つけ、適切な形で伝え、信頼につなげていく仕組みが必要です。
そのために重要となるのが、
・海外マーケティング
・海外向けWebサイト
・海外向けブランディング
の3つです。
海外マーケティングでは、「誰に、何を、どのように届けるのか」を考えます。
海外向けWebサイトでは、その価値を24時間伝え続ける営業基盤を構築します。
そして海外向けブランディングでは、「なぜその会社を選ぶのか」という理由を明確にし、競合との差別化を図ります。
これらは別々の活動ではありません。
海外顧客を理解し、その価値を伝え、選ばれる理由をつくるという一つの戦略の中で相互につながっています。
ここからは、この3つの要素について順番に見ていきましょう。
海外マーケティングはできていますか?
海外進出というと、展示会への出展や海外向けWebサイトの制作から始めようと考える企業も少なくありません。
しかし、その前に考えるべきことがあります。
それは、「誰に、何を、どのように届けるのか」です。
海外市場には、さまざまな国、業界、企業規模、価値観を持つ顧客が存在します。
その中で自社の商品やサービスを必要としているのは誰なのか。
その顧客は何に困り、どのような価値を求めているのか。
こうした仮説を立て、検証しながら市場との接点を探していく活動が海外マーケティングです。
海外進出では、自社の強みを起点に考えがちです。
しかし実際には、海外顧客のニーズを理解し、そのニーズに対して自社がどのような価値を提供できるかを考えることが重要になります。
まずは、自社が海外顧客をどのように理解しようとしているのか確認してみましょう。
海外向けWebサイトはありますか?
海外顧客にとって、Webサイトは企業を知るための最初の接点になることが少なくありません。
展示会で名刺交換をした後も、紹介を受けた後も、多くの海外企業はまずWebサイトを確認します。
その際、日本語サイトしか存在しない、あるいは英語ページが数ページしかない状態では、十分な情報を提供できないことがあります。
また、海外向けWebサイトは単なる会社案内ではありません。
海外顧客が知りたい情報を整理し、自社の強みや実績、提供価値を分かりやすく伝える営業ツールでもあります。
さらに、時差のある海外市場では、Webサイトが24時間働く営業担当の役割を果たします。
問い合わせ前の不安を解消し、比較検討の材料を提供し、商談のきっかけを作る重要な存在です。
そのため海外向けWebサイトは、「翻訳した日本語サイト」ではなく、「海外顧客向けに設計された情報発信基盤」として考える必要があります。
まずは、自社のWebサイトが海外顧客に必要な情報を十分に提供できているか確認してみましょう。
海外向けブランディングはできていますか?
海外市場では、商品やサービスの性能だけで選ばれるとは限りません。
価格や品質が近い競合が存在する中で、「なぜその会社を選ぶのか」という理由が求められます。
そこで重要になるのがブランディングです。
ブランディングとは、ロゴやデザインを整えることだけではありません。
海外顧客に対して、
・どのような企業として認識されたいのか
・どのような価値を提供する企業なのか
・他社と何が違うのか
を明確にし、一貫して伝えていく活動です。
特に海外市場では、自社にとって当たり前の強みが、高く評価されることもあります。
逆に、日本国内で評価されている特徴が、海外ではほとんど響かないこともあります。
だからこそ、自社の歴史や技術、企業文化、顧客への姿勢などを改めて整理し、海外顧客の視点で価値を再定義することが重要です。
海外向けブランディングは、「自社は何者なのか」を明確にし、海外顧客に選ばれる理由をつくるための土台になります。
まずは、自社が海外市場でどのような企業として認識されたいのか確認してみましょう。
まずは海外向けマーケティングから始めよう
海外戦略を構築するためには、
・海外マーケティング
・海外向けWebサイト
・海外向けブランディング
の3つを連携させながら進めていくことが重要です。
どれも欠かせない要素ですが、最初に取り組みたいのは海外マーケティングです。
なぜなら、海外顧客を理解しないままでは、Webサイトで何を伝えるべきかも、どのようなブランドとして認識されたいのかも決められないからです。
海外向けWebサイトやブランディングは、マーケティングによって見えてきた顧客ニーズや市場理解を形にするための手段とも言えます。
まずは、
「誰に」
「どのような価値を」
「どのような方法で届けるのか」
を整理し、自社の海外市場における立ち位置を明確にしていきましょう。
海外戦略の第一歩は、海外顧客を知ることから始まります。
まずは、海外向けマーケティングの考え方から確認していきましょう。
海外向けマーケティングはできていますか
海外マーケティングとは?
海外マーケティングとは、海外の顧客に自社を知ってもらい、理解してもらい、最終的に「この会社に相談したい」「この商品を検討したい」と思ってもらうための一連の活動です。
そのためには、単に情報を発信するだけでは足りません。
誰に向けて、どのような価値を伝えるのか。競合と比べて何が違うのか。どのような情報があれば相手は安心して問い合わせや商談に進めるのか。
こうしたことを整理したうえで、Webサイト、展示会、営業、販売代理店、SNS、動画など、顧客との接点を選んでいきます。
つまり海外マーケティングは、個々の施策を実行することではなく、海外顧客に見つけてもらい、理解され、選ばれるまでの流れを設計することです。
そして、その流れの中で重要になるのが、
「どこで見つけてもらうか」
「何を伝えるか」
「どのような印象を持ってもらうか」
です。
この先では、まず海外マーケティングで最初に整理したいことから見ていきます。
海外マーケティングで最初に整理する3つ
海外マーケティングを始めるとき、最初に整理したいのは次の3つです。
- 誰に売るのか
- どんな課題を解決するのか
- なぜ自社が選ばれるのか
日本国内で長く事業をしている企業では、この3つを改めて言葉にしなくても、営業担当者や顧客との間である程度共有できていることがあります。
しかし海外では、その前提がありません。
例えば「高品質」「高い技術力」「日本で豊富な実績がある」と伝えても、それだけで海外顧客が自社を選ぶ理由になるとは限りません。
どのような企業の、どのような課題に対して、その技術や品質が役立つのか。
現地の競合ではなく、自社へ問い合わせる理由は何なのか。
ここまで具体的にして初めて、Webサイトに何を掲載するのか、展示会で何を訴求するのか、どのような営業資料を作るのかといった施策を考えられるようになります。
ただし、この3つも最初から正解が分かるわけではありません。
市場を調べ、実際に海外顧客へ提案し、その反応を見ながら、
「想定した顧客は正しかったか」
「本当にその課題があるのか」
「自社の強みは評価されたのか」
を確認していきます。
海外マーケティングでは、最初に完璧な答えを作るのではなく、仮説を持って市場に出て、確かめながら修正していくことが重要です。
海外顧客はどこで情報を探し、どう比較するのか
ターゲットや自社が提供できる価値を整理したら、次に考えたいのが、海外顧客がどのように自社を知り、取引先候補として検討するのかです。
海外顧客との最初の接点は一つではありません。
検索エンジンやSNSで見つけることもあれば、展示会で製品を知る、代理店から紹介される、業界メディアの記事を読む、既存の取引先から評判を聞くといったこともあります。
そして、どこで最初に知ったとしても、それだけで問い合わせや商談に進むとは限りません。
会社名を検索してWebサイトを確認する。
製品の仕様や導入事例を調べる。
競合企業と比較する。
会社の規模や実績、対応地域を確認する。
BtoBであれば、最初に情報を見つけた人と、実際に製品を評価する人、購入を決める人が異なることもあります。
つまり海外マーケティングでは、「どうやって知ってもらうか」だけでなく、知った後に何を確認され、何を根拠に比較され、どのように選ばれるのかまで考えておく必要があります。
ここで重要になるのが、それぞれの接点で伝える情報に一貫性があることです。
展示会では技術力を強く訴求しているのに、Webサイトにはその根拠となる情報がない。営業担当者はある強みを説明しているのに、会社案内では別の特徴を前面に出している。
このような状態では、せっかく海外顧客と接点を持っても、自社への理解や信頼につながりにくくなります。
どこで出会っても「何を得意とする会社なのか」「なぜこの会社を選ぶのか」が伝わる状態をつくることが、海外マーケティングでは重要です。
海外マーケティングの主な施策
海外マーケティングでは、目的やターゲットによって選ぶべき施策が異なります。
大切なのは、多くの施策を実施することではなく、海外顧客が自社を知り、理解し、検討する流れに合わせて、必要な接点をつくることです。
代表的な施策を見てみましょう。
海外向けWebサイト・SEO
海外顧客が自社を検索したときに、事業内容や製品、強み、実績などを確認できる場所です。
既存の日本語サイトを翻訳するだけではなく、海外顧客が知りたい情報や検索する言葉、競合との違いを踏まえて設計する必要があります。
検索から新しい顧客に見つけてもらうのであれば、海外SEOも中長期的な施策の一つになります。
→ 海外向けWebサイトはありますか?
→ 海外SEO対策とは?中小企業が成果を出すための進め方と5ステップ
海外展示会
海外展示会は、短期間で多くの潜在顧客や業界関係者と直接接点を持てる施策です。
製品への反応、よく聞かれる質問、競合との比較、価格への評価など、Web上の調査だけでは分からない情報を得られる機会でもあります。
出展そのものを目的にせず、誰と会いたいのか、何を確認したいのか、その後どのように商談へつなげるのかまで設計しておくことが重要です。
→ 海外展示会を成功させる準備はできていますか
→ 海外展示会の出展支援サービスとは?依頼できる内容と選び方を解説
海外営業・販売代理店
自社から海外企業へ直接アプローチする方法もあれば、現地の販売代理店や商社などを通じて市場を開拓する方法もあります。
どちらが適しているかは、製品、顧客層、商流、必要なサポート、現地で求められる営業活動などによって変わります。
特に代理店を活用する場合は、「代理店を見つけること」ではなく、その代理店が実際に販売できる仕組みまで考える必要があります。
→ 海外営業で新規開拓はできますか
→ 海外BtoBマーケティングの進め方|中小企業が海外顧客を獲得するには
広告・SNS・動画
Web広告やSNS、動画は、まだ自社を知らない海外顧客へ情報を届けたり、製品や技術を視覚的に理解してもらったりするために活用できます。
ただし、媒体を決めることが先ではありません。
誰に何を伝え、見た後にどのような行動をしてほしいのかを決めたうえで、その目的に合う手段を選びます。
→ 国際マーケティングで失敗しない|中小企業の海外向け動画活用術
市場調査
市場調査も、海外マーケティングを支える重要な活動です。
市場規模や競合、価格、流通構造などを調べるだけでなく、実際の顧客候補へのヒアリングや商談、展示会、テスト販売などから得られる情報も、次の判断材料になります。
調査で得た情報をもとに仮説を立て、施策を実行し、その反応からまた仮説を修正していきます。
海外企業に「選ぶ理由」を伝える
海外企業や海外顧客は、あなたの「商品」を探しているわけではありません。
探しているのは、自分たちにとって「安心して選べる正解」です。
だからこそ、
「この会社は私の問題を解決できるのか」
「それはなぜか、根拠は何か」
「海外からわざわざ取引する価値はあるのか」
を、相手が判断しやすい論理展開で、十分に伝えきることが大切なのです。
海外マーケティングとは、商品を宣伝することではありません。
自社の強みや専門性を整理し、海外企業に「選ぶ理由」を伝える活動です。
その「選ぶ理由」は、Webサイト、展示会、営業、販売代理店など、顧客との接点が変わっても一貫している必要があります。
展示会では魅力的に見えたのに、Webサイトを確認してもその根拠が分からない。営業担当者から聞いた強みが、会社案内や製品資料では伝わってこない。
これでは、せっかく接点をつくっても、海外顧客が次の検討へ進めません。
海外企業に見つけてもらい、理解してもらい、信頼してもらう。そして「この会社を選ぶ理由」が確認できる状態をつくる。
それが、海外マーケティングで重要な設計です。
なるほど。
海外企業が安心して判断できる情報を、海外向けに設計し直して用意する必要があるんですね。
その通りです。
では、その情報を海外企業はどこで確認するのでしょうか?
Webサイト……でしょうか?
そうです。
その企業が「どんな会社なのか」は、まずWebサイトで確認されます。
海外企業とは直接会う機会が限られるため、
「Webサイトの情報がその会社を判断するほぼすべて」
と言ってもいいほどです。
日本語サイトを英語に翻訳したWebサイトなら当社にもあります!
……おしいですね。
オシイ??
海外向けWebサイトは、日本語サイトを英語にしただけでは十分とは言えません。
次は、海外企業が判断するために、Webサイトに何が必要なのかを見ていきましょう!
海外向けWebサイトはありますか
海外向けWebサイトは、海外営業の「確認場所」になる
海外企業が自社のWebサイトを初めて訪れるきっかけは、検索だけとは限りません。
展示会で名刺交換をした、営業メールを受け取った、取引先から紹介された、代理店候補として会社名を知った、SNSや業界メディアで製品を見かけたなど、Webサイト以外の場所で最初の接点が生まれることもあります。
そして、興味を持った企業はWebサイトを訪れます。
そのとき確認しているのは、単なる会社概要や製品情報だけではありません。
「どのような会社なのか」
「自社の課題に合う製品・サービスなのか」
「なぜこの会社を検討する価値があるのか」
「海外企業との取引に慣れているのか」
「問い合わせた後、きちんと対応してもらえそうか」
など、次の行動へ進むための判断材料を探しています。
さらにBtoBでは、最初にWebサイトを見た担当者だけで判断が完結するとは限りません。
上司、技術部門、購買部門などへURLや資料が共有され、社内で検討が進むこともあります。
つまり海外向けWebサイトは、単なる会社案内ではなく、海外営業や展示会、代理店開拓などで生まれた接点を、次の検討や商談へつなぐ「確認場所」でもあります。
Webサイトだけで海外事業が成功するわけではありません。
しかし、せっかく海外企業との接点が生まれても、Webサイトを見た相手が「よく分からない」と感じれば、問い合わせることなく静かに離れていくこともあります。
そして、この「静かに離れていった相手」は、通常、企業側には見えません。
ここが、海外向けWebサイトの成功と失敗を分かりにくくしている一つの理由です。
「公開できた」で止まっている海外向けWebサイトは、実は失敗している
海外向けWebサイトは、失敗していても「失敗した」と認識されにくいものです。
英語ページが完成し、デザインも整っている。会社概要や製品情報も掲載され、問い合わせフォームも問題なく動いている。
制作会社から納品され、社内でも「海外向けWebサイトが完成した」と報告されれば、Web制作というプロジェクトは無事に終了したように見えます。
しかし、海外事業のために作ったWebサイトなら、公開できたことと、海外事業の中で機能していることは別です。
たとえば、次のような状態が長く続いていないでしょうか。
- 狙っていた国・業界・企業からほとんど問い合わせがない
- 問い合わせはあるものの、想定していた顧客とは違う
- 海外営業担当者自身が、商談相手へ積極的にWebサイトを案内していない
- 展示会や営業活動で接点を持った相手が、Webサイトを見ても次の商談につながらない
- 商談のたびに、Webサイトにない会社説明や製品資料を別途作って送っている
- 海外の見込み客から、Webサイトを見ても分からない基本的な質問が繰り返される
- 誰がサイトを見ているのか、狙った相手に届いているのかを確認したことがない
- 海外顧客や商談相手の反応をもとに、掲載内容を見直したことがない
- 成果が出ない理由を検証しないまま、数年後に再びリニューアルを検討している
もちろん、このうち一つに当てはまっただけで「失敗」と判断するものではありません。
しかし、こうした状態が続き、海外事業の中でWebサイトがほとんど役割を果たしていないのであれば、誰も声に出して言わないだけで、海外向けWebサイトとしては失敗している可能性があります。
厄介なのは、それでもWebサイト自体は問題なく存在し続けることです。
問い合わせが来なくてもエラーは表示されません。
狙った企業に伝わっていなくても警告は出ません。
海外企業がページを見て「よく分からない」と離れても、その理由を教えてはくれません。
そのため、
「海外市場ではまだ認知度が低いから」
「もう少しSEOを強化すれば」
「そろそろデザインが古くなったから」と考え、
数年後にリニューアルして、また同じことを繰り返すこともあります。
海外向けWebサイトで本当に怖いのは、失敗することそのものではありません。
失敗していることに気づかないまま、何年も運用を続けてしまうことです。
成功している海外向けWebサイトは、静かに機能している
一方、海外事業の中で機能しているWebサイトは、必ずしも派手な成果を出しているとは限りません。
検索結果の1位を大量に獲得している、毎月何百件もの問い合わせが入る、といった状態だけが成功ではありません。
狙っている海外企業がWebサイトを訪れ、必要な情報を確認する。
展示会で会った担当者が帰国後にもう一度サイトを見る。
営業担当者が商談中にWebサイトのページや資料を使う。
海外企業の担当者がその上司や技術・購買部門へURLを共有し、社内で検討が進む。
そして、問い合わせや次の商談、見積り依頼などへつながっていく。
こうした動きが、日々静かに起きているWebサイトもあります。
ただし、その状態は、最初から完璧な海外向けWebサイトを作れたから生まれたものではありません。
想定していた国から反応がなかった。
狙っていた顧客とは違う企業から問い合わせが来た。
強みだと思っていたことが海外ではあまり評価されなかった。
反対に、自社では当たり前だと思っていた技術や対応に思わぬ関心が集まった。
そうした市場からの反応を見ながら、
仮説を立てる
→ 市場へ出す
→ 反応を見る
→ ズレを知る
→ 修正する
という作業を何度も何度も繰り返していきます。
そこには調査の手間も、時間も、コストもかかります。社内で考え直し、判断し直す思考負担もあります。
それでも修正を重ねることで、少しずつ「誰に・何を・どの市場で・どう売るのか」と、それぞれの「なぜ」が実際の市場と合うようになっていきます。
成功している海外向けWebサイトは、英語がきれいだから成功しているのではありません。
たくさんの仮説と修正を積み重ね、海外の見込み客が求めるコンテンツと、次の行動につながる導線が整っているからこそ、海外事業の中で静かに機能しています。
最初から正解を当てる必要はありません。
むしろ大切なのは、自分たちが何を仮説として作ったのかを分かる状態にして、市場から返ってきた反応によって、その仮説のズレに気づけることです。
最初から正解は分からない。だから制作前に「仮説」を置く
海外展開の経験がまだ少ない企業にとって、最初から正しいターゲット市場や顧客、売り方を決めることは簡単ではありません。
市場調査をして、競合を調べ、社内で検討しても、その時点で分かることには限界があります。
実際に海外市場へ出てみると、
「想定していた顧客から反応がない」
「別の業界から問い合わせが来た」
「強みだと思っていた点が響かない」
といったことも普通に起こります。
だから、制作前に必要なのは、最初から正解を決めることではありません。
まず、
- 誰に売るのか
- 何を売るのか
- どの国・市場を狙うのか
- どのような方法で売るのか
- なぜその顧客なのか
- なぜその製品・サービスなのか
- なぜその市場なのか
- なぜその売り方なのか
- なぜ自社が選ばれると考えるのか
を、その時点での「仮説」として整理します。
大切なのは、これら「誰に・何を・どの市場で・どう売るのか」と、それぞれの「なぜ」が、たとえ「仮説」であってもまずは「言語化しなければならない」、ということです。
たとえば、「米国市場を狙う」「製造業をターゲットにする」と決めても、なぜその市場なのか、なぜその顧客なのか、自社のどの強みが評価されると考えているのかが、海外企業向けに論理的に説明できなければ、Webサイトで何を伝えるべきかも定まりません。
そして、この仮説は外れても構いません。
少なくとも「初期仮説が明確であれば」、公開後に市場から返ってきた反応と比較して、「想定していたことと違う」と気づくことができます。
反対に、何を仮説として作ったのかが曖昧なままでは、問い合わせが来なくても、狙った企業に届かなくても、何が違っていたのかを検証できません。
仮説を置くのは、最初から正解を当てるためだけではありません。間違っていたときに、そのズレに気づくためでもあります。
海外向けWebサイトは、意識してその体制をつくらない限り、国内サイト以上に「失敗」に気づくことが難しくなります。
立てた仮説が正しくなさそうだと気づけること。そして、気づいた仮説の間違いをその都度適切に修正していけること。
この2つが社内体制として備わっていることが、海外向けWebサイトを「作って終わり」にせず、海外事業の中で機能させていくための前提になります。
Webサイトの答えは、海外市場の反応から見つけていく
Webサイト制作前に立てた仮説が正しいかどうかは、社内で考え続けても分かりません。
実際に海外市場へ出し、反応を見て初めて分かることがあります。
海外展示会へ出展したとき、どの国や業界の人が足を止めたのか。
営業メールを送ったとき、どの企業がWebサイトを見に来たのか。
問い合わせでは何を聞かれたのか。
商談ではどの説明に興味を示し、どこで話が止まったのか。
こうした一つひとつの反応が、制作前に立てた仮説を確かめる材料になります。
たとえば、想定していた用途とは違う使い方について質問が続いたなら、その用途を新しく紹介してみる。
製品の性能よりも納期や供給体制について何度も質問されるなら、海外企業が判断するための情報がWebサイトに不足しているのかもしれません。
展示会で評判の良かった説明がWebサイトには載っていないなら、その内容を追加することもできます。
反対に、狙っていた市場からほとんど反応がないのであれば、ページの表現を変えるだけではなく、そもそも市場や顧客の仮説から見直す必要があるかもしれません。
Webサイトだけを見て改善するのではなく、海外営業、展示会、問い合わせ、商談などで起きていることと照らし合わせながら考えることが重要です。
アクセス数や検索順位も大切な情報ですが、それだけでは「海外事業としてうまくいっているか」は判断できません。
大切なのは「問い合わせ」です。「問い合わせの内容」、「顧客の実際の声」です。
実際に海外企業からどのような反応が返ってきているのか、「正確に、客観的に」理解して初めて、次に何を変えるべきかが見えてきます。
こうして、
仮説を立てる
→ Webサイトを作る
→ 海外市場へ出す
→ 反応を見る
→ 仮説とのズレを見つける
→ Webサイトを修正する
という循環を続けていきます。
海外向けWebサイトは、一度完成させて終わる制作物ではありません。
実際に海外市場とつながり、試行錯誤を重ね、海外顧客が求めていることが具体的に分かるたびに、Webサイトの精度も高くなっていきます。
その積み重ねによって、最初は仮説だった「誰に・何を・どの市場で・どう売るのか」も、実際の海外事業に即した形へと具体化されていきます。
海外向けWebサイトには「海外企業が判断できる情報」を載せる
誰に、何を、どの市場で、どう売るのか。
その仮説の精度が高まるほど、Webサイトに何を載せるべきかも具体的になっていきます。
ここで大切なのは、日本企業が「伝えたい情報」を並べることではありません。
海外企業の担当者がWebサイトを見て、自社に合う会社なのか、取引を検討する価値があるのか、次の商談へ進んでもよいのかを「判断できる情報」を用意することです。
会社概要や製品紹介だけでは、その判断に必要な情報が足りないこともあります。
技術資料や比較データが必要かもしれません。海外企業との取引の流れ、導入事例、トラブルが起きた場合の対応、自社へ切り替える理由などを知りたい企業もあるでしょう。
さらにBtoBでは、Webサイトを見ている担当者が、その情報を上司や技術部門、購買部門へ共有することもあります。
つまり、Webサイトを見る一人に伝わるだけでなく、その人が社内で検討を進められる情報になっているかどうかが重要です。
海外企業が取引を判断するために、具体的にどのような情報を用意すればよいのかは、こちらの記事で6つに整理しています。
海外向けWebサイトは、自社で考えながら育てていく
海外向けWebサイトに必要な情報が整理できても、それを一度掲載すれば完成というわけではありません。
どのようなページ構成にするのか。どの言語で、どの情報を優先して見せるのか。海外の競合企業はどのようなサイトを作っているのか。検索ではどのような言葉が使われているのか。
こうしたことも、実際に調べながら決めていく必要があります。
制作会社や翻訳会社、SEO会社など、専門家の力を借りることはできます。
しかし、
「自社の海外顧客は誰なのか」
「海外では何が評価されるのか」
「商談で何を聞かれているのか」
を最もよく知ることができるのは、自社です。
だからこそ、海外向けWebサイトをすべて外部へ任せるのではなく、自社でも海外のWebサイトを見て、顧客の反応を確認し、考え、修正していくことが大切です。
海外向けWebサイトの作り方、多言語サイトの設計、競合サイトの調べ方、翻訳、SEO、制作会社への依頼方法、公開後の運用については、こちらの記事で詳しく解説しています。
多言語サイトの作り方と運用戦略|海外Webで成果を出す設計とは
海外向けWebサイトは、制作会社に「作ってもらうもの」で終わらせるのではなく、海外市場への理解を深めながら、自社で主導権を持って育てていくものです。
海外向けWebサイトって、公開したときが「完成」ではなくて、
そこから海外市場の反応を見ながら育てていく、そのスタート時点だったんですね。
はい。最初から正しい自社の海外戦略を分かっている企業はありません。
だからこそ、まず仮説を立てて海外市場へ出し、実際の反応を見ながら少しずつ修正していくことが大切です。
でも、Webサイトの戦略を練って、仮説を検証し、伝えるべき情報もそろえたら、それで十分でしょうか?
いいえ。実は、もう一つ考えておきたいことがあります。
海外には、自社と同じような製品やサービスを提供している企業がたくさんあります。
情報がきちんと伝わるだけでなく、
「なぜ今この会社を選ぶべきなのか」
まで伝わらなければ、比較されたときに埋もれてしまうことがあります。
では…そこから先、どうすれば“選ばれる存在”になれるんでしょうか?
そこで考えたいのが、「海外向けブランディング」です。
海外企業に当社は
「何を約束できるのか」
「なぜそれができるのか」。
そこまで言い切れること。それが、次の課題になります。
海外向けブランディング(共感と価値を生む)戦略もできていますか
海外向けブランディングとは「選ばれる理由」を育てること
海外向けブランディングとは
海外企業の頭の中に、
「あの会社に相談してみよう」
「この分野なら、まずあの会社に聞いてみよう」
という選択肢を作り、その状態を育て続ける活動です。
海外市場では、同じような製品やサービスを提供する競合企業が世界中に存在します。
その中で選ばれるためには、単に製品を紹介するだけでは不十分です。
どのような考え方で事業を行っているのか。
どのような課題を解決できるのか。
なぜその分野で評価されているのか。
そうした情報を継続的に発信し、「この会社なら安心できそうだ」という信頼を積み重ねていく必要があります。
特に海外企業との新規取引では、相手企業は必ずと言ってよいほど複数社を比較しています。
価格やスペックだけでは差別化できない時代だからこそ、「なぜこの会社を選ぶべきなのか」という理由を明確に伝えることが重要なのです。
海外向けブランディングとは、自社の旗を振ることではありません。
海外企業から、「この会社は私たちのことを理解している」「安心して相談できそうだ」と感じてもらえる状態をつくることなのです。
なぜ、同じような製品でも選ばれる会社と選ばれない会社があるのか
海外市場には、同じような製品やサービスを提供している企業が数多く存在します。
それにもかかわらず、
常に展示会で人だかりができる企業、
価格が高くても選ばれ続ける企業、
海外企業から繰り返し紹介される企業
があります。
その違いは、製品の性能だけでは説明できません。
多くの場合、海外企業は無意識のうちに、「この会社は、どんな会社なのか」を見ています。
品質を何より大切にする会社なのか。
常に新しい挑戦を続ける会社なのか。
顧客の要望に柔軟に応える会社なのか。
あるいは、
特定分野を何十年も掘り下げてきた専門家集団なのか。
こうした企業としての姿勢や価値観が、一貫して伝わっている会社ほど、海外企業の記憶に残ります。
反対に、
毎年メッセージが変わる、
主力商品が頻繁に変わる、
価格なのか品質なのか何を大切にしているのか分からない、
以前評価されていた特徴が突然失われる、
といった状態では、顧客は企業イメージを持つことができません。
ブランドとは、企業が繰り返し約束し、守り続けるものです。
そして海外企業は、その約束を長い時間をかけて見ています。
だからこそ海外向けブランディングとは、目新しいキャッチコピーを作ることではありません。
自社は何者なのかを問い続け、それを一貫して伝え続ける活動なのです。
そのために重要なのは、「ウチらしい価値」とは何かを整理し、それを誰に、どのように届けるかを考え抜くことです。
代表の想いがにじむキャッチコピー、ストーリー性のある企業紹介、長年積み重ねてきた技術や挑戦の歴史──。
そうした小さな積み重ねが、やがて企業のブランドになっていきます。
中小企業であっても、自社の魅力や価値観を誠実に伝え続けることで、グローバル市場での存在感を少しずつ築いていくことができるのです。
ブランドは一朝一夕には作れません。
継続的な情報発信や顧客との接点づくりを通じて、少しずつ育っていきます。
そのため、海外向けブランディングは、海外向けマーケティングと切り離して考えることはできません。
→ 海外向けマーケティングはできていますか
ブランドの伝え方は、Webサイト上の情報設計や見せ方にも大きく影響します。
どのような情報を載せるべきかは、こちらで具体的に整理しています。
→ 海外向けホームページに“絶対に載せたい”6つの情報|問い合わせが来ない原因は情報不足
中小企業だからこそブランディングが必要な理由
「ブランディングなんて、大企業がやるものでは?」
そう感じている中小企業は少なくありません。
しかし実際には、海外市場においてこそ、中小企業にブランディングが必要です。
なぜなら、中小企業は大企業のように広告予算や営業人員を大量に投入することができないからです。
また、海外企業にとって、日本の中小企業の知名度はほとんどありません。
そのような状況で、
「なぜ、この会社を選ぶべきなのか」
を伝えられなければ、比較検討の土俵にすら上がれないこともあります。
一方で、中小企業には大企業にはない強みがあります。
特定分野における高い専門性。
経営者の想いが見えやすいこと。
顧客との距離が近く、柔軟に対応できること。
長年培ってきた独自技術や現場経験。
こうした強みを整理し、一貫して発信し続けることで、中小企業でも十分に海外企業から選ばれる存在になることができます。
むしろ、限られた経営資源だからこそ、
「何をやらないのか」
「どの分野で一番になりたいのか」
を明確にし、自社らしさを磨き続けることが重要なのです。
費用対効果を考えるうえでも、海外展開全体の中でどの施策を優先すべきかを整理しておくことが重要です。
→ 海外進出は実現可能ですか
海外BtoBで信頼を築くために必要なこと
海外向けBtoBビジネスでは、製品の性能や価格だけで受注が決まることはほとんどありません。
なぜなら、海外企業は新たな取引先を選ぶ際、
「この会社は本当に長く付き合える会社だろうか」
という視点で企業そのものを評価しているからです。
特に海外企業には、すでに長年取引している既存サプライヤーが存在します。
その取引をあえて変更してもらうためには、「この会社なら安心できる」という強い理由が必要になります。
例えば、海外企業は次のような点を確認しています。
- 輸出入に必要な法規制や認証に対応しているか
- 品質トラブルやクレーム発生時の対応体制はあるか
- 部品供給やメンテナンスを継続できるか
- 納期を守れる生産体制があるか
- 英語でのコミュニケーションや技術サポートが可能か
- 顧客の先にいる顧客へ説明できる資料やデータが整備されているか
つまり、BtoBブランディングとは、企業としての信頼性を「見える化」する活動とも言えます。
どれほど優れた技術を持っていても、その信頼性が海外企業に伝わらなければ、新規取引は始まりません。
逆に、こうした不安を一つひとつ解消できる企業は、価格競争だけに巻き込まれない、強いブランドを築いていくことができるのです。
BtoB企業のブランディング施策の例
BtoB企業のブランドは、広告だけで作られるものではありません。
日々の事業活動そのものが、ブランドを形成していきます。
例えば、次のような活動は、海外企業からの信頼獲得につながります。
- 既存顧客からの推薦コメントや導入事例の公開
- 業界団体での活動や講演、寄稿
- 海外展示会や業界カンファレンスへの継続出展
- 専門誌やメディアでの紹介
- 各種認証や国際規格(ISO等)の取得
- Webサイトやオウンドメディアを通じた専門情報の継続発信
- 技術資料、試験データ、ホワイトペーパー等の公開
一つひとつは小さな活動に見えるかもしれません。
しかし、こうした取り組みの積み重ねが、
「この会社なら信頼できる」
という評価につながり、やがて海外企業から選ばれる理由になっていくのです。
BtoBの場合は、最終的に商談につながる導線まで含めて設計しないと成果にはつながりません。
→ 英語でのBtoB商談の進め方|準備から交渉・フォローまで解説
ブランドは一日では作れない
海外向けブランディングは、一度ロゴを作ったり、Webサイトをリニューアルしたりしただけで完成するものではありません。
むしろ、本当のスタートはそこからです。
海外企業の信頼を得るには、長い時間がかかります。
展示会への継続出展、WebサイトやSNSでの情報発信、業界団体での活動、専門誌への寄稿、顧客対応──。
こうした日々の積み重ねによって、少しずつ企業のブランドは育っていきます。
そして、ブランドが育つと、海外企業との商談にも変化が現れます。
「以前から御社を知っていました」
「業界誌で記事を読みました」
「展示会で見たことがあります」
「○○社から紹介を受けました」
このような言葉を聞く機会が増え始めるのです。
海外向けブランディングとは、短期的な売上を追う活動ではありません。
将来の顧客との信頼関係を、少しずつ積み重ねていく活動です。
はじめは小さな発信でも構いません。
自社は何者なのか。
どのような価値を提供したいのか。
その問いを持ち続け、誠実に伝え続けることが、グローバル市場で選ばれ続ける企業への第一歩となるのです。
ブランディング、是非ともやりたいです!
いいですね!
まずは、
「自社は何者なのか」
「なぜ選ばれているのか」
を、社内で整理するところから始めてみましょう。
海外マーケティングや海外ブランディング、海外向けWebサイトへは苦手意識がありましたが、
とても重要なことなんですね。
その通りです。
海外企業から選ばれ続ける会社には、必ず「その会社らしさ」があります。
それを言葉や情報として丁寧に伝え続けることで、海外企業との間に少しずつ信頼が生まれていきます。
海外向けWebサイト、海外向けマーケティング、海外向けブランディングは、それぞれ独立した活動ではありません。
すべてがつながり合いながら、御社のブランドを育てていくのです。
ここまでで、海外市場で戦うための戦略を整理することができました。
次はいよいよ、その戦略を実行に移す「海外展示会」と「海外営業」です。
海外顧客との最初の接点を、どのように成果へつなげていくのか、一緒に見ていきましょう。